【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている

卯崎瑛珠

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第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!

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「さあて、めんどくせえ挨拶は……もう省略でいいよな?」
 王宮の廊下をヨナターンが歩きながらレナートに言うと
「良いかと」
 と真面目に返す。
「あとの予定は確か」
 ヨナターンの言葉で、レナートが
「キーラ」
 と促してくれる。
 
 ヨナターン、私、レナート。後ろにロランと、ヤン。
 五人で歩くと迫力があるらしく、すれ違う役人や使用人が慌てて脇に寄って頭を下げるのが申し訳ない。
 
「はい。明日から二十日間かけて、騎士団本部の視察、親善試合、王都観光に晩さん会と夜会、の予定でした。明日のアルソス国王陛下との会談次第では、変更になるかもしれません」
「……」
「ヨナさん? 私、騎士団長専属事務官なので」
「うん、知ってはいたが、なんというか」
「とりあえず、今まで通りにさせてもらえませんか? お仕事、まっとうしたいです」
「そ、か。そだな。分かった。なら周りに公表するのも、まだやめておこう」
「ありがとうございます!」
 
 もうすっかり、日が傾きかけている。
 夕日がヨナターンの胸の勲章に当たって、眩しい。

「すっごい数ですね」
 胸元を見ながら、思わず言ったら
「ん? まあ、脅しも多少必要だしな」
 いたずらっぽく、ウインクを返される。
「え? 嘘なの!?」
「いやいや、いやいや! 全然足りてないすから!」
 後ろでヤンが呆れ声を出した。
「え……」
「その人、戦場の魔王ですから!」
「まおう?」
「おい、ヤンやめろ。せっかく優しい漁師のふりを……」

 すると、ぶふ! と派手にロランが吹いた。
 
「良く言うよ。最初から見破られてたじゃん。ねえキーラ?」
「はい。絶対漁師じゃなかったです」
「うっ」
「ですよね。ありえねっすから」
「ヤン……おま、調子に乗るなよ? 海の藻屑にしてやろうか」
「こわ! 聞いた今の! こっわ!」
「あはは! ヤンさんも、偉い人なんですか?」
「へ? なんで?」
「だってヨナさんて、すごく偉いんでしょう?」

 私が聞くと、ヨナターンが笑う。

「ヤンは曹長つってな、下から三番目だ。だから特別扱いだな。普通ならこんな態度したやつは……」
「ざんしゅ?」
「うわ! ヤメテ!」
「嫌なら敬えよ」

 するとヤンが駆け足で追い抜いて、畏まって敬礼をして見せる。
 
「ははーっ!」
「……ほら見ろ、何かイラつくだろ? だからやめろっつったんだ」
「ちょおー! ヒドイ!」
「あははははは!」
 
 そうやって私が、無邪気に会話を楽しんでいるのを、横で静かに見ているレナート。
 ものすごく辛そうだったのに、私は全然気づいていなかった。――気づかなくちゃいけなかったのに。

「レナート……」
「いいんだロラン。気にするな。良かった……良かったんだ」


 
 ◇ ◇ ◇ ヤン視点です ◇ ◇ ◇

 

 タウンハウスでキーラ手作りの美味しい夕食を食べ、皆が寝静まった後で。
 そろりと抜け出した真っ暗な街に、一人たたずむむのは――

「オリヴェルさん」
「ヤン、来たか」

 尊敬する先輩である、オリヴェル中尉だ。この人も陸軍所属だけど、今回の任務に抜擢されて、同じ船でメレランドに来ていた。

「どうでした?」
「見つけた」
「さーすがー!」
「茶化すな。いくぞ」
 
 めちゃくちゃ優秀な人で、いつも一緒に組んで任務をさせてもらっている。
 ド真面目で繊細なのが玉にきずだけど、剣の腕は軍でもかなり上位に君臨している。怒らせるとすんごい怖い。無言で静かに斬るのよ。ほんと怖いの! あー、想像だけで寒気がする!
 実は新婚さん(奥様は帝国軍人学校の教師で、ほんわかしている可愛い人だ)で、可愛い息子さんが生まれたばかりなんだ。早く帰してあげなくちゃね。


 家と家の隙間、人がようやく一人通れるぐらいの細い路地。
 ざくざくと靴底を鳴らして入っていくと、月明かりでようやく見えるぐらいの、少しひらけた場所に出た。

「う……」

 すえた体臭が漂う。
 一体何日湯あみをしていないのだろう。とてもじゃないが、息をしたくない。それぐらいに臭う。
 
「ま、こんなことだろうと思って」
 オリヴェルさんが胸元から出したのは、大きな布だ。
「あ、シールクロスの大きいやつっすね。助かります」
 大型魔獣も封印できる、最新の魔道具だ。
 暴れても、声をあげても――これで包めば絶対に外には漏れない。
「結構えげつないっすねー、先輩ったらぁ」
「お前にだけは言われたくない」
「はは」

 もそり、と臭いの源が動いた。

「げえっふ」

 口から、さらなる汚臭を出して、もぞもぞと寝返りを打って、また静かになった。
 
「……さっさと終わらすぞ」
「アイアイサー」


 深夜の任務は、寒いっすねー! と軽口を叩きながら。
 肩にどさりと、シールクロスでぐるぐる巻いた荷物を乗せて。
 
 ――後始末~、後始末~。



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 お読みいただき、ありがとうございました。
 ヤン、実は少しサイコ君です。オリヴェルが静かに斬るなら、ヤンは笑いながら殴るタイプです。
 ちょっとそれが出ちゃいましたね。

 
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