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第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!
閑話 ヨナターンの謀略(リマニでの裏側)
しおりを挟む私は、ヨナターン・バザロフ、ブルザーク帝国海軍大将である。
……いやもう名前からして、やべぇよな。うん、自覚してる。イケおじ素敵~なんて寄って来ても、一夜のなんとかだもんなあ……という俺の愚痴は置いといてだな。
皇帝陛下の生き別れの妹君を探せっていう、砂漠に落とした指輪を探すぐらいややこしい任務を、請け負っちまったい。
というのも俺は元々州軍総大将でな。帝国のあらゆる州軍を統括してたから、地理には明るい。前海軍大将が色々やらかして解任、ついでに帝国内も落ち着いたから、州軍解体して陸軍と海軍体制に組織再編したわけよ。
手がかりは、名前と髪と目の色、ほんで腕輪。
「そんだけえーーーーー!?」
皇城の玉座の間で、叫んだよね、俺。
「そうだ。見つけろ」
「陛下ぁ」
「なんだ。見つけられたその時は、褒美はいくらでも取らすぞ」
「……分かりましたよ」
ぶっちゃけ独身で海軍大将って、忙しすぎて金使う暇ねえのよ? 褒美て言われてもなあ。
「あ」
分かった、寂しいんだな!
隣国の公爵令嬢に振られたばっかりだもんなー、陛下。
「おいヨナターン。今ろくでもないこと、考えているだろう?」
「うえ!」
「……その首、胴体から離してやろうか?」
「御免こうむります! 探してきます!」
この人、マジでやるからな。
逃げよ、逃げよー。
で、探すならやっぱ原点回帰じゃね? と思ってやって来ましたメレランド。
船旅しんど!
ほんで、ちっさ!
この小さな王国は心底どうでも良いが、その奥の兄国であるアルソスからは、希少な大きさの魔石が取れる。それを融通してもらうためにも、メレランドのきな臭い動きをどうにかして欲しい、という依頼にも応えるべく、上陸した。
妹君の母親が、この国のビゼー伯爵家出身だからだ。
側妃って言っても名ばかりだけどな。帝国皇帝のもとには、各国各地域から女どもが大量に送り込まれるわけで。
その中で、皇帝の寝所に呼ばれて、さらに子が出来たら側妃って扱いなだけ。そういう意味では、美人だったんだろうなあ。
ちなみに現皇帝陛下は、女性全員、顔も見ずに送り返す。
女性はダメなのかって噂は、隣国の公爵令嬢に失恋したって噂でかき消された(本人は不服そう)。
「赤髪の年頃の女の子? そりゃ目立つねえ。おいらは知らないなあ」
「そっかあ~」
「人探しなら、騎士団の屯所行ってみなよ」
「おう。ありがとな、おっちゃん」
善良な漁師たちは親切で助かった。
だが、そんなビゼー領に入る前に、念のため隣のセバーグ領を訪れたら……活気がなくて驚いた。
港を行きかう船は皆無。
しかも、時々出港したり帰港したりしている船は、漁船ではない。
「何が起きている?」
これは本腰を入れて、部下に調査を指示しなければなるまい、と思った。
ビゼー領は、セバーグ領よりまだマシだった。多少は活気があり、漁も行われている。だが、
「負けっちまったよ」
「最近だめだなあ」
という愚痴が、時折耳に入る。
「そうか? 俺は、コレだぜ」
ある漁師が、人差し指の腹と親指の腹を何度かたんたん、とくっつける仕草をすると
「羨ましいねえ」
「っかー! 次こそ!」
と反応があるのを見て、何か実入りの良いことがあるのか? と推測した。
屯所に行く前に、うろうろと聞き込みをしていると――港町にそぐわない、やたら身なりの良い男が目に入った。
銀髪は丁寧に整えられていて、淡く光を発するようだし、何よりその顔立ちは、女性と見まがうような美麗さだった。
翠がかった碧眼に憂う表情。だが所作に隙がない。
武を嗜む者だ、ということはすぐに分かった。しかも、良い腕に違いない。
――何者だ?
相手も同じ考えだったようで、疑いの眼差しでこちらに寄って来た。
「ぶしつけだが、貴殿はこの国の者ではないな。どなただろうか」
「はは、本当にぶしつけだな」
「失礼した。ここは目立つ、あちらで話をしたい」
「良いよ」
案内されたのは、小さな休み処。
今は漁師たちの利用時間とずれているようで、人影がない。
「主人、すまないが」
「はいはい。買い物にでも行きますよ。ご自由にどうぞ」
「……ありがとう」
なるほど、人払いもできる身分。となると。
「ふむ。ビゼーの家の誰か、か?」
「!」
「あ、思い出した。ロランとか言う、やたら顔の綺麗な男がいると聞いていたが」
殺気が溢れた。
「あー、あたっちまったか! まてまて。危害を加えるつもりはない」
「何者か」
「うん。俺はヨナターンという」
「っ! 帝国の海軍大将と同じ名だ」
「おお。話が早いな」
「なにを……」
「人探し、って言ったら分かるか?」
「!! キーラか!」
「っ知っているのか!?」
「……僕も探しているんだ……」
「そうか」
それからロランは、色々教えてくれた。
帝国にそんな話していいのか? と言ったら
「僕はこの国に未練がないんだ」
と寂しそうに笑う。
なぜ? と聞いたら
「僕が男しか愛せないと言ったら、勘当されたんだ。キーラを探したら、どこか流浪の旅でもしようかと」
などとさらに寂しそうに言うから、助けたくなった。
「そんなことでか。なら、帝国に来るといい」
「は?」
「最近陛下がな、とある部下のために、同性同士でも結婚できるように、法を変えようとしていてだな」
「はあ!?」
「あ! そういやロランの顔ってそいつの……ま、いいや。考えとけ。な」
銀狐が、狐につままれたような顔をしていたのがおかしくて、ゲラゲラ笑ったら、すんげえ怒られた。
そうして二人で行動しているうちに、ロランが顔に似合わず激情家で、一本気で男らしく、賢く腕も立つ良い奴だと分かった。
本気で部下にしようと思った。まだ言わないけど。
そうして、最後の希望とばかりに、ビゼー領でも最も小さな港町であるリマニにやってきた。
「赤い髪の女の子って、キーラかい? 良い子だよ!」
「「!!」」
食堂で働いていると聞き、逸る気持ちを抑えて向かったら――
元気で快活。鮮やかな赤い髪は陛下と同じ色。しかも瞳の色はロランと同じ色。名前はキーラ。
「ロランッ」
「僕も、間違いないと思うよ、ヨナ」
さてどうする、どう説明する? と食堂のうまい飯を食いながら思っていたら。
「泥棒!」
「……は?」
「あんたのことよ! 泥棒」
――はああああああああ!? おま、しかもその腕輪は!!
ロランと顔を見合わせた。
これは本当に想定外の出来事で、どう対処すべきか、迷っているうちに警備隊が来てしまった。
ロランが
「僕が」
と頷くので、こちらの『王国騎士団副団長権限』に託すことにし、俺は。
「んふ! この腕輪はぁ~」
キーラが連れていかれて、勝利に酔いしれるバカ娼婦を殺したい気持ちを、必死で抑える。
ロランが席を立って、近づいた。
「渡してもらおう」
「は!?」
「私は王国騎士団副団長、ロラン・ビゼーです。たまたまこちらの現場に居合わせましたが、そちらの言い分。検証するためにも証拠としてその腕輪、預かります」
「ちょ、副団長がここに!? そんなわけない! あなたが本物っていう証拠は!」
イラッとするロラン、かなりおもしれえ。
「ほう? 領主でもあるビゼー家の嫡男を疑うとでも?」
「そそそソフィちゃん、ほほほ本物だよ!」
「えっ」
「おいら見たことある! 屯所で!」
食堂に騎士団員も来ていたのか。話が早い。つまらんな。
「さあ。渡せ。渡さぬなら、貴様も泥棒、だな?」
「ちちち、ちが!」
心底悔しそうに唇をかみしめる女に、嫌悪感しかわかない。
自分の物にしようとしたのに、計算が狂った、などと思っているのだろう。
「マスター。しっかり取り調べさせて頂く」
ロランが言うと、食堂の店主が泣きそうな顔で、
「良い子なんです。なにかの、間違いですから。お願いします」
深々と頭を下げた。
「私も、そう思いますよ」
ロランと、屯所へと向かう。
「会えたなあ」
「……助けなくちゃ」
「焦るな。しっかり手順を踏んでやらにゃ」
「そうだ、ね」
「腕輪を本国へ送らにゃならん」
「そうだったね」
「どうするかなあ」
「僕に、任せてもらえないか?」
「ふむ。この国のことだもんな」
「僕のせいで八年も辛い思いをさせたんだ。少しでも」
「お前のせいじゃない。責めるな」
俺は、この、情の深い男を助けてやりたいなあ。
――やっぱり、強引に連れて帰るしかねえな。こいつも、陛下の妹君も。そのためには……
◇ ◇ ◇
「陛下、見つかりましたよ。本物かどうか、お確かめください」
玉座の間で腕輪を渡すと、赤髪の『血塗られた皇帝』が珍しく息を呑んだ。
「……ご苦労だった。確かに、本物である。この銘は、余が特別に彫らせたものだ」
「ふう。なら、また行って連れて帰ってきます。ま、本人が良いと言ったらですけど」
「そうだな。無事と分かっただけでも良い。だが、一目でも会いたいのだ」
「御意。ではその腕輪は、直接お渡しになられたら良いかと」
「うむ。任せる」
「あ、あと褒美ですが」
「……なんだ」
「連れ帰りたい人間がいましてね」
「褒美だ。お前の好きにしろ」
「はっ」
さっすが陛下。男前! だから崇拝されるんだなあ。
うっし、あとは俺が頑張るだけってことだな。待ってろよ、銀狐!
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