【本編完結】ワケあり事務官?は、堅物騎士団長に徹底的に溺愛されている

卯崎瑛珠

文字の大きさ
53 / 75
第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!

51

しおりを挟む


「ヨナさん、そういえば部下の皆さんは……」
「勝手に宿屋に入っているから心配するな」

 海軍大将というからには、ぞろぞろと部下を引き連れて動きそうなのに? と聞いたら
「単独行動が多いから、皆それに慣れている」
 だって。ちなみに前の海軍大将はぞろぞろ、ぞろぞろ、どこ行くにも大人数で鬱陶しかったんだとか。

 そして、いざタウンハウスに来た時の、メイドのアメリの驚きっぷりは申し訳なかった。
「てて帝国! かかかいぐん、たたたたいしょう!?」
「気にするな。漁師と思ってくれていい」
「「いやいや」」
 ヤンと二人ですぐつっこんじゃった。
 でもヤンが気安く接しているから、アメリも安心したみたい。

 ロランも、ヨナターンがいる間はタウンハウスにいると言ってくれた。
 
「僕ほら、どうせ一人暮らしだし」
「え? なら最初からみんなで住めば良かったですね」
「うっ……いやそれはその……」
 なぜかロランがちらりとレナートを見て、レナートが
「遠慮したのだろう」
 だって。
「そうですか……今日から一緒で嬉しいです!」
「うん。ありがとうね」

 ヤンが買い物に付き添ってくれて、アメリと一緒に夕食を作って、順番にお風呂に入って――
 私、こんなにたくさんの人と一緒に生活したのって初めてだ。賑やかで、楽しいね!

 キッチンで、そんな余韻を楽しみながら、いつも通り一人でナイトティーを用意していたら、
「キーラ」
 レナートがやってきた。
 
「はい?」
「その……」
「今日のナイトティーは、遅摘みっていって、まろやかなお味なんですって」
「……」
「なにか?」

 レナートは眉尻を下げて、何か言うのを躊躇っている。

「キーラ。今夜からだが」

 あ、これ、断られるやつだ。
 
「一緒はもう駄目なんですか? なぜ?」

 反射的に言っちゃった。
 私の悪いところだよね。
 
「キーラは、皇帝陛下の妹君なのだ」
「私自身は、なんにも変わってないのに!」
「聞いてくれ。もし誰かに知られたら、キーラの外聞が悪くなってしまう。それは……将来のために良くない」
「っ! なんですかそれ!」
「キーラ、頼むから話を」
 
 
 知らない! 関係ない!
 私は、あなたと!
 ――でも、駄目なのね?

 
「もういいです。ひとりで寝ますから」
「まっ!」
「団長なんて、大っ嫌いっ!」

 
 顔も見ず、逃げるようにキッチンを出る。腰が、作業台にあたってガシャン! と茶器が鳴った。
 片づけなくて、ごめんなさい。明日、ちゃんと片づけるから。
 ごめんなさい。レナート。八つ当たり。ごめんなさい。

 私だって、ただ『皇帝の妹』ってだけで迎えに来てくれるだなんて、思っていないよ。そんなバカじゃない。
『利用価値』がないといけないことぐらい、分かってる。そのためには、でいなくちゃってことなんだよね?
 ヨナターンにも、リマニで聞かれたものね。今までに恋人はいたか? って。
 ごめんなさい……ちゃんと、分かっているから。


 一人で入るベッドのシーツは、びっくりするぐらい冷たくて。
 手を伸ばしても、あの安心する温もりがなくて。

 一晩中、全然、寝られなかった。



 ◇ ◇ ◇
 


「うーわあ。なかなか酷い顔だね」

 ダイニングで優雅にお茶を飲んでいる、麗しの銀狐の存在自体が、まぶしい。
 銀髪に朝日が反射して、目に刺さる。痛い。
 
「うっ、おはようございます、ロラン様」
「おはよう。もしかしてレナートと寝られなかった?」
「……」
「ほんとクソ真面目だよね。レナートも酷い顔で出かけたよ」
「え」
「あのね。おこちゃまキーラちゃん」
「ちょ!」
「苦しいのが自分だけって、思わない方がいいよ」
「……わかってます」
「そう? 二人の問題なんだからね」
「ふたりの?」

 ロランは、優雅にティーカップを傾ける。

「そうだよ。あの堅物で、自分の欲とか何にも表に出さない男の気持ちもね。問題だよね」
「!」

 私、レナートの気持ち、考えてなかった。話、一方的に遮っちゃった。
 そんなんじゃ、とても好きになってもらえないよね……。バカだな。

「ちゃんと話しなよ」
「……むり。こわい」
「ええ? いつも喧嘩売りまくりなのに?」
「売ってません!」
「んじゃあ、レナートに何言ったのさ」

 私は躊躇った後に、大っ嫌い、と八つ当たりしたことを説明した。

「うっげ!」
「あ、ヤンさん」
「おはよっす。まさかそれ、団長に言った?」

 こくん。

「まじかー」
「はは、一言で見事にレナートの致命傷。さすが血塗られた皇帝の妹だね」
「血塗られた皇帝?」

 何その通り名みたいなの! すっごい怖いんだけど!

「皇帝位を簒奪するために、自身の血のつながった兄弟五人を全員斬首したんだよ。帝国から離脱しようとした小国の有力者ども、もろとも、ね」

 すらすら言うロランに、ヤンがわたわたと慌てる。
 
「もー、それ、会う前から印象最悪になるやつじゃないすかー」
「だって事実だし」

 血塗られた兄! 恐ろしすぎる!
 
「あの、ブルザーク帝国って、どのぐらい広いんでしょう?」
 そういえば、私、帝国のこと何にも知らないって気づいた。
 
「そっか、記憶が……なら、教えるのに適した先輩が来てるんで、あとで紹介するっすよ」
 ヤンが、にっこり笑う。
「ほんと?」
「ええ。帰国するしないは、色々知ってからの方がって、自分も思うんで」
「ありがと、ヤンさん!」

 自分の国のことを勉強できるのは、単純に嬉しい!
 
「レナートと、先に話した方が良いと思うんだけどねー」

 ってロランがつぶやいたけれど、私の耳には入っていなかった。
 
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜

恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。 だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。 自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。 しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で…… ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています ※完結まで毎日投稿します

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...