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第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!
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しおりを挟む濃い青色は、毎日眺める海の色で、本当は嫌いだった。
でも、今は好きだよ。
仲直りしたいの。また、見せて?
ちょっと困った顔で、でも嬉しそうに、見つめて欲しいの。
目を開けて?
おねがい……私には、シーツを握りしめて祈るしか、できない。
◇ ◇ ◇
ボジェクからの緊急通信を受け取って、文字通り団長室から飛び出したヤンとオリヴェルとの三人で、王宮へ走った。
私は、当然二人の足に追いつけなかったから、後から。
ようやく客室に着いた時には、レナートは毒の影響で意識を失っていた。
「酸毒だな! ただちに洗い流すぞ。ヤン!」
「は!」
「触らないように服を破れ!」
「ういっす!」
そんなベッドへの視界を大きな身体で遮るのは
「大丈夫ですよ殿下。この程度であれば、ポーションで治ります」
少将のボジェクだ。
ロランとアルソスの騎士団長は、レナートを運んだ時の毒が付いた衣服を、着替えに行っているそうだ。
アルソス国王とヨナターンは、メレランド国王――左手を毒で失い、気が狂ってしまっているそうだが――を監禁すべく動いているのだとか。
「ほ、ほん、ほんと」
「殿下。オリヴェルは、帝国軍でも大変優秀でしてね。軍医の資格を持っています。大丈夫です」
動揺する私に、ボジェクは嫌な顔ひとつせず、根気強く説明してくれるのがありがたい。
「ぐんい?」
「はい。病気や怪我を治せる者という意味です」
「……っ」
「オリヴェルは陸軍所属ですが、万が一に備えて連れてきたのです。ご安心を。さあ、外で待っていましょう」
「はい……」
◇ ◇ ◇
それから丸一日が経った。
日が落ちるという時、ようやく――
「う、……」
ぴくり、と瞼が動いたので覗きこむと
「キー、ラ?」
濃い青色。
見たかった、その色だ。
「よかった……!」
王宮の客室で眠り続けたレナート。
皮膚のただれは多少残っているものの、オリヴェルの適切な処置が早かったおかげで、軽傷で済んだ。
すぐに洗い流してポーションを飲ませたので、怪我自体は軽い。が、酸の毒は吸い込むと肺にも影響が出るとかで、しばらく絶対安静だと言っていた。
「よかったああああ」
「心配、かけ、……」
言いながら上体を起こすのを
「いやいや、まだ絶対安静だって、オリヴェルさんが!」
私の背後で、呆れ声のヤンが止めようとしたが、無駄に終わり――レナートは起き上がってしまった。
「だい、じょぶ、だ」
微笑むレナートに巻かれた包帯が、痛々しい。特に右の顔半分は目も含めてぐるぐる巻きだ。
オリヴェルは、しばらくは包帯を変えつつ軟膏を塗りましょう、薬草を買って作ります、と申し出てくれた。ポーションは数が限られているので、なるべく保持しておきたいのですよ、と物騒なことも言いつつ、だ。
「十分大怪我すよ。右頬と、右腕。特に腕はひきつれるんで。治るまでは動かさず安静に」
「助かった。オリヴェル殿に、礼を言いたい」
「ええ、後で顔を見に来ると思います」
「ありがとう。ええと、あれからどうなったのか……」
「ばか!」
思わず、叫んだ。
レナートがベッドの上で、ビクッと身体を揺らした。
「団長の、ばか!!」
「キーラ……」
「国とか、任務とかより! 自分の体!」
肩をどん、と軽く押したら、あっけなく倒れた。
「ほら! まだ全然だいじょぶじゃない!」
呆気に取られるレナートに
「あー、のー。あのー、余計なことかもですけどね。キーラが、一日ずっと寝ずの看病してましたよ。包帯変えたり、熱出たんで、汗ぬぐったり。ね」
とヤンが苦笑しつつ、伝えてくれる。そして、
「自分ちょっと、あー、用事! あるんで。出てきます! ね!」
にひ、と笑って部屋からそそくさと出ていく。
バタリ、と扉が閉じられて、静寂がやってきた。
「キーラ……すまない」
倒れて、空中を見たままのレナートが言う。
――目が、合わない。
「だめ!」
「すまない」
「ゆるさない!」
「はあ……大嫌い、なんだろう?」
レナートが、大きな溜息とともに、吐き出した。
「嫌いな者にまで、心を割かなくてもいい。看病させて、すまなかったな。誰か代わりの者を」
違う。違うのに!
そんな冷たい声を出さないで。
悲しい。私のせいだね。ばかなのは私だ。
「う」
「う?」
「ううううう」
私が突然号泣したから、がばり! とレナートが起き上がってしまった。
あ、すっごい痛そう!
ごめんなさい……でも、止められない。
「キーラ、どうし」
「あんなのお、ただの喧嘩だよお……八つ当たりだよおおおおお」
「!」
「ごべんださい」
「キーラ!」
「ごべ、ごべんださいいあやまるがらあああああ」
「わかった。わかったから、泣かないでくれ」
「うううう、ゆ、ゆるす?」
「はは。……ぐ、はあ。ゆるさないって、言ったのはキーラだろう?」
――そうでした! 私、支離滅裂! 意味不明!
「ははは。はは……いたた」
「だんちょ?」
「ったく。笑うと頬が痛いんだぞ」
「だんちょーーーーー!」
「いたた、今は、騎士服を着ていないぞ」
「れなーと?」
「ああ」
「うああああああん! ぶじで、よかったよおおおおお」
「ありがとう、キーラ」
微笑む、優しい青色。
私が見たかった色。
ようやく落ち着いて、涙をハンカチで拭いて。
ホッとしたら疲れちゃった、って呟いたら、
「寝てないのだろう? タウンハウスでゆっくり休んだら良い」
って言われたけど、看病です! て無理矢理ベッドに入り込んでみた。
ダメだとか、出なさいとか言われても居座ったら、痛くて追い出せない、って根負け。私の勝ち! だから。
「もうレナート様と一緒じゃないと眠れないの。一緒じゃなかったら、私、病気になりますよ」
て、思い切って言ったんだ。
そしたら、
「うぐ。ヨナターン殿に、事情を説明してみよう」
だって! やったね!
「はあ……深い意味などない……勘違いしないぞ……いたた、いたたた」
とかなんとか、長いひとりごとをレナートが言っていた気がしたけど――私は大丈夫な方の手を握って、温かさを感じた瞬間、安心したせいで眠りに落ちてしまっていた。
あとから部屋に戻ってきたヤンが、熟睡している私たちを見て
「あーこりゃ、しゃあない。斬首免除案件っすねー」
と笑っていたらしい。
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お読み頂き、ありがとうございました。
もちろんヤンは、扉の外で護衛を続けておりました。
「こう見えて、自分、空気読めるんで!」
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