70 / 75
第四章 別離?? 決意!? 溺愛!!
68
しおりを挟む濃い青が優しく私を見ている。
ずっと、ずっと、会いたかった。
一日も忘れられなくて、後悔して、泣いて。
仕事で忙しくして、疲れ果てて寝るのが当たり前になっていた。
貴方のぬくもりがないと、寝られないんだって、気づいて。
辛かった。――
「ねえ。ほんとに? レナートも、好き?」
ソファで抱きしめられたまま見上げると、レナートが微笑んでいた。
「ああ。キーラが好きだ。今はまだ地位も確定していない身だが、いずれ皇帝陛下にきちんと認めて頂きたいと思っている」
「認めるって?」
「キーラとの結婚」
「けっ!」
「……斬首されないように、頑張るぞ」
「ざん! もおおおお」
「はは」
レナートの腕の中が幸せすぎて、ちょっと立てない。
「疲れたか?」
「うん、ちょっと色々聞いちゃったから――でも嬉しい、レナート」
「そうか」
「ふふ。一気に家族増えた。ラース兄様と、ロランでしょ、レナートまで!」
一年前までは、想像もしていなかった。幸せ。
「……もっと増えるかもしれないぞ」
「へ?」
あ、いやらしい顔してる! そんな顔もするのね? かっこいいって思っちゃったら負けだね!
ん? こら、なんか色々触って……んっ、あっ、そんなとこ……もう! こら! めっ!
「だめ!」
「だめか」
「斬首されちゃうよ?」
「そうだった……しゃれにならんな。むう」
しゅんとしてから拗ねるレナートも、可愛い。
「キスだけにしよう? ね?」
「そうだな。キスだけだな」
レナートが優しい顔で髪を撫でてくれたから、私は目を閉じた。
――ロランに扉をノックされるまで、ずっとキスしていたのは、ふたりだけの秘密。
◇ ◇ ◇
それから、再び事務官として忙しい日々を送っていた。
帝国の歴史や地理、政治、経済を学びながら、難しい申請や調整ごとを考えるのはとても疲れるけれど、充実している。
レナートは、陸軍少佐になって子爵位を得た。元々が男爵だからとはいえ、少佐ともなると一個師団も任されるらしく、異例の待遇(つまりは師団長でもある)。反発もあるのではと思いきや「あのボジェクと生身で戦った男」の肩書はものすごいみたいで、誰にも文句を言われなかったらしい。どんだけなのよボジェク? わかるけどね?
この国では大佐になると伯爵位をもらえるらしいので、それに向けて張り切っているし、私が来たことで皇城に『近衛』も配備すべきだ、と元老院(偉い人たち)からの声もあって――なんとレナートが近衛師団長になった。
これにはさすがに「外からの人間が!」と反対も多かったけれど、皇帝が
「我が妹の将来の伴侶を、そのように排除したがる人間がいるとはな。名を名乗れ?」
て言ったら黙ったんだって。
それを聞いたレナートは
「すでに認められ……? いや、油断しては斬首だ。気を引き締めよう」
ってぶつぶつ言っていたそうな。
で、その皇帝はと言うと。
「ラース兄様、ほんとはどう思っているの?」
「なにがだ」
城内にある皇帝の私室に入れるのは、今のところサシャと私だけ。
つまり、内緒話もここなら安心。
私は、ラドスラフお気に入りと評判の茶葉を蒸らしながら、話しかける。
その後ろで、サシャがくすくす笑っていて、その手には、銀色の指輪が光っている。
「レナートのこと」
「……堅物だな」
「ぶ」
「余と話す時ですら、態度が変わらぬのだぞ」
「あー」
「あれはなかなかの大物だな」
「へへ」
「あとは……助かる」
「助かる?」
「元老院の爺どもはな。早く世継ぎをと口やかましくてな。全員斬首にしてやろうと思っていたところだ」
――っげえ!
「キーラが産めばいいだろう。皇帝直系の血だぞと言ったら、黙った」
「はあ!?」
「だから、頼んだぞ」
「なにが!?」
「あと二年ぐらいだな」
「だから、なにが!?」
にやり皇帝、怖すぎて背筋が凍るんですけど!
「まさか……私を必死で探してたのって、それが理由……」
急にそう落ち込んだ私を、ラドスラフは呆れた顔で見てから
「探した理由が欲しいのか?」
と聞いた。
「だって、理由もないのに、こんなに良くはしないでしょう? 血を残すためだったら、分かる」
「なるほどな。ふむ……違うぞ」
「え?」
「義務でレナートと添い遂げるなら、やめておけ。別れそうにないなら、斬首してやる」
――ぎょわ! レナートがあっ! 一瞬で斬首!
「ちがう!」
「ならば、なぜ好きなのだ」
「そんな、理由なんてないよ。レナートだからだもん。……あ」
ラドスラフは、これ以上ない優しい顔になった。
「それと同じだぞ、キーラ。覚えていないと思うが、あの殺伐とした後宮で、余はキーラからたくさんのものをもらったのだ。兄さまと呼ばれて。大好きだと言われて。同じものを返したいと思ったのだ。それを、否定してくれるなよ」
「ラース兄様……」
「余は、キーラにこそ、幸せになってもらいたいのだ」
そうか、理由なんていらないんだ。
「そのままでいろ」
「はい」
私は、私のままで。
愛してもらえるんだね……嬉しい!
後ろでサシャが「ぼぼぼ僕にもぉ、そそそのぐらいい、優しくしてえええ」って泣いてたけど、見なかったことにしよう。うん。
1
あなたにおすすめの小説
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる