9 / 22
第二話 天使の囁きに、負けそう
9. 初めての抵抗
しおりを挟む
仕事を終えた私が、いつものようになかなか落ちないパソコンの電源が消えるのを待っていると、鳴神さんが話しかけてきた。
「なあ、天沢。明日は休みだろ。予定あるか?」
言われて、今日は金曜日だと思い出した、午後七時。
営業課は飲みに行く人間がほとんどで、忙しなく退勤して行った。
舞生くんは? と思いながらフロアに目をやると、鳴神さんがフッと息を漏らす。
「奴ら、日曜は休まないとならないからな。用事があるって、慌てて帰ったぞ」
「なるほど。私は特に予定ありませんが、なんでしょうか」
「そうか、ならちょっと行きたい場所がある。悪いが、付き合え」
「どこへ?」
「買い物だ」
死神の買い物なんて、全く想像がつかない。
鳴神さんと肩を並べてオフィスビルから外へ出て、最寄駅へと向かう。横を歩く鳴神さんを見上げると、目線に気づいた鳴神さんは、どうした? と目だけで尋ねてくる。
私には、忘れてはならないことがあった。
「鳴神さん。今日、給料日なので。お金、返します。コンビニ寄っていいですか」
「分かった」
最寄駅に近づくと、途端に色々な店が増えてくる。オフィス街で働く人々目当ての、コンビニやジム、飲み屋やレストランが主だ。
道すがらにあったコンビニのATMで、お金を下ろす。残高は見なかったことにして、吐き出された紙幣を素早く財布に入れる。ATMを使うだけでは罪悪感があるので、申し訳程度に小さなミントタブレットを買ってから、店から出る。
鳴神さんは、外で待ってくれていた。
私の姿を認めると、フッと目線を道の向こうへ投げる。
「なあ。あそこの路地を入ったところにある、焼き鳥屋。うまいらしい。その一万で、食いに行かないか」
「……いいんですか?」
「俺が金持ってても、使い道ないぞ。美味い飯食う方がいいだろう」
「味、分かるんです?」
「さあ、どうだと思う?」
「……うーん?」
鳴神さんは、答えを言わずに笑うだけだ。
繁華街で行き交う人々は皆、浮き足だっていて、声も仕草も大きい。
仕事帰りの会社員たち、国籍不明のグループ、成人しているか微妙な学生たち。
いつもは足早に避けていくはずの人混みに、今日の私は自ら紛れに行っている。不思議な気分だ。
「しかし、本当に返すとは。律儀なやつだな」
「普通ですよ」
ネオンと夜闇の間に溶け込んでいるかのような鳴神さんは、私の顔をじっと見つめてからまた前を向く。
「うん、また一日延びた」
「早死フラグ? 一日単位な感じなんですか」
「まあな」
「それはなんていうか。忍耐強いですね」
「それ、褒めてるのか?」
「どうでしょう」
――明日の約束があるから、まだ死んじゃいけない。
心の中で、そんな言い訳なんかしてしまった自分に戸惑い、照れる。
死神に悟られたくないなと思っていたら、鼻先に美味しそうな炭火焼きとタレの匂いが漂ってきて、お腹がギュルルと鳴った。
「うわー。いい匂い。匂いだけでもおかずにして、ご飯食べられそう」
「……やっぱり俺が払うか」
「あああ嘘です。ダメです。ちゃんと注文してください」
「天沢も、ちゃんと食えよ」
「はい」
金曜日の夜、誰かとご飯を食べるだなんて。
相手がたとえ死神でも、楽しいと思ってしまった。
+++
生ビールにつくね、鶏皮は塩で。ネギマの『マ』はなんだ? 砂肝おかわり。合間に梅きゅうり――
「ふが! あ、やば。準備しないと」
あまりにも美味しすぎて、昨日の焼き鳥を夢にまで見てしまった、土曜日の朝。
二人でお会計は九千九百九十円。もちろん途中から計算しながら食べた、一万円限界チャレンジ。
悠人に貢いだのと、金額は同じ。
鳴神さんの言った通り、ものすごく美味しかった。お腹が満足した一方で、心はますます虚しくなっていた。私は今まで、なんて無駄なことをしてきたのだろうか。
時計は、朝九時を回っていた。
九時半に迎えに行く、とアパートの玄関前で別れた隣人でもある鳴神さんは、結局目的地を教えてくれていない。
もそもそとベッドから降りて、歯を磨きながら適当に髪をブラシでとかす。顔を洗い、申し訳程度の化粧水をつける。Tシャツの上に襟のよれたカーディガンを羽織り、何年履いているか数えるのも飽きたデニムを履く。
三足どころか五足で千円の靴下は、黄色に変なさくらんぼ模様。黒いキャンバススニーカーは、某有名ブランドとよく似たデザインだけれど、雑貨屋さんで千円也。
何をどう頑張っても、私にこれ以上のファッションは無理だ。経済的にも、センス的にも。
「こんなんで、一緒に出かけていいのかな」
姿見の前で、途方に暮れる。
死神だろうと、並んで歩いてご飯を食べて、人間として認識されている存在だ。小汚いのと一緒にいることで、赤の他人にも悪く思われたらと、遠慮してしまう。
ピンポン。
時間ぴったりにインターホンが鳴ったので、ドアスコープを確認すらせず、ドアを開けた。
「よう」
立っていたのは、鳴神さんではなく――悠人だった。昨日のスーツ姿のままで、無精髭も生えている。
「は?」
「あー、腹減った。朝飯なんか作って」
言いながら私を押しのけるようにして、悠人は勝手に靴を脱ぎ、部屋に上がってきた。
「ちょっと!」
申し訳程度の広さの玄関から、六畳一間の狭い部屋までたった五歩。廊下と兼ねた小さなキッチンで、悠人は私のツードア冷蔵庫を勝手に開け、水のペットボトルを取り出している。
約束どころか、連絡すら来ていない。
こんな横暴さも、私に心を許してくれているからだ、だなんて、今までなら思っていた。
「迷惑」
でも今の私の口をついて出てきたのは、文句だ。
悠人は驚いて目を見開いた後、表情を取り繕う。
「いーじゃん。オールでカラオケとかマジ久しぶりすぎてすげー疲れて、そいや六花の家近いと思ってさ」
あまりにも身勝手すぎて言葉が出ない。
けど、断らないと絶対に居座る。
「これから出かけるの。帰って」
「出かける? そんなん明日でいいだろ」
「良くない。約束してるから」
「んな嘘つくなよ。風呂入る」
私の言うことをちっとも聞かず、悠人は緩んでいたネクタイをほどき始める。このままでは、なし崩しに面倒を見させられる。お風呂入って、ご飯食べて、寝て。その間に着てきた服を洗濯させ、気が済んだら帰る。あとに残るのは脱ぎ捨てたスウェットと、散らかした食べかすだ。
「今すぐ、帰って!」
悠人は、私が強い口調で言っても、鼻で笑いながら探りを入れてくる。
「なに? 機嫌悪い感じ? 怖いよ~りっか~。機嫌直せよ~?」
悠人は気崩れたスーツに、ボサボサ頭と無精髭で迫ってくる。
酒臭いし、汗臭いし、口も臭い。体臭だけでなく、色々なものがこびりついた匂いがする。
「臭い」
「えー?」
懐柔路線に切り替えた悠人の猫なで声は、私の神経を逆撫でする。猫なら可愛いけれど、立派な成人男性の甘えには嫌悪しか湧かない。せめて彼氏なら、可愛いと思えたかもしれないが。
「彼氏でもないくせに」
「……は?」
衝動的に吐き出した私は、悠人の反応を見て初めて気づいた。
恋人ではなかったと否定されたのは、自ら身を投げる前、悠人からだ。
けれどこの現実では、違う。
思い切ったことをしてしまった。心臓がバクバクと波打って、息苦しい。
悠人は何かを言おうとしたが、ぽかんと大きな口を開けたまま、私の背後へ目線を向けた。
何事かと背後にある玄関を振り向く私の目に入ったのは、開け放たれた扉と、立っている鳴神さん。
給湯室の時と同じように気配を感じなかったけれど、黒いシルエットには迫力がある。
「ったく。家にも来るのか」
心底呆れたような声を出されて、ようやく私は息を継げる。
「っごめんなさい、鳴神さん。断っても出て行ってくれなくて」
「は? 約束ってこいつとかよ!?」
この私の言葉に焦ったのか、悠人が私の横から身を乗り出し、鳴神さんの顔を指さした。
あまりにも失礼すぎる言動に、私の頭はますます冷えていく。
一体こいつのどこが好きだったのだろうか。過去の私、脳みそお花畑すぎる、と頭を抱えたくなった。
「そうだ。天沢には俺との約束がある。分かったら、さっさと帰れ」
鳴神さんがキッパリと言い切ると、悠人は宙に浮いた指を泳がせたまま勢いを失った。
「嘘じゃなかったでしょ。はい、帰って」
「……ちっ」
「「あ」」
舌打ちは、死神が冥土の使いっ走りを呼ぶ合図だ、と以前鳴神さんが言っていった。
悠人が玄関から出ると、どこからかカラスがギャース! ばさばさっ! と飛んできたので、慌てて鳴神さんの手首を掴んで部屋へ引き入れ、扉をバタンと閉める。
「いでっ!」
薄いドアの向こう側で、おそらくカラスの嘴に突かれたであろう悠人の、盛大な悲鳴を聞いた私と鳴神さんは――顔を見合わせて笑った。
「なあ、天沢。明日は休みだろ。予定あるか?」
言われて、今日は金曜日だと思い出した、午後七時。
営業課は飲みに行く人間がほとんどで、忙しなく退勤して行った。
舞生くんは? と思いながらフロアに目をやると、鳴神さんがフッと息を漏らす。
「奴ら、日曜は休まないとならないからな。用事があるって、慌てて帰ったぞ」
「なるほど。私は特に予定ありませんが、なんでしょうか」
「そうか、ならちょっと行きたい場所がある。悪いが、付き合え」
「どこへ?」
「買い物だ」
死神の買い物なんて、全く想像がつかない。
鳴神さんと肩を並べてオフィスビルから外へ出て、最寄駅へと向かう。横を歩く鳴神さんを見上げると、目線に気づいた鳴神さんは、どうした? と目だけで尋ねてくる。
私には、忘れてはならないことがあった。
「鳴神さん。今日、給料日なので。お金、返します。コンビニ寄っていいですか」
「分かった」
最寄駅に近づくと、途端に色々な店が増えてくる。オフィス街で働く人々目当ての、コンビニやジム、飲み屋やレストランが主だ。
道すがらにあったコンビニのATMで、お金を下ろす。残高は見なかったことにして、吐き出された紙幣を素早く財布に入れる。ATMを使うだけでは罪悪感があるので、申し訳程度に小さなミントタブレットを買ってから、店から出る。
鳴神さんは、外で待ってくれていた。
私の姿を認めると、フッと目線を道の向こうへ投げる。
「なあ。あそこの路地を入ったところにある、焼き鳥屋。うまいらしい。その一万で、食いに行かないか」
「……いいんですか?」
「俺が金持ってても、使い道ないぞ。美味い飯食う方がいいだろう」
「味、分かるんです?」
「さあ、どうだと思う?」
「……うーん?」
鳴神さんは、答えを言わずに笑うだけだ。
繁華街で行き交う人々は皆、浮き足だっていて、声も仕草も大きい。
仕事帰りの会社員たち、国籍不明のグループ、成人しているか微妙な学生たち。
いつもは足早に避けていくはずの人混みに、今日の私は自ら紛れに行っている。不思議な気分だ。
「しかし、本当に返すとは。律儀なやつだな」
「普通ですよ」
ネオンと夜闇の間に溶け込んでいるかのような鳴神さんは、私の顔をじっと見つめてからまた前を向く。
「うん、また一日延びた」
「早死フラグ? 一日単位な感じなんですか」
「まあな」
「それはなんていうか。忍耐強いですね」
「それ、褒めてるのか?」
「どうでしょう」
――明日の約束があるから、まだ死んじゃいけない。
心の中で、そんな言い訳なんかしてしまった自分に戸惑い、照れる。
死神に悟られたくないなと思っていたら、鼻先に美味しそうな炭火焼きとタレの匂いが漂ってきて、お腹がギュルルと鳴った。
「うわー。いい匂い。匂いだけでもおかずにして、ご飯食べられそう」
「……やっぱり俺が払うか」
「あああ嘘です。ダメです。ちゃんと注文してください」
「天沢も、ちゃんと食えよ」
「はい」
金曜日の夜、誰かとご飯を食べるだなんて。
相手がたとえ死神でも、楽しいと思ってしまった。
+++
生ビールにつくね、鶏皮は塩で。ネギマの『マ』はなんだ? 砂肝おかわり。合間に梅きゅうり――
「ふが! あ、やば。準備しないと」
あまりにも美味しすぎて、昨日の焼き鳥を夢にまで見てしまった、土曜日の朝。
二人でお会計は九千九百九十円。もちろん途中から計算しながら食べた、一万円限界チャレンジ。
悠人に貢いだのと、金額は同じ。
鳴神さんの言った通り、ものすごく美味しかった。お腹が満足した一方で、心はますます虚しくなっていた。私は今まで、なんて無駄なことをしてきたのだろうか。
時計は、朝九時を回っていた。
九時半に迎えに行く、とアパートの玄関前で別れた隣人でもある鳴神さんは、結局目的地を教えてくれていない。
もそもそとベッドから降りて、歯を磨きながら適当に髪をブラシでとかす。顔を洗い、申し訳程度の化粧水をつける。Tシャツの上に襟のよれたカーディガンを羽織り、何年履いているか数えるのも飽きたデニムを履く。
三足どころか五足で千円の靴下は、黄色に変なさくらんぼ模様。黒いキャンバススニーカーは、某有名ブランドとよく似たデザインだけれど、雑貨屋さんで千円也。
何をどう頑張っても、私にこれ以上のファッションは無理だ。経済的にも、センス的にも。
「こんなんで、一緒に出かけていいのかな」
姿見の前で、途方に暮れる。
死神だろうと、並んで歩いてご飯を食べて、人間として認識されている存在だ。小汚いのと一緒にいることで、赤の他人にも悪く思われたらと、遠慮してしまう。
ピンポン。
時間ぴったりにインターホンが鳴ったので、ドアスコープを確認すらせず、ドアを開けた。
「よう」
立っていたのは、鳴神さんではなく――悠人だった。昨日のスーツ姿のままで、無精髭も生えている。
「は?」
「あー、腹減った。朝飯なんか作って」
言いながら私を押しのけるようにして、悠人は勝手に靴を脱ぎ、部屋に上がってきた。
「ちょっと!」
申し訳程度の広さの玄関から、六畳一間の狭い部屋までたった五歩。廊下と兼ねた小さなキッチンで、悠人は私のツードア冷蔵庫を勝手に開け、水のペットボトルを取り出している。
約束どころか、連絡すら来ていない。
こんな横暴さも、私に心を許してくれているからだ、だなんて、今までなら思っていた。
「迷惑」
でも今の私の口をついて出てきたのは、文句だ。
悠人は驚いて目を見開いた後、表情を取り繕う。
「いーじゃん。オールでカラオケとかマジ久しぶりすぎてすげー疲れて、そいや六花の家近いと思ってさ」
あまりにも身勝手すぎて言葉が出ない。
けど、断らないと絶対に居座る。
「これから出かけるの。帰って」
「出かける? そんなん明日でいいだろ」
「良くない。約束してるから」
「んな嘘つくなよ。風呂入る」
私の言うことをちっとも聞かず、悠人は緩んでいたネクタイをほどき始める。このままでは、なし崩しに面倒を見させられる。お風呂入って、ご飯食べて、寝て。その間に着てきた服を洗濯させ、気が済んだら帰る。あとに残るのは脱ぎ捨てたスウェットと、散らかした食べかすだ。
「今すぐ、帰って!」
悠人は、私が強い口調で言っても、鼻で笑いながら探りを入れてくる。
「なに? 機嫌悪い感じ? 怖いよ~りっか~。機嫌直せよ~?」
悠人は気崩れたスーツに、ボサボサ頭と無精髭で迫ってくる。
酒臭いし、汗臭いし、口も臭い。体臭だけでなく、色々なものがこびりついた匂いがする。
「臭い」
「えー?」
懐柔路線に切り替えた悠人の猫なで声は、私の神経を逆撫でする。猫なら可愛いけれど、立派な成人男性の甘えには嫌悪しか湧かない。せめて彼氏なら、可愛いと思えたかもしれないが。
「彼氏でもないくせに」
「……は?」
衝動的に吐き出した私は、悠人の反応を見て初めて気づいた。
恋人ではなかったと否定されたのは、自ら身を投げる前、悠人からだ。
けれどこの現実では、違う。
思い切ったことをしてしまった。心臓がバクバクと波打って、息苦しい。
悠人は何かを言おうとしたが、ぽかんと大きな口を開けたまま、私の背後へ目線を向けた。
何事かと背後にある玄関を振り向く私の目に入ったのは、開け放たれた扉と、立っている鳴神さん。
給湯室の時と同じように気配を感じなかったけれど、黒いシルエットには迫力がある。
「ったく。家にも来るのか」
心底呆れたような声を出されて、ようやく私は息を継げる。
「っごめんなさい、鳴神さん。断っても出て行ってくれなくて」
「は? 約束ってこいつとかよ!?」
この私の言葉に焦ったのか、悠人が私の横から身を乗り出し、鳴神さんの顔を指さした。
あまりにも失礼すぎる言動に、私の頭はますます冷えていく。
一体こいつのどこが好きだったのだろうか。過去の私、脳みそお花畑すぎる、と頭を抱えたくなった。
「そうだ。天沢には俺との約束がある。分かったら、さっさと帰れ」
鳴神さんがキッパリと言い切ると、悠人は宙に浮いた指を泳がせたまま勢いを失った。
「嘘じゃなかったでしょ。はい、帰って」
「……ちっ」
「「あ」」
舌打ちは、死神が冥土の使いっ走りを呼ぶ合図だ、と以前鳴神さんが言っていった。
悠人が玄関から出ると、どこからかカラスがギャース! ばさばさっ! と飛んできたので、慌てて鳴神さんの手首を掴んで部屋へ引き入れ、扉をバタンと閉める。
「いでっ!」
薄いドアの向こう側で、おそらくカラスの嘴に突かれたであろう悠人の、盛大な悲鳴を聞いた私と鳴神さんは――顔を見合わせて笑った。
32
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる