雨降り蝙蝠傘/想像絵本

電柱工房

文字の大きさ
1 / 1

雨降り蝙蝠傘/想像絵本

しおりを挟む
 
 ( これは想像絵本です。絵を想像してお読みください )

 
 僕が居間のコタツに当たりながら、宿題の絵日記を書いていると、お母さんが台所から顔を出した。

「コタツで寝たらだめよ。何をしているの?」
「冬休みの宿題だよ。休みの間にあった事を絵日記に書くんだ」

 お母さんが覗き込んで来たけれど、僕は見えないように両手で隠したんだ。

「何よ、けちね」

 そう言うと、お母さんは台所の方へ戻って行った。
 ふふん、中々良くできているんだよと僕は独り言を言う。
 隣でべったりとうつ伏せに寝ているジェニーが顔を起こして僕を見上げた。

「そうだね、お前は出て来ないね。どうしようかな」

 僕はシーズー犬のジェニーの体をワシワシとつかみながら言った。ジェニーは15歳になって年老いて来たのか、身体が少し痩せてカサついた感じがした。年をとって動きが緩慢《かんまん》になって来たようだ。イヤイヤをするように僕の手の中で少し身体を硬くした。
 僕は書きかけの絵日記を見直したよ。


(扉の絵)
雨傘をさしてニッコリ笑う僕の横顔のアップ。なかなかハンサムなんだよ。雨傘はお父さんの蝙蝠傘だ。広げると僕がすっぽり入るぐらい大きくて、とても重たい。たたむと膨らんでボタンを止めるのが難しいんだ。自分用の小さな傘も右手に下げているよ。


(絵 その1)
雨傘をさして飛び出して行く僕の後ろ姿。地面には大きな水溜りがあって、僕がそれを飛び越えてジャンプしているところだ。


雨降り
お迎え
飛び出した

大きな黒い傘さして
父さん
お迎え
飛び出した

ちゃん ちゃん ぴしゃん
ちゃん ぴしゃん


(絵 その2)
大きな黒い傘をビュンビュン回す僕と周りに跳ね飛ぶ雫、雫、雫。そこに大きな飴玉のような雨粒が落ちて来る。蝙蝠傘は重いので回すとクルクルよく回るんだ。ピュンピュンって感じ。通行人は雫を嫌がってみんな左右に別れて逃げて行く。その中を颯爽《さっそう》と歩いて行く僕の姿。


雨傘
雨傘
どうしましょ

くるくる回して
回されて
雫を回りに
飛ばしましょ

ぴゅん ぴゅん 飛ばせ
ぴゅん 飛ばせ


(絵 その3)
駅前は賑やかで、改札口からは人がいっぱい出て来るんだ。傘を差しながら父さんを待つ僕のシルエット。右手には小さな自分用の傘を持って、ツンツン舗道をつつくんだ、リズミカルにね。


雨降り
お迎え
楽しいな

雨降り
お迎え
嬉しいな

ちゃん ちゃん ぴしゃん
ちゃん ぴしゃん

雨傘
雨傘
重たいよ

今日の雨傘大きいよ
父さんの傘
さして来た

ぴゅん ぴゅん 飛ばせ
ぴゅん 飛ばせ


 そこまで書いたところで、お父さんが帰って来た。

「ただいま」

 居間に入って来ると、お父さんは僕に話しかけて来た。

「何を書いているんだい?」
「冬休みの宿題だよ。絵日記を書いているんだ。こないだのお迎えを書いているんだ。凄く上手く描けているんだよ」

 僕が自慢して差し出すと、どれどれと見て言った。

「えーっ、あの時傘を振り回して雫を飛ばしたりしたのか。みんなに迷惑じゃないか」
「ちょっとふざけただけだよ」
「お父さん、お風呂沸いているから先に入っていいわよ。もう少しで食事の用意もできるから」

 お母さんが台所から声をかけて来た。

「さっきから、私には見せてくれないのよ」

 お父さんはダメだダメだと言いながら、お風呂に入りに行った。
 頭にきたぞ。お父さんは悪役だから、やっつけないとダメだ。

「ジェニーだけが僕の味方だ」

 そう言ってまたジェニーの身体をワシワシつかむと、ジェニーは少し怒ったのか、今度は低い声を出して唸った。
 僕は思いついて絵日記の続きを書き出したんだ。


(絵その4)
黒々とした大きい影が突然現れた。お父さん大魔人だ。賑やかな商店街へよそ見をしていた僕を、横から大きな黒い手を伸ばして来てギュッと捕まえた。突然のことで僕は傘を持った手を大きく広げて驚くよ。わぁって、飛び上がる僕。


飛んで来た
飛んで来た
大きな黒い手を伸ばし
くろぐろ大きな影が
飛んで来た

大きな
黒い手を伸ばし
大きな
くろぐろ大魔人
飛んで来た

父さん
くろぐろ大魔人
大きな
黒い手を伸ばし
小さな
ぼくを
捕まえた


(絵 その5)
びっくりした僕があばれて水溜りを飛び跳ねるんだ。周り中に雫を飛ばして飛び上がる僕。簡単には大魔人には捕まらないよ。大魔人に反撃だ。手をすり抜けて水溜りで大暴れだ。


だから じゃんぷ じゃんぷ じゃんぷ

ばん ばん ばしゃん
ばん ばしゃん

うへ!!

大きな魔人が
驚いて
こうさん
こうさん
泣き出した


(絵 その6)
大粒の雨と跳ねた雫でびしょ濡れになるお父さんが天を仰ぐ。それでも僕はやめないで水溜りを飛び跳ねるんだ。するとお父さん大魔人は泣き出してしまった。


だから じゃんぷ じゃんぷ じゃんぷ

ばん ばん ばしゃん
ばん ばしゃん

助けてくれ!!

大きな魔人が
驚いて
こうさん
こうさん
泣き出した


(絵 その7)
いつの間にか大きな黒い蝙蝠傘につかまって、一緒にジャンプする二人。だから、ジャンプ、ジャンプ、って。びしょ濡れの父さんももう諦めて、一緒に笑って飛び跳ねるんだ。


すっぽり
大きな父さんも
いっしょに
大きな黒い傘

だから いっしょに 
じゃんぷ じゃんぷ
ばん ばん ばしゃん
ばん ばしゃん

こりゃ、楽しいぞ!!

だから じゃんぷ じゃんぷ じゃんぷ

ばん ばん ばしゃん
ばん ばしゃん


(絵 その8)
大きな黒い雨傘と小さい雨傘の二つが並んで歩いて行く。大きな水溜りに黄色い街灯の明かりが映って輝いていた。


(扉の絵)
浴槽に入っている僕と体を洗う大きな父さんの背中。浴槽には黄色いアヒルの人形がプカプカ浮かんでいて、そこからシャボン玉が溢れ出して、お風呂場は大洪水だ。その中をジェニーが元気に泳いでいる。


お終いだよ。お終い!


 いつの間にか僕はコタツの中で眠り込んでいた。コタツ布団に潜り込んで首だけ出して眠っていた。ジェニーが横腹を押し付けて来て顔に当たった。ジェニーの毛の薄くなったお腹は暖かくて気持ちよかった。

「あらあら、だめじゃない」

 お母さんは居間に入って来ると、僕の絵日記を覗き込んだ。

「お母さんだけ登場しないのは、不公平よね」

 お母さんはニヤリと笑うと僕の絵日記に少し書き足した。


(扉の絵:追加分)
洗濯機を回しながら風呂場の外から声をかけるお母さん。洗濯籠は雨水と泥で汚れた洗濯物でいっぱいだ。『二人ともちゃんと温まるのよ!』大きな吹き出しを書き足した。二人とも私の仕事ばかり増やしてと呟いた。やっぱりお母さんもいなくちゃねって、舌を出した。


これで、本当のお終い。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

臆病で人見知りな女の子のコンビニへの小さな大冒険

アイザッカ
児童書・童話

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

おばあちゃんのパンケーキ

こぐまじゅんこ
児童書・童話
はるくんは、いちねんせい。 おばあちゃんが、パンケーキをつくってくれます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

処理中です...