死神と呼ばれた俺は聖母と呼ばれた彼女に恋をした。

尾高 太陽

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~始まりの異変~

ー編成ー

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「なんだこの血は。」
 その血は、血と思えないほどの強い粘り気と濃く赤黒い色をしていた。
「タナトス様。あまり近づかないで下さい。致死量ではありませんが、この血液からは残留害物質が検出されたそうです。今すぐ防護服を。」
 血液から害物質?つまりは害物質に汚染された上で生きていた生物と言うことか?
「いやいい。隔離は?」
「はい。もとより人は近づきませんが、一応半径10メートルで隔離し、洗浄を進めています。」
「15メートルに広げておけ。あと致死量ではないのなら洗浄はするな。」
 すると役員は作業員に指示をしようとしていた連絡機を操作する手を止めた。
「洗浄をしないのですか!?」
「ああ。俺は今から一度家に戻ってから管理棟に行く。くれぐれも今の状況を変えるなよ。」



 俺はスケール会議室の扉を開く。
「全員揃っているな。七面倒な前振りはやめろ。今回は俺が仕切らせてもらう。いいな?」
 ジジイは迷いなく首を縦に振った。
「まず最初に今からここで起こる会話、行動全てを市民へ他言することを禁止する。なお他言した場合命は無いと思え。」
 会議室には沈黙が流れた。まぁ当たり前だろう、急に訳のわからない契約を飲まされて困惑しない奴がいない。
 が、それ全てを話す時間はない。
「では編成を組む。今日は、いや〈発見〉もしくは〈確認〉するまでその者らの仕事は禁止する。」
 会議室の全員が声を上げた。
「お!おい待て!編成って何のだ!いや、それ以前に!」
 知るか。
「反論は認めん。グループは50人と7人の2つを作る。まず50人のグループ。これは秩序者、農作者、畜産者、水産者、製造者の5人10班を編成。シェルター内を捜索してもらう。」
 すると、スケールの1人が机を叩いた。
「だから何の話だ!!今は外の生命体の話をしているのではないのか!」
「それがスケール内に入った可能性がある!!!」
 思わず声を荒げてしまった。
 いつもは心無い言動と気味の悪いと囁かれる俺が声を荒げた事に驚いたのか、会議室は静まり返った。
「ついさっき現場を見てきた。例の血液の量は人1人の血を全て使っても足りない量。その上、致死量ではないが残留害物質が検出。そして鉄格子は破壊されていた。」
「……そこからスケール内に侵入したと?」
「可能性がある。今の話を聞いた上で編成に反対の者は?」
 もちろん誰も反論する事はなかった。
「50人のグループはシェルター内で解放門外生物の探索だ。発見すればまずは連絡機を使って全体に報告しろ。10班の探索範囲はそっちが決めたほうがいいだろう。創作は編成が完了次第開始。あともう一度だけ言っておく、他言はするなよ。では編成を急いでくれ。」
「「「「「了解」」」」」
 すると、秩農畜水製の最高責任者達が連絡器をフル稼働させながら部屋を出た。
 どれがどれだか分からん……。

「次は7人のグループだ。これは俺と生物やら残留害物質やらに詳しい5人の計6人が防護服を着て解放門の外に出る。もちろん害物質が致死量になる前に引き返す。ただし例の生物がいた場合は命の保証は出来ん。」
「お、おい。もう1人は何をするんだ?」
 と、眼鏡をかけた男が少し怯えた声を出した。
「お前、中央通りに人がいなければ壁から壁まで走って何分かかる。」
 男は「は?」と首を傾げたが、すぐに返答をする。
「えっと6、4分あたりか。」
「この中にそれよりも早い奴は?」
 会議室を見渡していくと1人が手を挙げた。
「お前はたしか発明者のとこの……。」
「はい、付き人のトーマスです。本日は最高責任者ヘルメース様が出席できず申し訳ありま」
「そんな事はいい、何分だ。」
 言葉を遮った俺にトーマスは一瞬驚いた顔を見せたが、思い出したように答える。
「3分程度です。すいませんさほど変わらず。」
 さほど?
 十分だ
「十分すぎる。お前には解放門前で待機していて欲しい。もしシェルター内に侵入していた場合は連絡器で報告を受け、走って解放門の外の俺らに伝えてくれ。解放門の外は残留害物質で連絡器が使えないからな。」
 ジッとトーマスを見ると、瞬き1つせずに深く頷いた。
「分かりました!」
 ほう………。まあ、次が一番の問題だ…。
「最後だ。俺と共に解放門の外に出たい奴は…。」
 ほとんどの奴が目をそらした。
 ……いないのが当たり前か。
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