死神と呼ばれた俺は聖母と呼ばれた彼女に恋をした。

尾高 太陽

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~始まりの異変~

ー対策ー

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「ちょっ!ちょいちょいちょい!!!ストップストップストップ!!」
 ベルセルクは意味もなく蛇に話しかけていた。
「おい!ベルセルク!!」
 男を守るように蛇の前に立っていたベルセルクは俺の声に反応して一瞬こちらを見たが、すぐに蛇に目を移し目線をこちらに向けないまま返事をした。
「タナトス様!!どうしたのですか!?」
「そのまま貯水地に誘導しろ!!」
 するとベルセルクは一瞬驚いた顔をすると、その顔はすぐに笑みを浮かべた。
「〈できるか?〉ではなく〈しろ〉ですか。分かりました!ですが今はこの人をどうにかしなければ!!」
 もちろん対策済みだ。



「おいマイケル。蛇は目が潰れてもピット器官とやらで見えると言ったな。どう言う原理かわかるか?」
 するとマイケルは人差し指で自分の鼻の横をトントンと叩いた。
「ピット器官はここにあります。ここの原理は温度。らしいのですが、これに関した旧文明書は破損が酷く。温度の高低で判断しているのか、温度の動きで判断してるのか…。」
 動き?
「もういい、十分だ。」
「申し訳ありません。期待に添えず…。」
 そう言いながらマイケルは頭を下げた。
 期待に添えず?
「言っただろ、十分だ。」
 そして後ろに立っていたインに目を向ける。
「イン。どこでもいい、一番近い水路から水を汲んできてくれ。」
 インは戸惑いながらも首を縦に振り、バケツを取りに行ったのか、農作地に建てられた小屋へと走って行った。
「ボックス。なんでもいい、人1人を包める水を吸う布を4枚持ってきてくれ。」
「分かりました!」
 即答か。
「マイケルはインとは別に湯を沸かしておいてくれ。」
「は、はい!」
「ジグムンド。2人が帰ってきたら布に水を吸わせ、それをベルセルクの守っているあの男に被せろ。あとは、体を温めておけ………走りやすいようにな。」
「分かった。」
「マイケルは。」



「ジグムンド。行け。」
 次の瞬間、俺の横からジグムンドか消える。
 そして蛇の前。200メートルほど先ではベルセルクの守っていた男が布を被り、蛇から逃げ切った。
「え!?なんで急に?」
 そう声をあげたのはインだった。
 するとインの疑問にボックスが答える。
「多分、あの布が水を吸ってたせいで〈見える〉温度が下がたんだ。だから、温度で周りを見ている蛇はあの男が見えなくなった?いや違う、対象じゃなくなったんだ。俺たち動物は生きている限り熱を持っている。蛇はその熱を追っていた……?」
 正解だ。
「いや!でも温度の動きを追っているっていう説もあったでしょ!」
 その言葉にボックスは言葉を失う。
 惜しかったな。
「温度の動きを追っているならば、常に動いている空気すらも追いかけないといけない。逆に言えば腰を抜かして動けなかったあの男の事を無視しなければいけない事になる。」
 そう、だからベルセルクの事は追いかけなかった。解放門外から戻ってきたばかりだったからだ。
 あの温度の低い場所に数時間いた俺達は、表面とはいえ温度が下がりきっていただろう。
 もう一度言おう、蛇は熱を見ている。
「イン、ボックス。」
 その俺の言葉に気を引き締めた様子のインとボックスは一度深く頷く。
「行くぞ。」
 俺達三人は濡れた布を被り、先に貯水地に向かった。



「あれ!!?タナトス様は!?」
 何とか街に危害が出ないように貯水地まで蛇を引き付けたのに、そこにタナトス様の姿はなかった。
「裏切られたんじゃないのか?」
 そんなジグムンドのたわごとには絶対に付き合わない。
 とにかく今は蛇を引きつけておかないと。
「くるぞ。」
「え?」
 すると蛇の尾が僕へと飛んできていた。
「もっと大きな声で言って!!!?」
 何とかその尾を飛び越えて避けると、今度は蛇の口が僕を飲み込もうと迫っていた。
「わあああああ!!!!!」
 今度は蛇の開かれた口の上顎を手で押し上げ、下顎を足で踏み、飲み込まれないように耐えた。
「ジグムンド、いやジグムンドさん、ジグムンド様!?助けて!助けください!!!!」
 するとジグムンドは10メートル程にある蛇の頭まで飛び上がり、全力には遠く及びはしないがかなりの力で蹴りを入れた。……僕の脇腹に。
 僕は横に吹き飛ばされ、貯水地の水の中に落ちる。

「ぷはっ!!何するんだ!!!!!……って、ジグムンド!!!?」
 水面に上がり蛇を見ると、蛇の閉じられた口からは黒い布に包まれた人の手が出ていた。
 食われた?あのジグムンドが?
 ウソだ………。
「ジグムンドオオオオオ!!!」
「うるさい、早く立て。」
 と、後ろからジグムンドの声がした。
 咄嗟に振り返るとそこにはジグムンドがいた。
「あれ?」
「あれは農作物の影に隠れていた農民だ。お前が水に落ち、俺が飛び上がったせいで奴の視界から俺達が消えた。そのせいで近くにいた農民に矛先が向いたんだろう」
 呆れてため息が出る。
「なんだ……。」
 あまり紛らわしい事をしてほしくない。
「それよりもどうするつもりだ。タナトスはいないぞ。」
「やすやすとタナトス様を呼び捨てにするな。」
 タナトス様は確かにいない。
 でもあれだけの人がいたのに、僕とジグムンドだけでここまで誘い込めたのか分からないままだ……。
「フッ………。」
 僕は思わず笑ってしまった。
 でも仕方ないだろう。
 僕はそういう所を見てあの方について行こうと思ったのだから。
「今度は、何をやらかすんです?タナトス様。」
 次の瞬間、蛇の頭が爆発した。
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