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第6章 会戦
花と雨と、安らぎと
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「…ちょっと多かったかな」
静夜が来たときのために普段より余分に食材を調達して、久遠は家路を急いでいた。昨日は遠慮して断られたが今日は来てくれるような予感がしたのだ。そんなときに食材が足りないなどということは料理人としてはあってはならない。抱えた荷物は重くても歩調と心は軽やかだった。
「…ん?」
翡翠の屋根に帰ってきたとき、自宅のある大木の根元に誰かがいるのに久遠は気づいた。近づいて見ると、緑の天井から透き通る六角形を連ねた光の箭がきらきらと瞬きながらこぼれ落ちる大木の幹に、大事そうに迦楼羅を抱いた静夜がもたれかかってすやすや熟睡していた。動かない彼に安心したのか、どこからともなく集まった栗鼠や兎や仔鹿たちが彼の側に身体を丸めて暖め合うように一緒に眠っている。そのあまりに無防備で心地良さそうな寝顔に、久遠は我慢できなくなってひとりでくっくっと笑った。
(朝はあんなに真剣な顔で会議してたのに、梯子上る元気も出ないくらい疲れてここで寝落ちちゃったのか…意外と可愛いな…)
いつまでも眺めていたいと思うほど平和で心温まる光景だったが、このままにしておくのも具合が悪いかなと思ったので、食材をひとまず裏手の炊事場に置いて静夜のところに戻った。
「…もうちょっと楽に寝かせてやるからな」
何も知らずに眠り続ける静夜を笑顔で見下ろし、右手に煌気と祈りを込める。
「役割を終え循環を待つ花びらたちよ…その命をつなぐ前に、おいで…束の間、ここに!」
呼びかけとともにその手を空へと高く差し伸べる。木漏れ陽よりも柔らかな光が、星屑のようなきらめきを振り撒きながら翡翠の屋根の森一帯に広がった。その光は久遠と眠る静夜と小さな獣たちの身体の下にも入り込んで彼らを宙にふわりと浮き上がらせた。そこへ天地神煌に応えて森中から吸い寄せられた色とりどりの花びらが一枚の大きさを外套ほどに増しながらどんどん吹き込み、厚く密に積み重なる。久遠はまるで足に光の羽を生やし踊るように両腕と身を翻して花の嵐を操り、いつしか大木の根元には夢のように美しい花びらの褥が敷き詰められていた。
「…よし」
出来栄えに満足した久遠は煌気を制御して静夜と迦楼羅と小動物たちをゆっくり降下させ、花のベッドの真ん中に慎重に横たわらせた。寝心地を確かめるため、静夜に添い寝する形で自らの身体も花びらに沈めた。
「うんうん、いい感じ」
こっそり自画自賛して隣を見ると、横になった静夜はさっきよりも穏やかで安らいだ表情をしている。あんな不安定な姿勢でいるよりは遥かに快適だろう。寝顔からそれが伝わり、久遠は嬉しくなって静夜にぴたりとくっついた。
(疲れただろ、静夜…今だけは頑張らなくていいから、肩の荷を下ろしてぐっすり眠ってくれ)
少し乱れて落ちかかった前髪をそっとよけて頬を撫でた途端、胸がぐっと熱くなった。これが幸せというものなのだと初めて実感して久遠が思わず甘い吐息を漏らしたときだった。
「…ん…」
静夜が眠りながら唐突に声ともつかない謎の声を発し、探るように腕を伸ばして正面から久遠を引き寄せてきた。位置の関係で静夜の方が自分の胸に顔を埋める体勢になる。そして腰の後ろに手が回され…
ぎゅううううっ
「んう…!!」
久遠は息ができないほど強く抱きすくめられた。
(あっ…こ、これは…!)
瞬時に蘇ったのは、初めてひとつの寝床で目覚めたあの朝の記憶だ。
「…ん」
静夜は力を緩めると、あのときと同じように満足げな息を吐いてまたおとなしく寝息を立て始めた。変わらないその執念と情の深さに今は一途で不器用な想いが感じられる。
(僕はここにいる。もう二度と離れないからそんなに心配するな…)
可愛らしくちょっと変わった愛情表現もいつでもまるごと受け止める覚悟の久遠だった。
そうして一緒にぬくぬくとまどろんでいるとやがて静夜が首を動かしたので、目を覚ましたのだとわかる。
「久遠…?俺…いつの間に…」
「起きなくていい。まだゆっくりしてろ」
「…うん」
静夜が身じろぎと深呼吸をすると、小動物たちも一匹、また一匹と目を開けて身体を伸ばしたり毛繕いを始めたりした。静夜は目を細めた。
「…いい匂いがする…」
「僕たち専用の花のベッドだからな」
「いや…そうじゃなくて、君の匂いだ」
「え?」
怪訝に思い顎の下の辺りを覗き込むと、静夜は鼻先を自分の胸にすり寄せてくんくんさせている。
「陽の当たる庭みたいな…よく乾いた洗濯物みたいないい匂いがしてる」
「お褒めに預かり光栄です…なんてね」
二人は花びらに埋もれながらくすくすと低い笑みを交わした。
「…久遠、俺は君に謝らないと…」
「え?」
突然そう言われても、久遠に思い当たる節はない。さらに怪訝な気持ちで静夜の告白を待っていると、彼は自分の胸に顔を隠してぼそっとささやいた。
「昨日は邪険にしてすまなかった…夜遅くなっても本当はここに帰ってきたかったけど…君の優しさにあまり甘えてはいけないと思って…」
「薮から棒に何を言い出すかと思えば、今更そんな他人行儀なこと…ここにはいつでも来てくれって言ったじゃないか」
「でも…」
普段の彼らしくなく弱気で不安そうな様子に久遠は心をくすぐられ、慰めるように彼の肩をとんとんと叩いた。
「おまえはちょっと人に甘えなさすぎだ。頑張るのは立派だけど、もっと肩の力を抜いて、ときどきは自分を休ませることを最優先しろ。しっかり休んだ方がいい仕事ができるって言うからな」
「ありがとう、久遠…」
久遠は静夜をあやし、静夜は久遠に甘えて、二人はようやく寂しさを癒したのだった。
「…いつの間にかここは俺が『帰る』場所になってる…いつでも、どこにいても、君のいるこの場所に帰りたいと思ってる…生まれ故郷も育った場所も失くした自分には、この世に安住の地などないと思ってたのに…」
「ここはとっくにおまえの家だ。みんなおまえの帰りを待ってる…一番待ってるのはこの僕だ」
「…俺はずっとここに暮らしてもいい、と?」
「もちろん。…僕も、おまえの帰る場所でありたい…」
小さくも暖かい家と手作りの食事、そして待っていてくれる人…これ以上の幸せが果たしてあるだろうか。
「…久遠」
「ん?」
「実は昼食を取る暇がなくて、腹が空いた…君の作る料理が食べたい…」
顔を見られたくないのか、ますます固くしがみついてくる静夜の子供っぽいしぐさに久遠の胸はときめきっぱなしだった。
「わかった、すぐ作るよ。ただし献立はお任せな。さあ、ごはんにありつきたかったらそろそろ僕を解放してくれないか?甘えん坊の大きなちびっ子さん」
「…はい」
唐突に子供扱いされて少し不服そうに眉を寄せながら静夜はおずおずと腕を解いた。
「できたら呼んでやるから、まだ寝てていいよ」
久遠は手伝おうと一緒に身体を起こしかけた静夜を花のベッドに閉じ込めて意気揚々と炊事場に行き、自慢の山羊のミルクと野菜のシチューを作った。それに焼きたての素朴なパンと、人間の静夜のために特別に分けてもらったベーコンを炙って添え、少し早めの夕食を二人でゆっくり、たっぷり楽しんだ。翡翠の屋根で親しげな会話と笑い声が聞かれるのはずいぶん久しぶりのことだった。
翌朝目覚めたとき、すでに空は今にも降り出しそうな曇天だった。
「今日は雨か…」
久遠の寝所は一応板屋根と壁を備えてはいるが、完全に囲われているわけではなく二人分の布団を並べると多少はみ出してしまうので、夜中に降られなくてよかったと静夜は考える。
同じ寝所で夜を過ごしても、二人は素肌はおろか唇すら触れ合わさず、まだ無邪気で綺麗なまま変わらない関係でいた。互いの姿も形も、体温さえも透けて伝わる極薄のベールが二人の間から取り払われるときを黙って待つように。
「降ってくる前に朝ごはんにしよう」
久遠はそう言って地上の炊事場に下りていった。昨夜の残りのパンにチーズとミルク、それにみずみずしい新鮮な果物を食卓に並べる。
「ここのところずっと天気が良かったから、久しぶりに森も潤いそうだな」
静夜が雨の予感に嗅覚を働かせながら言うと久遠はきょとんとした。
「今日は雲居と氷雨の水やりと、風早の掃除の日だぞ。なんだ、知らないのか?」
「…?ああ、初めて聞いた」
「大森林は礎の恩恵のおかげで年中気候が安定してて快適だけど、雨が降らないと困るからときどき雨雲を呼んで草木や土を潤してあげるんだ。雲居と氷雨が協力して必要な分の雨を降らせ、その後に発生する湿った空気を風早が一掃して乾かし、すっきり入れ換える。そうして植物や土は元気を取り戻し、僕たちもさっぱりした気分でまた仕事や修行に出てくってわけ」
「なるほど。それで水やりと掃除か」
久遠の説明のとおり大森林ではほとんど毎日が気持ちのいい晴天だが、水が不足しているとか草木が萎れているということはないので静夜は長らく不思議に思っていた。単純に礎が均衡を保っている証だろうかと推察していたが、実際には原礎たちが自らの故郷を必要に応じていわば手入れし管理しているということだった。たとえ不便で地道であっても、その習慣と努力こそが彼らの故郷を守り次の世代へつなぐための最良の道であり手段であると彼らは心得ているのだ。
(俺も彼らのことを少しは知ったと思ってたが、まだまだ知らないことだらけだな。久遠と一緒に暮らすなら、原礎や大森林のことをもっと学んで理解を深めないと)
まだ触れたことのない原礎たちの文化や習俗といったものにも興味が湧いてくる静夜だった。
朝食を終えると二人は家を片づけ、濡らしたくないものに覆いをかけた。そして再び樹上のデッキに上がり、板屋根の下に座って雨雲が来るのを待った。
そのうちぽつぽつと雨粒が落ちてきたかと思うと、辺りはすぐにさらさらと真っ直ぐに降りしきる雨の帳に包まれた。不思議と不快感や閉塞感のない、かぐわしく涼しげな慈雨だ。それは静夜が何も知らずにこれまで大森林の各所で見てきたのと同じ水やりの光景だった。雨が好きだという人間はあまりいないが、その意味と心地良さを知った今、彼の雨に対する感じ方は変わり始めていた。
(こんな雨なら、ずぶ濡れになるまで打たれても嫌じゃないかもしれないな)
のんびりとした表情で雨空を見上げている久遠と、腕が触れ合っている。好きな人と雨が通り過ぎるのをただ待つだけの時間さえ、名前をつけて飾っておきたいほど美しい。雨は悲しい別れの記憶をも優しく懐に抱いて静かに降り続いた。
ふと久遠がこちらに顔を向けて尋ねてきた。
「なあ静夜、昨日訊きそびれたんだけど」
「うん」
「報告会で言ってた間諜の話ってどうなったの?」
悪気などあるはずもない久遠の問いは彼を否応なく現実に連れ戻す。だが彼は真面目にうなずいた。
「あの後すぐ数人に打診して有志を募った。早い者は昨日のうちに発つ、と」
「そうなんだ」
久遠が口にした間諜というのは、煌狩りの拠点の内情を探るために送り込まれることになった人間たちのことだ。
先だっての三度目の遠征で静夜と俄たちが目的の研究拠点に踏み込んだとき、そこには副首領も団員も博士も誰ひとりとしておらず、煌人が囚われていたはずの煌気移植の筺体も蓋が開け放された状態で中はもぬけの殻、どこを捜しても人っ子ひとり、鼠一匹見つからず、完全に機能を停止して放棄されていたのである。ただ争いが起こった形跡や血痕や死体などもなかった。
結局静夜たちは施設の最深部まで調べた後実験設備を破壊し入り口を封鎖しただけで、囚人の救出や大森林への移送と誘導がなかったため事の運びが早く、帰還も早まることとなった。しかし戦いにならず手間の要る仕事もせずに済んだことを喜ぶ者はひとりもいなかった。帰途の道中、隊員たちの間に流れる空気は重苦しく深刻だった。静夜の目には、誰もおらず何も起こらなかったことの不気味さが皆の顔に影を落としているように映った。かつての同志たちと煌人たちの行方が案じられてならなかった。
ちょうど一日前の報告会でそれを聞いたとき、久遠には静夜の顔に心労の色が濃く表れている理由がわかったのだった。
「煌狩りの内部では今何かが起こっている。それが黄泉の悪事の新たな一手なのか、それとも人間たちの中の問題なのかはわからない…ただ以前永遠が言っていたように、明夜の死がきっかけになった可能性は高い」
いずれ起こり得る事態を予言するかのようだった永遠の指摘を二人は思い出していた。雲上の宮の洞窟でのことだ。
「それで別の砦におまえの部下を数人間諜として潜り込ませることになったってわけだな」
「ああ。今は団員の流入や移動が激しいからうまく紛れ込んでくれるはずだ。危険な任務ではあるが皆有能だから、彼らを信じて早く無事に戻るか知らせをよこしてくれるのを待とうと思う」
「何かわかるといいな。しばらく遠征も見合わせるってことだし、おまえにもいい骨休めになるだろ。文字どおり」
そう言って久遠は静夜の脇腹をちょんちょんと突っつき、白い歯を見せて悪戯っぽく笑った。そして何を思ったか、突然屋根の下から雨の中にぴょんと飛び出した。
「ほら、僕も潤って、元気いっぱい成長しそうだ」
恵みの雨を歓迎する若草のように大きく両腕を広げて見せる。濡れたら風邪を引くぞ、と言いかけたとき、いつの間にか小雨になり空が少しずつ明るくなってきていることに静夜は気づき、デッキの真ん中でくるくる踊っている久遠の愉しげな動きにつられて思わず微笑んだ。いつしかすっかり雨はやみ、久遠の揺れる金髪の房を風早の爽やかな息吹が膨らませ、陽光に輝かせていた。
雨宿りは終わり、空気の入れ換わった気持ちのいい天気の下、覆いを外したり布団を手摺に掛けて干したりと作業にいそしんでいるとき、静夜は久遠に尋ねた。
「そう言えば、永遠がずっとここに帰ってきてないって聞いたんだが、本当なのか?」
「うん。おまえたちが前の遠征に出た直後から樹生の礎主のところにずっとこもって修行してる。実は僕も昨日の報告会で久しぶりに顔を見たんだ」
二人の声や口調はお世辞にも明るいとは言えない。もちろん永遠がただ自宅を離れて熱心に修行しているだけなら二人の表情がこれほど曇るはずはない。久遠が妖精の臥所で目を覚ましたとき永遠はかなり健康と煌気を取り戻しているように見えたが、昨日会った彼女はよほど厳しい修行をしているせいなのか、またもや顔色が悪くやつれ始めていて、二人や暁良をひどく心配させたのだ。ただ永遠自身は何を訊かれても、平気だ、大丈夫だ、と笑ってやんわりとはぐらかすばかりなので、誰もそれ以上しつこく質問を繰り返すことはできなかった。
「生真面目な姉さんのことだから、根を詰めすぎて無理してなきゃいいけど…でも、あれが始まったらきっと外に出てきて、いい息抜きになるはずだよ」
「あれって?」
久遠はぱちりと片目を瞑った。
「それは始まってからのお楽しみ。その前に、今日はこの後一緒に四つ葉の学び舎に行かないか?ちびっ子たちが…特に日月が、おまえが遊びに来てくれるのを首を長くして待ってるんだ」
瑪瑙の窟での一件以来、日月にもらった白詰草の指輪を壊されて失ってしまったことを後ろめたく感じていた静夜だったが、日月のあの笑顔にまた会えるという喜びには抗えず、久遠の誘いに乗ることに決めた。
「…わかった」
言葉は控えめながらも嬉しそうな静夜の返答を受け、久遠もにっこりと破顔した。
修行に仕事、鍛練、そして日々の当たり前の生活と、二人それぞれに忙しく充実した毎日を送る中、静夜は大森林中のあらゆる場所でこれまでになく慌ただしい気配が醸成されているのをひしひしと感じ始めていた。誰もがそわそわと、またうきうきと盛んに各所を行き来しながら、普段とは違う作業にせっせと励んでいる。豊富な物や多くの人が活発に動き、道沿いや広場には見たこともない飾りつけや簡素な造りの屋台のようなものが日ごとに増えていった。いったい何が始まろうとしているのか、自ら体験したことのない静夜には見当もつかなかった。
そんなある日、久遠は静夜を朝から散歩に連れ出した。刹那と遥の墓参りに始まり、薄暮の森、掬星ヶ淵といった外縁部の比較的落ち着いた人気の少ない場所をめぐって森の中心の方へ戻ってくると、次第に視界には華やかな装飾や看板が、耳には賑やかで楽しげな音楽と歓声が舞い込み始めた。すれ違う原礎たちは皆笑顔でさんざめき、その脇を髪や服に手作りの奇抜な飾りをつけた子供たちが競うように駆け抜けていく。これほど浮き足立っている原礎たちの姿を見るのは初めてなので、静夜は少々呆気に取られて久遠に尋ねた。
「…久遠、何か騒がしいようだが、これは…皆、いったいどうしたんだ?」
ぱっと振り向いた久遠は、戸惑って立ち止まる静夜を誘うように、つないだ手をしっかりと握って引いた。そしてエメラルドの瞳を高揚感に輝かせながら答えた。
「今日は年に一度の祝祭の日…星の恵みと命に感謝する“星祭り”の日だよ」
静夜が来たときのために普段より余分に食材を調達して、久遠は家路を急いでいた。昨日は遠慮して断られたが今日は来てくれるような予感がしたのだ。そんなときに食材が足りないなどということは料理人としてはあってはならない。抱えた荷物は重くても歩調と心は軽やかだった。
「…ん?」
翡翠の屋根に帰ってきたとき、自宅のある大木の根元に誰かがいるのに久遠は気づいた。近づいて見ると、緑の天井から透き通る六角形を連ねた光の箭がきらきらと瞬きながらこぼれ落ちる大木の幹に、大事そうに迦楼羅を抱いた静夜がもたれかかってすやすや熟睡していた。動かない彼に安心したのか、どこからともなく集まった栗鼠や兎や仔鹿たちが彼の側に身体を丸めて暖め合うように一緒に眠っている。そのあまりに無防備で心地良さそうな寝顔に、久遠は我慢できなくなってひとりでくっくっと笑った。
(朝はあんなに真剣な顔で会議してたのに、梯子上る元気も出ないくらい疲れてここで寝落ちちゃったのか…意外と可愛いな…)
いつまでも眺めていたいと思うほど平和で心温まる光景だったが、このままにしておくのも具合が悪いかなと思ったので、食材をひとまず裏手の炊事場に置いて静夜のところに戻った。
「…もうちょっと楽に寝かせてやるからな」
何も知らずに眠り続ける静夜を笑顔で見下ろし、右手に煌気と祈りを込める。
「役割を終え循環を待つ花びらたちよ…その命をつなぐ前に、おいで…束の間、ここに!」
呼びかけとともにその手を空へと高く差し伸べる。木漏れ陽よりも柔らかな光が、星屑のようなきらめきを振り撒きながら翡翠の屋根の森一帯に広がった。その光は久遠と眠る静夜と小さな獣たちの身体の下にも入り込んで彼らを宙にふわりと浮き上がらせた。そこへ天地神煌に応えて森中から吸い寄せられた色とりどりの花びらが一枚の大きさを外套ほどに増しながらどんどん吹き込み、厚く密に積み重なる。久遠はまるで足に光の羽を生やし踊るように両腕と身を翻して花の嵐を操り、いつしか大木の根元には夢のように美しい花びらの褥が敷き詰められていた。
「…よし」
出来栄えに満足した久遠は煌気を制御して静夜と迦楼羅と小動物たちをゆっくり降下させ、花のベッドの真ん中に慎重に横たわらせた。寝心地を確かめるため、静夜に添い寝する形で自らの身体も花びらに沈めた。
「うんうん、いい感じ」
こっそり自画自賛して隣を見ると、横になった静夜はさっきよりも穏やかで安らいだ表情をしている。あんな不安定な姿勢でいるよりは遥かに快適だろう。寝顔からそれが伝わり、久遠は嬉しくなって静夜にぴたりとくっついた。
(疲れただろ、静夜…今だけは頑張らなくていいから、肩の荷を下ろしてぐっすり眠ってくれ)
少し乱れて落ちかかった前髪をそっとよけて頬を撫でた途端、胸がぐっと熱くなった。これが幸せというものなのだと初めて実感して久遠が思わず甘い吐息を漏らしたときだった。
「…ん…」
静夜が眠りながら唐突に声ともつかない謎の声を発し、探るように腕を伸ばして正面から久遠を引き寄せてきた。位置の関係で静夜の方が自分の胸に顔を埋める体勢になる。そして腰の後ろに手が回され…
ぎゅううううっ
「んう…!!」
久遠は息ができないほど強く抱きすくめられた。
(あっ…こ、これは…!)
瞬時に蘇ったのは、初めてひとつの寝床で目覚めたあの朝の記憶だ。
「…ん」
静夜は力を緩めると、あのときと同じように満足げな息を吐いてまたおとなしく寝息を立て始めた。変わらないその執念と情の深さに今は一途で不器用な想いが感じられる。
(僕はここにいる。もう二度と離れないからそんなに心配するな…)
可愛らしくちょっと変わった愛情表現もいつでもまるごと受け止める覚悟の久遠だった。
そうして一緒にぬくぬくとまどろんでいるとやがて静夜が首を動かしたので、目を覚ましたのだとわかる。
「久遠…?俺…いつの間に…」
「起きなくていい。まだゆっくりしてろ」
「…うん」
静夜が身じろぎと深呼吸をすると、小動物たちも一匹、また一匹と目を開けて身体を伸ばしたり毛繕いを始めたりした。静夜は目を細めた。
「…いい匂いがする…」
「僕たち専用の花のベッドだからな」
「いや…そうじゃなくて、君の匂いだ」
「え?」
怪訝に思い顎の下の辺りを覗き込むと、静夜は鼻先を自分の胸にすり寄せてくんくんさせている。
「陽の当たる庭みたいな…よく乾いた洗濯物みたいないい匂いがしてる」
「お褒めに預かり光栄です…なんてね」
二人は花びらに埋もれながらくすくすと低い笑みを交わした。
「…久遠、俺は君に謝らないと…」
「え?」
突然そう言われても、久遠に思い当たる節はない。さらに怪訝な気持ちで静夜の告白を待っていると、彼は自分の胸に顔を隠してぼそっとささやいた。
「昨日は邪険にしてすまなかった…夜遅くなっても本当はここに帰ってきたかったけど…君の優しさにあまり甘えてはいけないと思って…」
「薮から棒に何を言い出すかと思えば、今更そんな他人行儀なこと…ここにはいつでも来てくれって言ったじゃないか」
「でも…」
普段の彼らしくなく弱気で不安そうな様子に久遠は心をくすぐられ、慰めるように彼の肩をとんとんと叩いた。
「おまえはちょっと人に甘えなさすぎだ。頑張るのは立派だけど、もっと肩の力を抜いて、ときどきは自分を休ませることを最優先しろ。しっかり休んだ方がいい仕事ができるって言うからな」
「ありがとう、久遠…」
久遠は静夜をあやし、静夜は久遠に甘えて、二人はようやく寂しさを癒したのだった。
「…いつの間にかここは俺が『帰る』場所になってる…いつでも、どこにいても、君のいるこの場所に帰りたいと思ってる…生まれ故郷も育った場所も失くした自分には、この世に安住の地などないと思ってたのに…」
「ここはとっくにおまえの家だ。みんなおまえの帰りを待ってる…一番待ってるのはこの僕だ」
「…俺はずっとここに暮らしてもいい、と?」
「もちろん。…僕も、おまえの帰る場所でありたい…」
小さくも暖かい家と手作りの食事、そして待っていてくれる人…これ以上の幸せが果たしてあるだろうか。
「…久遠」
「ん?」
「実は昼食を取る暇がなくて、腹が空いた…君の作る料理が食べたい…」
顔を見られたくないのか、ますます固くしがみついてくる静夜の子供っぽいしぐさに久遠の胸はときめきっぱなしだった。
「わかった、すぐ作るよ。ただし献立はお任せな。さあ、ごはんにありつきたかったらそろそろ僕を解放してくれないか?甘えん坊の大きなちびっ子さん」
「…はい」
唐突に子供扱いされて少し不服そうに眉を寄せながら静夜はおずおずと腕を解いた。
「できたら呼んでやるから、まだ寝てていいよ」
久遠は手伝おうと一緒に身体を起こしかけた静夜を花のベッドに閉じ込めて意気揚々と炊事場に行き、自慢の山羊のミルクと野菜のシチューを作った。それに焼きたての素朴なパンと、人間の静夜のために特別に分けてもらったベーコンを炙って添え、少し早めの夕食を二人でゆっくり、たっぷり楽しんだ。翡翠の屋根で親しげな会話と笑い声が聞かれるのはずいぶん久しぶりのことだった。
翌朝目覚めたとき、すでに空は今にも降り出しそうな曇天だった。
「今日は雨か…」
久遠の寝所は一応板屋根と壁を備えてはいるが、完全に囲われているわけではなく二人分の布団を並べると多少はみ出してしまうので、夜中に降られなくてよかったと静夜は考える。
同じ寝所で夜を過ごしても、二人は素肌はおろか唇すら触れ合わさず、まだ無邪気で綺麗なまま変わらない関係でいた。互いの姿も形も、体温さえも透けて伝わる極薄のベールが二人の間から取り払われるときを黙って待つように。
「降ってくる前に朝ごはんにしよう」
久遠はそう言って地上の炊事場に下りていった。昨夜の残りのパンにチーズとミルク、それにみずみずしい新鮮な果物を食卓に並べる。
「ここのところずっと天気が良かったから、久しぶりに森も潤いそうだな」
静夜が雨の予感に嗅覚を働かせながら言うと久遠はきょとんとした。
「今日は雲居と氷雨の水やりと、風早の掃除の日だぞ。なんだ、知らないのか?」
「…?ああ、初めて聞いた」
「大森林は礎の恩恵のおかげで年中気候が安定してて快適だけど、雨が降らないと困るからときどき雨雲を呼んで草木や土を潤してあげるんだ。雲居と氷雨が協力して必要な分の雨を降らせ、その後に発生する湿った空気を風早が一掃して乾かし、すっきり入れ換える。そうして植物や土は元気を取り戻し、僕たちもさっぱりした気分でまた仕事や修行に出てくってわけ」
「なるほど。それで水やりと掃除か」
久遠の説明のとおり大森林ではほとんど毎日が気持ちのいい晴天だが、水が不足しているとか草木が萎れているということはないので静夜は長らく不思議に思っていた。単純に礎が均衡を保っている証だろうかと推察していたが、実際には原礎たちが自らの故郷を必要に応じていわば手入れし管理しているということだった。たとえ不便で地道であっても、その習慣と努力こそが彼らの故郷を守り次の世代へつなぐための最良の道であり手段であると彼らは心得ているのだ。
(俺も彼らのことを少しは知ったと思ってたが、まだまだ知らないことだらけだな。久遠と一緒に暮らすなら、原礎や大森林のことをもっと学んで理解を深めないと)
まだ触れたことのない原礎たちの文化や習俗といったものにも興味が湧いてくる静夜だった。
朝食を終えると二人は家を片づけ、濡らしたくないものに覆いをかけた。そして再び樹上のデッキに上がり、板屋根の下に座って雨雲が来るのを待った。
そのうちぽつぽつと雨粒が落ちてきたかと思うと、辺りはすぐにさらさらと真っ直ぐに降りしきる雨の帳に包まれた。不思議と不快感や閉塞感のない、かぐわしく涼しげな慈雨だ。それは静夜が何も知らずにこれまで大森林の各所で見てきたのと同じ水やりの光景だった。雨が好きだという人間はあまりいないが、その意味と心地良さを知った今、彼の雨に対する感じ方は変わり始めていた。
(こんな雨なら、ずぶ濡れになるまで打たれても嫌じゃないかもしれないな)
のんびりとした表情で雨空を見上げている久遠と、腕が触れ合っている。好きな人と雨が通り過ぎるのをただ待つだけの時間さえ、名前をつけて飾っておきたいほど美しい。雨は悲しい別れの記憶をも優しく懐に抱いて静かに降り続いた。
ふと久遠がこちらに顔を向けて尋ねてきた。
「なあ静夜、昨日訊きそびれたんだけど」
「うん」
「報告会で言ってた間諜の話ってどうなったの?」
悪気などあるはずもない久遠の問いは彼を否応なく現実に連れ戻す。だが彼は真面目にうなずいた。
「あの後すぐ数人に打診して有志を募った。早い者は昨日のうちに発つ、と」
「そうなんだ」
久遠が口にした間諜というのは、煌狩りの拠点の内情を探るために送り込まれることになった人間たちのことだ。
先だっての三度目の遠征で静夜と俄たちが目的の研究拠点に踏み込んだとき、そこには副首領も団員も博士も誰ひとりとしておらず、煌人が囚われていたはずの煌気移植の筺体も蓋が開け放された状態で中はもぬけの殻、どこを捜しても人っ子ひとり、鼠一匹見つからず、完全に機能を停止して放棄されていたのである。ただ争いが起こった形跡や血痕や死体などもなかった。
結局静夜たちは施設の最深部まで調べた後実験設備を破壊し入り口を封鎖しただけで、囚人の救出や大森林への移送と誘導がなかったため事の運びが早く、帰還も早まることとなった。しかし戦いにならず手間の要る仕事もせずに済んだことを喜ぶ者はひとりもいなかった。帰途の道中、隊員たちの間に流れる空気は重苦しく深刻だった。静夜の目には、誰もおらず何も起こらなかったことの不気味さが皆の顔に影を落としているように映った。かつての同志たちと煌人たちの行方が案じられてならなかった。
ちょうど一日前の報告会でそれを聞いたとき、久遠には静夜の顔に心労の色が濃く表れている理由がわかったのだった。
「煌狩りの内部では今何かが起こっている。それが黄泉の悪事の新たな一手なのか、それとも人間たちの中の問題なのかはわからない…ただ以前永遠が言っていたように、明夜の死がきっかけになった可能性は高い」
いずれ起こり得る事態を予言するかのようだった永遠の指摘を二人は思い出していた。雲上の宮の洞窟でのことだ。
「それで別の砦におまえの部下を数人間諜として潜り込ませることになったってわけだな」
「ああ。今は団員の流入や移動が激しいからうまく紛れ込んでくれるはずだ。危険な任務ではあるが皆有能だから、彼らを信じて早く無事に戻るか知らせをよこしてくれるのを待とうと思う」
「何かわかるといいな。しばらく遠征も見合わせるってことだし、おまえにもいい骨休めになるだろ。文字どおり」
そう言って久遠は静夜の脇腹をちょんちょんと突っつき、白い歯を見せて悪戯っぽく笑った。そして何を思ったか、突然屋根の下から雨の中にぴょんと飛び出した。
「ほら、僕も潤って、元気いっぱい成長しそうだ」
恵みの雨を歓迎する若草のように大きく両腕を広げて見せる。濡れたら風邪を引くぞ、と言いかけたとき、いつの間にか小雨になり空が少しずつ明るくなってきていることに静夜は気づき、デッキの真ん中でくるくる踊っている久遠の愉しげな動きにつられて思わず微笑んだ。いつしかすっかり雨はやみ、久遠の揺れる金髪の房を風早の爽やかな息吹が膨らませ、陽光に輝かせていた。
雨宿りは終わり、空気の入れ換わった気持ちのいい天気の下、覆いを外したり布団を手摺に掛けて干したりと作業にいそしんでいるとき、静夜は久遠に尋ねた。
「そう言えば、永遠がずっとここに帰ってきてないって聞いたんだが、本当なのか?」
「うん。おまえたちが前の遠征に出た直後から樹生の礎主のところにずっとこもって修行してる。実は僕も昨日の報告会で久しぶりに顔を見たんだ」
二人の声や口調はお世辞にも明るいとは言えない。もちろん永遠がただ自宅を離れて熱心に修行しているだけなら二人の表情がこれほど曇るはずはない。久遠が妖精の臥所で目を覚ましたとき永遠はかなり健康と煌気を取り戻しているように見えたが、昨日会った彼女はよほど厳しい修行をしているせいなのか、またもや顔色が悪くやつれ始めていて、二人や暁良をひどく心配させたのだ。ただ永遠自身は何を訊かれても、平気だ、大丈夫だ、と笑ってやんわりとはぐらかすばかりなので、誰もそれ以上しつこく質問を繰り返すことはできなかった。
「生真面目な姉さんのことだから、根を詰めすぎて無理してなきゃいいけど…でも、あれが始まったらきっと外に出てきて、いい息抜きになるはずだよ」
「あれって?」
久遠はぱちりと片目を瞑った。
「それは始まってからのお楽しみ。その前に、今日はこの後一緒に四つ葉の学び舎に行かないか?ちびっ子たちが…特に日月が、おまえが遊びに来てくれるのを首を長くして待ってるんだ」
瑪瑙の窟での一件以来、日月にもらった白詰草の指輪を壊されて失ってしまったことを後ろめたく感じていた静夜だったが、日月のあの笑顔にまた会えるという喜びには抗えず、久遠の誘いに乗ることに決めた。
「…わかった」
言葉は控えめながらも嬉しそうな静夜の返答を受け、久遠もにっこりと破顔した。
修行に仕事、鍛練、そして日々の当たり前の生活と、二人それぞれに忙しく充実した毎日を送る中、静夜は大森林中のあらゆる場所でこれまでになく慌ただしい気配が醸成されているのをひしひしと感じ始めていた。誰もがそわそわと、またうきうきと盛んに各所を行き来しながら、普段とは違う作業にせっせと励んでいる。豊富な物や多くの人が活発に動き、道沿いや広場には見たこともない飾りつけや簡素な造りの屋台のようなものが日ごとに増えていった。いったい何が始まろうとしているのか、自ら体験したことのない静夜には見当もつかなかった。
そんなある日、久遠は静夜を朝から散歩に連れ出した。刹那と遥の墓参りに始まり、薄暮の森、掬星ヶ淵といった外縁部の比較的落ち着いた人気の少ない場所をめぐって森の中心の方へ戻ってくると、次第に視界には華やかな装飾や看板が、耳には賑やかで楽しげな音楽と歓声が舞い込み始めた。すれ違う原礎たちは皆笑顔でさんざめき、その脇を髪や服に手作りの奇抜な飾りをつけた子供たちが競うように駆け抜けていく。これほど浮き足立っている原礎たちの姿を見るのは初めてなので、静夜は少々呆気に取られて久遠に尋ねた。
「…久遠、何か騒がしいようだが、これは…皆、いったいどうしたんだ?」
ぱっと振り向いた久遠は、戸惑って立ち止まる静夜を誘うように、つないだ手をしっかりと握って引いた。そしてエメラルドの瞳を高揚感に輝かせながら答えた。
「今日は年に一度の祝祭の日…星の恵みと命に感謝する“星祭り”の日だよ」
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