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#1同棲契約
沈黙
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温かい感触が頬に当たる。心地よい温かさにぼんやりと夢から覚めると、目の前に大きな壁があった。ゆっくりと上を見ると相沢さんの顔があった。
記憶がない。抱き締められた状態で寝ている。
状況を理解しようと考えると体温が一気に上がった。
「な、相沢さん。ここは私の」
「起きたのか。」
切れ長の目が薄く開かれた。慌てて胸を押して距離を取った。
自分の服は乱れてないし、カーテンはしっかりと閉められてる、それに私は布団で寝てる。横に相沢さんがいることに理解が追い付かない。
服はパジャマに着替えている。自分で着替えたのか。
「顔が赤いな。」
「も、も、もしかして」
目に掛かっている髪をよけ、じっとこちらを見ている。
「ん?あぁ、昨日の晩は」
いやいやいや、少女漫画にしか見たことない展開。脇役の私には到底ない。
あり得ない。
「かなり酔っていたからな。」
私が酒に酔って床ドンしたのは覚えてる。その後に、ベッドに行こうって言われて。どうしたっけ。じんわりと記憶が蘇ってきた。
―そんな顔初めてみた。
上から見下ろしている顔を思い出す。やっぱり。
「一生の不覚。酒に酔ってあんな事態に。本当にすみませんでした」
ベッドの上に土下座をすると彼は天井を見上げた。
「昨日の晩はあつかったな」
顔がかっとなる。相沢さんは窓の向こうを見て背を向けていた。
「恥ずかしい。死にそう。私、変なこと言ってませんでした?」
「いや、早く朝ごはんにするぞ。」
頭をポンとして部屋を出ていった。
お昼休みに影山ちゃんがサラダを頬張って言った。
「浅田先輩、昨日は大変でしたよぉ。片付けとか荷物準備したんですからぁ。」
「ごめんごめん」
顔の前で手を合わせて詫びた。
「スイーツおごりですからねぇ。それと、本当に嫉妬します。
浅田先輩だってさばさばしてるキャリアウーマン風でやってるのに、やるときはやるんですね。」
影山ちゃんが頬を膨らませた。
「何がよ」
「いいですねぇ、相沢さんがおぶって帰ったんですよぉ。
『俺が運んで帰るから。お会計はこれで二人分。』ってお札置いて。
私の王子様がぁー。どういった関係ですか。相沢さんって浅田さんの家知ってるんですか。」
きぃーっと聞こえそうに影山ちゃんが首を振る。
「一度、用事で家の場所を教えたんだよ。何もないって」
「なぁーんだ。じゃあ、あたしがアピールしてもいいですよね」
影山ちゃんはいかにも女の子って感じで、私が男でもやっぱり可愛いと思ってしまう。顔をあげると丁度向こうから相沢さんが歩いてきた。
すぐ側の給湯室でコーヒーをマグカップにいれていた。
影山ちゃんが走り寄り、横に並んだ。
小柄な影山ちゃんは悔しいけど正直お似合い。無邪気な笑顔で話しかけた。
「相沢さんお疲れ様です。」
「お疲れ様。」
仏頂面を彼女に向けた。
彼女はずいっと近づくと相沢さんの腕にさりげなく触れた。
「あのぉ、相沢さんって実は珈琲が好きだって山寺さんから聞いたんですけど。今度良かったら美味しい珈琲屋さんに一緒に行きませんか。
私、美味しいところ知ってるんですよ。」
山寺というのは隣の島の部長だ。
相沢さんは女性に意外に弱く、仕事以外のときは基本的には話さない。
「あぁ、ええと。いや」
明らかに困惑している。手をとって影山ちゃんが上目遣いに言う。
「いいですよね?土曜日明けといてくださいね」
影山ちゃんは上機嫌でこちらに戻ってきた。
頬を少し赤くしている相沢さんと影山ちゃんの肩越しに目がパチリと合った。目を逸らそうとすると、僅かにこちらへニヤリと笑った。
記憶がない。抱き締められた状態で寝ている。
状況を理解しようと考えると体温が一気に上がった。
「な、相沢さん。ここは私の」
「起きたのか。」
切れ長の目が薄く開かれた。慌てて胸を押して距離を取った。
自分の服は乱れてないし、カーテンはしっかりと閉められてる、それに私は布団で寝てる。横に相沢さんがいることに理解が追い付かない。
服はパジャマに着替えている。自分で着替えたのか。
「顔が赤いな。」
「も、も、もしかして」
目に掛かっている髪をよけ、じっとこちらを見ている。
「ん?あぁ、昨日の晩は」
いやいやいや、少女漫画にしか見たことない展開。脇役の私には到底ない。
あり得ない。
「かなり酔っていたからな。」
私が酒に酔って床ドンしたのは覚えてる。その後に、ベッドに行こうって言われて。どうしたっけ。じんわりと記憶が蘇ってきた。
―そんな顔初めてみた。
上から見下ろしている顔を思い出す。やっぱり。
「一生の不覚。酒に酔ってあんな事態に。本当にすみませんでした」
ベッドの上に土下座をすると彼は天井を見上げた。
「昨日の晩はあつかったな」
顔がかっとなる。相沢さんは窓の向こうを見て背を向けていた。
「恥ずかしい。死にそう。私、変なこと言ってませんでした?」
「いや、早く朝ごはんにするぞ。」
頭をポンとして部屋を出ていった。
お昼休みに影山ちゃんがサラダを頬張って言った。
「浅田先輩、昨日は大変でしたよぉ。片付けとか荷物準備したんですからぁ。」
「ごめんごめん」
顔の前で手を合わせて詫びた。
「スイーツおごりですからねぇ。それと、本当に嫉妬します。
浅田先輩だってさばさばしてるキャリアウーマン風でやってるのに、やるときはやるんですね。」
影山ちゃんが頬を膨らませた。
「何がよ」
「いいですねぇ、相沢さんがおぶって帰ったんですよぉ。
『俺が運んで帰るから。お会計はこれで二人分。』ってお札置いて。
私の王子様がぁー。どういった関係ですか。相沢さんって浅田さんの家知ってるんですか。」
きぃーっと聞こえそうに影山ちゃんが首を振る。
「一度、用事で家の場所を教えたんだよ。何もないって」
「なぁーんだ。じゃあ、あたしがアピールしてもいいですよね」
影山ちゃんはいかにも女の子って感じで、私が男でもやっぱり可愛いと思ってしまう。顔をあげると丁度向こうから相沢さんが歩いてきた。
すぐ側の給湯室でコーヒーをマグカップにいれていた。
影山ちゃんが走り寄り、横に並んだ。
小柄な影山ちゃんは悔しいけど正直お似合い。無邪気な笑顔で話しかけた。
「相沢さんお疲れ様です。」
「お疲れ様。」
仏頂面を彼女に向けた。
彼女はずいっと近づくと相沢さんの腕にさりげなく触れた。
「あのぉ、相沢さんって実は珈琲が好きだって山寺さんから聞いたんですけど。今度良かったら美味しい珈琲屋さんに一緒に行きませんか。
私、美味しいところ知ってるんですよ。」
山寺というのは隣の島の部長だ。
相沢さんは女性に意外に弱く、仕事以外のときは基本的には話さない。
「あぁ、ええと。いや」
明らかに困惑している。手をとって影山ちゃんが上目遣いに言う。
「いいですよね?土曜日明けといてくださいね」
影山ちゃんは上機嫌でこちらに戻ってきた。
頬を少し赤くしている相沢さんと影山ちゃんの肩越しに目がパチリと合った。目を逸らそうとすると、僅かにこちらへニヤリと笑った。
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