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第四章
28 療養院で母と対峙2
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ノアの母アイラは、個室のベッドの上で静かに読書を楽しんでいた。手に取った書籍は古い詩集のようで、淡い色彩で装飾された表紙を指先で撫でる姿が印象的だった。長い亜麻色の髪は緩やかにまとめられ、儚げな容姿と相俟って、触れたら折れてしまいそうな脆さを感じさせた。
ノアたちが部屋の中に入ってきても、特に変わった様子を見せない。ただ穏やかな笑みを湛えながら、来訪者たちを迎え入れてくれた。
「奥様、今日はノア様がお見えになりました」
シモンが丁寧に説明すると、彼女はゆるりと首を傾け、嬉しそうな表情を浮かべた。澄んだ湖面を思わせる青灰色の瞳には喜びの光が灯っている。端正な美貌を華やかな笑みが彩った。
「まあ、嬉しいわ。ノアに直接会えるなんて」
アイラは心底幸福そうな声音で言った。昔と同じ優しい声だった。心臓が軋むような痛みを一種だけ感じる。どんな言葉を口にしてよいのか、ノアは迷った。
「……母上、ご無沙汰しております」
「ふふ、ノアったら少し大きくなったかしら。何年ぶり?5年くらい?それ以上かしら。会いたかったし、寂しかったわ。最近の貴方の様子が分からなくて、心配していたのよ」
母は楽しげに微笑んだまま、ノアの挨拶に応じてくれた。記憶の中の母と何も変わっていない。いや、少し老けたか。それでも充分に美しい人だった。しかし、その外見に比べて精神的には脆さが垣間見える。
「奥様、今日はお忍びですが、こちらの御方もご同伴させていただいています。ルシフェン王国第二王子、サミュエル殿下です」
「初めまして、ルシフェン王国第二王子、サミュエル・ユーリアス・ルシフェン・ウォルフォードです。どうぞ、お見知り置きを」
サミュエルが恭しく跪く。その洗練された所作は貴公子の名に恥じぬものだった。見惚れるほどの麗しさである。純金に似た黄金色の髪がサラサラと揺れ、穏やかな碧玉の瞳が宝石のように煌めいている。
「殿下、遠路遥々ようこそお越しくださいました。アイラ・エル・オルコットと申します。此度のご訪問誠にありがとうございます。歓迎いたしますわ。このような格好でのご挨拶となりますことを、お許しくださいませ」
アイラはふんわりとした微笑みを携えて、鈴を転がすような可愛らしい声でサミュエルに応じた。育ちの良い婦人のたおやかな佇まいだった。
ノアはぼんやりと母を見つめていた。会うまでは恐怖を覚えていたのに、実際に逢うと以前のような苦しい感情はあまり湧いてこない。自分でも驚く程穏やかな気持ちだった。母の笑顔を見られたことは嬉しかったが、それだけだ。時間がノアの感情を麻痺させたのか、あるいは自己防衛本能によるものか。
「ノアが何か失礼なことをしていないですか?王子殿下を煩わせていましたら、申し訳ございません」
アイラが眉尻を下げ、少し憂いを帯びた眼差しをサミュエルに向ける。
「いえ、そのようなことはありませんよ。ノアは大変聡明かつ努力家でいらっしゃいます。彼の献身と勤勉さには、私も励まされています」
「本当ですか?殿下にそこまで評価していただけるなんて、嬉しいわ。よかったわね、ノア」
アイラの表情がぱっと花咲くような笑顔になった。天使のような可憐さがある。
ノアは苦笑いを浮かべるしかなかった。いつまでも茶番劇を続ける気になれなかったので、本題に入ることにする。
「母上、今日は母上にお訊ねしたいことがあります」
「あら、なぁに?」
「兄さんが、ここへ最後に訪れたのはいつですか?」
ノアは母に向かって直球を投げた。寄り道をするつもりはない。
ノアの質問に、シモンは僅かに眉を顰める。アイラは目を見開き、戸惑ったような表情を浮かべた。
「……確かにマティアスはたまにここへ来るけれど、誰も信じてくれないねよ。妄想だと言われてしまうの。でも、ノアは信じてくれるの?」
「はい、信じます」
即答するとアイラが驚いたように瞬きし、嬉しそうに微笑んだ。
「……マティアスが行方不明っていうのは嘘ね。だって定期的にここに来て、ノアの様子を教えてくれるもの。ノアは努力家で、毎日とっても頑張っていて偉いって、マティアスは褒めていたわ」
アイラは楽しそうに語りはじめた。自分の話に酔っているようにも見える。ノアは黙って彼女の話を聞いていた。そんな自分の評価は始めて耳にする。
「食事が疎かになりがちだから、見張っておかないと駄目だとか。外ではきちんとしているけれど、実は身支度は手伝わないといけないとか。自分の部屋では服を脱ぎ散らかして片付けもしないとか。学園では品行方正で成績優秀な優等生だけど、意地っ張りでプライドが高いから、ノアの優しさが伝わらなくて友だちができないだとか。寂しがり屋で夜は一人で眠れないみたいだから、一緒に寝てあげないといけないとか。色々……本当にたくさん、貴方のことを教えてくれたのよ。
勿論、ノアだけじゃなくて、貴方のお父様やお姉様のことも知らせてもらったわ。旦那様も昔と同じようにお元気で活躍しているって……それから……」
アイラは堰を切ったように笑顔で話し続けた。ノアにとって、恥ずかしくて人に知られたくないような醜態ばかり暴露されて、居た堪れなくなる。
シモンは微妙な顔で俯き、必死に笑いを噛み殺しているようだった。サミュエルは興味深そうに聞いてくれたが、後で詳細な事情聴取がありそうだ。
「母上、兄さんの様子に変わったところはありませんでしたか?昔と違って、乱暴な言葉遣いになっていたとか」
ノアは慌てて話を逸らそうとした。これ以上赤っ恥を晒したくなかったのもある。
「昔と全く変わりないわよ。穏やかで優しくて気品があって。でも、私はマティアスから嫌われてるのよ。昔からあの子にはいつも睨まれていたの。ノアへの接し方についてよく叱られたわ。もっとそのままのノアを大切にして欲しいって。まだ説教してくるのよ。私はノアの幸せを願って行動していたけれど、マティアスはノアの人生の幸せはノアが決めるべきだといつも怒っていたわ」
「……兄さんらしいですね」
「ね、おかしいでしょう。私を忌み嫌うくせに、わざわざ足を運んでまで、そんなことを伝えに来るのよ」
アイラは哀しげに微笑んだ。その表情が何故か痛々しく見えて、ノアは胸の奥が締め付けられるような苦しさを感じた。
それから少しだけ、彼女のところへ定期的に訪れる『マティアス』について話した。「本当は内緒なんだけど」と言われながら、普段彼が何処にいて何をしているのか、聞かせてもらった。
欲しかった情報は手に入った。これ以上、この場にいる必要はない。
「母上、今日はありがとうございました。久しぶりに会えて楽しかったです。また、時間があるときに伺います」
ノアは穏やかに嘘をついた。もうこの場所に来るつもりはないし、母に会うことなどないだろう。
「待って、ノア」
踵を返そうとするノアを、アイラの弱々しい声が呼び止めた。
「何でしょうか?」
「ごめんなさい」
ノアが振り返ると、彼女は懇願するような眼差しでこちらを見つめながら謝罪してきた。切羽詰まった必死な表情だった。
ノアはどう反応したら良いのか分からなくなる。
「私は貴方を愛していたし、今も愛しているわ。けれど、私の愛情表現が間違っていたことを今は理解してるの。私は幼い貴方をものすごく傷付けてしまった。本当にごめんなさい。でも、あのとき、ああすることでしか、貴方を救うことができないと信じていた。だから……」
「母上」
アイラは涙ながらに訴えてくる。彼女の言葉には真実味があった。本心からの懺悔なのだと感じた。
もしかしたら、彼女の中で何かが変わったのかもしれない。それは、医師による治療の成果か、歳月を経て成熟した精神の賜物なのか、あるいは、この場所に何度も足を運んでくれた『マティアス』のお陰なのか。
しかし、それが頭では理解できても、感情面では受け入れられない部分も多いのだ。
「……母上は、今、私の手を握ることが出来ますか?」
「できるわよ。手を出してくれる?」
ノアが躊躇いがちに差し出した両手を、彼女が優しく包み込む。温もりを感じた。小さい頃、まだノアの魔力属性が判明する前に繋いで貰った柔らかな感触と同じだった。懐かしさに、思わず泣きそうになってしまう。
「母上、貴方の愛情は伝わっていましたし、私も貴方を愛していました」
「ノア……」
多分、正解は母の謝罪を受け入れて赦すことなのだろう。マティアスなら、そうする。サミュエルも同じことを望んでいるかもしれない。
しかし、今の未熟なノアにはそれが難しい。何十年分の隔たりは、一度の邂逅だけで埋まるものではない。お互いに深淵を覗き過ぎたせいかもしれない。過去の傷跡が疼くようで、思考がどうしても重いほうへ偏ってしまう。
「……私は今でも他人との接触が怖いし、人前で笑うこともできません。貴方のせいです」
「……」
ノアの呟いた言葉を聞いて、アイラの表情が強張った。その顔には深い悲しみが刻まれていた。けれど彼女は何も言わない。ノアに好き勝手に喋らせるつもりのようだ。沈黙を選んだ。
ノアはゆっくりと母の手を振りほどいた。そして、距離を取りながら静かに口を開く。自分でも驚く程冷静な声が出た。
謝罪されなかったら、嘘をついたまま別れていた。
恐らくこの選択は正しくない。単なる八つ当たりだ。間違いなく母は傷付き、ダメージを負うだろう。それでも、ノアは自分の中にある憤りを抑えられなかった。
辛く苦しかったときに、自分を救ってくれたのは、この人ではない。
「今更謝られても、私は貴方を絶対に赦さない。今の私に貴方は必要ない。なので、貴方とはこれでお別れです。さようなら」
ノアたちが部屋の中に入ってきても、特に変わった様子を見せない。ただ穏やかな笑みを湛えながら、来訪者たちを迎え入れてくれた。
「奥様、今日はノア様がお見えになりました」
シモンが丁寧に説明すると、彼女はゆるりと首を傾け、嬉しそうな表情を浮かべた。澄んだ湖面を思わせる青灰色の瞳には喜びの光が灯っている。端正な美貌を華やかな笑みが彩った。
「まあ、嬉しいわ。ノアに直接会えるなんて」
アイラは心底幸福そうな声音で言った。昔と同じ優しい声だった。心臓が軋むような痛みを一種だけ感じる。どんな言葉を口にしてよいのか、ノアは迷った。
「……母上、ご無沙汰しております」
「ふふ、ノアったら少し大きくなったかしら。何年ぶり?5年くらい?それ以上かしら。会いたかったし、寂しかったわ。最近の貴方の様子が分からなくて、心配していたのよ」
母は楽しげに微笑んだまま、ノアの挨拶に応じてくれた。記憶の中の母と何も変わっていない。いや、少し老けたか。それでも充分に美しい人だった。しかし、その外見に比べて精神的には脆さが垣間見える。
「奥様、今日はお忍びですが、こちらの御方もご同伴させていただいています。ルシフェン王国第二王子、サミュエル殿下です」
「初めまして、ルシフェン王国第二王子、サミュエル・ユーリアス・ルシフェン・ウォルフォードです。どうぞ、お見知り置きを」
サミュエルが恭しく跪く。その洗練された所作は貴公子の名に恥じぬものだった。見惚れるほどの麗しさである。純金に似た黄金色の髪がサラサラと揺れ、穏やかな碧玉の瞳が宝石のように煌めいている。
「殿下、遠路遥々ようこそお越しくださいました。アイラ・エル・オルコットと申します。此度のご訪問誠にありがとうございます。歓迎いたしますわ。このような格好でのご挨拶となりますことを、お許しくださいませ」
アイラはふんわりとした微笑みを携えて、鈴を転がすような可愛らしい声でサミュエルに応じた。育ちの良い婦人のたおやかな佇まいだった。
ノアはぼんやりと母を見つめていた。会うまでは恐怖を覚えていたのに、実際に逢うと以前のような苦しい感情はあまり湧いてこない。自分でも驚く程穏やかな気持ちだった。母の笑顔を見られたことは嬉しかったが、それだけだ。時間がノアの感情を麻痺させたのか、あるいは自己防衛本能によるものか。
「ノアが何か失礼なことをしていないですか?王子殿下を煩わせていましたら、申し訳ございません」
アイラが眉尻を下げ、少し憂いを帯びた眼差しをサミュエルに向ける。
「いえ、そのようなことはありませんよ。ノアは大変聡明かつ努力家でいらっしゃいます。彼の献身と勤勉さには、私も励まされています」
「本当ですか?殿下にそこまで評価していただけるなんて、嬉しいわ。よかったわね、ノア」
アイラの表情がぱっと花咲くような笑顔になった。天使のような可憐さがある。
ノアは苦笑いを浮かべるしかなかった。いつまでも茶番劇を続ける気になれなかったので、本題に入ることにする。
「母上、今日は母上にお訊ねしたいことがあります」
「あら、なぁに?」
「兄さんが、ここへ最後に訪れたのはいつですか?」
ノアは母に向かって直球を投げた。寄り道をするつもりはない。
ノアの質問に、シモンは僅かに眉を顰める。アイラは目を見開き、戸惑ったような表情を浮かべた。
「……確かにマティアスはたまにここへ来るけれど、誰も信じてくれないねよ。妄想だと言われてしまうの。でも、ノアは信じてくれるの?」
「はい、信じます」
即答するとアイラが驚いたように瞬きし、嬉しそうに微笑んだ。
「……マティアスが行方不明っていうのは嘘ね。だって定期的にここに来て、ノアの様子を教えてくれるもの。ノアは努力家で、毎日とっても頑張っていて偉いって、マティアスは褒めていたわ」
アイラは楽しそうに語りはじめた。自分の話に酔っているようにも見える。ノアは黙って彼女の話を聞いていた。そんな自分の評価は始めて耳にする。
「食事が疎かになりがちだから、見張っておかないと駄目だとか。外ではきちんとしているけれど、実は身支度は手伝わないといけないとか。自分の部屋では服を脱ぎ散らかして片付けもしないとか。学園では品行方正で成績優秀な優等生だけど、意地っ張りでプライドが高いから、ノアの優しさが伝わらなくて友だちができないだとか。寂しがり屋で夜は一人で眠れないみたいだから、一緒に寝てあげないといけないとか。色々……本当にたくさん、貴方のことを教えてくれたのよ。
勿論、ノアだけじゃなくて、貴方のお父様やお姉様のことも知らせてもらったわ。旦那様も昔と同じようにお元気で活躍しているって……それから……」
アイラは堰を切ったように笑顔で話し続けた。ノアにとって、恥ずかしくて人に知られたくないような醜態ばかり暴露されて、居た堪れなくなる。
シモンは微妙な顔で俯き、必死に笑いを噛み殺しているようだった。サミュエルは興味深そうに聞いてくれたが、後で詳細な事情聴取がありそうだ。
「母上、兄さんの様子に変わったところはありませんでしたか?昔と違って、乱暴な言葉遣いになっていたとか」
ノアは慌てて話を逸らそうとした。これ以上赤っ恥を晒したくなかったのもある。
「昔と全く変わりないわよ。穏やかで優しくて気品があって。でも、私はマティアスから嫌われてるのよ。昔からあの子にはいつも睨まれていたの。ノアへの接し方についてよく叱られたわ。もっとそのままのノアを大切にして欲しいって。まだ説教してくるのよ。私はノアの幸せを願って行動していたけれど、マティアスはノアの人生の幸せはノアが決めるべきだといつも怒っていたわ」
「……兄さんらしいですね」
「ね、おかしいでしょう。私を忌み嫌うくせに、わざわざ足を運んでまで、そんなことを伝えに来るのよ」
アイラは哀しげに微笑んだ。その表情が何故か痛々しく見えて、ノアは胸の奥が締め付けられるような苦しさを感じた。
それから少しだけ、彼女のところへ定期的に訪れる『マティアス』について話した。「本当は内緒なんだけど」と言われながら、普段彼が何処にいて何をしているのか、聞かせてもらった。
欲しかった情報は手に入った。これ以上、この場にいる必要はない。
「母上、今日はありがとうございました。久しぶりに会えて楽しかったです。また、時間があるときに伺います」
ノアは穏やかに嘘をついた。もうこの場所に来るつもりはないし、母に会うことなどないだろう。
「待って、ノア」
踵を返そうとするノアを、アイラの弱々しい声が呼び止めた。
「何でしょうか?」
「ごめんなさい」
ノアが振り返ると、彼女は懇願するような眼差しでこちらを見つめながら謝罪してきた。切羽詰まった必死な表情だった。
ノアはどう反応したら良いのか分からなくなる。
「私は貴方を愛していたし、今も愛しているわ。けれど、私の愛情表現が間違っていたことを今は理解してるの。私は幼い貴方をものすごく傷付けてしまった。本当にごめんなさい。でも、あのとき、ああすることでしか、貴方を救うことができないと信じていた。だから……」
「母上」
アイラは涙ながらに訴えてくる。彼女の言葉には真実味があった。本心からの懺悔なのだと感じた。
もしかしたら、彼女の中で何かが変わったのかもしれない。それは、医師による治療の成果か、歳月を経て成熟した精神の賜物なのか、あるいは、この場所に何度も足を運んでくれた『マティアス』のお陰なのか。
しかし、それが頭では理解できても、感情面では受け入れられない部分も多いのだ。
「……母上は、今、私の手を握ることが出来ますか?」
「できるわよ。手を出してくれる?」
ノアが躊躇いがちに差し出した両手を、彼女が優しく包み込む。温もりを感じた。小さい頃、まだノアの魔力属性が判明する前に繋いで貰った柔らかな感触と同じだった。懐かしさに、思わず泣きそうになってしまう。
「母上、貴方の愛情は伝わっていましたし、私も貴方を愛していました」
「ノア……」
多分、正解は母の謝罪を受け入れて赦すことなのだろう。マティアスなら、そうする。サミュエルも同じことを望んでいるかもしれない。
しかし、今の未熟なノアにはそれが難しい。何十年分の隔たりは、一度の邂逅だけで埋まるものではない。お互いに深淵を覗き過ぎたせいかもしれない。過去の傷跡が疼くようで、思考がどうしても重いほうへ偏ってしまう。
「……私は今でも他人との接触が怖いし、人前で笑うこともできません。貴方のせいです」
「……」
ノアの呟いた言葉を聞いて、アイラの表情が強張った。その顔には深い悲しみが刻まれていた。けれど彼女は何も言わない。ノアに好き勝手に喋らせるつもりのようだ。沈黙を選んだ。
ノアはゆっくりと母の手を振りほどいた。そして、距離を取りながら静かに口を開く。自分でも驚く程冷静な声が出た。
謝罪されなかったら、嘘をついたまま別れていた。
恐らくこの選択は正しくない。単なる八つ当たりだ。間違いなく母は傷付き、ダメージを負うだろう。それでも、ノアは自分の中にある憤りを抑えられなかった。
辛く苦しかったときに、自分を救ってくれたのは、この人ではない。
「今更謝られても、私は貴方を絶対に赦さない。今の私に貴方は必要ない。なので、貴方とはこれでお別れです。さようなら」
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