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14 本性※
しおりを挟む帰宅するなり、蓮に抱き締められ噛み付くようなキスをされた。
玄関前でハグされるのはいつものことだが、今日の蓮はいつにも増して性急で様子がおかしい。朝、出かけるときはにこやかに送り出してくれたのに、何故帰ってきた途端こんなことになっているんだろう。
「は、……んぁ」
角度を変え何度も繰り返される深い口づけに、呼吸が乱れていく。
「れん、話がっ……」
息継ぎの合間にやっと紡いだ声は、すぐに蓮によって遮られた。蓮は俺の声にならない声ごと飲み込むかのように口を塞ぐ。舌を吸われ、上顎を舐められ、蓮の指先が耳裏や項をなぞっていく。その度に体の中に快感が溜まっていくようで、俺は体を捩った。
「なんで、……あっ、いきなり、……盛って」
「あの男、誰?」
蓮はようやく唇を解放したが、至近距離にあるその目は笑っていなかった。
一瞬誰のことを言われているのか分からず戸惑っていると、シャツの隙間から直接腰を触られて、肌が粟立つ。
「ひぁっ!おまっ、どこ、さわって、……うぅっ」
既に固く立ち上がっていた胸の先端を押しつぶされ、思わず声が出る。膝がガクガクして立っていられず、俺は玄関扉に寄りかかった。何事もなかったように俺を無視してそのまま乳首を攻め立ててくる蓮に恐怖すら感じる。
俺は力の入らない手で蓮の腕を掴んだ。
「れ、蓮、…なんで怒って、あっ、そこ、止めろって……」
「質問に答えて。今朝、車で迎えに来たスーツの男だよ」
「さ、沢渡さんのこと?」
蓮の嫉妬深さに辟易しながらも、俺は素直に答える。蓮は苛立たしげに眉を寄せた。
「沢渡?知らない名前だ。親しいの?」
「ん、いや、全く、親しくはないよ。母さんの知り合いってか、元婚約者で……」
「元婚約者?何それ」
俺の乳首を弄り倒していた蓮の動きが止まり、思わず力が抜ける。蓮から怪しむような視線を投げかけられる。
「何でそんな人が樹を迎えに来るわけ?」
「えっと、その、家族に会って欲しいって言われて……、痛いっ!」
突然両方の乳首をぎゅっとつねられ、痛みに悲鳴を上げる。
「スーツ来て、相手の家族と会ったのか?なあ、それおかしくね?」
「違うって!お前っ、ふざけんなよ!痛ぇだろーがっ」
俺は半泣きになりながら、蓮の手を払いのけた。
「……ああもう。何で俺が浮気したみたいに責められないといけないんだよ。お前、俺のこと、信用してないのかよ」
「してるよ。してるけど、不安になるんだよ」
蓮はそう言って、苦しそうに顔を歪めた。
「お前、逆の立場になってみろよ。休日に『帰ったら大事な話がある』とか意味深なこと言われて送り出してみれば、見知らぬ相手と親しげに話して相手の車に乗って出かけられて、こっちは何も聞かされてなくて、いつまでたっても帰ってこなくて」
「嫌だ」
「即答かよ。だったら俺の気持ちも分かるだろうが」
「……分かった、ごめん。次からちゃんと事前に話す」
蓮は俺の肩口に顔を埋めて、俺の背中に回した腕の力を強めた。
「……蓮、とりあえず中に入らせてくれないか。ここ玄関だし」
引っ付き虫になっている蓮を引き剥がそうとするが、蓮は一向に離れようとしない。
「おい、いい加減にしろって」
「……このままベッドに運んでいいか?なんかもう、いろいろ考えすぎて疲れた。我慢できない」
「は!?ちょっ、待って、待て待て待て」
蓮は俺を横抱きにして寝室へ向かおうとする。俺は必死に抵抗したが、俺の身体に巻き付いた蓮の腕はびくともしなかった。
「俺まだ風呂入ってないし、着替えたりもしたいんだけど!!」
「じゃあ、一緒に入る」
「絶対ヤダ」
「なんで」
「なんでも何も、俺、絶対襲われるじゃん」
「じゃあ、今すぐここでひん剥いて、ヤる」
蓮が静かに宣言する。やっぱり怒っていやがる。目がマジだ。俺は戦慄した。
「わ、分かった。一緒に入る。だから、ちょっと、落ち着け」
結局俺が折れた。
***
浴室で全身を洗われ、解され、突っ込まれ、中で出され、また綺麗にされて……という作業を繰り返しているうちに、俺は心身ともに疲れ切っていた。
蓮は一度好き勝手にヤッて少し落ち着いたのか、今は俺を後ろから抱え込んで大人しく一緒に浴槽に浸かっている。2人で入ると流石に狭い。
「……お前さ、『運命の番』ってまだ信じてんの?」
「俺の『運命の番』は樹だって前も言ったじゃん」
蓮の手が不穏に動き始めたので、俺は慌ててその手を掴んだ。
「……違うって分かってるんだろ?」
「何が」
「俺がお前の『運命の番』じゃないってこと」
「……俺は本気で樹だと思ってんだけどな」
蓮は拗ねるように唇を尖らせると、掴まれた俺の手を振りほどき、再び俺の胸の突起を摘まんできた。
「んぁっ!……もう、お前今日そこばっかり」
涙目で抗議するが、蓮は全く聞く耳を持たない。そのまま敏感な場所を弄られ続けて、俺は身体を震わせた。
「……俺がもし、世間一般で言う『運命の番』に出会っても、俺は樹を選んで一緒にいるから。だから、そんな心配するなよ」
蓮は俺の耳元で優しく言い聞かせてくるが、指先は俺の乳首を執拗に捏ねくり回している。しかも俺の尻には、何故か再び臨戦態勢になっている奴の硬くなったモノがガッツリ当たっている。
何コレ。全然説得力がないんだけど。
「言っておくけど、樹も逃さないからな。他の『運命』に出会ったとかぬかして別れ話されたら、監禁して閉じ込めてやる」
「怖いわ!怖すぎるだろ!!」
俺の叫びを無視して、蓮は首筋に吸い付いてきた。そのまま抱き締められる。
「……俺の本性はこんな感じだよ。嫉妬深くて、独占欲が強くて、束縛しまくる男だ。幻滅した?」
蓮は俺の首筋に顔を埋めたまま、ぼそりと呟いた。
「……いや、蓮のことはよく分かってるし……」
むしろその執着が嬉しいくらいだが、それを素直に伝えるには恥ずかしい。俺が誤魔化すように言葉を濁すと、蓮は顔をあげて小さく笑った。
「樹、俺も一緒だよ」
俺の頬を包みこんで額を合わせてくる。
「大丈夫だよ。俺も樹のことはよく分かってる。樹が本性曝け出してくれても、俺も全部ちゃんと受け止めてあげるから。」
蓮はそう言って柔らかく笑うと、唇を重ねてきた。何度も啄むように繰り返されるキスに、心が満たされていく。
俺は溜まらなくなり、身体を反転させて蓮の上に跨ると、硬くなっていた蓮の昂りに手を添えて、自分の後孔に押し当てた。
「え、樹?」
驚いている蓮を見下ろしながら、ゆっくりと腰を落としていき、蓮のものを飲み込んでいく。自重でいつもより奥まで入ってくる感覚に、思わず声が漏れた。
「あっ……んぅ……っ」
「……ちょ、樹、大丈夫?お湯が中に入っちゃうよ」
蓮が慌てた様子で俺の腰を支えてくれる。俺は息を整えながら首を横に振った。
「だいじょうぶ……」
蓮と繋がれたことに満足して、口元が緩む。俺は蓮の手を取って掌に口づけを落とすと、そのまま自分の首元へと導いた。
「……お前さ、なんで、ここを噛んだ?」
蓮の目を真っ直ぐ見据えて訊ねる。
蓮は一瞬だけ目を見開いたが、何かを察したのかすぐに優しく微笑んだ。そのまま俺の項をゆっくりと撫でてくる。
「本能的な衝動かな。俺のものだっていう証を残したかったのかもしれない」
蓮の気持ちは、何となく分かる気がした。俺も多分同じ気持ちだったと思うからだ。
今は、自分の中に愛しい男の存在を感じられるからか、不思議と哀しい気分にはならなかった。
俺は少しだけ笑うと、昔よくやったように蓮の頭を優しく撫でた。蓮は少し目を細めて俺を見つめ、されるがままになっている。
番になれない関係、という抗えない現実を、蓮もちゃんと理解しているのだ。
それでも蓮が俺を選んでくれて、俺のことを『運命の番』だと言ってくれるのならば。
俺はその想いを素直に信じて、受け止めよう。
「……蓮」
俺は蓮の首に腕を巻き付けて、甘える様に擦り寄る。
「蓮……好きだよ。ずっと側にいて……」
お湯で逆上せて頭がぼうっとしているせいもあって、自分の口から本心が溢れてしまう。この男が愛しくて堪らない。
「……樹は、本当にめちゃくちゃ俺のこと大好きだよね。ずっと側にいて、たくさん愛してあげるから、安心してよ。俺の番はやっぱり可愛いなぁ」
蓮は嬉しそうに目を細めてそう言いながら、俺の腰に手を回して抱き寄せてくる。
「蓮、お前さ、俺の第二性が『オメガ』じゃないって、いつから気が付いてた?」
「はじめて樹と出会った時から気が付いてたけど」
「……え、マジか」
蓮は悪戯っぽく笑うと、俺の耳元に唇を寄せた。
「擬態してる奴を見破るのは得意なんだ」
蓮は笑顔のまま、呆然としている俺の唇に軽く口づけると、俺の腰を掴んでゆっくりと上下に揺さぶり始めた。
【終】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お気に入り登録やエールもありがとうございます。嬉しかったです。
拙い文章でお見苦しい箇所も多々ありますが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
タイトルの『アルファ』は2人のことのつもりで書きました。
書き残した内容があるので、後日番外編を投稿予定です。
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