婚約破棄しようとする皇太子を手違いで殺してしまった私の一日

富士とまと

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 貴族としての会話もろくに続かないため、適当に微笑んでお茶を濁す。それも、3時間が過ぎると表情を引き締めていることが難しくなり逃げるようにして会場を後にせざるをえない。
 そもそも、大好きな皇太子殿下と一緒にいると、その緊張すらすぐにほどけてにやけてしまいそうになるため、一時も油断できないのだ。
 もちろん、変な顔にならないように張り付いた笑顔のまま過ごし、うっかり発言をしないように、なるべく短い返答を返す。
 皇太子殿下とずっとずっと一緒にいたいけれど、3時間以上いればぼろが出る。いいえ、皇太子殿下と一緒だといつも以上に緊張するため、2時間が限界。
 レレナは、2時間を過ぎると体調が悪くなったと言ってその場を後をするように心がけている。
 そのおかげで、大きな失態を見せることなく、何とかレレナは皇太子の婚約者として5年過ごすことができた。
 まだ、嫌われていない。
 鏡に映る自分の姿を見る。
「大丈夫、侍女たちが美しく仕上げてくれた……」
 国一番の美人だと歌われるレレナ。
 そのほほえみで落とせない男はいないとまで言われているレレナ。
 大丈夫。
 今日も大丈夫よ。
「やぁレレナ。今日も綺麗だね」
「ありがとうございます殿下」
 殿下こそ今日もなんて素敵なのかしら。好き。好き。大好き。レレナはあまり話をすると口をついて心の声が駄々洩れにならないように、最低限の言葉だけを口にする。
「お待たせして申し訳ありませんでしたわ」
 さすがにいつも張り付けている笑顔のまま謝罪をするわけにいかず、表情が崩れすぎないように気をつけながら笑顔を崩し頭を下げる。
 だめだわ。本当に油断するとにやけてしまいます。
 殿下が突然来てくださった。嬉しい。
 次に会うのは3日後だと思っていたのに。
 会えた。会えたわ。嬉しい。
 レレナは気持ちを落ち着け、表情を引き締めて顔を上げる。
「いや、突然の訪問したこちらが悪い。すまなかった。その、直接顔を見て言いたいことがあったからね」
 直接、私の顔を見て?
 な、何かしら。
 レレナの胸が張り裂けんばかりに高鳴る。
「時間が取れたんだ。3日ほど。一緒に旅行に行かないか?」
 えええええ!
 りょ、旅行?で、殿下と?それって、それって、一日中、いえ、旅行の間中一緒ってこと?
 嬉しい。嬉しいけれど、どうしましょう、どうしましょう!
 私の化けの皮が持ちませんわ!いえ、心臓も持ちませんわ!大好きな殿下と一日中、朝も昼も夜も一緒だなんて!
 どうしましょう。どうしましょう。
 嬉しいけれど、うれしすぎるけれど、無理、無理、無理!
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