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16 目隠しの末

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「さて、では早速クラス対抗剣術大会の選手を決めましょう」
 ざわざわとざわめきが広がる。
 剣の腕に自信がある者もいれば、当然剣を一度も握ったことのない者もいる。
 男女混合だし、高等部には騎士科以外もあるわけだし、そりゃそうだろう。
 うん。私も剣は無理ってことにしておこう。
「では、全員目隠しをして木刀を持って素振りをしてもらいます」
 は?全員?
 男も、女も?……ま、まぁ、女騎士なんてのを目指す人もいるだろうけれど……。
 サーシャがすぐに木刀を手に取る。
 柄の部分を両手で握り、すぐに置いて別の木刀を手にとった。
 おや?女騎士でも目指してるのかな?わざわざ手になじむ木刀を選ぶなんてかなりなものじゃない?
「ほら、ぼんやりしてんなリザーク」
 マージが、私に向けて、木刀をポーンと放り投げる。
 ちょっ、雑だな。行動がいちいち。兄4を思い出すよ。
「先生、なぜ目隠しをするんですか?」
 ああ、そう、それ!なんでだろう?
「今から腕が上がらずもうだめだというところまで素振りをしてもらいます。今はまだ、人の動きに影響されやすいですから、自分の型を崩さないようにするためと、自分の限界と真摯に向き合うためです」
 限界?
 素振りの限界って、どれくらいだったかなぁ。
 男になると決めた日から、毎朝兄の訓練に付き合わされたおかげで、そこそこ回数は振れるようになったけど……。兄にはまだまだ到底及ばない。
「では、初め!」
 ぶんっ、ぶんっ、と、木刀を振り始める。
 ああ、この木刀、家で使っているものよりも若干軽いな。ひゅんひゅんって、風を切る音が聞こえて気持ちいぞ。
 私の両隣って、確かマージとフレッドだったよね。耳を澄ますと、両隣からもひゅんひゅん聞こえる。ペースは、フレッドが一番早いだろうか。
 マージは、足を踏み出しながら振っているようで、足を戻す時間があり木刀を振るペースはやや遅い。
 っていうか、いちいち「はっ」「はっ」とか言うの、うるせーよ。ったく。
 と思ったら、どこぞから「ふんっ」「ふんっ」とか「ふっ」「ふっ」っていう声も聞こえてきた。
 しばらくすると「はぁ……」「はぁ……」という声も。
 これは、体力が尽きてきた感じなのかな。女子?男子?声変わり前の男の声の可能性もあってよくわからないな。
 苦しそうな声はだけれど、ずっと続いている。
 まだやれる。頑張れる。負けない。
 苦しそうな声から、そんな言葉が聞こえてきそうだ。
 ドサッ。
 人が倒れる音が聞こえた。
「サーシャさんっ!」

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フレッドの実力、マージの実力はいかほどなのか……。
リザ、おまえ、両脇そいつらで大丈夫か?
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