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26 謎の男が現れた……もう不審者って呼んでもいいかな

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 あっ。しまった。王子になれなれしいことしちゃったぞっ!
「うん、今のいいな。リザーク。友達っぽい」
 にこっと無邪気な笑顔をフレッドが浮かべた。
 あうっ。これ、いつも王子として作ったような笑顔しか見せないのに、こうして時々見せる自然な笑顔がヒロインの心をとらえる的なあれだよ。
 で、たしかヒロインが言うんだ。
「今の顔、いいな」
 ちょい、マージ!
「え?」
 いや、王子!
「自然な笑顔、いつもそういう顔してればいいのに。俺たち、まだ学生なんだし、自由に行こうぜ!」
 だから、マージ!
 ヒロインのセリフを取らないっ!
「あはは。そんなこと言われるとは思わなかったよ。そうだな、みんなでいるときはもっと自由にふるまうよ」
 王子ぃっ!
 なんで、私とマージに、ヒロイン相手のセリフを言うかなぁ……。いやいや、だめでしょ、だーめーでーしょっ。
 ヒロインルートから外れちゃうよ?
 まぁ、心配してもしょうがないか。高等部には私は進学しないから。やきもきしながら見守ることもないだろう。
 さて、第7訓練場に向かうためには、第1訓練場、第二訓練場……と、順番に通っていかなければならないのだけれど。
「第一訓練場は、1年から4年までSクラスが利用してるみたいだね」
 制服姿の生徒。バッジの色はバラバラだけど、スカーフやリボンの色はみな同じだ。
「第二訓練場はAクラスか」
「おい、あれ、第三訓練場、4年はCクラス。1年から3年がBクラスだよ」
 なんと!4年のCクラスは頑張って順位を上げたのか!
「第四訓練所は、4年がB、3年がD、2年もD、1年だけがCだ」
 ふおう、上から落ちてきた4年、下から上がってきた3年2年、1年だけが定位置とか!
「結構、クラスの順位変動あるもんだな……」
 と、誰かがぼそりとつぶやいた。
「これなら、俺たちも、卒業までには一つか二つ順位を上げられるかもしれない……」
「なぁ、あれ」
 第五訓練場は、さほど広くはない。4学年が合同で訓練できるほどの広さはないのだ。4年と3年が使用している。2年と1年は隅においやられて素振りそするスペースしか残されていない。
「第7訓練場はもっと狭いけど、せっかく着替えてきたのに、練習する場所あるかな?」
 うーむ。まぁ、草地いっぱいあったから、草地でもいいんじゃない?どうせ素振りとか瓦じゃないやレンガ割りとかだし……。
「いない……」
 第7訓練所には、誰一人としていなかった。
「上級生、どこで練習するんだろう?」
 首を傾げると、ふははははっ。と、笑い声がこだました。
 誰だっ!と、声をしたほうに目を向けると、第七訓練場を取り囲んでいるというか、荒れ放題に放置されている岩の上に、太陽を背にして男の人が一人立っていた。
「とおぅっ」
 とか口に出して岩から飛び降りる謎の男。
 教員が着用する生徒とはデザインが違う体操服を着ているってことは教師なんだろうけど、顔を隠すようにマスクかぶってますよ……。
 身長は高くて肉付きもよい。けど、絶対残念な人種のような気がする……。何にあこがれてるんだよっ。
 タイガーマスクみたいなマスクなんだけど、熊なんだか猫なんだかネズミなんだか分からぬ……。
 手には木刀を持っている。
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