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114 Sクラス優遇

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「さぁ、では早速出場選手を決めましょうか。男性5名、女性5名。まずはダンス経験者と未経験者に分かれてください」
 分かれると、クラスの約半分は未経験者。
 まぁこんなもんか。……とはいえ、男子7人、女子8人。
 経験者の中から上手な順番に5名を男女とも選ぶ……と、なんか、実力者5人ずつそろう可能性は低いよねー。
 というわけで、イッツアダンスターイム。
 組み合わせは、身長バランスがいい相手を先生が適当に指名。
 でもって、7組が一斉に踊ることになった。あ、女子だけ一人後で……となったのは、サーシャだった。
 うん、サーシャ身長高い方だから。
 さて、音楽は、ない。
 そう、この世界、録音機械とかないからさ、音楽といえば、楽器の生演奏なんだよ。
 で、ダンスの練習にな……。
「Sクラスのダンスレッスンにはピアノ奏者もいそうですね」
 ふとサーシャが皮肉気に笑う。
 ま、当然、そのあたりにも差はありそうですよねぇ……。
「あ、あのっ!」
 一人の女生徒が手を挙げた。
「わ、私に歌わせてください」
 歌?
 いやいや、ダンスは音楽だけど、歌詞はなかったはず。
「私の隣の家の子が……ピアノ奏者を目指していて、毎日何時間も練習してるんです、それで、曲は覚えて、あの、いつも口ずさんでいるから……」
 と、女生徒が歌いだした。
 いやいや、歌えてる……。
 なんというか、三味線のトンテンシャンじゃないけど、どちらかというと「チャーンチャチャチャチャチャチャチャチャーンチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャーチャーチャー」……あこれ、なんの曲か分かる?歌詞がなくても音程で分かるよね、皆ぁ!っていう感じなんだけど、「ルルルルルールルルールールー」とかよく考えたら歌詞が「ル」しかない歌もあるんだから、まぁ、歌えると言えば歌えるわけか。
てなわけで、なんとまぁ……。
 美しい歌声。
 踊るのも忘れて、ぼーっと聞き入ってしまった。
 それは私だけじゃない。
「あ、ごめんなさい、今の曲じゃだめでしょうか?それとも、聞き苦しかったですか?」
 女生徒が、一向に踊りださないのを見て歌を止めた。
「いいえ、いいえ、素晴らしいわ!他にも歌えるのね?」
 ソフィア先生の絶賛に、生徒たちが頷く。
「なぁ、教えてくれよ。筆記テストは曲を聴いてなんというタイトルなのか答えたりするんだろう?」
「あの、ごめんなさいタイトルはわからなくて……ピアノの音を聞いて覚えただけなので……」
「タイトルなら、俺覚えてるぜ。踊るのは下手だけど、音楽は好きだからな」
「わ、私も、音楽が好きなので、えっと、3曲くらいなら、フルートを習っているので……」
 と、あっという間に踊る以外の特技を持っている人たちが、自分には何ができるのかということを話し始めた。
 うん、いいね。
 こういう結束力。
 そして、一人ひとりが自分にできることで何とか役に立ちたいという前向きさ。


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剣術大会、そして数学テストで結束力が高まっているFクラス!
ん?フラグ?
いやいや、ダンス大会と言えば、当日に靴の中に画びょうが入っていて、足を怪我しても血染めの靴で踊り切るとかそういやつでしょ。(やらないけど)
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