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136 いいよ、付き合ってやる!

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 午前中の授業が終わると、モンブフト先生は呪われし裁判官の補佐の仕事に戻っていくそうです。
「そうだ、先生、一つ聞いてもいいですか?」
「なんですか、リザーク師匠。何でも聞いてください」
 は?
 師匠とか聞こえたような気が……?
 気のせいですよね?
「先生の受け持ちクラスはどれだけあるんですか?」
「そうですね、1年から4年までのFクラスを週に3回ですよ。本当はもっと教えを請いに来たいんですが……」
 まって、先生、教えに来たいが正しいよね?教えを乞うって何?
 まぁ、細かいことはさておき……Fクラス!
 ってことは、マル兄のことも教えてるのかな?
 マル兄が何年生なのか先生に聞けば分かる?
「おっと、時間が。それでは、さぶろくじゅうろく!また明後日!」
 と、訳の分からない九九を挟んで先生は帰っていった。
 ……さぶろくは、じゅうはちですよ……。
 じゅうはちですよ……。

「今日も居残りダンスしてくだろ?」
 当然のようにマージが授業が終わると机をガタガタと移動し始める。
 えー。今日も?
 またうっかり日が沈んじゃうの困るから、早く帰りたいんだよなぁ。
 だいたい、ダンスの練習は選手ですればよくない?
「あの、僕、数曲しか弾けないけど、フルートを持ってきたんだ……それから、他の曲は弾けるように練習始めたから」
「私、家からダンスシューズを持ってきましたわ」
「俺、忘れないように家に帰ったらすぐメモしたんだけど、やっぱりいくつか忘れちゃったから、今日は教室でメモしていこうと思って持ってきた」
「私、昨日ずっと聞き続けていたせいか、家でつい口ずさんでしまって。そうしたらお母さまが知っている曲を教えてくださいました」
「うちも!庶民だからダンスなんて親も知らないだろうと思ってたらさ、なんか祭りで貴族をまねて1曲2曲踊るやつがあるからって」
 ……みんな……。
 やるき、十分ですよねぇ。知ってた。
 うん。
 このクラスは、そういうクラスだって、知ってた。
 よし。やるよ!やってやるっ!
「昨日の復習のステップからでいいかな?」
 すっと、構えると、自然とサーシャが私の腕を取った。
 歌を歌い始める子、それに合わせて、いち、にぃー、さんと、昨日教えたとおりにリズムを口ずさむ子。
「はい、このステップの名前は?」
 筆記テスト班の知識向上のためなら、身を張ってやるっ!
「次、これは?」
 マージとフレッドが笑っている。
「いやもう、なんか、これも、見慣れてきたと言えば、見慣れてきたけど……ぷははは」
 マージが笑った。
 一旦踊りを止めて、マージを蹴る。
「お前な、笑ってる余裕ないだろ、姿勢は治ったのか?ちゃんと、サーシャの動きを手本として学べよっ!言っちゃなんだが、今のマージは、完全に女のサーシャに負けてる。ぼろ負けだ」
 マージのような脳筋系は女に負けるというわれれば奮起するだろうとわざと言ってみる。


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