婚約者に売られ子供ができたけど、訳あり元騎士様が代理パパになってくれたので幸せです

富士とまと

文字の大きさ
55 / 94

53

しおりを挟む
 私のことなど忘れたかのようにエディと仲良くしているのを見ても、寂しくなかった。
 でも、今は寂しい。エディが帰っていくのが、寂しい。
 また、明日会うというのに……。
「いいかジャン、男ならママを守ってやらなくちゃだめだよ」
 ジャンがうんと頷いた。
「僕がいない間、ジャンはママを守れる?」
 ジャンが再びうんと頷いた。
「ジャン、ママを守りゅよ、ジャンね、英雄になりゅんだ!」
 ジャンの言葉に、ふっとエディが表情を崩した。
「流石僕の……いや、さすが男の子だ!じゃあ、頼んだよジャン!」
 ポンポンと頭を軽く叩くいてエディが出て行った。
 ジャンは4回目のイヤイヤはせずに、キリリと顔を引き締めて私の頭を撫でた。
「ママ、ジャンが守ゆ」
 きゅううぅぅぅーんっ!
 なんて、かわいくてかっこいいの!私の小さな騎士様誕生よ!
 幸せ、幸せすぎる。と、ほこほこ顏をしていると、アイシャさんが盛大にため息をついた。
「……こりゃまた、大変だよ……シャリアは分かってるのかねぇ……」
 うん?何が大変って?
 ジャンがマザコンになって大変ってこと?……だ、大丈夫。ちゃんともう少し大きくなったら子離れ……す、するか……。
 やだー!息子はどこの馬の骨とも分からん女にはやらんっ!
 ジャンをぎゅーっとしてフルフルと体を震わす。
「……シャリアが何を考えているのか手に取るように分かるがの、そっちじゃない。大変なのはそっちじゃないよ」
 え?なんでわかるの?というより、大変なことって何?
「まぁしょうがあるまい。ワシの方でも対策を考えておくかねぇ……」
 アイシャさんがため息交じりにつぶやくと、部屋に戻っていった。
 ちなみに、私たちが住んでいる家はアイシャさんの持ち家。1階にキッチンとダイニングとリビング。それから庶民の住む家には珍しいトイレと風呂。……どうやら風呂が家にあるのは貴族と金持ちだけらしい。トイレも壺に用を足してたまれば捨てに行くか、共同トイレまで足を運ぶかが普通らしい。魔法的な処理が施された処理が不要のトイレも貴族や金持ちの家にしかないらしい。
 2階には小さめの寝室が4部屋。それぞれベッドが1つずつと小さな物入がある。ここもそのうち宿にするつもりだったのかな?
 とまあ、お屋敷のような大きな家ではないけれど、風呂とトイレがついているし、キッチンの調理器具は火怒こしも火の調整も簡単な、これまた魔法的な処理が施されたものだし、暖炉もなく部屋を暖められるこれまた……という具合に、設備は貴族並み。
 アイシャさんは本当にすごく稼いでいた冒険者なんだろう。……誰も教えてくれないけど、ミスリル級だったんじゃないかな?
 で、今も時々頼まれて依頼をこなすことがある。半年に1、2回ほど。昔の仲間に頼まれちゃいやと言えないねぇなんてぶつぶつ言いながらも楽しそうなので、昔の仲間とのつながりが続いていることが嬉しいのかもしれない。
 ……でも、アイシャさんだってもういい年だ。
 もし、無茶なことを頼まれたときに「弟子にやらせるよ」と任せてもらえるようになれば恩返しになるのでは?
 いつまで老体に働かせるつもりさね!って本気じゃないけれど、いつかは本気でそう言う時が来るかもしれない。
 よぉーし、頑張るぞ!
 ……と、意気込んで眠ったけれど。

 翌朝、起きたらそんな決意がかすむほどの問題が発生していた。
「師匠、こうなるの分かってましたね?」
 昨日言っていた大変になるとはこのことだったのね……」
 アイシャさんは駄々をこねるジャンを抱っこし、私に手紙を差し出した。
「今日はギルドでエディと朝ごはん食べな。で、この手紙はエディに渡して、返事は帰った時でいいよ」
「すいません、お願いします」
「ジャン、ママはお仕事に行ってくるからね。いい子で待っていてね!」
 アイシャさんはぎゃーぎゃー泣き叫ぶジャンの手をとり、ばいばいと振ってみせた。
 困ったなぁ。……どうしたらいいんだろう。
 しょんぼりしてギルドに向かうと、ギルドの入り口でエディとかち合った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!

藤野ひま
ファンタジー
 わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。  初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!  夫や、かの女性は王城でお元気かしら?   わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!  〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

処理中です...