婚約者に売られ子供ができたけど、訳あり元騎士様が代理パパになってくれたので幸せです

富士とまと

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 ミックスケーキセットを2つ注文し、テラス席に案内される。
 すぐに、小さなケーキが4つと紅茶のセットが2つ運ばれてきた。
 ケーキは選べたので、私の分とジャンの分は全部バラバラにした。まずは全部半分にして、全部の種類を私もジャンも楽しめるようにさらに載せる。
「いたーきまちゅ」
 ジャンがケーキを口に運ぶ。
 私も目の前のケーキをすぐに食べたいけれど、これおいちい、これまじゅいとジャンが言うときのためにジャンより遅れて食べる。
 もっと食べたいいやいやが始まると厄介だというのもあるけれど、単にママのも食べる?と甘やかしたいだけなのだ。
3つほどジャンが食べたので、そろそろいいかなと、ケーキを口に運ぶ。
「おいしい」
「うん、おいちいね」
 ジャンがおいしそうに食べているのを見ながら食べると余計においしい。
 幸せだ。
 冒険者として順調にランクが上がっている。
 それに伴って収入も上がっていて、貯金もだいぶできた。ジャンを学校に通わせる費用ももうたまりそう。
 それはパーティーを組んでくれているエディのおかげもある。動きが速い魔物は私一人では倒すのに苦労するから。身体強化で魔物に倒されることはないけれど、依頼を達成するためにはかなりの時間がかかっていたはずだ。
 ずっとこんな幸せが続くといいのに……。
「アリー」
 テラス席に入ってきて私とジャンの座っているテーブルに許可も取らずに腰かけた人物が私の名を呼んだ。
「ど、どうしてあなたが……」
 ジャンがクリスの顔を見て首を傾げた。
「だぁれ?」
「うん、お兄さんは君のパパの友達だよ」
「パパしゃんの?」
「クリスっ」
 席をたち、クリスの手を引いてテラス席から降りる。
「ジャン、ちょっと食べててね!」
 ジャンが見える位置に立ち、クリスをにらむ。
「何しに来たのよ!あんな……あんなこと……しておいて……!」
 声を荒げればジャンが気にするだろうと声をひそめてクリスに詰め寄る。
「……いや、すまなかったよ。あれは人助けだよ……その、どうしても戦争で死んでほしくなくて……俺も苦渋の選択だったんだよ」
 よく言うわ。
 私をカモにしてひっかけたけれど金にならなかったから売ったって知ってるんだから。
「それで?」
「いや、だから……すまなかった。君に合わす顔がなくて逃げてしまったんだ」
 お金を持って高跳びしたの間違いでしょう。
「それにしても、まさか子供が……」
「何しに来たのよ。まさか、あの時の彼に頼まれて?」
 クリスがにやりと笑った。
「いや、君が彼のことを知らないなら教えなければならないと思って来たのさ」
「え?」
 ジャンの父親のことは確かに気にはなっていた。ジャンが父親がどういう人なのかと気になったときに教えてあげられることが何もないままでは困ると。
 本当は二度とクリスの顔なんか見たくない。だけど……。
 ジンクスなど信じないと彼は言っていた。だけれど、部下のためにと大金を払って一夜の花嫁を求めた。
 自分のためではなく人のために。そんな優しい人がジャンの父親なのだ。
 テーブルでおいしそうにケーキを食べているジャンをちらりと見る。
 ジャンがいると知れば無下にするようなことはないとは思う。だけれど……。
 複雑な気持ちに胸がもやもやする。
「アリーは彼のことを何も知らないんだろう?」
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