年増公爵令嬢は、皇太子に早く婚約破棄されたい

富士とまと

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第十話

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 私とルイ殿下が並んで椅子に座っている。
 16歳と11歳……。
 誕生日のお祝いの言葉を次々にかけられる。
 ああ、二人並んでいるというのに。
「お似合いの二人ですわね」
 と、私は一度でも言われたことがあっただろうか。
 学園には、婚約者同志、隣の席に座って授業を受けている同級生もいる。
 学年違いの婚約者と、昼休みには一緒に食事をしている同級生もいる。
「あの二人、お似合いですわね」
 なんて噂話をすることもある。
 直接からかうように、声をかけている人もいる。
 ……言われたことがない。
 私と殿下、二人が並んでいてお似合いだと……一度も言われたことはない。
 みんな分かっているんだ。私と殿下、二人が不釣り合いでいびつな婚約だってこと。
 なぜ、妹のマリリーと婚約させなかったのかと噂している声も聞いたことがある。
 ……そして。
 エマリーが自分が王妃になりたくて、無理に婚約したんだと。
 ろくでもない人間だと。私利私欲に走る、みっともない女だと。
 ……悪役令嬢ってああいう女のことを言うんだわ。そのうち婚約破棄されてざまぁされればいいのに!
 と、陰で噂されているのも知っている。
 ふぅ。
 私はね、常日頃、隙あらばルイ殿下に婚約破棄ですか?喜んで!と言ってるんです。
 婚約解消まだかまだかと待っているんです。
 何が、悪役令嬢だ!
 このままだと、本当……殿下が学園を卒業するときの18歳で、婚約破棄を言い渡す!みたいなことが行われ、周りの人たちに「そらみたことか、ざまぁ!」と笑われてしまう。
 それはちょっとばかり悔しい。
 だって、私が望んだ婚約でもないのにっ!
 勝手に悪役令嬢に仕立て上げて楽しまないで!
 ……私が、悪者扱いされているのを、ルイ殿下は知らない。
 知らせるつもりはない。
 優しいルイ殿下はであれば、私を苦しめないようにと、婚約を解消してくれるかもしれない。
 だけれど、きっと、私を知らない間に苦しめてしまったと、今度はルイ殿下が傷つき苦しむことになるだろう。
 だから、私と婚約を解消するならば、他に好きな人ができたと。そういう理由であってほしい。
 あはは。
 なんだかんだ、どこまでも私は、姉馬鹿なんだろうな。
 かわいいルイ殿下に苦労はさせたくない。
「お誕生日おめでとう、エマリー」
「まぁ、マーカス様、いらしてくださったのですね。ありがとうございます」
 隣国の第二王子のマーカス様だ。
 キラキラと輝くような美貌というわけではないが、身長が高く引き締まった体に、強いオーラを放つ凛々しい目。
 女性たちの目が釘付けになっている。



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明日へ続く。本日更新ラストです。水曜締め切りなのに、木曜にも終わらなかった
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