年増公爵令嬢は、皇太子に早く婚約破棄されたい

富士とまと

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第十一話

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「学園でのエマリーも素敵だけれど、今日はまた一段と美しいね」
「ありがとうございます。マーカス様こそ、制服姿も素敵ですが、正装もとてもお似合いですわ。女性たちがさっきからダンスに誘ってもらえないかとうずうずしているみたいですわ」
 私の言葉に、マーカス様はニコリと笑った。
「君こそ。会場にいる男は皆、エマリーに見とれているよ。隣にルイがいるのにね」
 マーカス様が、殿下に視線を向けた。
「……僕のエマリーが美しいのは当たり前だ。仕方が……ない」
 ちょっと悔しそうな声を出すルイ。あれ?もしかして自分が褒められないのですねちゃったのかな。
「殿下も、今日は私のために素敵な装いをしてくださって、いつにもまして美しくて素敵です」
「……愛らしいから美しいに進歩したと思うべきか……」
 ん?褒めたのに、なんかまた一段とむっとしてしまったような。
「ところで、エマリーをダンスに誘っても?」
 マーカス様が手を差し出した。
「ええ、もちろんですわ」
 と、立ち上がると、私の手をルイ殿下がぎゅっと握った。
「あ、一人で残されると不安?」
 一人子供が会場に残されるのだ。不安にならないわけはない。
「一人……残される……か。マーカス、僕が……この国の皇太子である僕がエマリーの婚約者だ。それは絶対に覆らない」
 ルイ殿下がマーカス様を睨む。
「ええ、もちろんエマリーはルイの婚約者であることは重々承知しておりますよ。ルイも分かっているでしょう。私の立場ではファーストダンスを他に頼める相手がいないと」
 ファーストダンス。
 一番初めにダンスの相手に選ぶ人は特別だと、社交界では暗黙のルールがある。
 婚約者や配偶者、それからエスコートしてきた相手というのが通例だ。
 誰もエスコートせず、独身で婚約者もいない人間であれば、ファーストダンスを誘うイコール、好きですと告白しているような物。そればかりではない。ファーストダンスに誘ってくる相手も、好きです告白するようなものと思われ、誘いたくても誘えない事態に陥る。
 それを回避するためには、既婚者と踊ってもらうか、主催者と踊ってもらうかすれば話は簡単だ。誰も誤解はしない。
 まぁ、つまり、今日の私は主催者側。
 そして、隣国の王子と踊っても問題の無い家柄。
「1回……1回だけだからな!」
 殿下が私の手を離した。
「大丈夫、すぐに帰ってくるから、ちょっと待っててね」
 ルイ殿下を安心させるために、ささやいてから、マーカス様の手を取る。




===============
今日は、予定があるので、昼間の更新はないです。ではでは!
引き続きよろしくお願いします!

……って、終わりはいつ?!
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