年増公爵令嬢は、皇太子に早く婚約破棄されたい

富士とまと

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第十三話

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「そうでしたわね……」
 自分がちょっと前に言ったことを、自分で否定してたことにも気が付かなかった。
 あまりに自分の動揺っぷりがおかしくなって思わず笑ってしまう。
「本当に、エマリーの笑顔は癒されるね」
「はい?」
「私はね、実は君の笑顔が大好きなんだ。きっと、ルイもそうなんだろうね。近くで君の笑顔を見続けられるルイがうらやましいよ」
 私の笑顔が好き?
「見ているだけで癒されるものがエマリーにはない?」
 見ているだけで癒される?
 それは、もちろん、私の天使たち。
 ルイ殿下とマリリー。
 二人は本当にかわいいのよ。笑っている時はもちろん、泣いている時も怒っている時も、それはもう、天使なの。
 二人が仲良く喧嘩してる姿ももう、愛しくて癒される。
 二人のことを思い出して、思わず顔が笑ってしまう。
「ほら、その笑顔だよ」
 マーカス様が、私のおでこをツンっと指先でつついた。
「え?」
「作り笑顔が多い世界で、君の笑顔はいつも自然だ。優しくて愛情に満ち溢れている。聖母の微笑みというのはこういうものなのかと」
 ……えーっと、それってもしかして、私が妹や殿下のかわいさを思い出してにやけているのを見られてたということなのか。
 だって、私だって、作り笑顔もしますよ。
 ああ、だけど。なんか嫌だなぁーってことがあったりして顔が引きつりそうになると、二人のことを思い出して気持ちを回復させ……。
 結局ニヤついてた?
 やだ。恥ずかしい。マーカス様は、その私の顔を見てたってことよね?
 思わず恥ずかしくなって、頬が赤くなる。
「ああ、そうだ。一つお願いがあるんだけれど」
「お願いですか?」
「そう。実は、弟……第三王子が1カ月後に、3カ月ほど遊びに来るんだ」
「弟殿下が?」
 そういえば、マーカス様は、男兄弟ばかり5人いると言っていた。通常であれば王太子である第一王子に何かあったときの場合のことも考え、第二王子も危険がない生活を送る。つまり、隣国への留学が簡単に許されるのも、何かあった場合をあまり考えなくてもいいからなのだろう。
「弟は、まだ成人してなくてね。舞踏会には参加できない。だけれど、皆と交流はさせたいから、お茶会を開いてもらえないだろうか」
「お茶会、ですか?」
 お茶会であれば、子供の参加ももちろん可能だ。
 ああ、ならば。
 マリリーも参加できるわね。めいっぱい可愛いドレスを来てお茶会に参加するマリリーはさぞや天使でしょう。





==============
ご覧いただきありがとうございます。

この「天使」っていうのは、Twitterで交流のあるとある先生の赤子天使のろけ発言が頭の片隅にあり、姉馬鹿っぷりの表現に使わせていただいております。

いやぁー、もう、幸せそうなのよ。何をしてもうちの子天使っていう、あの書き込みを見るたびに、幸せそうなの。こっちも癒されるんだけどね。
それを見ている、赤子がいない先生たちが「合法的に赤子を抱っこしたい」って言い出して。
うんうん、わかるー。
なんか、泣きやまずに抱っこもう無理ってお母さんたちの側に行って、すっと手を差し出して代わりに抱っこしたいと思っている人いっぱいいるんだよーって。
両者をつなぐ仕組みが充実するとお互いに幸せよね……みたいな話が出ておりました。
赤ちゃんの泣き声って、うるさいって言う人いるかもだけど、大半は、泣き声さえ可愛い!って思ってるからね。大丈夫よ~。と、もしかしたら乳幼児子育て真っ最中の読者様もいるかもと思って書いてみた。
いっそ、泣いてる時間が読書タイムくらいに思って、抱っこ紐で抱っこして家の中グルグル歩きながらスマホで読んでにやけてもらえると嬉しい。
(あ、感想欄に、天使自慢大歓迎です。にやにやしながら読みます)

そうそう、昨日書いた「エール録画しようとしたら別の録画が始まった」っていうやつ、夜中に何の番組?!と思ったかもしれないんですが「コールドゲーム」というドラマの再放送です。今日最終回らしい。見たことなかったんですが、やたらと最終回のCMが流れていて、ちょっと気になってあらすじ読んだら「マイナス47度の世界になった地球で、生き残った人たちのサバイバル」みたいなやつで、ちょっと面白そうだなぁと。

長いあとがきでごめんなさい。


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