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「おい、勉強は?」
リンクル王子は戸惑いながらも庭に出る。
「ヴァヴィア ルールイ フォル」
「は?」
「フリージアが咲いています。ヴァヴィア ルールイ フォル。ガリウ ルールイ フォル、ネモフィラが咲いています」
リンクル王子が頷いた。
「ヴァヴィア、ガリウだな、じゃあチューリップは何という?」
「チュナップ」
「ふぅーん。じゃあ、チュナップ ルールイ フォル」
「チュナップ ルールイ フォル ビラル」
リンクル王子が私の顔を見た。
「ビラルは綺麗という意味です」
「ふーん。チューリップが綺麗に咲いている……チュナップ ルールイ フォル ビラル……」
そこまで口にしてから、リンクル殿下がにやりと笑って私を見た。
「シャリナ ビラル」
へ?
シャリナは綺麗って……。
カーっと顔が熱くなる。
綺麗なんてほめられたことがなくてびっくりした。
「あはは、さっき、俺のことかわいいなんて言ったお返しだ!」
「もうっ!大人をからかわないでくださいっ!」
「この国ではまだシェリルも子供だろ!俺と同じ子供だ!」
もうっ!
赤くなったほほを抑える。
言葉の練習なんだから、人をからかえるくらい上達するならよしとしなくちゃ。
「殿下、綺麗……ビラルは美しい物に対する綺麗で問題ありません。我が国では他に綺麗を意味するものは掃除などで汚れがなくなった状態や、剣を磨いて傷のない状態も綺麗と言いますが、そちらの単語はアレッシュです。綺麗な剣はアレッシュ。では傷一つない綺麗な肌はどう表現すればいいですか?ちなみに、否定する場合はノントをつけます」
殿下の手を見る。
「ノント アレッシュ……だよな」
剣の練習を熱心にしているであろう手は豆ができて綺麗ではない。
「こっちはアレッシュだ」
手のひらを反すと白く美しい手の甲が見える。
「ビラル……殿下の肌は美しいですよ」
「な、な、なんだよっ!貴族なんて水仕事してるわけじゃないから、みんな綺麗な手してるだろっ!シャリナだって」
殿下が私の右手を取った。
「あっ」
殿下が驚いた声を上げる。
「す、すまん……」
慌てて殿下が私の手を離した。
「大丈夫ですよ。中指の先はペンだこができてるし、この小指の付け根のやけどの跡は、読書に夢中になりすぎて蝋燭の火に触れてしまったときのものです。気にしてないのでそんな顔しないでください。殿下は……シュッタですね」
「シュッタ?」
優しい。
殿下は今どうしてるのかな。
「聞いたか?リンクル殿下の話」
「どの話だ?この間の20歳のお祝いの話か?」
びくりと肩が揺れる。
殿下の噂話に思わず耳を傾ける。
「なんでも婚約者探しを本格的に始めるって話だ」
「それか。成人してから3年。遅いくらいだろう?こう結婚して子供の2,3人いてもいいくらいだろう」
……いやぁ、それはないんじゃないかな。と、前世の私が突っ込みを入れる。
20歳で結婚はいるとしても、子供2,3人って……。妻の方が身が持たないよね。母体が危険だよ。
「あはは、流石にそれは大げさだろう。好色王と呼ばれた8代前ならそれもあるだろうけど」
そうか。別に一人の女性とは限らないんだ。
王太子だもんね。正妃が王位継承権1位となる男児を産みさえすれば、側室を持つことができるんだもの。
正妃が男児を産む前に生まれた子は、火種にしかならな……。
ルゥイに視線を落とす。
まさか……ね?
もし、そんな子が生まれれば……。
別の人の子としてひっそり育てさせるならいい。
幽閉……下手したら、処分。
ぞくりと背中に冷たいものが流れる。リンクル殿下がそんなことするわけがない。優しいあの子が。
「で、婚約者探しって、候補もいないっていうのか?だいたい上の方の貴族んとこの娘と結婚するんじゃないのか?」
「あとは隣国の姫とかだろうなぁ。なんでも殿下は流ちょうに3か国語を話すっていうだろ?」
うんうん。7年間、週に4日の授業をかかさず行ったおかげで、リンクル殿下はみるみる言葉は上達していった。
リンクル王子は戸惑いながらも庭に出る。
「ヴァヴィア ルールイ フォル」
「は?」
「フリージアが咲いています。ヴァヴィア ルールイ フォル。ガリウ ルールイ フォル、ネモフィラが咲いています」
リンクル王子が頷いた。
「ヴァヴィア、ガリウだな、じゃあチューリップは何という?」
「チュナップ」
「ふぅーん。じゃあ、チュナップ ルールイ フォル」
「チュナップ ルールイ フォル ビラル」
リンクル王子が私の顔を見た。
「ビラルは綺麗という意味です」
「ふーん。チューリップが綺麗に咲いている……チュナップ ルールイ フォル ビラル……」
そこまで口にしてから、リンクル殿下がにやりと笑って私を見た。
「シャリナ ビラル」
へ?
シャリナは綺麗って……。
カーっと顔が熱くなる。
綺麗なんてほめられたことがなくてびっくりした。
「あはは、さっき、俺のことかわいいなんて言ったお返しだ!」
「もうっ!大人をからかわないでくださいっ!」
「この国ではまだシェリルも子供だろ!俺と同じ子供だ!」
もうっ!
赤くなったほほを抑える。
言葉の練習なんだから、人をからかえるくらい上達するならよしとしなくちゃ。
「殿下、綺麗……ビラルは美しい物に対する綺麗で問題ありません。我が国では他に綺麗を意味するものは掃除などで汚れがなくなった状態や、剣を磨いて傷のない状態も綺麗と言いますが、そちらの単語はアレッシュです。綺麗な剣はアレッシュ。では傷一つない綺麗な肌はどう表現すればいいですか?ちなみに、否定する場合はノントをつけます」
殿下の手を見る。
「ノント アレッシュ……だよな」
剣の練習を熱心にしているであろう手は豆ができて綺麗ではない。
「こっちはアレッシュだ」
手のひらを反すと白く美しい手の甲が見える。
「ビラル……殿下の肌は美しいですよ」
「な、な、なんだよっ!貴族なんて水仕事してるわけじゃないから、みんな綺麗な手してるだろっ!シャリナだって」
殿下が私の右手を取った。
「あっ」
殿下が驚いた声を上げる。
「す、すまん……」
慌てて殿下が私の手を離した。
「大丈夫ですよ。中指の先はペンだこができてるし、この小指の付け根のやけどの跡は、読書に夢中になりすぎて蝋燭の火に触れてしまったときのものです。気にしてないのでそんな顔しないでください。殿下は……シュッタですね」
「シュッタ?」
優しい。
殿下は今どうしてるのかな。
「聞いたか?リンクル殿下の話」
「どの話だ?この間の20歳のお祝いの話か?」
びくりと肩が揺れる。
殿下の噂話に思わず耳を傾ける。
「なんでも婚約者探しを本格的に始めるって話だ」
「それか。成人してから3年。遅いくらいだろう?こう結婚して子供の2,3人いてもいいくらいだろう」
……いやぁ、それはないんじゃないかな。と、前世の私が突っ込みを入れる。
20歳で結婚はいるとしても、子供2,3人って……。妻の方が身が持たないよね。母体が危険だよ。
「あはは、流石にそれは大げさだろう。好色王と呼ばれた8代前ならそれもあるだろうけど」
そうか。別に一人の女性とは限らないんだ。
王太子だもんね。正妃が王位継承権1位となる男児を産みさえすれば、側室を持つことができるんだもの。
正妃が男児を産む前に生まれた子は、火種にしかならな……。
ルゥイに視線を落とす。
まさか……ね?
もし、そんな子が生まれれば……。
別の人の子としてひっそり育てさせるならいい。
幽閉……下手したら、処分。
ぞくりと背中に冷たいものが流れる。リンクル殿下がそんなことするわけがない。優しいあの子が。
「で、婚約者探しって、候補もいないっていうのか?だいたい上の方の貴族んとこの娘と結婚するんじゃないのか?」
「あとは隣国の姫とかだろうなぁ。なんでも殿下は流ちょうに3か国語を話すっていうだろ?」
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