三年分の記憶を失ったけど、この子誰?

富士とまと

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32 ★殿下サイド★

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引き続き殿下視点です
==========

「ああ、失礼いたしました。伝えるタイミングがなく」
 サフィアールの言葉に、シャリアが恥ずかしそうに顔を赤くした。
「いえ、こ、こちらこそ失礼いたしました。そうですよね。使節団として随行していらっしゃるのですから、言葉がは……」
 年齢も……容姿も性格も関係ない……それが番。


 西の使節団の者がサフィアールを呼びに来た。
 立ち去り際、振り返って笑った。
「伝承では、結ばれない番との間には奇跡が起きるらしいです。それは素敵な奇跡が」
 俺にだけ聞こえる声でそれだけ言い残したサフィアールの顔は決して不幸そうではなかった。
「すっかり表情が柔らかくなったけれど、歯の痛みが取れたのかしら?だとしたらよかったわ」
 シャリアのホッとした顔がキラキラと輝いている。
 同じ光を受けているというのに、他の参加者よりもキラキラと……。

「殿下、報告によりますと、その女性は茶色の髪。長さは殿下の探している女性よりは短かったそうです。瞳の色は確認していないと言うことです。指輪はしていないものの、隣国の言葉を話したそうです」
 意識が現実に戻る。
 11歳のあの時を境に、シャリアだけが輝いて見えることが度々あった。
 側近候補の同じ年の者が集まった時に、どこの令嬢がかわいいだの、どこの令嬢が美人だの、好みのタイプはどういう子だのと話をすることがあった。お前はどうなんだと話を向けられると、決まってシャリアが輝いて見える。
 これが好きということだと自覚したのは、シャリアが17歳……成人したころだ。
 女性は成人を迎えれば結婚することができる。
 誰か、俺じゃない男と結婚することを想像したら胸が苦しくなった。
 誰にも、渡したくない。シャリアは俺の番だ。
 自然とそんな思いが沸き上がった。
 番との間には奇跡が起きる――そんな言葉が今は空々しい。
 奇跡どころか、俺は取り返しのつかないことをシャリアにしてしまった。もし、番でなければ……。
 あのようなことを俺はしなかったんじゃないか。
 シャリアを傷つけるようなことはしなかったはずだ。5歳差など些細な障害だと。番なのだから二人は結ばれて当然だと。周りも説得した。後はプロポーズすればすべてうまくいくはず……などと。
 すべては順調だと、浮かれていた。
 馬鹿だ。
 俺は。あの一瞬でシャリアを失ってしまった。
 もう、二度と会うことが叶わないかもしれない。
 騎士団長の報告を聞いて、もしかしたらシャリアと期待する自分もいる。
 だけど、この3年間ずっと期待してはやはり違ったとがっかりすることを繰り返した。



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