三年分の記憶を失ったけど、この子誰?

富士とまと

文字の大きさ
40 / 48

40

しおりを挟む
「無理をさせてはだめ。それに、私もゆっくりしたいし……」
 殿下がふっと笑う。
「ゆっくり?シャリアはいろいろあったことを記録にまとめたり、離れていた間に出版された本を読んだりとしたいことがあるんだよね?ふふ、分かった。邪魔しないようにする。一週間後に会ってくれる?」
 ああそうだ。
 私ならきっとそうして過ごす。
 リンクル殿下はそんな私のことを……よくわかって……3年の間も忘れずに覚えていてくれたんだ。
 立太子されて、忙しく過ごしているというのに。
「じゃあ、行くよ。皆に迷惑をかけちゃシャリアに叱られちゃうからね」
 ざわざわと周りの人のざわめきが耳に聞こえてきた。
 あれは殿下じゃないのか?という声も。
 そりゃそうだ。絵姿が売られていたのだから、顔を知っている人もいるだろう。
 服装も立派だし。
 殿下が私の腕を話して歩き出した。その横にマント姿の男が並ぶ。
 護衛だろうな。殿下の背を見送り、マーサさんの元へと駆け寄る。
 マーサさんは私が誰かと話をしているのに気が付いて邪魔にならないように声をかけずに待っていてくれた。
 ありがたい。もし、近づいて、ルゥイの顔を見られていたら……。
 マーサからルゥイを引き取り抱っこする。
 ルゥイは少し身じろぎしたものの、すーすーと気持ちよさそうに寝ている。

「いやぁ、びっくりしたよぉ、さっきリアと話してた男の人……そっくりだったじゃないか」
 マーサさんの言葉にびくりと体を固くする。
「え?」
「ルゥイにさ。もしかして、無くなった旦那さんの血縁者かい?」
 マーサさんの言葉に首をぶんぶんと横に振る。
「ち、違ったわ。私も、もしかしてと思って思わず声をかけてしまったけど、生まれも育ちも全然違って……」
 マーサさんは私の言葉にすぐに納得したのか、うんうんと頷いた。
「王都にはああいう顔の人はたくさんいるんだろうねぇ……」
「そ、そうね」
「殿下の絵姿も、あんな感じだったよ~」
「え?」
「ほら!ルゥイにそっくりだろう?思わず買っちゃったよ」
 マーサさんが、くるくると丸めて鞄に突っ込んでいた紙を取り出して広げた。
「あ……」
 思わず声が漏れる。
「ビックリしたろう?きっと、ルゥイもあと何年かしたらこういう風になるんじゃないか?」
 絵姿の殿下は、初めて会ったころの殿下……10歳のころの顔。
 なつかしさと……そして、記憶以上にルゥイに似ているその姿絵に、胸がぎゅっと締め付けられた。

 もう、二度と会えないんだ……。

 王都を去って、国からも出よう。
 ルゥイが殿下に似ていると思う人は、きっと増えていくだろう。
 
 
 ========
終わりまで駆け抜けられるか?!もうすぐ終わる。予定と違う内容になりそうだけど終わる。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...