44 / 48
44
しおりを挟む
「殿下っ、子供だから許されますけど、もう二度と、レディにしてはダメですよ、これは、その、こ、恋人同士とか特別な間柄の大人がするだけで、普通は大人に対してする行為じゃないですからっ」
と言ったら、殿下が一度離した手を、再び私のほっぺに当てて、両手で挟んだ。
「殿下っ!」
「ま、俺は子供だから、成人してないしな。構わないだろ?」
「殿下っ!」
「子供っぽいもなにも、俺は子供だからな!まだ、あと5年は子供だ!シャリナが膨れるたびにこうしてやるっ!」
その時は、いつも皇太子として早く大人になろうとしている殿下が、子供でいるということが嬉しかった。他の子供のように、笑えるならば……と。
それからもへたくそな絵を何度か殿下に見せたっけ。
「今度こそちゃんとドラゴンに見えるでしょ?」と。
「マー、たいの、たいの!」
「ああ、ルゥイごめんね。次のページが見たいのね?」
ページをめくると、へたくそなドラゴンの絵。
でも、もう牛には見えないわよね?殿下はこの絵を見たらどう言うかしら?
へたくそだと言って笑って……それから、私が頬を膨らませると、両手で挟んで……。
王都で会った、20歳になった殿下の顔を思い出す。
あれは、子供だから許されることで……。
今の殿下は成人したし、すっかり大人になったんだもの。
もう、女性に対してそんなことをしてはいけないというのは分かっているはずだ。
そう、殿下が触れる相手は……結婚する女性だろう。
「マー、たいのっ!」
またもルゥイにせかされた。
「えーっと、王子がドラゴンに会ったところからね、これは……」
有名な物語だ。ルゥイに読み聞かせながら、心の中には疑問符で満ちていた。
ルゥイが私の産んだ子であれば……、父親は誰?
どういう経緯で、私はルゥイを身ごもったの?
何故一人で産もうと思ったの?
……どうして、ルゥイは殿下にそっくりなの?
窓から、騒ぎが聞こえてきた。
慌てて窓から見下ろすと、騎士たちの姿が見える。
どうして、王都の騎士がいるの?
制服が違う。この領にいる騎士じゃない。王家直属の騎士の制服だ……。
まさか、ルゥイを探しに?
「ルゥイ、続きは後で読んであげるから、ちょっとここで待っててくれる?」
クローゼットにルゥイを入れてドアを閉める。
「くらーい、きゃはは」
ルゥイが暗いのが平気でよかった。楽しそうだ。
「しぃーよ、ルゥイ。かくれんぼ。見つからないようにね」
と言っても分からないだろう。クローゼットの扉を開いて、王都で買った金平糖の瓶を手渡す。
「これ、食べて待っていて」
口に金平糖を入れてしまえばルゥイは静かになる。金平糖は小さいから喉に詰まらせることはないし、たまにしか食べられないと分かっているから大事に口の中で味わってくれる。
すぐに荷物を抱えて部屋を飛び出す。
きっと、探しているのは私だろう。
なら、私の姿を見れば追いかけてくるはず。
店を出て、騎士たちが街の人と話をしているすきに走り出す。
「あ、待て、いや、お待ちくださいっ!」
振り返ると焦った顔の騎士がこちらに駆け寄ろうとしている。
逃げないと。捕まるにしても、できるだけ店から遠くで……。ルゥイだけはルゥイだけは……。
そう思っていたのに、わずか4軒先の店さきで捕まってしまった。
と言ったら、殿下が一度離した手を、再び私のほっぺに当てて、両手で挟んだ。
「殿下っ!」
「ま、俺は子供だから、成人してないしな。構わないだろ?」
「殿下っ!」
「子供っぽいもなにも、俺は子供だからな!まだ、あと5年は子供だ!シャリナが膨れるたびにこうしてやるっ!」
その時は、いつも皇太子として早く大人になろうとしている殿下が、子供でいるということが嬉しかった。他の子供のように、笑えるならば……と。
それからもへたくそな絵を何度か殿下に見せたっけ。
「今度こそちゃんとドラゴンに見えるでしょ?」と。
「マー、たいの、たいの!」
「ああ、ルゥイごめんね。次のページが見たいのね?」
ページをめくると、へたくそなドラゴンの絵。
でも、もう牛には見えないわよね?殿下はこの絵を見たらどう言うかしら?
へたくそだと言って笑って……それから、私が頬を膨らませると、両手で挟んで……。
王都で会った、20歳になった殿下の顔を思い出す。
あれは、子供だから許されることで……。
今の殿下は成人したし、すっかり大人になったんだもの。
もう、女性に対してそんなことをしてはいけないというのは分かっているはずだ。
そう、殿下が触れる相手は……結婚する女性だろう。
「マー、たいのっ!」
またもルゥイにせかされた。
「えーっと、王子がドラゴンに会ったところからね、これは……」
有名な物語だ。ルゥイに読み聞かせながら、心の中には疑問符で満ちていた。
ルゥイが私の産んだ子であれば……、父親は誰?
どういう経緯で、私はルゥイを身ごもったの?
何故一人で産もうと思ったの?
……どうして、ルゥイは殿下にそっくりなの?
窓から、騒ぎが聞こえてきた。
慌てて窓から見下ろすと、騎士たちの姿が見える。
どうして、王都の騎士がいるの?
制服が違う。この領にいる騎士じゃない。王家直属の騎士の制服だ……。
まさか、ルゥイを探しに?
「ルゥイ、続きは後で読んであげるから、ちょっとここで待っててくれる?」
クローゼットにルゥイを入れてドアを閉める。
「くらーい、きゃはは」
ルゥイが暗いのが平気でよかった。楽しそうだ。
「しぃーよ、ルゥイ。かくれんぼ。見つからないようにね」
と言っても分からないだろう。クローゼットの扉を開いて、王都で買った金平糖の瓶を手渡す。
「これ、食べて待っていて」
口に金平糖を入れてしまえばルゥイは静かになる。金平糖は小さいから喉に詰まらせることはないし、たまにしか食べられないと分かっているから大事に口の中で味わってくれる。
すぐに荷物を抱えて部屋を飛び出す。
きっと、探しているのは私だろう。
なら、私の姿を見れば追いかけてくるはず。
店を出て、騎士たちが街の人と話をしているすきに走り出す。
「あ、待て、いや、お待ちくださいっ!」
振り返ると焦った顔の騎士がこちらに駆け寄ろうとしている。
逃げないと。捕まるにしても、できるだけ店から遠くで……。ルゥイだけはルゥイだけは……。
そう思っていたのに、わずか4軒先の店さきで捕まってしまった。
200
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる