Who am I.

花やま

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2、謎の場所

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どうしよう。
知らない部屋に、知らない服。極めつけは目の前に知らない人。
崩れるように座り込むと、ベルベットで覆われた柔らかいクッション材が身を包む。
「この状況を説明出来るとしたら・・・。」
その1、『今見ているのは夢』説。
この状況になる前に寝ていたのは間違いない。
定番だけど少し強めに手の甲をつねってみた、だが。
「痛いし、目が醒めない・・・。」
むしろ痛みで意識がはっきりしてきた気がする。

今度は、強く目を閉じてみた。
「これは夢。夢、夢、早く醒めろー。」
これで目を開けた瞬間、目の前にはいつもの自分の部屋が広がっているはずだ。
恐る恐る目を開けてみるが、やっぱり自分が居る部屋は見慣れない白い部屋だった。
「・・・はぁー。」
座っていたチェアに深くもたれかかると、椅子が苦しそうにきしんだ。

状況説明、その2。
『誘拐されてここに連れてこられた』説。
考えては見たが、多分それは無い。
帰宅中の記憶はあやふやだが間違いなく部屋までたどり着いていた。
ちょっとだけ寝るつもりで、着替えもせずにベッドに転がったことは覚えてる。

ただ、もしも本当に誘拐だった場合。
今着ている服は、私が寝ている間に誘拐犯が制服から着替えさせたことになる。
想像しただけ背筋が寒くなった。
目の前に倒れている人間も、同じ被害者か犯人の2択になってしまう。
うかつに声をかけることも危険だ。

状況説明、その3
『何か不思議な力が働いて、本やゲームの世界に迷い込んだ』説。
・・・無いな。一番ありえない。
それは流石に本の読みすぎだ。

駄目だ。
色々考えてみたけど、どうにもこの状況を説明することが出来なかった。
気が進まないが、部屋の中を探索してみるべきだろうか。

私の部屋とさほど変わりがないほどの小さな部屋だ。
部屋には私が座っていたアンティークな椅子がひとつと、同じくアンティーク調のドアがひとつ。
ドアと椅子の間に、謎の人物が1人。
顔が髪の毛で隠れているせいで年齢も性別もよく分からない。
下手に近づきたくはない。先ほどから動かないが、

―――もしも、死んでいるんだとしたら?

先ほどとは比べ物にならないくらい背中が寒くなった。
こんなよく分からない空間で倒れているんだ。
病気や自殺とは思えない。間違いなく殺人だ。
(私も、同じように・・・?)
この人を殺した奴に目が覚めた事がばれたら、何をされるか分からない。

ドアの外に1人で出ることも、倒れている人物を調べるのも怖い。
軽くパニックになって思わず後ずさった。
だが、さっきまで自分が座っていた椅子のことを忘れていた。
(やばいっ・・・!)
椅子が倒れるのを防ごうと手を伸ばすが届かず、ガタンっ!と椅子の倒れた音が盛大に部屋に響いた。


もぞもぞ。
(あれ・・・?)
明らかに、目の前の人物が動いた。
死体ではなかった事にひとまず安心したが、状況が最悪なことには変わりなかった。
どうにかしたいといけないのに、恐怖で体が動かない。

「んー・・・。」
聞こえたのは、女性の声だった。
倒れていた人物がゆっくりと起き上がり、眠そうに目を擦る。
黒い袖の隙間から覗いた指先は真っ白で、生きている人間とは思えなかった。
全身を覆う黒い布に、真っ白な髪や腕。人形の様に長いまつげまでもが真っ白だ。
横髪だけが長いその異様なヘアスタイルは、一時期流行ったボブカットという奴にしては乱雑すぎる。

床に座り込んだ人物が、ゆっくりとこちらに振り向いた。
柔らかそうな前髪の隙間から覗くグレイブルーの瞳は、儚げで今にも崩れてしまいそうな危うさを感じてしまう。
「・・・お姉さん、だあれ?」


追加の状況説明、その4。
『ここは死後の世界』説。
もしかして、私寝ている間に死んだ?
天使のような死神のようなその人を見て、思わずそう感じた。
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