姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

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第十七話 瑠璃と潜入捜査④

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「私の持ってる特殊な能力。それは服に合わせて意識を変質させる能力。私はそういう能力を持ってるんだ」

部長は、唐突に言い出した、自身の持つ特殊能力とやらをそう説明した。だが、何分唐突なことであるし、説明が少し難しかったので瑠璃とセイの2人はよく飲み込めなかった。

「えーっと・・・・・・」

「あはは、ちょっとよくわかんないかな?口で説明しただけじゃ」

「そうだね。ちょっとあまりよくわかんないかな・・・・・・」

「じゃあ試してみよう!口で説明するよりもそっちの方が早いでしょ!」

部長はにこやかにドレスの衣装を手にしながらそう言った。

「よくわかんないまま着るのも怖いんだけど・・・・・・まあ仕方ない。もう契約したんだし、観念して素直に着よう」

「えへへ、ありがとねー!」

田中部長は笑顔で礼を言う。

「さてと、それでアオちゃんにこれを着てもらうわけだけど、その前に、アオちゃんの好きな飲み物って何かな?」

「どうした急に」

「いや、それを着るにあたってちょっとアンケートをとっておきたくて・・・・・・」

「ますますよくわからないけど・・・・・・まあいいや。麦茶だよ。好きな飲み物は麦茶だね」

「・・・・・・なんか、渋いなあ・・・・・・」

「いいでしょ、別に。あれが一番クセのない、いつ飲んでも大丈夫な飲み物なんだから。ミネラルもあるからあれが一番いいんだ」

「アオちゃん、それって好きな飲み物というより最適解の飲み物って感じじゃない?」

・・・・・・なんかあんまりよくわからないが、瑠璃は大人しくドレス衣装を着ることにした。着方がわからないので、田中部長に手伝ってもらう。セイに手伝ってもらうのはなんか怖かったので、目隠しをして座らせておいた。

「まだー?」

「もうちょっと待ってー」

やがて着替えが終わって、瑠璃はそのお嬢様風ドレス衣装を着て立つ。セイはやっと目隠しを取ってもらえてそれを見た。

「か、か・・・・・・かわいいー!!かわいいよアオちゃん!!」

と、セイが駆け寄って抱きしめようとすると、瑠璃は手に持ったゴージャスな扇子をすっとセイに向けると、

「控えなさい、庶民」

ツンとした顔でそう言った。

「・・・・・・!?」

セイはその場にピタッと立ち止まって、ギギギ・・・・・・と田中部長の方へ首を向けた。

「あの、部長、これは・・・・・・?」

「おー、よかった。上手くいったみたいだね。作りが甘いとかかりも甘いから、よかったよ」

「ちょ、何なの部長!アオちゃんが変なんだけど!!ひょ、ひょっとしてこれが部長の『能力』ってやつ・・・・・・?」

「そう、これが私の能力。服に合わせて意識を変質させる能力。今の場合はお嬢様風ドレス衣装を着たアオちゃんの意識が、お嬢様みたいになってるってことだね」

説明を聞いて、セイは初めて得心のいったような顔をした。

「あー、なるほど!要は催眠術ね!」

「そうだね、そういうこと。服を利用した催眠能力って感じかな」

田中部長の能力。それはこの部活の部長にぴったりの能力であった。服に合わせて人の意識が変わる能力。執事服を着れば執事っぽくなり、メイド服を着ればメイドっぽくなる。そういう能力である。ただ、市販の服とかではダメで、この田中部長が自ら作った服でなければこの能力は発動しない。もし服に綻びがあったりしても、能力は上手く発動しない。けっこう条件の厳しめの能力である。

「ちなみに、どんなふうに意識が変質するかは着用者自身がそれに抱いているイメージに依存する。この場合、アオちゃんのいわゆるお嬢様のイメージがこんな感じってことだね」

「なるほど・・・・・・悪役令嬢モノとか読んでたのかな」

「とりあえず、今の状態でアオさんに好きな飲み物を聞いてみようか」

田中部長は瑠璃に好きな飲み物を聞いた。

「そんなの決まってましてよ。お紅茶ですわよ」

「おー、お茶はお茶でもこっちはすごくお嬢様っぽい!」

「紅茶イコールお嬢様っていうのもめっちゃコテコテの図式だけどね・・・・・・」

と、そんなことをやっていると

「そこのあなたがた、お紅茶をいただけないかしら?」

とか言ってきたので、ちょうどそこにあったペットボトルの紅茶で対応した。

「んー、この馥郁とした香り・・・・・・きっと最高級の茶葉を使ってるに違いないですわ」

「普通に紅茶花伝だけどね」

「しっ!身体能力はアオさんのままだし、黙ってたらわかんないから!」

そんなふうなことをコソコソ言っている2人をよそに、お嬢様瑠璃はカップに入れられた紅茶花伝を飲みながら呟く。

「しかし、このわたくしを立ちっぱなしにさせるなんて、気の利かない方々ですわね・・・・・・」

そして、セイのことを扇子で指してこう言った。

「そこのあなた。椅子になりなさい」

「部長、これから私は椅子になるから」

セイは決意を秘めた表情で断言した。

「椅子になることを即断してる・・・・・・」

「私は椅子になるから、とりあえず、部長は私の代わりにお嬢様アオちゃんを撮ってて!」

・・・・・・

さて、今まで自分の作業に夢中になっていた部員の有崎アリは、ようやく作業が一段落したので顔を上げて伸びをした。

「んー、ようやく一段落ついたあ」

そして、ふと思い出して気になった。

「そういえば、あの2人はどうなったんだろう」

少し前に、2人の客がこの部室へ来たのだ。アリは作業中だったから応対出来ず、部長に任せきりになってしまったのだが、大丈夫だっただろうか。

そしてアリが振り返ると、そこにはドレスを着た瑠璃がセイを椅子にしていて、部長がめちゃくちゃ写真を撮っていた。

「私が作業してる間に、一体何が起きたんですか・・・・・・?」



「あー・・・・・・酷い目にあった」

瑠璃はぐったりと疲れた表情で言った。もう日はとっぷりと暮れていて、瑠璃はセイと2人で帰路についていた。

「えー、私は楽しかったけどな!アオちゃんもかわいかったし!園児コスプレも可愛かったなー、お姉ちゃん、お姉ちゃんって甘えてきてさ!部長も有崎さんも鼻血出して喜んでたよ!」

「うああああ・・・・・・忘れてくれー」

瑠璃は顔を真っ赤にして言った。あのあと色々コスプレをしたのだが、どれも瑠璃にとってはかなり恥ずかしいことをさせられることになってしまったのだった。

「それで、わざわざ恥ずかしい思いまでして手に入れた情報だけど・・・・・・」

「会社からもらった情報とあんまり変わらなかったね」

「・・・・・・まあ仕方がない。会社の情報に間違いがなかったと確認出来ただけでもよかったと思おう」

と、そんなことを話しながら歩いていると瑠璃は道端に自販機があるのを見つけた。

「お、自販機だ。紅茶ばっかり飲んでたら逆に喉乾いちゃったし、何か飲み物を・・・・・・」

と、瑠璃が紅茶以外の飲み物を買おうとしたら、手が勝手に動いて何故か紅茶花伝を買ってしまった。

「・・・・・・」

「まだ抜けきってなくない?催眠・・・・・・」

このあと、体が紅茶を欲する日々がしばらく瑠璃に訪れることになるのだが・・・・・・それはまあ別に語らなくてもいいだろう。
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