34 / 44
33 すぐに帰ってくるよ 藤代side
しおりを挟む
俺に笑いかけてくれる千雪を見て、目頭が熱くなった。
子供の頃から泣いた数なんて、片手で数えられるくらいだったのにな、俺。千雪に会ってから、涙腺がバカになったかも。でもそれくらい、千雪との関りは心が揺さぶられるものだってことなんだと思う。
千雪に会うまで、俺の心は揺れたことなどなかったのだ。
もしかしたら。話してくれるとは言っていたけど、千雪はなにも言わずに逃げてしまうのではないか、とも考えていた。
でも、目の前の可愛い笑顔を見て。
彼は黙って逃げたりしない。きっと俺になにかを言ってくれる。そう思った。
だから、それが愛の言葉じゃなくても、罵倒でも、恨みでも、千雪の言葉ならなんでも聞こうと思う。
俺は千雪と向き合う覚悟を決めた。
「なぁ、千雪。今日は久しぶりに一緒に帰ろう? 俺の家に寄ってくれ。千雪とお祝いしたい」
俺は千雪を誘うとき、めちゃくちゃ緊張している。
初デートでも、こんなに緊張しなかったというのに。千雪を目の前にすると、鼓動がバクバク、心がざわざわした。
そして、彼の答えを待って、ジッとみつめる。
「いいよ」
だから、千雪がすぐに承諾してくれて、気持ちがふわりと浮き上がったのだ。
それがたとえ、愛想のない一言だったとしても。ぜーんぜん構わないっ。
「で、話がしたい。いっぱい。いろいろ」
「あぁ、僕も君と話がしたかったんだ」
ニコリと笑い、千雪は席を立った。
「選挙に協力してくれた萩原先輩と深見先輩にお礼を言いに行ってくるから、またあとで」
「放課後は、生徒会の初顔合わせだぞ」
「挨拶して、すぐに帰ってくるよ」
背筋を伸ばして歩く千雪の凛とした後ろ姿が、教室から出て行って見えなくなった。
でも俺は有頂天で、自分の席で足をバタバタさせて喜んだ。
あぁ、早くふたりきりになりたい。
でも千雪は、すぐに帰ると言ったのに、ホームルームの時間になっても教室に戻らず。
生徒会役員の顔合わせの席にも、姿を現さなかった。
子供の頃から泣いた数なんて、片手で数えられるくらいだったのにな、俺。千雪に会ってから、涙腺がバカになったかも。でもそれくらい、千雪との関りは心が揺さぶられるものだってことなんだと思う。
千雪に会うまで、俺の心は揺れたことなどなかったのだ。
もしかしたら。話してくれるとは言っていたけど、千雪はなにも言わずに逃げてしまうのではないか、とも考えていた。
でも、目の前の可愛い笑顔を見て。
彼は黙って逃げたりしない。きっと俺になにかを言ってくれる。そう思った。
だから、それが愛の言葉じゃなくても、罵倒でも、恨みでも、千雪の言葉ならなんでも聞こうと思う。
俺は千雪と向き合う覚悟を決めた。
「なぁ、千雪。今日は久しぶりに一緒に帰ろう? 俺の家に寄ってくれ。千雪とお祝いしたい」
俺は千雪を誘うとき、めちゃくちゃ緊張している。
初デートでも、こんなに緊張しなかったというのに。千雪を目の前にすると、鼓動がバクバク、心がざわざわした。
そして、彼の答えを待って、ジッとみつめる。
「いいよ」
だから、千雪がすぐに承諾してくれて、気持ちがふわりと浮き上がったのだ。
それがたとえ、愛想のない一言だったとしても。ぜーんぜん構わないっ。
「で、話がしたい。いっぱい。いろいろ」
「あぁ、僕も君と話がしたかったんだ」
ニコリと笑い、千雪は席を立った。
「選挙に協力してくれた萩原先輩と深見先輩にお礼を言いに行ってくるから、またあとで」
「放課後は、生徒会の初顔合わせだぞ」
「挨拶して、すぐに帰ってくるよ」
背筋を伸ばして歩く千雪の凛とした後ろ姿が、教室から出て行って見えなくなった。
でも俺は有頂天で、自分の席で足をバタバタさせて喜んだ。
あぁ、早くふたりきりになりたい。
でも千雪は、すぐに帰ると言ったのに、ホームルームの時間になっても教室に戻らず。
生徒会役員の顔合わせの席にも、姿を現さなかった。
143
あなたにおすすめの小説
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
その告白は勘違いです
雨宮里玖
BL
高校三年生の七沢は成績が悪く卒業の危機に直面している。そのため、成績トップの有馬に勉強を教えてもらおうと試みる。
友人の助けで有馬とふたりきりで話す機会を得たのはいいが、勉強を教えてもらうために有馬に話しかけたのに、なぜか有馬のことが好きだから近づいてきたように有馬に勘違いされてしまう。
最初、冷たかったはずの有馬は、ふたりで過ごすうちに態度が変わっていく。
そして、七沢に
「俺も、お前のこと好きになったかもしれない」
と、とんでもないことを言い出して——。
勘違いから始まる、じれきゅん青春BLラブストーリー!
七沢莉紬(17)
受け。
明るく元気、馴れ馴れしいタイプ。いろいろとふざけがち。成績が悪く卒業が危ぶまれている。
有馬真(17)
攻め。
優等生、学級委員長。クールで落ち着いている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる