【完結】いいなりなのはキスのせい

北川晶

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33 すぐに帰ってくるよ  藤代side

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 俺に笑いかけてくれる千雪を見て、目頭が熱くなった。
 子供の頃から泣いた数なんて、片手で数えられるくらいだったのにな、俺。千雪に会ってから、涙腺がバカになったかも。でもそれくらい、千雪との関りは心が揺さぶられるものだってことなんだと思う。

 千雪に会うまで、俺の心は揺れたことなどなかったのだ。

 もしかしたら。話してくれるとは言っていたけど、千雪はなにも言わずに逃げてしまうのではないか、とも考えていた。
 でも、目の前の可愛い笑顔を見て。
 彼は黙って逃げたりしない。きっと俺になにかを言ってくれる。そう思った。
 だから、それが愛の言葉じゃなくても、罵倒でも、恨みでも、千雪の言葉ならなんでも聞こうと思う。

 俺は千雪と向き合う覚悟を決めた。

「なぁ、千雪。今日は久しぶりに一緒に帰ろう? 俺の家に寄ってくれ。千雪とお祝いしたい」
 俺は千雪を誘うとき、めちゃくちゃ緊張している。
 初デートでも、こんなに緊張しなかったというのに。千雪を目の前にすると、鼓動がバクバク、心がざわざわした。
 そして、彼の答えを待って、ジッとみつめる。

「いいよ」
 だから、千雪がすぐに承諾してくれて、気持ちがふわりと浮き上がったのだ。
 それがたとえ、愛想のない一言だったとしても。ぜーんぜん構わないっ。

「で、話がしたい。いっぱい。いろいろ」
「あぁ、僕も君と話がしたかったんだ」
 ニコリと笑い、千雪は席を立った。
「選挙に協力してくれた萩原先輩と深見先輩にお礼を言いに行ってくるから、またあとで」
「放課後は、生徒会の初顔合わせだぞ」
「挨拶して、すぐに帰ってくるよ」
 背筋を伸ばして歩く千雪の凛とした後ろ姿が、教室から出て行って見えなくなった。
 でも俺は有頂天で、自分の席で足をバタバタさせて喜んだ。

 あぁ、早くふたりきりになりたい。

 でも千雪は、すぐに帰ると言ったのに、ホームルームの時間になっても教室に戻らず。
 生徒会役員の顔合わせの席にも、姿を現さなかった。

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