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17 穂高を呼び出し、キスをした 藤代side
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花壇で、穂高の肩を掴んだときのことを、俺は思い出している。
あまりにも肩が薄くて、俺の手が自分でも大きいと感じた。穂高の体躯は頼りなく、華奢で、自分の体格とはまるで違うから驚いたのだ。
穂高が俺のこと好きで、それゆえにツンデレになっているのだとしたら、いっそ恋人になってしまえばいい。
恋人だったら、あの小さな体を抱きしめてもいいんだ。
あの白いうなじにくちづけしても許される。
肌は彼の名を表すごとく雪のように白くて、綺麗。顎の線は細めの卵型。
背筋は正しく、腰も細めで、小ぶりなヒップライン…そこまで考えて、余裕でイケると思った。
なにって、同性を恋人にすることだ。というか、穂高だから同性でもオッケーなのかも。
今まで、同性から告白されたこともあった。付き合ったことこそなかったが、情報として男同士のセックスが成り立つのは知っている。
まるで男臭くない穂高だったら、体込みの付き合いもアリだな。
いやいや、先走るな。健康な高校生男子だから、つい体の相性などを考えてしまうが。
その前に、まずはデートして告白だ。
彼の気持ちをしっかり確かめたい。
でも、いきなりデートに誘ったら、さすがに引かれるよな。ツンデレが発動して断られそう。
そうしたら、園芸部の課外活動として、植物園に行くのはどうだろう? 俺が園芸部に入ったことで、部員が二十名ほどになった。大人数で行くのはデートっぽくなくて萎えるけど、当日どこかでふたりきりになれたら、絶対穂高と仲良くなれる。ナイスアイデアじゃね?
なんて。俺はふわふわした甘い想像をしていたんだ。
しかし。数日後、園芸部の顧問から穂高の退部届を渡された。
地の底まで叩き落されたような気分だ。
ふわふわと浮ついたところから、奈落へ真っ逆さまで、その気持ちの落差が激しすぎて、尋常でない怒りが込み上げた。
また、俺から逃げるのか、穂高。
いや、もう逃がしてやらない。
だから俺は、生徒会室に穂高を呼び出し、キスをした。
今まで出会ってきた者は、みんな俺のことが好きだった。
だから過去の恋人たちは、みんな俺が選んできたのだ。
俺が気に入った者と付き合い、飽きたら別れる。
なにもしなくても、俺に関わりのある者は俺に従順だけど、キスやセックスをした者は、より盲目的に俺に従うようになる。体感だけど、好感からメロメロな溺愛へ。ちやほやから過保護へ、という感じかな。
なので、別れるときにトラブルになったこともなかった。俺の気持ちを尊重してくれるよね? って言えば、渋々ながら綺麗にお別れしてくれるからだ。
恋人たちは、俺の決定が絶対なのだった。
だから、穂高にキスをして俺は所有欲を満たしていた。
これで、穂高は俺を見るようになる。俺にメロメロになる。最初からこうしていれば良かった。
衆目を集める俺の特殊能力は、穂高に効かないけど。
キスやセックスで俺にいいなりになる能力は、恋人たちの態度から察するに、濃く交わるほど従順度が高まるので、おそらく唾液や体液がそれをうながすのじゃないかと考察していた。
つまり穂高も、俺とディープなキスをすれば盲目的な恋人に生まれ変わるはずだ。
念のため、効力があるか確かめるため、以前の穂高なら絶対に了承しない難題を吹っ掛けてみた。
「放課後、俺の用事が終わるまで待っていろ」
すると、穂高は笑顔で「藤代の言うとおりにする」って言ったのだ。
おおぉう、よく効いている。
このとき俺は、彼を手中に収めたことを深く実感し、感動した。
これからは、穂高の綺麗な瞳に自分だけが映る。その高揚は最高だ。まさに、初体験。穂高はやはり他の誰とも違うのだ。
そして、告白が成就して両想いになるのは、こんなにも多幸感にあふれるものなのかと感動した。
だけど。
次の日にはもう、いつもの状況と違うことに気づいてしまった。
朝、学園の最寄り駅。俺は穂高が改札を抜けてくるのを待っていた。
つか、ここからもう違うわけだけど。
過去の恋人たちは、一分一秒でも長く俺と共にいることを願った。だから、必ず自分よりも前に待ち合わせ場所にいた。なんなら、俺の家の最寄り駅で待ち伏せなどもあったよ。
そして俺の姿をみつけたら、満面の笑みで駆け寄ってきて腕を組む。俺の恋人アピールを周囲に振りまいていた。
でも穂高は。俺が待っているのを目に留めても、歩調は変わらず。笑みさえ浮かべなかった。
「おはよう」
挨拶をして、隣を歩いてはくれるが。
「手、繋ぐ?」
って聞いたら。眉間に皺を寄せた。
「まさか。男同士で、それはない」
ですよね。
いやいや、穂高の言葉は正しいよ。同性のカップルは仲をひけらかしたりはしないもんだもんね。
でもさ。俺の恋人としては、その発言は正しくないよ。
その理性的な態度は、今までの恋人たちにはなかったものだ。
前カノと比べちゃダメ、っていうのはわかる。でも、そういうことじゃなくってっ。
根本的に、俺とキスして盲目的になった彼女たちは、召使いのごとく俺に尽くし、教師の前でキスをせがむほどに自制心をなくす。
それが、俺に溺れた恋人たちの反応なのであって。
つまり、穂高は俺に溺れていない…んじゃね?
いやいや、男女の違いがあるのかもしれない。
やはり、同性同士のカップルだと、後ろめたさがあって自制心が働くのかもしれないからな。
そう思って、少し様子を見てみたのだけど。
過去の恋人たちは、とにかく俺のことを見た。
一瞬たりとも視線を外そうとはしない。それは、俺がなにを考えて、なにを望むのかを素早く察知したいから。
そして、愛する者を己の瞳に映していたいからだ。
でも穂高の目の色は、透明で清涼で、他の者のように潤んだ熱っぽい目ではなく、凛とした輝きがあるのだ。
それは、俺の好きな、彼の瞳の色。
けれど、その瞳は愛情の熱を帯びてはいなかった。
そこが、今までの恋人たちと穂高の一番の違いだ。
穂高は、俺のいいなりになっていない。
俺のキスは、効いていない。
でも、なにかやれって命令したときは、素直に従ってくれる。人前で触れることは嫌がるが、キスを拒むことはなかった。
たとえば。操り人形の糸が、俺の従わせる能力だとして。目の前で、糸のついていない人形が勝手に踊っている、そんな感覚なのだ。けれど、操る側は、糸がついていないことくらいわかるよ。
ではなぜ、穂高は操り人形のふりをしているのだろうか?
そんなの、怖くて聞けないよ。
穂高にキスしたとき、ちょっと揉めて。彼が意識を失った場面があった。
そのときから穂高は、急に体に触れるとビクッと身をこわばらせるようになった。穂高はあの日の恐怖に今も縛られているのかもしれない。
『ごめんね、あのときは乱暴だった。でもこれからは恋人として大事にするから』そんなふうに謝罪をしたくなる。でもあのことを蒸し返したとき、また『君が嫌いだ』と言われたら?
俺は。自分がどうなるかわからない。
穂高を手放したくないのだ。やっと手に入った俺の唯一。
もう彼を傷つけたくない。いやなことを思い出させたくないんだ。
乱暴な行いをして穂高の意識を失わせたこと。
言いくるめてキスをして、いいなりにさせようとしたこと。
恋人という名の鎖で穂高を縛りつけていること。
俺には後ろめたいことが多すぎた。
だから俺はその後、あの日のことについて、いっさい触れなかった。
なぜ穂高が自分に従うのかわからない。
穂高の気持ちもわからない。
でも理由は問えない。
俺は目をつぶったまま、穂高と付き合い続けた。
俺は、真実を知るのを恐れている。
見ぬふりをしていれば、穂高と恋人でいられるのだ。
だけど、気持ちがあやふやなままでは、体の関係に踏み切れない。それはさすがに不誠実だと思うし。
俺は穂高を大切にしたいのだ。これ以上彼の心を傷つけるようなことはしたくない。
綺麗事だけど、マジでそう思っていた。
だから、まだキス止まり。
俺のその態度で、愛されていることを穂高に自覚してほしい。
ヨワヨワなアプローチ過ぎて、自分で笑う。小学生のときよりメンタルヨワヨワ。
でも仕方がない。俺は穂高に弱いのだ。
俺の目は、穂高だけをみつめていて。俺の心は、穂高だけに屈服している。
一縷の望みがあるのだとすれば。
穂高がいいなりのふりをするのは。
俺が穂高に触れても嫌がらないのは。
彼の中に俺を好きだという気持ちが少しはあるからだと思いたい。
そうであってほしいと、俺は胸の奥底で願っていた。
あまりにも肩が薄くて、俺の手が自分でも大きいと感じた。穂高の体躯は頼りなく、華奢で、自分の体格とはまるで違うから驚いたのだ。
穂高が俺のこと好きで、それゆえにツンデレになっているのだとしたら、いっそ恋人になってしまえばいい。
恋人だったら、あの小さな体を抱きしめてもいいんだ。
あの白いうなじにくちづけしても許される。
肌は彼の名を表すごとく雪のように白くて、綺麗。顎の線は細めの卵型。
背筋は正しく、腰も細めで、小ぶりなヒップライン…そこまで考えて、余裕でイケると思った。
なにって、同性を恋人にすることだ。というか、穂高だから同性でもオッケーなのかも。
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まるで男臭くない穂高だったら、体込みの付き合いもアリだな。
いやいや、先走るな。健康な高校生男子だから、つい体の相性などを考えてしまうが。
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彼の気持ちをしっかり確かめたい。
でも、いきなりデートに誘ったら、さすがに引かれるよな。ツンデレが発動して断られそう。
そうしたら、園芸部の課外活動として、植物園に行くのはどうだろう? 俺が園芸部に入ったことで、部員が二十名ほどになった。大人数で行くのはデートっぽくなくて萎えるけど、当日どこかでふたりきりになれたら、絶対穂高と仲良くなれる。ナイスアイデアじゃね?
なんて。俺はふわふわした甘い想像をしていたんだ。
しかし。数日後、園芸部の顧問から穂高の退部届を渡された。
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ふわふわと浮ついたところから、奈落へ真っ逆さまで、その気持ちの落差が激しすぎて、尋常でない怒りが込み上げた。
また、俺から逃げるのか、穂高。
いや、もう逃がしてやらない。
だから俺は、生徒会室に穂高を呼び出し、キスをした。
今まで出会ってきた者は、みんな俺のことが好きだった。
だから過去の恋人たちは、みんな俺が選んできたのだ。
俺が気に入った者と付き合い、飽きたら別れる。
なにもしなくても、俺に関わりのある者は俺に従順だけど、キスやセックスをした者は、より盲目的に俺に従うようになる。体感だけど、好感からメロメロな溺愛へ。ちやほやから過保護へ、という感じかな。
なので、別れるときにトラブルになったこともなかった。俺の気持ちを尊重してくれるよね? って言えば、渋々ながら綺麗にお別れしてくれるからだ。
恋人たちは、俺の決定が絶対なのだった。
だから、穂高にキスをして俺は所有欲を満たしていた。
これで、穂高は俺を見るようになる。俺にメロメロになる。最初からこうしていれば良かった。
衆目を集める俺の特殊能力は、穂高に効かないけど。
キスやセックスで俺にいいなりになる能力は、恋人たちの態度から察するに、濃く交わるほど従順度が高まるので、おそらく唾液や体液がそれをうながすのじゃないかと考察していた。
つまり穂高も、俺とディープなキスをすれば盲目的な恋人に生まれ変わるはずだ。
念のため、効力があるか確かめるため、以前の穂高なら絶対に了承しない難題を吹っ掛けてみた。
「放課後、俺の用事が終わるまで待っていろ」
すると、穂高は笑顔で「藤代の言うとおりにする」って言ったのだ。
おおぉう、よく効いている。
このとき俺は、彼を手中に収めたことを深く実感し、感動した。
これからは、穂高の綺麗な瞳に自分だけが映る。その高揚は最高だ。まさに、初体験。穂高はやはり他の誰とも違うのだ。
そして、告白が成就して両想いになるのは、こんなにも多幸感にあふれるものなのかと感動した。
だけど。
次の日にはもう、いつもの状況と違うことに気づいてしまった。
朝、学園の最寄り駅。俺は穂高が改札を抜けてくるのを待っていた。
つか、ここからもう違うわけだけど。
過去の恋人たちは、一分一秒でも長く俺と共にいることを願った。だから、必ず自分よりも前に待ち合わせ場所にいた。なんなら、俺の家の最寄り駅で待ち伏せなどもあったよ。
そして俺の姿をみつけたら、満面の笑みで駆け寄ってきて腕を組む。俺の恋人アピールを周囲に振りまいていた。
でも穂高は。俺が待っているのを目に留めても、歩調は変わらず。笑みさえ浮かべなかった。
「おはよう」
挨拶をして、隣を歩いてはくれるが。
「手、繋ぐ?」
って聞いたら。眉間に皺を寄せた。
「まさか。男同士で、それはない」
ですよね。
いやいや、穂高の言葉は正しいよ。同性のカップルは仲をひけらかしたりはしないもんだもんね。
でもさ。俺の恋人としては、その発言は正しくないよ。
その理性的な態度は、今までの恋人たちにはなかったものだ。
前カノと比べちゃダメ、っていうのはわかる。でも、そういうことじゃなくってっ。
根本的に、俺とキスして盲目的になった彼女たちは、召使いのごとく俺に尽くし、教師の前でキスをせがむほどに自制心をなくす。
それが、俺に溺れた恋人たちの反応なのであって。
つまり、穂高は俺に溺れていない…んじゃね?
いやいや、男女の違いがあるのかもしれない。
やはり、同性同士のカップルだと、後ろめたさがあって自制心が働くのかもしれないからな。
そう思って、少し様子を見てみたのだけど。
過去の恋人たちは、とにかく俺のことを見た。
一瞬たりとも視線を外そうとはしない。それは、俺がなにを考えて、なにを望むのかを素早く察知したいから。
そして、愛する者を己の瞳に映していたいからだ。
でも穂高の目の色は、透明で清涼で、他の者のように潤んだ熱っぽい目ではなく、凛とした輝きがあるのだ。
それは、俺の好きな、彼の瞳の色。
けれど、その瞳は愛情の熱を帯びてはいなかった。
そこが、今までの恋人たちと穂高の一番の違いだ。
穂高は、俺のいいなりになっていない。
俺のキスは、効いていない。
でも、なにかやれって命令したときは、素直に従ってくれる。人前で触れることは嫌がるが、キスを拒むことはなかった。
たとえば。操り人形の糸が、俺の従わせる能力だとして。目の前で、糸のついていない人形が勝手に踊っている、そんな感覚なのだ。けれど、操る側は、糸がついていないことくらいわかるよ。
ではなぜ、穂高は操り人形のふりをしているのだろうか?
そんなの、怖くて聞けないよ。
穂高にキスしたとき、ちょっと揉めて。彼が意識を失った場面があった。
そのときから穂高は、急に体に触れるとビクッと身をこわばらせるようになった。穂高はあの日の恐怖に今も縛られているのかもしれない。
『ごめんね、あのときは乱暴だった。でもこれからは恋人として大事にするから』そんなふうに謝罪をしたくなる。でもあのことを蒸し返したとき、また『君が嫌いだ』と言われたら?
俺は。自分がどうなるかわからない。
穂高を手放したくないのだ。やっと手に入った俺の唯一。
もう彼を傷つけたくない。いやなことを思い出させたくないんだ。
乱暴な行いをして穂高の意識を失わせたこと。
言いくるめてキスをして、いいなりにさせようとしたこと。
恋人という名の鎖で穂高を縛りつけていること。
俺には後ろめたいことが多すぎた。
だから俺はその後、あの日のことについて、いっさい触れなかった。
なぜ穂高が自分に従うのかわからない。
穂高の気持ちもわからない。
でも理由は問えない。
俺は目をつぶったまま、穂高と付き合い続けた。
俺は、真実を知るのを恐れている。
見ぬふりをしていれば、穂高と恋人でいられるのだ。
だけど、気持ちがあやふやなままでは、体の関係に踏み切れない。それはさすがに不誠実だと思うし。
俺は穂高を大切にしたいのだ。これ以上彼の心を傷つけるようなことはしたくない。
綺麗事だけど、マジでそう思っていた。
だから、まだキス止まり。
俺のその態度で、愛されていることを穂高に自覚してほしい。
ヨワヨワなアプローチ過ぎて、自分で笑う。小学生のときよりメンタルヨワヨワ。
でも仕方がない。俺は穂高に弱いのだ。
俺の目は、穂高だけをみつめていて。俺の心は、穂高だけに屈服している。
一縷の望みがあるのだとすれば。
穂高がいいなりのふりをするのは。
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2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
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