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16 逆効果だって、わかっている 藤代side
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穂高に手ひどく拒絶されてしまった俺は、気軽に彼に近づけなくなった。
人との距離を測るのも、人を気遣うのも、はじめてだ。勝手がわからない。
こんなにめんどくさいなら、穂高なんか放っておけばいい。彼もそう言っているのだし。俺のことを好きじゃないやつと付き合うことなくね?
なんて、思うけど。
教室の中、俺の目の端で穂高と片瀬が楽しそうに話しているのが見えると、なんかイラっとする。
無意識に、奥歯がギシリと鳴った。
自分は穂高に近寄れないのに、なんであいつは穂高と笑い合っているんだ?
そのことが無性に許せなかった。
穂高と言葉を交わしたやつは、みんな嫌い。その感情を、俺は隠さなかった。
すると俺に気を使う、俺に嫌われたくないやつらは、穂高から距離を置くようになった。
俺は、なにも言っていないよ。ただ、一時的に片瀬や穂高としゃべったやつらと口を利かなかっただけ。
だって、腹が立つじゃん。
その感情を、ありのままにしていただけだ。
まぁ…そういう態度を取っていたら、穂高と話す者がどんどんいなくなるってことは、わかっていたけどね。
穂高は、休み時間も昼食時も、ひとりでいるようになった。自分の席にチョンと座っている。
可哀想な、穂高。
でも穂高は、ひとりでいても背筋を凛と伸ばしているのだ。すべてを見通す彼の目は、周囲の反応を黙って受け入れた。
なんて高潔な人なのだろう。
でも、穂高がひとりになったら自分になびくのではないかと思う、俺のズルい気持ち、その醜さまでも、彼の美しい瞳に映っているのだろう。
逆効果だって、わかっている。
けれど、穂高の件に関しては、自分の気持ちが自分で制御できなかった。
もう少しスマートに、彼に気の利いた声をかけたり、彼と向き合ったりしたいんだけどな。
穂高を目の前にすると、まるで子供が駄々をこねるみたいに、欲しいものを欲しいとしか言えない、思えない、身勝手で不器用な自分が湧き出てきてしまう。
穂高は自分を見ることなく、教室の窓から外を眺めている。彼のメガネのレンズに、新緑の光が反射して、綺麗だった。
自分を映していないから、穂高の瞳は綺麗なのだ。
だから、俺はとても悲しくなった。
放課後、クラスメイト数人で駅前のドーナツ屋に寄ったとき、俺はぼそりとつぶやいた。
「俺と目が合わない子がいて、気になるんだよな」
穂高との距離が縮まらず、俺はあせっていたし、腐っていたのだ。
「そんなやついる? 男の俺でも、藤代のことはなんとなく目で追っちゃうのに」
高瀬が大袈裟に驚いて見せた。
おまえがつい最近までよく話していたやつだよ、とは言わないが。というか高瀬は俺に心酔するタイプだから、俺の機嫌を損ねたくなくて早々に穂高を切ってしまった。
あぁ、穂高が可哀想。ひどい奴だな、高瀬は。
自分のことを棚に上げて、そんなふうに思う。
みんなが俺に従うと言っても、そこには何種類かタイプがある。
高瀬のように、グイグイそばに寄ってくる心酔タイプ。このタイプは通りすがりにメルアドを渡してくるような空気を読まない者が多い。あと親友面することもアリ。俺のために、ときに強硬手段を取るようなこともあって…こういうの、強火担って言うのかな?
それから。気にはなって俺から視線を外せないが、友達の輪には入って来られない慎重派タイプ。でも隙あれば俺と仲良くなりたいと思っていて、雑用なんかは率先して代わってくれる。このタイプが一番多いんだよな。
あとは。なにかと注意や助言をしてきて、俺に親身になっているとアピールする忠告タイプ。これは教師や年上の者が多いかな。私に任せてと言いながら、俺を良いようにしようとする、ちょっと厄介なタイプだ。
大体この三タイプに分類できる。言うまでもなく穂高はどこにも当てはまらない。
で、心酔タイプの高瀬は目で追っちゃうどころか、なんとか俺のそばから離れたくないという執着が見えて鬱陶しい。だけど穂高と友達だったから、穂高の情報を彼から聞き出したくてそばに置いていた。
高瀬の言葉を受け、A組女子の宮川が口の端につけたドーナツのチョコを舌ペロしてから言う。
「でもさ、藤代くんを見ないって、絶対無理してるよぉ。つか、逆にバリバリ意識してるんじゃね? 私、見てないんだからねっていう、ツンデレアピール!」
その意見は、俺をなるほどと唸らせた。
そうか、穂高はツンデレなんだな? あり得るかも。
「やだぁ、そんなズルい手を使う子に騙されないでよねぇ、藤代くん」
語尾にハートマークをつけて、上目遣いで可愛いアピールする、他のA組女子たち。彼女たちに俺は愛想笑いして、考えた。
もしも穂高が自分のことを好きだったら?
すぐに目をそらすのは照れ隠しだったら?
強気な言葉は、その他大勢とは違うという穂高なりのアピール、かも?
真面目な彼は同性の俺を好きになって困っていて、それで自分に迷惑をかけないよう距離を取っているとか? だったら、友達になれないという言葉も腑に落ちる。
考えれば考えるほど、穂高の言葉や態度が俺を好きゆえのものに思えてくる。
嬉しさのあまり、俺は鳥肌が立った。
人との距離を測るのも、人を気遣うのも、はじめてだ。勝手がわからない。
こんなにめんどくさいなら、穂高なんか放っておけばいい。彼もそう言っているのだし。俺のことを好きじゃないやつと付き合うことなくね?
なんて、思うけど。
教室の中、俺の目の端で穂高と片瀬が楽しそうに話しているのが見えると、なんかイラっとする。
無意識に、奥歯がギシリと鳴った。
自分は穂高に近寄れないのに、なんであいつは穂高と笑い合っているんだ?
そのことが無性に許せなかった。
穂高と言葉を交わしたやつは、みんな嫌い。その感情を、俺は隠さなかった。
すると俺に気を使う、俺に嫌われたくないやつらは、穂高から距離を置くようになった。
俺は、なにも言っていないよ。ただ、一時的に片瀬や穂高としゃべったやつらと口を利かなかっただけ。
だって、腹が立つじゃん。
その感情を、ありのままにしていただけだ。
まぁ…そういう態度を取っていたら、穂高と話す者がどんどんいなくなるってことは、わかっていたけどね。
穂高は、休み時間も昼食時も、ひとりでいるようになった。自分の席にチョンと座っている。
可哀想な、穂高。
でも穂高は、ひとりでいても背筋を凛と伸ばしているのだ。すべてを見通す彼の目は、周囲の反応を黙って受け入れた。
なんて高潔な人なのだろう。
でも、穂高がひとりになったら自分になびくのではないかと思う、俺のズルい気持ち、その醜さまでも、彼の美しい瞳に映っているのだろう。
逆効果だって、わかっている。
けれど、穂高の件に関しては、自分の気持ちが自分で制御できなかった。
もう少しスマートに、彼に気の利いた声をかけたり、彼と向き合ったりしたいんだけどな。
穂高を目の前にすると、まるで子供が駄々をこねるみたいに、欲しいものを欲しいとしか言えない、思えない、身勝手で不器用な自分が湧き出てきてしまう。
穂高は自分を見ることなく、教室の窓から外を眺めている。彼のメガネのレンズに、新緑の光が反射して、綺麗だった。
自分を映していないから、穂高の瞳は綺麗なのだ。
だから、俺はとても悲しくなった。
放課後、クラスメイト数人で駅前のドーナツ屋に寄ったとき、俺はぼそりとつぶやいた。
「俺と目が合わない子がいて、気になるんだよな」
穂高との距離が縮まらず、俺はあせっていたし、腐っていたのだ。
「そんなやついる? 男の俺でも、藤代のことはなんとなく目で追っちゃうのに」
高瀬が大袈裟に驚いて見せた。
おまえがつい最近までよく話していたやつだよ、とは言わないが。というか高瀬は俺に心酔するタイプだから、俺の機嫌を損ねたくなくて早々に穂高を切ってしまった。
あぁ、穂高が可哀想。ひどい奴だな、高瀬は。
自分のことを棚に上げて、そんなふうに思う。
みんなが俺に従うと言っても、そこには何種類かタイプがある。
高瀬のように、グイグイそばに寄ってくる心酔タイプ。このタイプは通りすがりにメルアドを渡してくるような空気を読まない者が多い。あと親友面することもアリ。俺のために、ときに強硬手段を取るようなこともあって…こういうの、強火担って言うのかな?
それから。気にはなって俺から視線を外せないが、友達の輪には入って来られない慎重派タイプ。でも隙あれば俺と仲良くなりたいと思っていて、雑用なんかは率先して代わってくれる。このタイプが一番多いんだよな。
あとは。なにかと注意や助言をしてきて、俺に親身になっているとアピールする忠告タイプ。これは教師や年上の者が多いかな。私に任せてと言いながら、俺を良いようにしようとする、ちょっと厄介なタイプだ。
大体この三タイプに分類できる。言うまでもなく穂高はどこにも当てはまらない。
で、心酔タイプの高瀬は目で追っちゃうどころか、なんとか俺のそばから離れたくないという執着が見えて鬱陶しい。だけど穂高と友達だったから、穂高の情報を彼から聞き出したくてそばに置いていた。
高瀬の言葉を受け、A組女子の宮川が口の端につけたドーナツのチョコを舌ペロしてから言う。
「でもさ、藤代くんを見ないって、絶対無理してるよぉ。つか、逆にバリバリ意識してるんじゃね? 私、見てないんだからねっていう、ツンデレアピール!」
その意見は、俺をなるほどと唸らせた。
そうか、穂高はツンデレなんだな? あり得るかも。
「やだぁ、そんなズルい手を使う子に騙されないでよねぇ、藤代くん」
語尾にハートマークをつけて、上目遣いで可愛いアピールする、他のA組女子たち。彼女たちに俺は愛想笑いして、考えた。
もしも穂高が自分のことを好きだったら?
すぐに目をそらすのは照れ隠しだったら?
強気な言葉は、その他大勢とは違うという穂高なりのアピール、かも?
真面目な彼は同性の俺を好きになって困っていて、それで自分に迷惑をかけないよう距離を取っているとか? だったら、友達になれないという言葉も腑に落ちる。
考えれば考えるほど、穂高の言葉や態度が俺を好きゆえのものに思えてくる。
嬉しさのあまり、俺は鳥肌が立った。
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