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番外 准将、将堂青桐 4
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「協力するかは、理由によるな。もしかして、将堂家の復讐とか?」
は? そんなのに興味ねぇよ。つい最近まで、将堂と己に関りがあるとか知らなかったし。
ただ…。
「堺が欲しい」
理由なんか、それだけだ。
「ん?」
なんか、キラキラした目でこちらを見ている。ツンツン跳ねた黒髪が、目の錯覚かルンルンしている。
つか、おまえ、絶対聞こえていただろうがっ。
「堺を嫁にする」
ここは宣戦布告だ。堺と親密なこいつに、堂々と挑戦状を叩きつけてやるっ。
そうしたら、なぜか嬉しそうな顔をしながらも、こいつは悪い面を並べ立ててくる。
龍鬼の堺と付き合うと、変人扱いされるとか。
なんだそりゃ? 性格悪すぎ。
「そんなの、関係ない。一目惚れなんだ」
こいつに知らしめるために、青桐は己がどういう気持ちなのかを話した。
生まれたときから、自分は自分ではない誰かのために生きてきたこと。自分を律して、その日に備えてきた。
しかし記憶を奪われ、今日から青桐様ですって…乱暴な話だ。
堺に一目惚れして、求婚して。承諾をもらったんだ。だから、堺が欲しい。
ってなことをな。
一度、己のものになった堺を手放す気はない。
というか、この年齢まで声がかかるかかからないかわからない、あやふやな来たるべき事のために、己は己を持たずに生きてきたのだ。
そして今、ようやく声がかかり、己の使命は果たされた。
これからは、己の望むままに生きてもいいはずだ。
「俺のことは、くれてやる。だがそれ以外は、俺の好きにする。俺にはその権利があると思わないか?」
「堺を大事にしてくれるなら、協力してもいいよ。堺はとても傷ついている。龍鬼としてつらい目にいっぱいあったからね。だから優しく、宝物を愛でるみたいに、大切に慎重に愛してほしいんだ」
こいつが言ったことは、自分が堺にしてやりたい愛し方だった。
こいつに言われるのは、なんだか癪に障るが。
そのようにしたいとは思った。
でも。肝心なことを聞いておかないと。
「おまえは堺の恋人じゃないのか? 間宮紫輝と言ったな。この前、堺に手紙を送っただろ。紫輝とつぶやいて、泣いてた」
「堺のことは好きだけど、友達として、仲間として、家族として、だ。…恋ではないんだ」
詳しく聞くと、こいつにはすでに想い人がいるらしい。
絶対そいつより、堺の方が綺麗だし。清楚だし。性格もいいに決まっているのに。
見る目がないやつだ。
ま、紫輝が恋敵だと厄介そうだから、それでいいだろう。
敵は少ない方がいい。
それに、己に協力してくれるらしい。記憶を失っていないことは黙っていてくれるということだ。
ふぃー、切り抜けたぜ。
「あ、あと。くれぐれも、俺と赤穂が親子なのは内緒にしてね? 俺、それを知られたら、殺されちゃうかもしれないんだ」
物騒な話をいきなりぶっこんできて、青桐はギョッとした。
でも、と首を傾げる。
「なんで?」
紫輝が息子で、なにが悪いんだ? しかも殺されるところまで行くとか。尋常じゃねぇ。
「さぁ。将堂家から龍鬼を出すなどあってはならぬ、的な?」
つまり将堂家は、龍鬼をこころよく思っていないということか。
あの、変な噂を真に受けてんのか?
大きな家の割に、頭が悪いな。
特殊な能力を持つ者は、重用して、協力してもらう方が円滑に事を進められると思うのだが。
「青桐も、堺との仲はそうやって邪魔されると思うよ」
なに? なんでだ? 己が将堂だからか?
つか、将堂じゃねぇし。邪魔すんな。
「それでも、堺のこと好きでいてね?」
「あぁ、そんなことで手放さねぇ」
即答すると、紫輝は満足そうにうなずいた。
だって己の中で、龍鬼という部分は嫌いになる要素じゃねぇから。
邪魔されたらウザいとは思うだろうが、それは邪魔してきた相手に対してであって、堺のせいじゃない。
「だったら、ひっそり、こっそり、そしてしっかり囲い込むといいよ」
紫輝は青桐に身を寄せて、ひっそり、こっそり、囁いてきた。
やんちゃそうなクリッとした瞳を、きらきらさせて。
その姿は、まだ初陣間もない子供に見える。
軍にはいつでも入れるが、大体は十五歳くらいが初陣の適齢期だ。
で、紫輝は。恋も愛も、なにも知らないようなあどけない顔つきで。恐ろしいことを言いやがる。
堺を囲い込めと。
そうしたいのはやまやまだけど、そうは言っても、いろいろあるではないか。
嫌われたくないとか。計算して近づくのは、紳士的じゃないとか。
初恋だから、慎重になってしまうものじゃないか。
でも紫輝は、それをしろと言うのだ。
狡猾に行け、と?
恋愛初心者に対して、難易度高すぎじゃね?
こいつは絶対、猫の皮をかぶった、鋭い牙を隠し持った虎だ。
油断したら、バクリだ。
紫輝を、そら恐ろしいと感じた。
実際、自分は。紫輝に嘘を見破られたのだ。初対面で、あっさりと。
もう誰も、見た目であなどらない。青桐はそう己を戒めた。
「少し依存した方がいいよ。君がいないと暗闇の中を歩いているみたいだ。なんて言って、すがってみるとか?」
「精進する」
あんまり己が堂々としていて、記憶を失ったオドオドくんに見えないから、という紫輝の助言だ。
ま、機会があったら、な。
★★★★★
紫輝を堺の部屋へ送り、自分は夕食まで道場で鍛錬することにした。
龍鬼について、木刀を振りながら少し考察をしておきたかったのだ。
紫輝に会い、いろいろ龍鬼のことについて教わり、ためになった。
堺にそれとなく聞いても、悲しそうにみつめられるし。
そうなると、他の幹部にも聞きづらくなる。
なんとなく差別的な雰囲気が伝わるから。
それって繊細で、相手を傷つけかねない話題だろう。
でも早く知りたかったのだ。堺と関係を深めるためにも。親密になるためにも。
なので、紫輝の到来はすごくありがたかった。
ま、内容は。かなり深刻なものだったが。
見ただけで子供が龍鬼になるとか、翼が腐り落ちるなんて。馬鹿みたいな噂が世間には蔓延しているという。
青桐は山奥で、人と接触しないで生活をしてきたから。そんなことは、全く知らなかった。
龍鬼とは、どういうものか。書物や、爺さんの話で知っただけだ。
爺さんも、龍鬼の対処法など伝授はしてきたが。龍鬼を差別するような発言はなかった。
だから、寝耳に水である。
それで、堺は。
龍鬼差別の不遇により、人から傷つけられてきたようだ。
特に堺は、心を操る龍鬼だから、心をのぞき見されたくない人々が堺を忌避したという。
堺は、むやみやたらに能力を出す者ではない。
少しそばにいれば、彼が人の嫌がることをしない、誠実な人だとわかるのに。
「堺は触れ合いに慣れていないようだが、今まで恋人はいなかったのか?」
紫輝とともに、堺の部屋へと向かう間。青桐は、一番知りたかったことを聞いた。
家族のように接しているという紫輝ならば、知っていると思って。
「自分で、こういうことを言うのはどうかと思うが。一般論として、龍鬼と関係を持ちたいと思うような人物は、この世界には少ない。まず龍鬼というだけで、敬遠するからね。結論から言うと、堺に恋人はいなかった。つい最近まで、友達もいなかった。俺からぐいぐい行って友達にしてもらった感じなんだよ? だから青桐にも、できれば少し深く、堺に踏み込んでほしい。でも、優しく。大切に、な?」
紫輝は、難しいことを言うが。
それくらい繊細に、堺とは関係を構築しなければならないということだろう。
押して、引いて。強引に、柔軟に。
でもそれで、あの美しい人が手に入るというのなら、そんなの全く苦にならない。
っつぅか、奇跡が起きた、と青桐は思った。
あの美しい人が。
心根も清らかで、凛々しくて、上品なあの人が、誰とも付き合ったことがないなんて。
恋人はいるのかと聞いた青桐に、堺は悲しそうに「私は龍鬼ですから」と言った。
その言葉の意味が、ようやくわかった。
つまり。龍鬼である自分に、恋人のような存在などできはしません。
そんな悲しい言葉だったのだ。
ただ龍鬼というだけで、誰も極上の宝玉に手出ししなかった。
どころか、暴言と言う名の剣で斬りつけたのだろう。
そして堺は、己が宝玉であることも気づかず、龍鬼である己は嫌われて当然だと思い込んだ、のか?
触れてはならぬ、と言うのも。
紫輝が。将堂の者が龍鬼に汚染されたと思われないよう、距離を取る。それが堺の優しさだ。みたいなことを言っていたが。
汚染って、なんだよ。触れただけで己が汚れると、堺は本気で思い込んでいるのか?
なんて悲劇だ。
堺のような繊細な人を、傷つけるなんて。
堺のような美しい人を、忌み嫌うなんて。
考えられない。
紫輝がしつこく、龍鬼でもいいのか、的なことを聞いてきたのも。
世間的に忌み嫌われている龍鬼を伴侶とするのに、己が尻込みすることはないか。そして龍鬼である堺を傷つけない人物であるのか。確認していたのかもしれない。
紫輝もきっと、これ以上堺を傷つけたくはないのだ。
だから慎重に、己を見極めていたのだろう。
青桐は。傷ついて人と関わることに臆病になってしまった彼を、優しく抱き締めたいと思った。
脅えないで、怖くないと、何度でも言ってやりたい。
自分は。自分だけは、堺の味方。
そばにいてほしいし。自分も離さない。
だが。龍鬼だから誰とも付き合ってはならないと、堺の方から自制している。
差し控えている、慎んでいる。
その壁を、突破しなければならない。
龍鬼は、恋をしてはならない。そんな思い込みと言う名の壁を。
俄然、やる気が湧いてきた。
青桐は、ぶんぶん木刀を振り回すが。ハタと手を止める。
紫輝のことを考えたのだ。
そういえば、あいつ。赤穂の息子ってことは、赤穂がどうなっているのか知っているのか?
いや、己を、最初は赤穂と思っていた。つまり、知らないんだよな。
でも、己が記憶喪失状態ではない、赤穂のそっくりさんなのは理解している。
だがそれで、赤穂の安否がわからなくなったのでは?
衝撃だったのでは? 傷ついているのでは?
そんなことを考えていたら、道場の外でなにやら人の気配がして。
扉を開けたら、紫輝が泣いているではないか。
あぁ、赤穂が死んだって、まさか気づいちゃったのか?
泣くなよ。父親の代わりにはなれないが、ちゃんと友達やってやるからよっ。
思い切って、紫輝の頭をグリグリ撫でてやったら、涙は引っ込んだ。ほっ。
★★★★★
紫輝のいる夕食の席で。堺が本拠地に戻ったあとのことについて、切り出した。
そこにある己の屋敷に幹部みんなで生活するのはどうか、というものだ。
自分は、堺ひとりが屋敷に来るのを期待していた。
ふたりきりで生活できることを、楽しみにしていたのだが。
幹部がみんなで押しかけてきたら、蜜月にならないではないか。
しかもこの話、紫輝が提案したという。
は? このクソガキ。協力する気ないだろ?
睨んだら、ヘラリと笑ってうなずいてる。はぁ?!
夕食後、玄関を出て行く紫輝を見た。
雪は降っていないが、夜なので超寒いし。なんで外に行くのかと思って、ついていった。
言いたいこともあったし。
そうしたら、遠回りさせた部下を待っているのだと言う。
へぇ、案外優しい上官じゃん?
つか、話したいのはそこじゃなかった。
「なんで余計な提案するんだよ?」
ずっと文句を言いたかったのだ。
協力してくれるって、舌の根も乾かないうちに足を引っ張るような真似しやがって。
「俺は助け船のつもりだったんだぞ。堺が青桐とふたりきりなんて状況は、金蓮様が許さないだろうから」
「金蓮様…俺の兄上だと聞いたが?」
それと、おそらく今回の件を仕組んだ主犯。
すでに、あまり良い印象はない。
「さっき、庭で話したろう? 龍鬼の胸糞悪い話」
「将堂から龍鬼をうんぬんって話か?」
知られたら殺されるとか言うから。気をつかって声をひそめた。
自分のせいでこいつが命を狙われたら、寝覚めが悪いからな。
「あれは、堺と青桐にも当てはまることだ。金蓮様は堺を毛嫌いしている。ゆえに交際には反対するだろう」
「なんで? 堺はあんなにも、優しくて綺麗な人なのに」
善人を嫌う人がいるのが、そもそもわからないのだ。
つか、邪魔するなよな。
おとなしく赤穂やってんだから、そこは放っておいてほしいんだが。
「どんなに優しくて、綺麗で聡明で純粋な人でも。龍鬼だから駄目なの。金蓮様は、そういう人なの」
だいぶ、龍鬼についての理解が深まってきた。
将堂一族は、龍鬼に対してかなり差別的なようだ。
でも、己には関係なくね? ただの替え玉が誰と結婚しようが、どうでも良くね?
つか、それぐらいの自由はくれよ。替え玉に甘んじてやってんだから。
「まじか、いけすかねぇ」
感情のままに、吐き出してしまった。
すると、紫輝がなんでか謝った。
金蓮を、悪く言い過ぎたということらしい。金蓮のことは自分の目で確かめて、己で判断しろ、と言う。
「人の意見を鵜のみにしてなにかを決めるのは、ただの操り人形。そうはなりたくないだろう?」
「…だな?」
こういう、ときどき鋭いことを言うところ。あなどれない。
己は、ただの替え玉だ。
だが、その己に替え玉に甘んじるつもりかと問う。
替え玉は替え玉でも、己は赤穂の替え玉なのだ。赤穂の地位で、都合のいい操り人形になるということは、誰かの都合のいい世界になるということだ。
自分の責任になるのに、唯々諾々と従っていたら。自分のわからない事柄を、自分のせいにされる恐れがある。
だから、操り人形になってはいけない。
堺を手にするためにも。己の意志をしっかり持っていないとならない、ということだ。
「じゃあ、燎源から兄上の良いところを引き出そう」
話を終わらせるつもりで、なにげなく言ったのだが。
紫輝は顔色を変えた。
燎源が屋敷に来ていることを知ると、なにやら思案顔になった。
「屋敷に燎源の息のかかっているやつが入り込んでいるかもしれないから、気を抜くな」
口に指を当てて、紫輝はシー、と言う。
すっごい警戒している。ヤマネコの勘か?
ま、己も。あいつには、気を引き締めて対処している。
ずっと演技しているようなものだから、屋敷の使用人にも腹は見せていない。
だから、今のところは大丈夫なはず。
バレたのは、こいつにだけだ。
「話を戻そう。龍鬼は目撃しても子孫に影響を及ぼすと言われるほど、過敏に忌避されている。将堂の次男が龍鬼と同棲なんて噂が立ったら?」
「俺は構わねぇけど」
青桐はニヤリと、紫輝に不敵に笑ってみせる。
むしろ大々的に、堺は己のものだと宣言したい。
その方が恋敵がいなくなるだろう。
「青桐はそうだろうが。堺はすっごく怒られたり、謹慎させられたりするわけ。この場合、咎はみんな堺に行くよ」
なに? なんで矛先が堺に向かうのだ?
龍鬼、だからなのか?
紫輝に指摘され、青桐は血の気が引いた。
「青桐の軽率な行動で堺が傷ついても、いいのか?」
「それはダメに決まってる」
きっぱりと言い切る。己が堺を傷つける原因になるなんて、考えたくもなかった。
「だろう? でも幹部が一緒なら、ふたりきりじゃないし、同棲でもないし、堺も怒られない。青桐にはこういう状況を踏まえて、賢く立ち回ってほしい」
なにやら七面倒くさいことだが。
なにより、堺を守らなくてはならない。
自分が馬鹿をやったら、己の知らないところで堺が傷つくかもしれないということなのだ。
「龍鬼って、なんでそんなに…。結局そこに、思考が戻る」
だいぶわかってきたつもりだが。どうしても腑に落ちない部分があるのだ。
なぜそんなに、ひとりの人を嫌い、攻撃し、虐げるのか?
それのなにが楽しい?
たとえ堺のことが嫌いな人がいたとしても、目に入れなければいい。話しかけなければいい。
わざわざ傷つけなくたって、いいではないか。
「不用意に堺に触れると、龍鬼だから駄目と言われる。なぜ駄目なのかを聞いても困った顔をするばかりで、答えてくれないんだ。そのなぜの部分を、ずっと知りたかった」
「堺が言うことは、少し意味合いが違うかもしれないな。堺は生まれたときから龍鬼であることで疎まれてきたようだ。それこそ両親からもな」
衝撃だった。親から疎まれるなんて、そんなことあるのか?
なんで? 実の息子を嫌うなんて、意味がわからねぇ。
「そんなに長年、苦しんで来たら、龍鬼に生まれてきたことこそが駄目なのだと思ってしまうんじゃないかな? 私に触れられるのは御嫌でしょう、と。俺もたまに言われる。堺は龍鬼である己を、好きじゃないんだ」
龍鬼であることで、人から傷つけられ、親からも疎まれてきたから、堺は自分自身を否定してしまったのか?
可哀想に。
いじらしくて、綺麗で可愛らしいあの人は。誰にも守ってもらえなかったのか?
もっと早く、堺と会っていたら。
己がいっぱい抱き締めて、甘やかして、大事にするのに。
手を取って、貴方が好きだと告げるのに。
いや。まだ遅くない。
誰も教えなかったのなら、己が教える。
龍鬼に触れても災いは起きないし、汚染したりもしないと、紫輝だって言っている。
龍鬼は、恋をしてもいいんだって。
恋をしよう、堺。
堺を愛したいんだ。堺にも愛してほしい。
貴方を傷つける人は、己が許さない。
そのために己はここへ来た。そう、思えた。
「あ、でも。ちゃんと手順を踏んで、恋愛してくれよな? 今、同じ部屋で寝ているようだが、堺に勝手に触れるんじゃねぇよっ!」
ひとりで決意を固めていたのに、この黒猫耳に水を差された。
味方だと思い始めていたのに、なんで急に怒るんだ?
つか、なんで寝てる堺に触れたこと知ってんだ?
確かに、あれは。さすがにマズいとは思っていたが…いやいや、おまえに言われたくねぇし。
「俺のことは堺の小姑だと思え」
もこもこのマント姿で腕を組み、小さな体で胸を張り、なにやらえらそうに紫輝は言う。
「堺は、今まですっごい人に傷つけられてきたの。ようやく笑ってくれるようになったの。そこで、心を開いた相手に強姦されて、滅茶苦茶にされたら、また心を凍らせてしまうよ。そうなったら…マジ殺すから」
すっごい目力で睨んできた。
本気だ。
まるで猫が、小鳥に飛びかかる寸前のような、緊迫感。
怖っ。つか。
「強姦なんて…するわけない。堺に嫌われるつもりはない」
いずれ、体の関係は持ちたいと思っている。
あの綺麗な人をこの腕に抱き締められたら、想像だけで幸せな気持ちになる。
でも、嫌がる相手とするつもりなどない。
大体、堺が本気で抵抗したら、己など瞬殺だ。
右将軍だぞ。
紫輝はその辺、目が腐っているよな。
堺を、か弱い女の子と思っているのだろうか。
可憐だから、気持ちはわからなくもないが。
でも、彼を傷つけたくないという気持ちは伝わるし。そこは激しく同意する。
紫輝は睨み顔から一転、無邪気な笑顔になった。
いや、怖ぇし。
「なら、がっつかないで。ゆっくりお願いしますよ。同意、大切」
「はいはい、同意、大切」
つまり堺から同意を取りつければ、手を出してもいいってことだよな? 小姑。
「さっき、鍛錬しながら思っていたんだが。俺が身代わりなら、赤穂は…死んだってことだろう? 父親が亡くなったばかりなのに、堺を気遣って、おまえはここまで来た。だけでなく、俺にもいろいろ教えてくれて。なんか、つらい思いがあるんじゃねぇか?」
こいつは父の安否を気にしながらも、親友のためにここに駆けつけた情に厚いやつだ。
うまいこととか、全然言えねぇが、なんか力になってやりたいなと思ったのだ。
そうしたらこいつ…またもや電撃発言かましてきやがった。
「それはね。大丈夫。赤穂、生きてるから」
今まで、いろいろ驚いてきたが。
これが一番、驚いた。
つか、さっき泣いてたじゃねぇか。己の親切心を返せっ!
「おい、じゃあ、なんで出てこねぇんだ? 俺、必要ないじゃねぇ…暗殺か?」
言ってて、思いついてしまった。
赤穂には、出てこられない理由があるのだ。
それに、生きてはいるかもしれないが。怪我で動けない、ということもある。
「それに近い。相手は赤穂が死んだと確信しているから、青桐が命を狙われることはないよ」
それを聞き、単純に良かったと思った。
赤穂が生きていて。
己と同じ顔、同じ翼の者と、縁が全くないわけないではないか。
だから、良かった。
それよりも、紫輝は気づいていないようだが。重要なことを言った。
赤穂が死んだ、と確信している者に向けての、替え玉ではないということだ。
だって、死んだと思っていたけど生きていた。そうなったら、俺は命を狙われるではないか。
でも紫輝は、確信をもって狙われないと言うのだ。
そして赤穂が死んだと思っている者が、赤穂が出てこられない原因なのだ。
本物の赤穂が生きていたらマズイやつがいるから、生きていると宣言できないわけだろう?
さらに、赤穂は死んだと思っている者は、数少ない。
赤穂の殺害未遂に関わった人物、そして己を替え玉に仕立て上げたい人物。
堺と右軍幹部は、従わせられているので除外。
すると金蓮と燎源と、いるかいないかわからない暗殺者。
でも、いるかいないかわからない暗殺者は、替え玉の己が出たら騙されてしまう。
つまり、紫輝の話しぶりからすると、暗殺者はいない、もしくは赤穂が出てこられない件とは関係がないのだ。
ってことは?
赤穂が死を装う理由は、金蓮か燎源ということになる? か?
これは、どういうことなんだ?
兄が弟を殺そうとした?
それを周囲に気づかれないよう、己を替え玉に据えた?
「俺の手紙で、堺が泣いてたってやつ。どうやら、赤穂が生きてると感じたかららしいよ」
紫輝の言葉で、青桐は意識を戻した。
いや、全部推測だ。
考えてわからないことを、いつまでも考えるのは無意味だ。
おそらく目の前の黒猫耳は、いろいろ知っているのだろう。おいおい教えてもらうぞ。
それよりもこいつ、また重要なことを言いやがったな?
「堺は、赤穂を好きなのか?」
なんで赤穂が生きていて、泣くんだ?
好きなのか? 好きなやつと同じ顔だから、己にも優しくするのか?
もうっ、頭がグルグルするぅ。
「それはない。上官の尊敬。あとは、苦手にしていたよ。あの人、粗雑だから。繊細な堺とは合わなかったんじゃないか?」
紫輝が笑い飛ばしたから、一瞬ホッとしたが。
苦手に思っていた?
それはそれで、むむっとなるじゃないか。
「堺はちゃんと、青桐のことを見ているよ。青桐の心を歪めたくないから、赤穂の分身にはしないと言っていた。だから、青桐は青桐のままに振舞って大丈夫」
そうか。堺はちゃんと、己という個人を認識してくれるのだな。
それは…嬉しいじゃん。
★★★★★
紫輝の部下が、屋敷に到着するまで、なんとなく雑談して。青桐は彼と別れた。
彼は、初めてできた己の味方だから。できれば、長く滞在してもらいたかった。
もっと、いろいろ知りたいことがあったし。堺のことも、助言をしてほしかった。
でもまぁ、年が明ければ本拠地で会えるだろう。
それに情報量多過ぎて、頭が爆発しそうだった。
年明け、紫輝と会うまでに、頭の中を整理しておこう。
そして青桐は、当たり前のように、堺の部屋に入っていった。
小さな囲炉裏があるから、部屋の中は暖かい。
「うー、外、寒かった」
囲炉裏の前に座り、木炭の赤い輝きのところに、手をかざしていると。
堺が囲炉裏に掛けていたヤカンで、お茶を淹れてくれた。
誰かが自分のために淹れてくれたお茶、最高。それにお茶を飲めば、体の芯から温まる。
「紫輝と話をしてきたのでしょう? 青桐が紫輝と友達になって、私は嬉しいです」
ふんわりと笑う堺は、月の精霊のごとき美しさだが。
どちらかというと、ちょっとは嫉妬してほしいな、とも思う。
でも。堺の心を草原にたとえるとして。そういう邪心は、芽も出てなさそう。
ただただ、青い空ときらめく緑の野が広がっていそうだな。
「友達というか。あいつは、俺と同じだから。この屋敷の面子の中では新参者だろ? だから、いろいろ話を聞きやすかっただけだ」
「青桐は…」
新参者ではない。そういう態だ。堺はそこに引っかかったのかもしれない。
「いや、以前の記憶がないのだから、気持ちは新参者なんだ。彼に龍鬼のことなども教えてもらって、もう少し話をしてみたかったのだが…。でも紫輝は、家族で年越しだそうだから、仕方がないな」
「家族…やはり、気になりますか? 目を覚まされたとき、一番に確認しましたよね。貴方の心の拠り所なのでしょうか」
青桐が家族のことを持ち出したのは、堺の動向を知るためで。
爺さんが亡くなってからひとりで生きてきた青桐にとって。家族はそれほど重要な位置を占めていない。
もちろん、堺が伴侶であるならば、最重要案件にはなるのだが。
でも紫輝に、記憶を失った心もとない青年に見えないと指摘され。
もっと、依存して見せた方がいいとも助言されたのだ。
ここは、甘えてもいいかな?
「記憶がないから、家族というものがどういうものなのかも、俺にはわからない。気になる、というより。興味、かな。寂しい、も少しあるかもしれないが。そばに堺がいるから。今は寂しくない」
そう言って、手を握れば。堺は拒まない。
「君がいないと、暗闇の中を歩いているみたいだ…」
紫輝の受け売りを試してみた。そうしてすがってみたら、と言われたのだが。
青桐がすがる目を向ける前に、堺が顔を青白くさせてしまった。
「大丈夫です。必ず、私がそばにいます。そんなに心細い思いをされているなんて…私がお支えしますから」
堺が、己の手を両手で包んで。力強く励ましてくれる。
効果があり過ぎで、ちょっと可哀想になってしまった。
堺は真面目で、疑うことを知らないから。本当に途方に暮れているように見えてしまったのだろう。
邪で、ごめん。
でも、堺は。すぐに手を離してしまう。
「申し訳ありません。触れて、しまい…」
力づけたいけれど、触れてはならぬ。そのような葛藤が、堺に見えた。
だから、青桐は苦笑して。堺の手を今度は自分から握った。
「言っただろう? 君がいないと、と。堺がこうして手を握ってくれたなら、寂しくなんかならない」
すると、おずおずと握り返してくれた。
かっわいい。
これ、本当に泣く子も黙る将堂軍の右将軍なのかっ?
「俺がこうして触れることに、慣れてくれる? 俺はもっと、堺に触れたいんだ」
青桐は堺の隣に移動して、グッと身を寄せる。
間近で、熱い目で、意味深にみつめても。
堺は青桐の恋心には気づかない。
口説かれているとは思っていないのだろう。
まるで。初恋もまだの、無垢な瞳でみつめてくる。
本当に、堺は。誰とも恋をしたことがないのだな。
あのちんちくりんの紫輝でも、時折色気を感じる瞬間があった。
既婚者ゆえの、艶? ってやつ。
ちょっとだけ、紫輝が堺を少女扱いする気がわかった。
もしも堺が、恋を知って艶やかな色気を放ったら。
自分はイチコロ。
鼻血で死ねる、自信がある。
でもまぁ、死なないように、自分も耐性をつけつつ徐々に。
堺が花開いていく過程を見ていきたいと思った。
「でも、私は龍鬼ですから。龍鬼である私が、青桐に触れるのは…」
「紫輝から、堺が龍鬼であることでとても傷ついたのだと聞いたよ。でも俺は、堺を傷つけた輩とは違うんだ。堺に触れられたら、嬉しいし。堺がそばにいるせいで、災いが起きたりもしないよ。むしろ。これから堺にそばで守ってもらわないと。戦場ですぐにも死んでしまうかもしれないだろう?」
「そのようなことは、決して。必ず私がお守りします」
「もちろん信じているよ。だから。つまり。堺がそばにいることを、俺は誰にも文句を言わせない。災いも起きないし。俺が汚れることなどない」
その言葉に、堺の薄青の瞳がウルッと揺れて。涙ではないが、涙液が青い瞳を鮮やかに彩り。
そのまま瞳がこぼれ落ちてきそうに見えて。
青桐は、慌ててしまった。
「本当に、災いは起きないのでしょうか? 本当に、青桐は汚れないのでしょうか? 私のせいで、両親は亡くなったのかもしれないのに。私がそばにいるから、金蓮様は青桐に会いに来てくださらないのかもしれないのに」
これは、堺の苦しみの一端なのだと、青桐は察した。
心無い人々にも、傷つけられてきただろうが。
深く心をえぐっているのは、両親と、金蓮、なのだな。
紫輝との話の中にも、ちらりと出てきたことだ。
そういうことなのだろう。
「俺には、知りえない事柄だが。それでも、俺にもわかることがある。今、堺が言った出来事は、どちらも貴方のせいじゃない。堺が龍鬼だからでもない。そして、俺は無敵だから大丈夫」
「…無敵?」
「災いも汚れも、堺のせいで起きはしないが。そんなものが寄ってきたとしても、俺がぶった切ってやるから」
「ふふ、頼もしいですね」
にこやかな作り笑いではなく、心からの堺の笑みに、青桐は見惚れた。
もちろん、己より堺の方が、剣の道は強いのだ。
でも精神的なものは、己が守るという意気込みだった。
「堺は、龍鬼である自分を好きではないのかもしれないな。でも、それなら俺は、龍鬼である貴方を好きになる。だって、堺が龍鬼だったから、今俺の目の前にいるんだからな。俺は、その幸運に感謝する」
「私が龍鬼であることが、幸運だなんて…」
戸惑って、堺は目を泳がせ。うつむくと、雫が一粒落ちた。
「ずっと苦しかっただろうが、堺が龍鬼として生まれたのは、今俺と出会うためだったのだと思ってくれないか? そうしたら俺は、堺が今まで苦しかった分、それ以上に堺を幸せにすると誓うから」
「ありがとうございます、青桐。私も、貴方に出会えて、嬉しいです」
顔をあげた堺は、柔らかく笑っていたが。
どうやら、優しい人が慰めてくれた、くらいの受け止め方をされてしまったようだ。
青桐はだいぶ、求婚を意識した言い回しをしたつもりだったのだが。
手強い。
でも、恋に落ちていない堺に、求婚しても。それはなに? という感じかもな。
うーん。せめて、意識させたい。
青桐は堺の頬に手を伸ばし、涙になり損ねた雫を親指で拭う。
「俺が触るの、嫌じゃないか?」
確認すると、堺は小さくうなずいた。
紫輝、これは同意だ。己は堺に触れてもいい。
そして、青桐は堺を引き寄せ、くちづけた。
「…ん」
唇と唇が合わさった瞬間、堺の吐息が小さく漏れた。
色っぽくて、腰に来る。
初めて堺に会った、あの日。寸前で触れられなかった、堺の薄い唇は。ひんやりしていた。
囲炉裏の部屋にいるのに。
やっぱり氷の精霊なのだと思った。
でも、柔らかく、すべすべしているから、氷そのものではないのだ。
「あ、青桐、様…」
驚いた堺が、やんわりと手を突っぱねて、青桐から身を離す。
戸惑う堺に、青桐はシレッと言った。
「紫輝も、結婚相手とはキスしているんだ。それでも相手の翼が腐り落ちるようなことはない。だから、キスは大丈夫だ」
「キスは…大丈夫」
白皙の顔をほの赤く染め、言葉を反芻する堺が可愛くて。
翼がビビビッと震えてしまった。
青桐はもう一度、堺を引き寄せる。
突っぱねた手を、堺がぎくしゃくとゆるめ。青桐の誘導に身を任せてくれる。
強引にではない。あくまで、堺の同意ありだ。
鼻と鼻がぶつかりそうなほどに、近づいたとき。一度止まって、堺の様子をうかがう。
伏し目がちだけど、目元が色づいていて。
嫌がってなさそうだから。頭を傾けて、ゆっくりとキスした。
唇をすり合わせると、堺は目をギュッとつむる。
ちょんちょんと、ついばんで。ひんやりしっとりした堺の薄めの唇を、唇で撫でていく。
腕の中で身を固くしつつも、委ねてくれる堺が、もう、可愛らしくて、いじらしくて。ぎゅぎゅーってしたくなる。
でも、脅えさせないように、我慢我慢。忍耐。
唇を離し、髪をそっと撫でると。堺がゆっくり目を開けた。
先ほどは、なにも意識していないような瞳の色だったが。
今は潤んで。ぼんやり、そして少し温度のある瞳でみつめてくる。
己を、恋する相手の候補に入れてくれたのなら、嬉しいんだが?
「ほら、大丈夫だろう? 龍鬼だって、恋も、キスも、情交も、しても大丈夫なんだって。紫輝が言ってた」
そんなことは言っていないけど。
紫輝の言葉に、堺は絶大な信頼を置いているのがわかったから。ここは利用するしかねぇだろ。
「じょ…」
でも。堺はほの赤かった顔を真っ赤にして。囲炉裏をはさんだ対面に、スススッと移動してしまった。
ちっ、失敗した。
怖がらせちゃったか。まだ情交という言葉は早かったのだな。
だが、ウブな反応が愛らしかったので、よし。
「堺、拒まないでくれて、ありがとう。徐々にでいいんだ。ゆっくり、俺がそばにいることに慣れてほしい」
「…はい。慣れます」
オウム返しのように聞こえるけれど。大丈夫かな。
ちゃんと意味、わかっているか?
「お茶、おかわりくれる?」
かっちんかっちんに固まっていた堺が、ホッとしたようにお茶を淹れる動作に移る。
いつもの感じに戻れた、と思っているのかな。
まぁ、今回はここまでだ。
でも、少しずつ、少しずつ、堺を囲い込んでいく。
そしていずれ、己の嫁にする。
は? そんなのに興味ねぇよ。つい最近まで、将堂と己に関りがあるとか知らなかったし。
ただ…。
「堺が欲しい」
理由なんか、それだけだ。
「ん?」
なんか、キラキラした目でこちらを見ている。ツンツン跳ねた黒髪が、目の錯覚かルンルンしている。
つか、おまえ、絶対聞こえていただろうがっ。
「堺を嫁にする」
ここは宣戦布告だ。堺と親密なこいつに、堂々と挑戦状を叩きつけてやるっ。
そうしたら、なぜか嬉しそうな顔をしながらも、こいつは悪い面を並べ立ててくる。
龍鬼の堺と付き合うと、変人扱いされるとか。
なんだそりゃ? 性格悪すぎ。
「そんなの、関係ない。一目惚れなんだ」
こいつに知らしめるために、青桐は己がどういう気持ちなのかを話した。
生まれたときから、自分は自分ではない誰かのために生きてきたこと。自分を律して、その日に備えてきた。
しかし記憶を奪われ、今日から青桐様ですって…乱暴な話だ。
堺に一目惚れして、求婚して。承諾をもらったんだ。だから、堺が欲しい。
ってなことをな。
一度、己のものになった堺を手放す気はない。
というか、この年齢まで声がかかるかかからないかわからない、あやふやな来たるべき事のために、己は己を持たずに生きてきたのだ。
そして今、ようやく声がかかり、己の使命は果たされた。
これからは、己の望むままに生きてもいいはずだ。
「俺のことは、くれてやる。だがそれ以外は、俺の好きにする。俺にはその権利があると思わないか?」
「堺を大事にしてくれるなら、協力してもいいよ。堺はとても傷ついている。龍鬼としてつらい目にいっぱいあったからね。だから優しく、宝物を愛でるみたいに、大切に慎重に愛してほしいんだ」
こいつが言ったことは、自分が堺にしてやりたい愛し方だった。
こいつに言われるのは、なんだか癪に障るが。
そのようにしたいとは思った。
でも。肝心なことを聞いておかないと。
「おまえは堺の恋人じゃないのか? 間宮紫輝と言ったな。この前、堺に手紙を送っただろ。紫輝とつぶやいて、泣いてた」
「堺のことは好きだけど、友達として、仲間として、家族として、だ。…恋ではないんだ」
詳しく聞くと、こいつにはすでに想い人がいるらしい。
絶対そいつより、堺の方が綺麗だし。清楚だし。性格もいいに決まっているのに。
見る目がないやつだ。
ま、紫輝が恋敵だと厄介そうだから、それでいいだろう。
敵は少ない方がいい。
それに、己に協力してくれるらしい。記憶を失っていないことは黙っていてくれるということだ。
ふぃー、切り抜けたぜ。
「あ、あと。くれぐれも、俺と赤穂が親子なのは内緒にしてね? 俺、それを知られたら、殺されちゃうかもしれないんだ」
物騒な話をいきなりぶっこんできて、青桐はギョッとした。
でも、と首を傾げる。
「なんで?」
紫輝が息子で、なにが悪いんだ? しかも殺されるところまで行くとか。尋常じゃねぇ。
「さぁ。将堂家から龍鬼を出すなどあってはならぬ、的な?」
つまり将堂家は、龍鬼をこころよく思っていないということか。
あの、変な噂を真に受けてんのか?
大きな家の割に、頭が悪いな。
特殊な能力を持つ者は、重用して、協力してもらう方が円滑に事を進められると思うのだが。
「青桐も、堺との仲はそうやって邪魔されると思うよ」
なに? なんでだ? 己が将堂だからか?
つか、将堂じゃねぇし。邪魔すんな。
「それでも、堺のこと好きでいてね?」
「あぁ、そんなことで手放さねぇ」
即答すると、紫輝は満足そうにうなずいた。
だって己の中で、龍鬼という部分は嫌いになる要素じゃねぇから。
邪魔されたらウザいとは思うだろうが、それは邪魔してきた相手に対してであって、堺のせいじゃない。
「だったら、ひっそり、こっそり、そしてしっかり囲い込むといいよ」
紫輝は青桐に身を寄せて、ひっそり、こっそり、囁いてきた。
やんちゃそうなクリッとした瞳を、きらきらさせて。
その姿は、まだ初陣間もない子供に見える。
軍にはいつでも入れるが、大体は十五歳くらいが初陣の適齢期だ。
で、紫輝は。恋も愛も、なにも知らないようなあどけない顔つきで。恐ろしいことを言いやがる。
堺を囲い込めと。
そうしたいのはやまやまだけど、そうは言っても、いろいろあるではないか。
嫌われたくないとか。計算して近づくのは、紳士的じゃないとか。
初恋だから、慎重になってしまうものじゃないか。
でも紫輝は、それをしろと言うのだ。
狡猾に行け、と?
恋愛初心者に対して、難易度高すぎじゃね?
こいつは絶対、猫の皮をかぶった、鋭い牙を隠し持った虎だ。
油断したら、バクリだ。
紫輝を、そら恐ろしいと感じた。
実際、自分は。紫輝に嘘を見破られたのだ。初対面で、あっさりと。
もう誰も、見た目であなどらない。青桐はそう己を戒めた。
「少し依存した方がいいよ。君がいないと暗闇の中を歩いているみたいだ。なんて言って、すがってみるとか?」
「精進する」
あんまり己が堂々としていて、記憶を失ったオドオドくんに見えないから、という紫輝の助言だ。
ま、機会があったら、な。
★★★★★
紫輝を堺の部屋へ送り、自分は夕食まで道場で鍛錬することにした。
龍鬼について、木刀を振りながら少し考察をしておきたかったのだ。
紫輝に会い、いろいろ龍鬼のことについて教わり、ためになった。
堺にそれとなく聞いても、悲しそうにみつめられるし。
そうなると、他の幹部にも聞きづらくなる。
なんとなく差別的な雰囲気が伝わるから。
それって繊細で、相手を傷つけかねない話題だろう。
でも早く知りたかったのだ。堺と関係を深めるためにも。親密になるためにも。
なので、紫輝の到来はすごくありがたかった。
ま、内容は。かなり深刻なものだったが。
見ただけで子供が龍鬼になるとか、翼が腐り落ちるなんて。馬鹿みたいな噂が世間には蔓延しているという。
青桐は山奥で、人と接触しないで生活をしてきたから。そんなことは、全く知らなかった。
龍鬼とは、どういうものか。書物や、爺さんの話で知っただけだ。
爺さんも、龍鬼の対処法など伝授はしてきたが。龍鬼を差別するような発言はなかった。
だから、寝耳に水である。
それで、堺は。
龍鬼差別の不遇により、人から傷つけられてきたようだ。
特に堺は、心を操る龍鬼だから、心をのぞき見されたくない人々が堺を忌避したという。
堺は、むやみやたらに能力を出す者ではない。
少しそばにいれば、彼が人の嫌がることをしない、誠実な人だとわかるのに。
「堺は触れ合いに慣れていないようだが、今まで恋人はいなかったのか?」
紫輝とともに、堺の部屋へと向かう間。青桐は、一番知りたかったことを聞いた。
家族のように接しているという紫輝ならば、知っていると思って。
「自分で、こういうことを言うのはどうかと思うが。一般論として、龍鬼と関係を持ちたいと思うような人物は、この世界には少ない。まず龍鬼というだけで、敬遠するからね。結論から言うと、堺に恋人はいなかった。つい最近まで、友達もいなかった。俺からぐいぐい行って友達にしてもらった感じなんだよ? だから青桐にも、できれば少し深く、堺に踏み込んでほしい。でも、優しく。大切に、な?」
紫輝は、難しいことを言うが。
それくらい繊細に、堺とは関係を構築しなければならないということだろう。
押して、引いて。強引に、柔軟に。
でもそれで、あの美しい人が手に入るというのなら、そんなの全く苦にならない。
っつぅか、奇跡が起きた、と青桐は思った。
あの美しい人が。
心根も清らかで、凛々しくて、上品なあの人が、誰とも付き合ったことがないなんて。
恋人はいるのかと聞いた青桐に、堺は悲しそうに「私は龍鬼ですから」と言った。
その言葉の意味が、ようやくわかった。
つまり。龍鬼である自分に、恋人のような存在などできはしません。
そんな悲しい言葉だったのだ。
ただ龍鬼というだけで、誰も極上の宝玉に手出ししなかった。
どころか、暴言と言う名の剣で斬りつけたのだろう。
そして堺は、己が宝玉であることも気づかず、龍鬼である己は嫌われて当然だと思い込んだ、のか?
触れてはならぬ、と言うのも。
紫輝が。将堂の者が龍鬼に汚染されたと思われないよう、距離を取る。それが堺の優しさだ。みたいなことを言っていたが。
汚染って、なんだよ。触れただけで己が汚れると、堺は本気で思い込んでいるのか?
なんて悲劇だ。
堺のような繊細な人を、傷つけるなんて。
堺のような美しい人を、忌み嫌うなんて。
考えられない。
紫輝がしつこく、龍鬼でもいいのか、的なことを聞いてきたのも。
世間的に忌み嫌われている龍鬼を伴侶とするのに、己が尻込みすることはないか。そして龍鬼である堺を傷つけない人物であるのか。確認していたのかもしれない。
紫輝もきっと、これ以上堺を傷つけたくはないのだ。
だから慎重に、己を見極めていたのだろう。
青桐は。傷ついて人と関わることに臆病になってしまった彼を、優しく抱き締めたいと思った。
脅えないで、怖くないと、何度でも言ってやりたい。
自分は。自分だけは、堺の味方。
そばにいてほしいし。自分も離さない。
だが。龍鬼だから誰とも付き合ってはならないと、堺の方から自制している。
差し控えている、慎んでいる。
その壁を、突破しなければならない。
龍鬼は、恋をしてはならない。そんな思い込みと言う名の壁を。
俄然、やる気が湧いてきた。
青桐は、ぶんぶん木刀を振り回すが。ハタと手を止める。
紫輝のことを考えたのだ。
そういえば、あいつ。赤穂の息子ってことは、赤穂がどうなっているのか知っているのか?
いや、己を、最初は赤穂と思っていた。つまり、知らないんだよな。
でも、己が記憶喪失状態ではない、赤穂のそっくりさんなのは理解している。
だがそれで、赤穂の安否がわからなくなったのでは?
衝撃だったのでは? 傷ついているのでは?
そんなことを考えていたら、道場の外でなにやら人の気配がして。
扉を開けたら、紫輝が泣いているではないか。
あぁ、赤穂が死んだって、まさか気づいちゃったのか?
泣くなよ。父親の代わりにはなれないが、ちゃんと友達やってやるからよっ。
思い切って、紫輝の頭をグリグリ撫でてやったら、涙は引っ込んだ。ほっ。
★★★★★
紫輝のいる夕食の席で。堺が本拠地に戻ったあとのことについて、切り出した。
そこにある己の屋敷に幹部みんなで生活するのはどうか、というものだ。
自分は、堺ひとりが屋敷に来るのを期待していた。
ふたりきりで生活できることを、楽しみにしていたのだが。
幹部がみんなで押しかけてきたら、蜜月にならないではないか。
しかもこの話、紫輝が提案したという。
は? このクソガキ。協力する気ないだろ?
睨んだら、ヘラリと笑ってうなずいてる。はぁ?!
夕食後、玄関を出て行く紫輝を見た。
雪は降っていないが、夜なので超寒いし。なんで外に行くのかと思って、ついていった。
言いたいこともあったし。
そうしたら、遠回りさせた部下を待っているのだと言う。
へぇ、案外優しい上官じゃん?
つか、話したいのはそこじゃなかった。
「なんで余計な提案するんだよ?」
ずっと文句を言いたかったのだ。
協力してくれるって、舌の根も乾かないうちに足を引っ張るような真似しやがって。
「俺は助け船のつもりだったんだぞ。堺が青桐とふたりきりなんて状況は、金蓮様が許さないだろうから」
「金蓮様…俺の兄上だと聞いたが?」
それと、おそらく今回の件を仕組んだ主犯。
すでに、あまり良い印象はない。
「さっき、庭で話したろう? 龍鬼の胸糞悪い話」
「将堂から龍鬼をうんぬんって話か?」
知られたら殺されるとか言うから。気をつかって声をひそめた。
自分のせいでこいつが命を狙われたら、寝覚めが悪いからな。
「あれは、堺と青桐にも当てはまることだ。金蓮様は堺を毛嫌いしている。ゆえに交際には反対するだろう」
「なんで? 堺はあんなにも、優しくて綺麗な人なのに」
善人を嫌う人がいるのが、そもそもわからないのだ。
つか、邪魔するなよな。
おとなしく赤穂やってんだから、そこは放っておいてほしいんだが。
「どんなに優しくて、綺麗で聡明で純粋な人でも。龍鬼だから駄目なの。金蓮様は、そういう人なの」
だいぶ、龍鬼についての理解が深まってきた。
将堂一族は、龍鬼に対してかなり差別的なようだ。
でも、己には関係なくね? ただの替え玉が誰と結婚しようが、どうでも良くね?
つか、それぐらいの自由はくれよ。替え玉に甘んじてやってんだから。
「まじか、いけすかねぇ」
感情のままに、吐き出してしまった。
すると、紫輝がなんでか謝った。
金蓮を、悪く言い過ぎたということらしい。金蓮のことは自分の目で確かめて、己で判断しろ、と言う。
「人の意見を鵜のみにしてなにかを決めるのは、ただの操り人形。そうはなりたくないだろう?」
「…だな?」
こういう、ときどき鋭いことを言うところ。あなどれない。
己は、ただの替え玉だ。
だが、その己に替え玉に甘んじるつもりかと問う。
替え玉は替え玉でも、己は赤穂の替え玉なのだ。赤穂の地位で、都合のいい操り人形になるということは、誰かの都合のいい世界になるということだ。
自分の責任になるのに、唯々諾々と従っていたら。自分のわからない事柄を、自分のせいにされる恐れがある。
だから、操り人形になってはいけない。
堺を手にするためにも。己の意志をしっかり持っていないとならない、ということだ。
「じゃあ、燎源から兄上の良いところを引き出そう」
話を終わらせるつもりで、なにげなく言ったのだが。
紫輝は顔色を変えた。
燎源が屋敷に来ていることを知ると、なにやら思案顔になった。
「屋敷に燎源の息のかかっているやつが入り込んでいるかもしれないから、気を抜くな」
口に指を当てて、紫輝はシー、と言う。
すっごい警戒している。ヤマネコの勘か?
ま、己も。あいつには、気を引き締めて対処している。
ずっと演技しているようなものだから、屋敷の使用人にも腹は見せていない。
だから、今のところは大丈夫なはず。
バレたのは、こいつにだけだ。
「話を戻そう。龍鬼は目撃しても子孫に影響を及ぼすと言われるほど、過敏に忌避されている。将堂の次男が龍鬼と同棲なんて噂が立ったら?」
「俺は構わねぇけど」
青桐はニヤリと、紫輝に不敵に笑ってみせる。
むしろ大々的に、堺は己のものだと宣言したい。
その方が恋敵がいなくなるだろう。
「青桐はそうだろうが。堺はすっごく怒られたり、謹慎させられたりするわけ。この場合、咎はみんな堺に行くよ」
なに? なんで矛先が堺に向かうのだ?
龍鬼、だからなのか?
紫輝に指摘され、青桐は血の気が引いた。
「青桐の軽率な行動で堺が傷ついても、いいのか?」
「それはダメに決まってる」
きっぱりと言い切る。己が堺を傷つける原因になるなんて、考えたくもなかった。
「だろう? でも幹部が一緒なら、ふたりきりじゃないし、同棲でもないし、堺も怒られない。青桐にはこういう状況を踏まえて、賢く立ち回ってほしい」
なにやら七面倒くさいことだが。
なにより、堺を守らなくてはならない。
自分が馬鹿をやったら、己の知らないところで堺が傷つくかもしれないということなのだ。
「龍鬼って、なんでそんなに…。結局そこに、思考が戻る」
だいぶわかってきたつもりだが。どうしても腑に落ちない部分があるのだ。
なぜそんなに、ひとりの人を嫌い、攻撃し、虐げるのか?
それのなにが楽しい?
たとえ堺のことが嫌いな人がいたとしても、目に入れなければいい。話しかけなければいい。
わざわざ傷つけなくたって、いいではないか。
「不用意に堺に触れると、龍鬼だから駄目と言われる。なぜ駄目なのかを聞いても困った顔をするばかりで、答えてくれないんだ。そのなぜの部分を、ずっと知りたかった」
「堺が言うことは、少し意味合いが違うかもしれないな。堺は生まれたときから龍鬼であることで疎まれてきたようだ。それこそ両親からもな」
衝撃だった。親から疎まれるなんて、そんなことあるのか?
なんで? 実の息子を嫌うなんて、意味がわからねぇ。
「そんなに長年、苦しんで来たら、龍鬼に生まれてきたことこそが駄目なのだと思ってしまうんじゃないかな? 私に触れられるのは御嫌でしょう、と。俺もたまに言われる。堺は龍鬼である己を、好きじゃないんだ」
龍鬼であることで、人から傷つけられ、親からも疎まれてきたから、堺は自分自身を否定してしまったのか?
可哀想に。
いじらしくて、綺麗で可愛らしいあの人は。誰にも守ってもらえなかったのか?
もっと早く、堺と会っていたら。
己がいっぱい抱き締めて、甘やかして、大事にするのに。
手を取って、貴方が好きだと告げるのに。
いや。まだ遅くない。
誰も教えなかったのなら、己が教える。
龍鬼に触れても災いは起きないし、汚染したりもしないと、紫輝だって言っている。
龍鬼は、恋をしてもいいんだって。
恋をしよう、堺。
堺を愛したいんだ。堺にも愛してほしい。
貴方を傷つける人は、己が許さない。
そのために己はここへ来た。そう、思えた。
「あ、でも。ちゃんと手順を踏んで、恋愛してくれよな? 今、同じ部屋で寝ているようだが、堺に勝手に触れるんじゃねぇよっ!」
ひとりで決意を固めていたのに、この黒猫耳に水を差された。
味方だと思い始めていたのに、なんで急に怒るんだ?
つか、なんで寝てる堺に触れたこと知ってんだ?
確かに、あれは。さすがにマズいとは思っていたが…いやいや、おまえに言われたくねぇし。
「俺のことは堺の小姑だと思え」
もこもこのマント姿で腕を組み、小さな体で胸を張り、なにやらえらそうに紫輝は言う。
「堺は、今まですっごい人に傷つけられてきたの。ようやく笑ってくれるようになったの。そこで、心を開いた相手に強姦されて、滅茶苦茶にされたら、また心を凍らせてしまうよ。そうなったら…マジ殺すから」
すっごい目力で睨んできた。
本気だ。
まるで猫が、小鳥に飛びかかる寸前のような、緊迫感。
怖っ。つか。
「強姦なんて…するわけない。堺に嫌われるつもりはない」
いずれ、体の関係は持ちたいと思っている。
あの綺麗な人をこの腕に抱き締められたら、想像だけで幸せな気持ちになる。
でも、嫌がる相手とするつもりなどない。
大体、堺が本気で抵抗したら、己など瞬殺だ。
右将軍だぞ。
紫輝はその辺、目が腐っているよな。
堺を、か弱い女の子と思っているのだろうか。
可憐だから、気持ちはわからなくもないが。
でも、彼を傷つけたくないという気持ちは伝わるし。そこは激しく同意する。
紫輝は睨み顔から一転、無邪気な笑顔になった。
いや、怖ぇし。
「なら、がっつかないで。ゆっくりお願いしますよ。同意、大切」
「はいはい、同意、大切」
つまり堺から同意を取りつければ、手を出してもいいってことだよな? 小姑。
「さっき、鍛錬しながら思っていたんだが。俺が身代わりなら、赤穂は…死んだってことだろう? 父親が亡くなったばかりなのに、堺を気遣って、おまえはここまで来た。だけでなく、俺にもいろいろ教えてくれて。なんか、つらい思いがあるんじゃねぇか?」
こいつは父の安否を気にしながらも、親友のためにここに駆けつけた情に厚いやつだ。
うまいこととか、全然言えねぇが、なんか力になってやりたいなと思ったのだ。
そうしたらこいつ…またもや電撃発言かましてきやがった。
「それはね。大丈夫。赤穂、生きてるから」
今まで、いろいろ驚いてきたが。
これが一番、驚いた。
つか、さっき泣いてたじゃねぇか。己の親切心を返せっ!
「おい、じゃあ、なんで出てこねぇんだ? 俺、必要ないじゃねぇ…暗殺か?」
言ってて、思いついてしまった。
赤穂には、出てこられない理由があるのだ。
それに、生きてはいるかもしれないが。怪我で動けない、ということもある。
「それに近い。相手は赤穂が死んだと確信しているから、青桐が命を狙われることはないよ」
それを聞き、単純に良かったと思った。
赤穂が生きていて。
己と同じ顔、同じ翼の者と、縁が全くないわけないではないか。
だから、良かった。
それよりも、紫輝は気づいていないようだが。重要なことを言った。
赤穂が死んだ、と確信している者に向けての、替え玉ではないということだ。
だって、死んだと思っていたけど生きていた。そうなったら、俺は命を狙われるではないか。
でも紫輝は、確信をもって狙われないと言うのだ。
そして赤穂が死んだと思っている者が、赤穂が出てこられない原因なのだ。
本物の赤穂が生きていたらマズイやつがいるから、生きていると宣言できないわけだろう?
さらに、赤穂は死んだと思っている者は、数少ない。
赤穂の殺害未遂に関わった人物、そして己を替え玉に仕立て上げたい人物。
堺と右軍幹部は、従わせられているので除外。
すると金蓮と燎源と、いるかいないかわからない暗殺者。
でも、いるかいないかわからない暗殺者は、替え玉の己が出たら騙されてしまう。
つまり、紫輝の話しぶりからすると、暗殺者はいない、もしくは赤穂が出てこられない件とは関係がないのだ。
ってことは?
赤穂が死を装う理由は、金蓮か燎源ということになる? か?
これは、どういうことなんだ?
兄が弟を殺そうとした?
それを周囲に気づかれないよう、己を替え玉に据えた?
「俺の手紙で、堺が泣いてたってやつ。どうやら、赤穂が生きてると感じたかららしいよ」
紫輝の言葉で、青桐は意識を戻した。
いや、全部推測だ。
考えてわからないことを、いつまでも考えるのは無意味だ。
おそらく目の前の黒猫耳は、いろいろ知っているのだろう。おいおい教えてもらうぞ。
それよりもこいつ、また重要なことを言いやがったな?
「堺は、赤穂を好きなのか?」
なんで赤穂が生きていて、泣くんだ?
好きなのか? 好きなやつと同じ顔だから、己にも優しくするのか?
もうっ、頭がグルグルするぅ。
「それはない。上官の尊敬。あとは、苦手にしていたよ。あの人、粗雑だから。繊細な堺とは合わなかったんじゃないか?」
紫輝が笑い飛ばしたから、一瞬ホッとしたが。
苦手に思っていた?
それはそれで、むむっとなるじゃないか。
「堺はちゃんと、青桐のことを見ているよ。青桐の心を歪めたくないから、赤穂の分身にはしないと言っていた。だから、青桐は青桐のままに振舞って大丈夫」
そうか。堺はちゃんと、己という個人を認識してくれるのだな。
それは…嬉しいじゃん。
★★★★★
紫輝の部下が、屋敷に到着するまで、なんとなく雑談して。青桐は彼と別れた。
彼は、初めてできた己の味方だから。できれば、長く滞在してもらいたかった。
もっと、いろいろ知りたいことがあったし。堺のことも、助言をしてほしかった。
でもまぁ、年が明ければ本拠地で会えるだろう。
それに情報量多過ぎて、頭が爆発しそうだった。
年明け、紫輝と会うまでに、頭の中を整理しておこう。
そして青桐は、当たり前のように、堺の部屋に入っていった。
小さな囲炉裏があるから、部屋の中は暖かい。
「うー、外、寒かった」
囲炉裏の前に座り、木炭の赤い輝きのところに、手をかざしていると。
堺が囲炉裏に掛けていたヤカンで、お茶を淹れてくれた。
誰かが自分のために淹れてくれたお茶、最高。それにお茶を飲めば、体の芯から温まる。
「紫輝と話をしてきたのでしょう? 青桐が紫輝と友達になって、私は嬉しいです」
ふんわりと笑う堺は、月の精霊のごとき美しさだが。
どちらかというと、ちょっとは嫉妬してほしいな、とも思う。
でも。堺の心を草原にたとえるとして。そういう邪心は、芽も出てなさそう。
ただただ、青い空ときらめく緑の野が広がっていそうだな。
「友達というか。あいつは、俺と同じだから。この屋敷の面子の中では新参者だろ? だから、いろいろ話を聞きやすかっただけだ」
「青桐は…」
新参者ではない。そういう態だ。堺はそこに引っかかったのかもしれない。
「いや、以前の記憶がないのだから、気持ちは新参者なんだ。彼に龍鬼のことなども教えてもらって、もう少し話をしてみたかったのだが…。でも紫輝は、家族で年越しだそうだから、仕方がないな」
「家族…やはり、気になりますか? 目を覚まされたとき、一番に確認しましたよね。貴方の心の拠り所なのでしょうか」
青桐が家族のことを持ち出したのは、堺の動向を知るためで。
爺さんが亡くなってからひとりで生きてきた青桐にとって。家族はそれほど重要な位置を占めていない。
もちろん、堺が伴侶であるならば、最重要案件にはなるのだが。
でも紫輝に、記憶を失った心もとない青年に見えないと指摘され。
もっと、依存して見せた方がいいとも助言されたのだ。
ここは、甘えてもいいかな?
「記憶がないから、家族というものがどういうものなのかも、俺にはわからない。気になる、というより。興味、かな。寂しい、も少しあるかもしれないが。そばに堺がいるから。今は寂しくない」
そう言って、手を握れば。堺は拒まない。
「君がいないと、暗闇の中を歩いているみたいだ…」
紫輝の受け売りを試してみた。そうしてすがってみたら、と言われたのだが。
青桐がすがる目を向ける前に、堺が顔を青白くさせてしまった。
「大丈夫です。必ず、私がそばにいます。そんなに心細い思いをされているなんて…私がお支えしますから」
堺が、己の手を両手で包んで。力強く励ましてくれる。
効果があり過ぎで、ちょっと可哀想になってしまった。
堺は真面目で、疑うことを知らないから。本当に途方に暮れているように見えてしまったのだろう。
邪で、ごめん。
でも、堺は。すぐに手を離してしまう。
「申し訳ありません。触れて、しまい…」
力づけたいけれど、触れてはならぬ。そのような葛藤が、堺に見えた。
だから、青桐は苦笑して。堺の手を今度は自分から握った。
「言っただろう? 君がいないと、と。堺がこうして手を握ってくれたなら、寂しくなんかならない」
すると、おずおずと握り返してくれた。
かっわいい。
これ、本当に泣く子も黙る将堂軍の右将軍なのかっ?
「俺がこうして触れることに、慣れてくれる? 俺はもっと、堺に触れたいんだ」
青桐は堺の隣に移動して、グッと身を寄せる。
間近で、熱い目で、意味深にみつめても。
堺は青桐の恋心には気づかない。
口説かれているとは思っていないのだろう。
まるで。初恋もまだの、無垢な瞳でみつめてくる。
本当に、堺は。誰とも恋をしたことがないのだな。
あのちんちくりんの紫輝でも、時折色気を感じる瞬間があった。
既婚者ゆえの、艶? ってやつ。
ちょっとだけ、紫輝が堺を少女扱いする気がわかった。
もしも堺が、恋を知って艶やかな色気を放ったら。
自分はイチコロ。
鼻血で死ねる、自信がある。
でもまぁ、死なないように、自分も耐性をつけつつ徐々に。
堺が花開いていく過程を見ていきたいと思った。
「でも、私は龍鬼ですから。龍鬼である私が、青桐に触れるのは…」
「紫輝から、堺が龍鬼であることでとても傷ついたのだと聞いたよ。でも俺は、堺を傷つけた輩とは違うんだ。堺に触れられたら、嬉しいし。堺がそばにいるせいで、災いが起きたりもしないよ。むしろ。これから堺にそばで守ってもらわないと。戦場ですぐにも死んでしまうかもしれないだろう?」
「そのようなことは、決して。必ず私がお守りします」
「もちろん信じているよ。だから。つまり。堺がそばにいることを、俺は誰にも文句を言わせない。災いも起きないし。俺が汚れることなどない」
その言葉に、堺の薄青の瞳がウルッと揺れて。涙ではないが、涙液が青い瞳を鮮やかに彩り。
そのまま瞳がこぼれ落ちてきそうに見えて。
青桐は、慌ててしまった。
「本当に、災いは起きないのでしょうか? 本当に、青桐は汚れないのでしょうか? 私のせいで、両親は亡くなったのかもしれないのに。私がそばにいるから、金蓮様は青桐に会いに来てくださらないのかもしれないのに」
これは、堺の苦しみの一端なのだと、青桐は察した。
心無い人々にも、傷つけられてきただろうが。
深く心をえぐっているのは、両親と、金蓮、なのだな。
紫輝との話の中にも、ちらりと出てきたことだ。
そういうことなのだろう。
「俺には、知りえない事柄だが。それでも、俺にもわかることがある。今、堺が言った出来事は、どちらも貴方のせいじゃない。堺が龍鬼だからでもない。そして、俺は無敵だから大丈夫」
「…無敵?」
「災いも汚れも、堺のせいで起きはしないが。そんなものが寄ってきたとしても、俺がぶった切ってやるから」
「ふふ、頼もしいですね」
にこやかな作り笑いではなく、心からの堺の笑みに、青桐は見惚れた。
もちろん、己より堺の方が、剣の道は強いのだ。
でも精神的なものは、己が守るという意気込みだった。
「堺は、龍鬼である自分を好きではないのかもしれないな。でも、それなら俺は、龍鬼である貴方を好きになる。だって、堺が龍鬼だったから、今俺の目の前にいるんだからな。俺は、その幸運に感謝する」
「私が龍鬼であることが、幸運だなんて…」
戸惑って、堺は目を泳がせ。うつむくと、雫が一粒落ちた。
「ずっと苦しかっただろうが、堺が龍鬼として生まれたのは、今俺と出会うためだったのだと思ってくれないか? そうしたら俺は、堺が今まで苦しかった分、それ以上に堺を幸せにすると誓うから」
「ありがとうございます、青桐。私も、貴方に出会えて、嬉しいです」
顔をあげた堺は、柔らかく笑っていたが。
どうやら、優しい人が慰めてくれた、くらいの受け止め方をされてしまったようだ。
青桐はだいぶ、求婚を意識した言い回しをしたつもりだったのだが。
手強い。
でも、恋に落ちていない堺に、求婚しても。それはなに? という感じかもな。
うーん。せめて、意識させたい。
青桐は堺の頬に手を伸ばし、涙になり損ねた雫を親指で拭う。
「俺が触るの、嫌じゃないか?」
確認すると、堺は小さくうなずいた。
紫輝、これは同意だ。己は堺に触れてもいい。
そして、青桐は堺を引き寄せ、くちづけた。
「…ん」
唇と唇が合わさった瞬間、堺の吐息が小さく漏れた。
色っぽくて、腰に来る。
初めて堺に会った、あの日。寸前で触れられなかった、堺の薄い唇は。ひんやりしていた。
囲炉裏の部屋にいるのに。
やっぱり氷の精霊なのだと思った。
でも、柔らかく、すべすべしているから、氷そのものではないのだ。
「あ、青桐、様…」
驚いた堺が、やんわりと手を突っぱねて、青桐から身を離す。
戸惑う堺に、青桐はシレッと言った。
「紫輝も、結婚相手とはキスしているんだ。それでも相手の翼が腐り落ちるようなことはない。だから、キスは大丈夫だ」
「キスは…大丈夫」
白皙の顔をほの赤く染め、言葉を反芻する堺が可愛くて。
翼がビビビッと震えてしまった。
青桐はもう一度、堺を引き寄せる。
突っぱねた手を、堺がぎくしゃくとゆるめ。青桐の誘導に身を任せてくれる。
強引にではない。あくまで、堺の同意ありだ。
鼻と鼻がぶつかりそうなほどに、近づいたとき。一度止まって、堺の様子をうかがう。
伏し目がちだけど、目元が色づいていて。
嫌がってなさそうだから。頭を傾けて、ゆっくりとキスした。
唇をすり合わせると、堺は目をギュッとつむる。
ちょんちょんと、ついばんで。ひんやりしっとりした堺の薄めの唇を、唇で撫でていく。
腕の中で身を固くしつつも、委ねてくれる堺が、もう、可愛らしくて、いじらしくて。ぎゅぎゅーってしたくなる。
でも、脅えさせないように、我慢我慢。忍耐。
唇を離し、髪をそっと撫でると。堺がゆっくり目を開けた。
先ほどは、なにも意識していないような瞳の色だったが。
今は潤んで。ぼんやり、そして少し温度のある瞳でみつめてくる。
己を、恋する相手の候補に入れてくれたのなら、嬉しいんだが?
「ほら、大丈夫だろう? 龍鬼だって、恋も、キスも、情交も、しても大丈夫なんだって。紫輝が言ってた」
そんなことは言っていないけど。
紫輝の言葉に、堺は絶大な信頼を置いているのがわかったから。ここは利用するしかねぇだろ。
「じょ…」
でも。堺はほの赤かった顔を真っ赤にして。囲炉裏をはさんだ対面に、スススッと移動してしまった。
ちっ、失敗した。
怖がらせちゃったか。まだ情交という言葉は早かったのだな。
だが、ウブな反応が愛らしかったので、よし。
「堺、拒まないでくれて、ありがとう。徐々にでいいんだ。ゆっくり、俺がそばにいることに慣れてほしい」
「…はい。慣れます」
オウム返しのように聞こえるけれど。大丈夫かな。
ちゃんと意味、わかっているか?
「お茶、おかわりくれる?」
かっちんかっちんに固まっていた堺が、ホッとしたようにお茶を淹れる動作に移る。
いつもの感じに戻れた、と思っているのかな。
まぁ、今回はここまでだ。
でも、少しずつ、少しずつ、堺を囲い込んでいく。
そしていずれ、己の嫁にする。
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