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54 年越し小話 ①
◆堺の年末
堺は、青桐の順応力に舌を巻いていた。
燎源が青桐の素性を詳しく明かしてくれないので、青桐は赤穂によく似た凡庸な村人なのだと思っていたが。
片手という不利な条件はありながらも、一騎当千である幸直を相手に、剣術で引けを取らないとか。
びっくりである。
それに礼儀作法もそつなくこなし、軍内部の知識など、吸収が早い。
地頭が良いのだろう。
でも。本当にただの村人なのだろうか?
名家の子息と言われても、遜色ないのだが。
村人にしては、なにもかもが及第点である。
もしかしたら…あの粗雑な赤穂よりも、将堂家の人物足りえるかもしれない。
赤穂様、失礼を言って申し訳ありません、と胸のうちで堺は謝った。
しかしそんな、何事も涼しい顔でこなしてしまう青桐も。乗馬だけは苦労している。
初めて馬に対面したときは、おっかなびっくりだったし。馬の背に乗せたときは、あまりの高さに鞍から手を離せない状態だった。
手綱を持たなければ、馬は動きませんよ。
しかし乗馬は、すみやかに体得してもらわなければならないのだ。
本拠地に戻るときは馬で移動するし。
赤穂は、人馬一体で戦場を駆け回る馬の名手で、記憶喪失と言えど乗馬姿がサマにならなければ、遠目から目撃した自軍の兵の士気を削ぐことにもなりかねない。
せめて、普通に乗れるようになってもらわないとならないのだ。
つい半月前に、堺は赤穂たちとともに前線基地に陣中見舞いに来たわけだが。
そのとき乗ってきた赤穂の馬は、今はない。
紫輝が。
赤穂はある場所で無事に暮らしている、と言っていたので。側近共々、馬もその場所に連れて行くことが出来たのかもしれない。
赤穂の馬は気性が荒く。
もしこの場にいたとしても、青桐は確実に乗りこなせないだろうと思われた。
今青桐が乗っている馬は、幸直が調達してきた穏やかな気性の黒いメス馬だ。
彼女を乗りこなすことが出来たら、おそらく誰も青桐を赤穂ではないと疑うことなどできない。
青桐にとって、最後の試練と言えた。
そんなわけで、堺は今。自室の床板にあおむけで寝ている。
その上に青桐がまたがっていた。
なにやら頬を染めて。
「堺、大胆だな。この状況は…俺的には、とても眼福であるが。わっ!」
堺の下腹、腰骨の上辺りに、青桐の臀部がある。
腹筋と殿筋を使って、堺はがくがくと青桐を揺さぶった。
「青桐、体幹を意識して。へその下に力を入れて。馬がどんな動きをしても、腰から上、背筋の均衡を崩さないように」
そう、これは乗馬の訓練だ。
互いに軍服を着ているので、決してやましい事柄ではない。
馬の上で体がぐらつくから、怖いと思うのだ。それを克服しなければならないのだっ。
堺は青桐を、乗馬の名手にする意気込みに燃えていた。
「わ、あ、ちょ、待て」
揺らしていると、頭が上下して、肩まで伸びる彼の黒髪がわさわさ揺れる。
それでは駄目です。
堺は、青桐の太ももを両の手で支える。
「太ももで、私の体をはさむように。しっかり…」
布越しでも、青桐の腿はしっかり鍛えられているのが、手に伝わる。
筋肉の張りがいい。筋に沿って指を這わせたら、青桐がピクリと震えた。
そのまま堺は、青桐の臀部を手で支える。
「体の中心を意識して。動かしますよ」
突き上げるように腰を動かす。
一定の調子で続けていくと、青桐は背筋を伸ばして腰を据える感じを会得してきたようだ。
が、少し高い位置を見ているようで、堺と目を合わさない。
「堺。俺は…下から突き上げたい」
「下では、特訓にならないではありませんか?」
腰の動きを止めずに、堺は青桐とそんな会話をした。
「もちろん、普段は上でいい」
意味がよくわかりません。
変なことを言い出す青桐に、堺は、はぁと生返事をしてしまった。
そんな特訓が実を結び、年の暮れには、青桐は馬に乗って町まで行けるようになった。
十二月三十一日。
堺と青桐は遠乗りに出かけた。
屋敷の門を出て、山を降り、海辺まで足を伸ばす。
砂浜は足場が悪いので、馬の操縦が難しい。なので、乗馬のいい練習になるのだ。
冬の海は荒れていて、海風が強い。
青桐の黒髪が風に揺れた。
長めの前髪が目の前に垂れると、壮絶な男の色気を感じる。切れ長の目は鋭い光を宿すが、そのすぐ下にある泣きぼくろが、厳しいばかりの印象を絶妙に和らげている。
そして少し肉感のある唇は、笑みをかたどる。
あの唇が、先日己の唇に触れたのだ。
つい、青桐の口元に目が行ってしまう。
はしたないと思い、堺はうつむいた。
キスは大丈夫って、紫輝が言っていた。なんて青桐に言われて。
紫輝からも、青桐の愛に応えろと言われて。
堺はあのとき、彼のくちづけを受けてしまったが。
あれは、駄目だったと思う。
自分は青桐に対して、誠実ではなかった。
彼が望むなら、彼のそばに一生いるつもりだ。それが青桐への償いであり、己の使命でもあるから。
青桐を、なにものからも守る。命を賭して。その気持ちに嘘はない。
しかし、これは恋ではない。
青桐に触れられればドキドキするし、青桐にみつめられれば勝手に体が熱くなる。
でも、今まで誰にもそのようなことをされたことがなかったから、心や体が勘違いしているだけかもしれない。
己が嬉しくなるようなことを、青桐はいつも言うけれど。
優しい人だから、傷ついた自分を慰めようとしているだけかもしれないのだ。
彼の純粋な気持ちを、邪な目で見てはいけない。
自分のことを好いてくれているなんて。あり得ない。
自分は、龍鬼なのだから。
それに、先日。自分は紫輝に恋をしていると思ったのだ。
それは違うと、紫輝に諭されて。
自分も、あれは恋ではなかったと納得したのだけれど。
己の勘違いが恥ずかしすぎて…。
もう、間違いは許されない。
恋ではないのに、唇を触れ合わせるなんて。そんな深い触れ合いをしてはいけなかった。
そう堺は反省し、己を戒めたのだった。
「…馬でここまで乗って来られれば、もう本拠地まで行けるでしょう。特に急いではいませんから、途中宿で泊ってもいいので」
「それじゃあ、ちょっとした旅行気分だな? 堺はどんな料理が食べたい? 先触れを出して、用意してもらうのはどうだ?」
「いえ、私は野宿になります。龍鬼は宿に泊まれないので」
これは、龍鬼あるあるなのだ。
ある意味、世間の常識。
だから龍鬼は、単独野営に慣れている。
紫輝はこの世界に馴染んでいないから、野宿は勘弁、なんて言っていたけど。
己や高槻は、すでに苦でもない。
「えっ、宿に泊まれないのか? なんで…って聞いちゃ、駄目なのか。もう、なんでそんなにっ。あ、だから、あいつも。朝早くから屋敷を出て行ったのか?」
青桐が言うあいつというのは、紫輝のことだ。
三日前、いきなり幸直の屋敷に現れ、次の日の朝には帰宅の途についた。
慌ただしい強行軍で。堺もびっくりである。
「えぇ。こんな真冬に野宿は勘弁、と言っていましたね。その日のうちに家に帰るなら、あの時間でもギリギリです」
「じゃあ、俺らも朝早くに出て。その日のうちに本拠地に入ろう。堺をひとりで野宿なんかさせられない。あぁ、俺も一緒に泊まるなら、アリか?」
「まさか。青桐様を野営などさせられません」
「こら。また、様ってつけた。今はふたりきりだろう?」
青桐は堺の馬に馬を寄せ、堺の手を握った。
「片手など、まだ危ないですよ」
「落馬させたくなかったら、動かないで」
ギュッと手を握られ、堺は青桐をみつめる。
赤穂に、恋愛めいた感覚を受けたことはないのだが。同じ顔なのに、青桐のことは艶っぽく見えた。
たったひとつ、ほくろがあるだけなのに。
そこに、とても魅了されるのだ。
熱い眼差しは、堺の身をも焼く。
ジリジリと胸が痛むのは、なぜだろう。
しばし、時が止まった。
馬の尻尾が揺れる、ハタハタとした音と波の音だけが辺りを包んでいた。
「相変わらず冷たい手だな。手袋をした方がいい」
「いいえ。私は、水と氷を操る龍鬼なので。とっさのときに能力を使うためには、手袋は邪魔なのです」
そう言って、少しの間手を離してもらった堺は、手のひらから氷のつぶてを出現させた。それを海に向かって投げる。
ぽちゃんと、遠くで水音が鳴った。
「すごい。本当に氷の精霊だった」
「氷の精霊ではありません。龍鬼ですよ。氷龍というふたつ名なのです」
「氷龍か。美しい堺にぴったりのふたつ名だな。俺の氷龍だと、思ってもいいか?」
再び、青桐は堺の手を握った。そして、そっと聞いてくる。
「もちろんです。私は貴方だけの氷龍です」
己の能力はすべて、これから青桐を守るために捧げる。そのつもりだった。
彼もその答えに、嬉しそうにうなずいた。
でも、手から氷を出してしまったので。先ほどよりもさらに手が冷たくなっているのではないかと思い、堺は手を引こうとした。
青桐は、離してはくれなかったが。
「手が冷たくて、御不快ではありませんか?」
「いや。俺は体温が高いから。冷たい手は気持ちが良い。…堺とキスをしたときも、とても気持ち良かったよ」
後半部分は声をひそめて、でも意味深に甘く囁くから。
堺は頬を染めてしまった。
勘違いしては、いけないのに…。
年明けに、本拠地へ行く。そのために、しなければならないことが山ほどある。そんな忙しない年の瀬だけど。
海辺で寄り添う白馬と黒馬は、しばらくその場から動かなかった。
堺は、青桐の順応力に舌を巻いていた。
燎源が青桐の素性を詳しく明かしてくれないので、青桐は赤穂によく似た凡庸な村人なのだと思っていたが。
片手という不利な条件はありながらも、一騎当千である幸直を相手に、剣術で引けを取らないとか。
びっくりである。
それに礼儀作法もそつなくこなし、軍内部の知識など、吸収が早い。
地頭が良いのだろう。
でも。本当にただの村人なのだろうか?
名家の子息と言われても、遜色ないのだが。
村人にしては、なにもかもが及第点である。
もしかしたら…あの粗雑な赤穂よりも、将堂家の人物足りえるかもしれない。
赤穂様、失礼を言って申し訳ありません、と胸のうちで堺は謝った。
しかしそんな、何事も涼しい顔でこなしてしまう青桐も。乗馬だけは苦労している。
初めて馬に対面したときは、おっかなびっくりだったし。馬の背に乗せたときは、あまりの高さに鞍から手を離せない状態だった。
手綱を持たなければ、馬は動きませんよ。
しかし乗馬は、すみやかに体得してもらわなければならないのだ。
本拠地に戻るときは馬で移動するし。
赤穂は、人馬一体で戦場を駆け回る馬の名手で、記憶喪失と言えど乗馬姿がサマにならなければ、遠目から目撃した自軍の兵の士気を削ぐことにもなりかねない。
せめて、普通に乗れるようになってもらわないとならないのだ。
つい半月前に、堺は赤穂たちとともに前線基地に陣中見舞いに来たわけだが。
そのとき乗ってきた赤穂の馬は、今はない。
紫輝が。
赤穂はある場所で無事に暮らしている、と言っていたので。側近共々、馬もその場所に連れて行くことが出来たのかもしれない。
赤穂の馬は気性が荒く。
もしこの場にいたとしても、青桐は確実に乗りこなせないだろうと思われた。
今青桐が乗っている馬は、幸直が調達してきた穏やかな気性の黒いメス馬だ。
彼女を乗りこなすことが出来たら、おそらく誰も青桐を赤穂ではないと疑うことなどできない。
青桐にとって、最後の試練と言えた。
そんなわけで、堺は今。自室の床板にあおむけで寝ている。
その上に青桐がまたがっていた。
なにやら頬を染めて。
「堺、大胆だな。この状況は…俺的には、とても眼福であるが。わっ!」
堺の下腹、腰骨の上辺りに、青桐の臀部がある。
腹筋と殿筋を使って、堺はがくがくと青桐を揺さぶった。
「青桐、体幹を意識して。へその下に力を入れて。馬がどんな動きをしても、腰から上、背筋の均衡を崩さないように」
そう、これは乗馬の訓練だ。
互いに軍服を着ているので、決してやましい事柄ではない。
馬の上で体がぐらつくから、怖いと思うのだ。それを克服しなければならないのだっ。
堺は青桐を、乗馬の名手にする意気込みに燃えていた。
「わ、あ、ちょ、待て」
揺らしていると、頭が上下して、肩まで伸びる彼の黒髪がわさわさ揺れる。
それでは駄目です。
堺は、青桐の太ももを両の手で支える。
「太ももで、私の体をはさむように。しっかり…」
布越しでも、青桐の腿はしっかり鍛えられているのが、手に伝わる。
筋肉の張りがいい。筋に沿って指を這わせたら、青桐がピクリと震えた。
そのまま堺は、青桐の臀部を手で支える。
「体の中心を意識して。動かしますよ」
突き上げるように腰を動かす。
一定の調子で続けていくと、青桐は背筋を伸ばして腰を据える感じを会得してきたようだ。
が、少し高い位置を見ているようで、堺と目を合わさない。
「堺。俺は…下から突き上げたい」
「下では、特訓にならないではありませんか?」
腰の動きを止めずに、堺は青桐とそんな会話をした。
「もちろん、普段は上でいい」
意味がよくわかりません。
変なことを言い出す青桐に、堺は、はぁと生返事をしてしまった。
そんな特訓が実を結び、年の暮れには、青桐は馬に乗って町まで行けるようになった。
十二月三十一日。
堺と青桐は遠乗りに出かけた。
屋敷の門を出て、山を降り、海辺まで足を伸ばす。
砂浜は足場が悪いので、馬の操縦が難しい。なので、乗馬のいい練習になるのだ。
冬の海は荒れていて、海風が強い。
青桐の黒髪が風に揺れた。
長めの前髪が目の前に垂れると、壮絶な男の色気を感じる。切れ長の目は鋭い光を宿すが、そのすぐ下にある泣きぼくろが、厳しいばかりの印象を絶妙に和らげている。
そして少し肉感のある唇は、笑みをかたどる。
あの唇が、先日己の唇に触れたのだ。
つい、青桐の口元に目が行ってしまう。
はしたないと思い、堺はうつむいた。
キスは大丈夫って、紫輝が言っていた。なんて青桐に言われて。
紫輝からも、青桐の愛に応えろと言われて。
堺はあのとき、彼のくちづけを受けてしまったが。
あれは、駄目だったと思う。
自分は青桐に対して、誠実ではなかった。
彼が望むなら、彼のそばに一生いるつもりだ。それが青桐への償いであり、己の使命でもあるから。
青桐を、なにものからも守る。命を賭して。その気持ちに嘘はない。
しかし、これは恋ではない。
青桐に触れられればドキドキするし、青桐にみつめられれば勝手に体が熱くなる。
でも、今まで誰にもそのようなことをされたことがなかったから、心や体が勘違いしているだけかもしれない。
己が嬉しくなるようなことを、青桐はいつも言うけれど。
優しい人だから、傷ついた自分を慰めようとしているだけかもしれないのだ。
彼の純粋な気持ちを、邪な目で見てはいけない。
自分のことを好いてくれているなんて。あり得ない。
自分は、龍鬼なのだから。
それに、先日。自分は紫輝に恋をしていると思ったのだ。
それは違うと、紫輝に諭されて。
自分も、あれは恋ではなかったと納得したのだけれど。
己の勘違いが恥ずかしすぎて…。
もう、間違いは許されない。
恋ではないのに、唇を触れ合わせるなんて。そんな深い触れ合いをしてはいけなかった。
そう堺は反省し、己を戒めたのだった。
「…馬でここまで乗って来られれば、もう本拠地まで行けるでしょう。特に急いではいませんから、途中宿で泊ってもいいので」
「それじゃあ、ちょっとした旅行気分だな? 堺はどんな料理が食べたい? 先触れを出して、用意してもらうのはどうだ?」
「いえ、私は野宿になります。龍鬼は宿に泊まれないので」
これは、龍鬼あるあるなのだ。
ある意味、世間の常識。
だから龍鬼は、単独野営に慣れている。
紫輝はこの世界に馴染んでいないから、野宿は勘弁、なんて言っていたけど。
己や高槻は、すでに苦でもない。
「えっ、宿に泊まれないのか? なんで…って聞いちゃ、駄目なのか。もう、なんでそんなにっ。あ、だから、あいつも。朝早くから屋敷を出て行ったのか?」
青桐が言うあいつというのは、紫輝のことだ。
三日前、いきなり幸直の屋敷に現れ、次の日の朝には帰宅の途についた。
慌ただしい強行軍で。堺もびっくりである。
「えぇ。こんな真冬に野宿は勘弁、と言っていましたね。その日のうちに家に帰るなら、あの時間でもギリギリです」
「じゃあ、俺らも朝早くに出て。その日のうちに本拠地に入ろう。堺をひとりで野宿なんかさせられない。あぁ、俺も一緒に泊まるなら、アリか?」
「まさか。青桐様を野営などさせられません」
「こら。また、様ってつけた。今はふたりきりだろう?」
青桐は堺の馬に馬を寄せ、堺の手を握った。
「片手など、まだ危ないですよ」
「落馬させたくなかったら、動かないで」
ギュッと手を握られ、堺は青桐をみつめる。
赤穂に、恋愛めいた感覚を受けたことはないのだが。同じ顔なのに、青桐のことは艶っぽく見えた。
たったひとつ、ほくろがあるだけなのに。
そこに、とても魅了されるのだ。
熱い眼差しは、堺の身をも焼く。
ジリジリと胸が痛むのは、なぜだろう。
しばし、時が止まった。
馬の尻尾が揺れる、ハタハタとした音と波の音だけが辺りを包んでいた。
「相変わらず冷たい手だな。手袋をした方がいい」
「いいえ。私は、水と氷を操る龍鬼なので。とっさのときに能力を使うためには、手袋は邪魔なのです」
そう言って、少しの間手を離してもらった堺は、手のひらから氷のつぶてを出現させた。それを海に向かって投げる。
ぽちゃんと、遠くで水音が鳴った。
「すごい。本当に氷の精霊だった」
「氷の精霊ではありません。龍鬼ですよ。氷龍というふたつ名なのです」
「氷龍か。美しい堺にぴったりのふたつ名だな。俺の氷龍だと、思ってもいいか?」
再び、青桐は堺の手を握った。そして、そっと聞いてくる。
「もちろんです。私は貴方だけの氷龍です」
己の能力はすべて、これから青桐を守るために捧げる。そのつもりだった。
彼もその答えに、嬉しそうにうなずいた。
でも、手から氷を出してしまったので。先ほどよりもさらに手が冷たくなっているのではないかと思い、堺は手を引こうとした。
青桐は、離してはくれなかったが。
「手が冷たくて、御不快ではありませんか?」
「いや。俺は体温が高いから。冷たい手は気持ちが良い。…堺とキスをしたときも、とても気持ち良かったよ」
後半部分は声をひそめて、でも意味深に甘く囁くから。
堺は頬を染めてしまった。
勘違いしては、いけないのに…。
年明けに、本拠地へ行く。そのために、しなければならないことが山ほどある。そんな忙しない年の瀬だけど。
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