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74 紫輝の波紋 巴side ★
◆紫輝の波紋 巴side
紫輝と堺に、正体をバラされてしまった。
茶室を出て、巴は何事もなかったかのように、廊下を自室に向かって歩いている。
幸い、みんな、己が基成だということは黙っていてくれるようで。このまま将堂の兵士として、全うできそうだ。
旗色が悪くなったからといって、将堂軍を抜けることはできない。逃げれば脱走兵として追討されてしまう。
手裏からも、将堂からも、追手をかけられたら。この地で、生きていける場などない。
だから巴は、三十過ぎまで、将堂で兵士として生きるしかないのだ。
その後は、今までの稼ぎで、絵を描いて暮らしていけるだろう…戦死しなければ。
紫輝は、今の基成が旦那で、基成は安曇で、安曇が紫輝の弟…なんて言っていたが。
考えても、どういう状況か全くわからない。
いや、これは考えちゃダメなやつだ。これ以上の考察は、やめておこう。なにも知らない方がいいから。
だって、知ることで、命を脅かされることもある。
紫輝は、終戦への道を邪魔されたくないとのことだったが。
紫輝の旦那は、現、手裏基成。己が邪魔だと判断されたら、即始末されてしまう。
現、基成の正体を知ることで、それが早まることもあるかもしれないではないか。
触らぬ神に祟りなし、である。
巴は、己の命が脅かされなければ、それでいいのだ。
手裏に戻る気など、さらさらないし。己を知る者のいない手裏に戻ったところで、なんになる?
そういう己の心の内を、示したい気もあるが。
紫輝は黙っていてくれるというのだから。余計なことはしないで、彼を信じていよう。
無害で、じっとしているつもりだ。
だから、己はここにいる。
ひっそりと。なにも関わらず。静かに。
紫輝が終戦してくれるか。己が三十になり、加齢による戦闘不能状態と認められるのを、待つことにしよう。
しかし、幸直との仲は、これで終わりだ。
引き戸を開けて、自室に入ると。幸直も続いて入ってきた。
「巴、待てよ。なぁ、大丈夫だよ。みんな、巴のこと誰にも言わないって。俺が守るし。今までどおりやれる」
「今までどおりなんか、無理だよ」
いつもの爽やかな笑顔で、幸直は言うが。
巴は、表情のない目の色で、幸直をみつめる。
「美濃家の当主が、何十年と戦ってきた手裏の血族相手に、友達ごっこなどしていられるわけがない。もう、わかっただろう? 僕のことなど忘れて、離れた方がいい」
幸直のことを、突き放さないとならない。それだけが、巴は苦痛だった。
けれど。美濃の当主が、基成と関わって、良いことなどなにもないのだ。
「そんな…昨日、言ってくれたじゃないか。僕がそばにいるって。俺をひとりにしないって」
「美濃と手裏基成は、相容れない。将堂の名家が、幸直の後ろにいる一族が、僕を許しはしないだろう」
今にも泣きそうに、眉尻を下げて訴えていた幸直が。うつむいた。
前髪で陰になっていて、幸直の表情が見えなかったが。
ゆらりとあげた、その顔は。険しく歪み。きつく巴を睨んだ。
「巴まで、俺を美濃と言うのかっ!」
髪の間から、ギラリとした双眸をのぞかせ、奥歯を噛み締め、頬を引きつらせている。
こんなに怒りをあらわにした幸直を、見たことがない。
幸直は、美濃の権威が、誰よりも嫌いだ。
そんなこと、わかっている。
大きな家を背負って、それでも明るさを失わずに笑みを浮かべて、苦しい思いを耐えてきた。
そんな彼を、ずっとみつめてきたのだから。
「巴を、許さねぇ? あぁ、許さないね。この俺が。美濃家当主の、この俺がっ。今、おまえを成敗してやる」
幸直は巴を、その場に押し倒した。両手に指を絡め、床に押しつけて縫い留める。
それでも。
怒っていても、腹の上に乗らず、体をまたいでいるところが、彼の優しさだ。
「紫輝も堺も青桐様も、巴が基成だと言わないと約束した。だが、俺が上に突き出してやるから。俺のものにならないというのなら、金蓮様に突き出してやるっ」
激昂する幸直を落ち着かせようと、巴は冷静な声を出す。
己はそんなに、幸直が心を痛めるほどの人物ではないよ? 絵を描くしか能のない、ハグレだ。
「幸直、僕は、本物の基成ではあるが。腐っているのだ。僕を金蓮様に突き出し、命を奪ったところで。手裏の痛手にはならない」
「おまえの価値は、俺が決める。俺が、手裏基成を、今、この手におさめているのだ。おまえの心も体も、俺のもの。昨夜、言っただろう? なにが起きようと、おまえを離さねぇって。たかが、これくらいのことで。おまえを手放すものかっ。ようやく手に入れた、おまえを…」
ようやく? それは、どういう意味だろう。
己はずっと、友として、幸直のそばにいたというのに。
己はずっと、十七のとき出会った日から、幸直のものだったというのに。
「俺のものになると言え、巴。俺に、絶対服従を誓うんだ。そうしたら、命を永らえさせてやる」
幸直の奴隷となれば、お咎めなしということか?
なにそれ。
なんの罰にもなっていないんだが。
だって、己は。幸直をそばで見られるだけで、幸せなのだから。
彼の笑顔のために、身を差し出すことなど。なんの苦もない。
「服従します、幸直さま」
奴隷らしく、へりくだってみたが。
幸直はお気に召さなかったらしい。きつく顎を掴まれた。
「幸直だ。今までどおり呼べよ。他の者にバレるだろうがっ」
「…わかった。今までどおりだな? 幸直」
怒りに満ちていた目の色が。情欲の色に変化する。
見下ろす、その目が。巴の顔や体を、視線で舐めていく。
昨夜見た、オスの顔つきだ。
「俺のそばから離れないと、誓え。俺が要求したら、身を捧げろ。俺だけを愛すると誓えっ」
「幸直のそばから離れないと、誓う。いつでも、要求に従う。幸直だけを、愛している」
復唱するように言うと。
幸直は…涙をこぼした。
なぜだ? ちゃんと誓ったのに。
★★★★★
服を脱いで、寝台に上がれと幸直に言われ。巴は軍服を脱いだ。
昨夜は、幸直に抱かれて、少ししか眠れなかったから、今日は全休で。仮眠をとっていたのだが。
昼間は、なにが起きるかわからないので。慣例通り、軍服着用で寝ていたのだ。
苦しいが。結局、突発的に、准将の前に出るようななにかは起きたわけだから。軍服着用は、正解だったのだろう。
今は、脱いでいるけれど。
朝食をとり、仮眠の前に湯に入ることができた。なので、昨日のぐちゃぐちゃのドロドロは洗い流して、身綺麗ではある。
でも、昨夜は初めての情交であったし。ちょっと体がつらいな、とは思うのだが。
この状況では、意見など聞いてもらえそうもない。
絶対服従の、奴隷だからな。
幸直は自分も軍服を脱ぐと、その美しい肉体を惜しげなくさらし、巴を組み敷く。
黒い翼を慌てて広げると、羽がひとつ抜け落ちた。
「黒々とした羽。言われてみれば、確かに手裏の羽だな。我が血脈が、何代にもわたって戦ってきた、手裏家の血族が。今、俺に組み敷かれている。生かすも殺すも、俺次第。これほど血がたぎることなどない」
あぁ、そうか。
己に流れるこの血こそが、幸直にとっての悪なのだ。
優しい幸直は、己を殺せないとは思うが。
憎々しいとは、思っているかも。
友達の関係は、やはり失ってしまった。
これからは、支配する者、隷属する者だ。
「怖いのか? あきらめているのか? これほどに貶められているというのに、巴は表情が変わらないな。いつも、ひょうひょうとして。風のように自由で。目を離したらいなくなりそう」
巴の顔の輪郭を、指でなぞり。幸直はくちづけた。
己を寝台にはりつけ、つなぎ止めるような、そんなキスだった。
「でも、もう俺のものだから。俺の前から消えるのは許さないよ」
「消えたりしない。幸直のそばにいる」
幸直は性急に求め、巴の体を貪る。
首筋や鎖骨に、念入りに舌を這わせ。御馳走を味わうかのように、乳首を口に含む。ちゅくちゅくと吸われたり、甘噛みされたりすれば。巴も、いやらしいあえぎが漏れてしまう。
昨夜だけで、乳首を執拗にいじられて、そこで快感を得られるようになってしまった。
「ん、あ…幸直…あん、あ」
「拒むのは、許さないぞ。ここだけでイけるように開発してやる。そうしたら。巴はもう、俺に抱かれるしかない。俺だけに感じる体にしてやるからっ」
大きな手のひらが、体のあちこちを撫でさする。己の中で、彼が触れていない場所は、もうない。
幸直の頭が、ゆっくりと下に降りていき、腹や脇腹や、腰まで、ついばむキスをする。
そして足を開かされて。屹立は素通りして、蕾に舌を這わせた。
「んぁ、幸直、そんなところ…」
一応、ご主人様が。後孔を舌でほぐして奉仕するようなこと、させられないと思ったのだ。
幸直の手をわずらわせず、自分でやりますけど、と。
でも、ギラリと睨まれてしまう。
「拒むのは許さないと言った」
拒んでいるのではないのだが。
巴は怒られてしまい。目を丸くした。そして、口をつぐむ。
幸直は、巴の足を押し上げて臀部を開くと。外気にさらされた蕾を舌でつついた。
堅い蕾の花びらを、一枚一枚、無理に開かせるように、巴の後孔をほぐしていく。
刺激に敏感な場所を、ヌメヌメした舌に広げられ、こすられて。巴は息を荒げる。
昨夜、そこに。幸直の剛直が挿入された。
何度も何度も、荒れ狂う熱で蕩かせられ。悦楽を教え込まれた。
幸直の舌先は、入り口だけを行き来するが。その場所に舌が突き入れられると、彼の剛直の存在感を思い出して。ジンと痺れる。
「ぁ、あ、あぁ…ふ、あ」
ぐちゅんぐちゅんと音をたてて、舌が粘膜をえぐる。
淫蕩な疼きが、そこ一点に集中し。巴は屹立の先から、先走りをほとばしらせた。ピュクと透明な蜜があふれ、腹を濡らす。
幸直は舌先を深く差し入れ、中でぐにぐにとうごめかせた。
「や、ぁ…幸直ぉ、んっ」
拒むな、と言われているから、駄目とか嫌とか、言えなくて。名前を呼ぶしかない。
すごく、はしたない嬌声ばかりが、口から漏れてしまう。
「ふ、気持ち良いか? エロいのはそそるから。気持ち良いとか、もっととか、イくは、ちゃんと報告してもらおうかな。イくと言う前に達したら、お仕置きだ」
急に伸び上がってきて、幸直は耳元で甘く囁く。耳たぶを噛んで、穴に舌を差し入れて。巴がゾクリと身をすくめたとき。
幸直が後ろに挿入してきた。
「あ…ん、は、ぁ、あ…っ」
剛直が、蕾を押し広げ、内壁をじっくりとこすり上げながら、奥まで来る。
昨夜の熱は、記憶に新しいから。あの官能を求めて、物欲しげに彼を締めつけてしまう。
だが、幸直は狭い筒を分け入り、奥まで挿入したあと、全く動かなかった。
巴の手を握り込み、寝台に押しつけ、上から巴の顔をのぞき込む。
べっこう飴のような、キラキラの瞳に、吸い込まれそう。
「あぁ、いいぜ。巴の中は、最高に気持ち良い。ずっとこのまま、俺を入れたままにしてやろうか?」
このまま、動かないのか?
このウズウズした感覚をそのままに。腰に渦巻く、もやもやが、身を焦がすのに?
もどかしくて、たまらないのに?
でも、荒っぽくされるのも、怖い。
「うご…いて?」
「巴は、俺に命令できないだろ? いけない子は、串刺しにしてやる」
幸直は巴の足首を持って、体をくの字に折りたたむと、上から剛直を捻じ込んだ。
昨晩以上に深く入れられ、巴は怖くなった。
幸直がどこまで、己の体を侵食するのか。
腰を揺らして、中をえぐられ。初めての体感に、さすがの巴も涙ぐむ。
「ご、ごめんなさい、幸直…言わない。も、言わないからぁ」
乱暴にされ、巴は謝るが。
それは逆に、幸直の加虐心を煽るかのようだった。
「絶頂のときに、殺してやろうか?」
喜々とした顔で聞かれ、巴は首を横に振る。
怖い。
そんなこと、幸直はしないと思っても。
手裏憎しの美濃の血が、本当に己を殺すかもしれない。
「くく、本気にしたか? 馬鹿だな、巴。そんな簡単に、解放してやるものか。巴は一生、俺のものだ」
見せつけるように、くるぶしをねっとりと舐めてから、幸直は足首から手を離す。
巴の頬を、幸直が両手で包み、顔を寄せる。
口を開けと、巴の顎を強く掴んで。
巴は、口を開け。幸直の舌を、口腔奥深くまで、迎え入れた。
舌と舌を絡め、上顎や歯列も舌で撫でる、熱烈なくちづけをしながら。幸直は激しく腰を入れてくる。
パンパンと肌と肌がぶつかる音をさせながら。巴を熱烈に刺し貫いた。
遠慮容赦のない幸直の動きに、巴は彼の首にしがみついて耐え…幸直の表情を見るどころではなく。
甘さと苦さが混ざり合う、長い時間。泣かされた。
★★★★★
激しい情交のあと、脱力して寝台に身を沈める巴の髪を、幸直が撫でる。
汗に濡れた髪は、気持ち悪くないだろうかと思うのだが。長く、指先でいじっている。
横向きになって、今は翼を畳んでいるが。乱暴に抱かれ、寝台に黒い羽がいくつか散ってしまった。
「なぁ、前に、俺の為に髪を伸ばせと言ったじゃないか? 巴は強くなったんだから。髪を伸ばしてくれるよな?」
巴の頬を優しく撫でながら、幸直が言った。
「あぁ、髪を伸ばすよ」
「巴の黒髪は、とても美しいんだから。伸ばしたら、すごく綺麗になるぞ?」
絵を描くとき、邪魔にならないかな?
でも長くしたら、髪を後ろで結べばいいか。なんて考えていたら。
沈黙を嫌がったようで、幸直がさらに続けた。
「俺の部屋に、いつもいて。身の回りのこと、巴が全部やってくれよ。着替えとか、髪を編むとか。風呂も一緒に入って、体を洗って」
「僕が、幸直の部屋に入り浸ったら、変に思われるんじゃないか?」
「夜は、帰っていることにすればいい。帰さねぇけど」
幸直は、巴を抱え込んで頬ずりする。
巴は首を傾げた。
どうした? そんなに甘えて。
そんなに奥さんを寝取られたことが、傷ついたのか?
本当は、奥さんを愛していた?
今まで己なんかに、それほど執着していなかったのに。
なにかを手にしていないと、不安なのかな?
「青桐邸に行っても、離さねぇから。二月の休暇は返上する。意味ねぇし」
瀬間もだが、幸直にとって休暇というのは。子孫を残すための期間だ。
ぶっちゃけて言うと、子作りに励む。
血脈を絶やさぬため、強い遺伝子を残すための、当主の義務である。
しかし、投げやりに、意味ねぇと言うのは。やはり、遺恨があるのだろう。
単純に、妊娠中の奥さんと、子作りする意味はないということかもしれないが。
家族がいるのだから、家に帰る意味がないというわけでもない。
しかし、父親に妻を寝取られたというのなら。そのような家に帰りたくないと思っても、仕方がないことのように思う。
なぜ、幸直を大事にしてくれないのか?
彼は非の打ちどころのない人間だ。今は怒りで、苦しんでいるのだろうが。いつだって笑顔で、ほがらかで。誰からも愛されるべき、人物なのに。
「そばにいる。ひとりにしない」
己など、そばにいても、害になるだけだろうが。
幸直が求めるのならば、そばにいるよ。そんな気持ちで告げた。
「あぁ…やっとわかってくれたか? 巴」
己を抱き締める幸直は。
どこか、溺れた者のような必死さを、その手の強さに感じた。
紫輝と堺に、正体をバラされてしまった。
茶室を出て、巴は何事もなかったかのように、廊下を自室に向かって歩いている。
幸い、みんな、己が基成だということは黙っていてくれるようで。このまま将堂の兵士として、全うできそうだ。
旗色が悪くなったからといって、将堂軍を抜けることはできない。逃げれば脱走兵として追討されてしまう。
手裏からも、将堂からも、追手をかけられたら。この地で、生きていける場などない。
だから巴は、三十過ぎまで、将堂で兵士として生きるしかないのだ。
その後は、今までの稼ぎで、絵を描いて暮らしていけるだろう…戦死しなければ。
紫輝は、今の基成が旦那で、基成は安曇で、安曇が紫輝の弟…なんて言っていたが。
考えても、どういう状況か全くわからない。
いや、これは考えちゃダメなやつだ。これ以上の考察は、やめておこう。なにも知らない方がいいから。
だって、知ることで、命を脅かされることもある。
紫輝は、終戦への道を邪魔されたくないとのことだったが。
紫輝の旦那は、現、手裏基成。己が邪魔だと判断されたら、即始末されてしまう。
現、基成の正体を知ることで、それが早まることもあるかもしれないではないか。
触らぬ神に祟りなし、である。
巴は、己の命が脅かされなければ、それでいいのだ。
手裏に戻る気など、さらさらないし。己を知る者のいない手裏に戻ったところで、なんになる?
そういう己の心の内を、示したい気もあるが。
紫輝は黙っていてくれるというのだから。余計なことはしないで、彼を信じていよう。
無害で、じっとしているつもりだ。
だから、己はここにいる。
ひっそりと。なにも関わらず。静かに。
紫輝が終戦してくれるか。己が三十になり、加齢による戦闘不能状態と認められるのを、待つことにしよう。
しかし、幸直との仲は、これで終わりだ。
引き戸を開けて、自室に入ると。幸直も続いて入ってきた。
「巴、待てよ。なぁ、大丈夫だよ。みんな、巴のこと誰にも言わないって。俺が守るし。今までどおりやれる」
「今までどおりなんか、無理だよ」
いつもの爽やかな笑顔で、幸直は言うが。
巴は、表情のない目の色で、幸直をみつめる。
「美濃家の当主が、何十年と戦ってきた手裏の血族相手に、友達ごっこなどしていられるわけがない。もう、わかっただろう? 僕のことなど忘れて、離れた方がいい」
幸直のことを、突き放さないとならない。それだけが、巴は苦痛だった。
けれど。美濃の当主が、基成と関わって、良いことなどなにもないのだ。
「そんな…昨日、言ってくれたじゃないか。僕がそばにいるって。俺をひとりにしないって」
「美濃と手裏基成は、相容れない。将堂の名家が、幸直の後ろにいる一族が、僕を許しはしないだろう」
今にも泣きそうに、眉尻を下げて訴えていた幸直が。うつむいた。
前髪で陰になっていて、幸直の表情が見えなかったが。
ゆらりとあげた、その顔は。険しく歪み。きつく巴を睨んだ。
「巴まで、俺を美濃と言うのかっ!」
髪の間から、ギラリとした双眸をのぞかせ、奥歯を噛み締め、頬を引きつらせている。
こんなに怒りをあらわにした幸直を、見たことがない。
幸直は、美濃の権威が、誰よりも嫌いだ。
そんなこと、わかっている。
大きな家を背負って、それでも明るさを失わずに笑みを浮かべて、苦しい思いを耐えてきた。
そんな彼を、ずっとみつめてきたのだから。
「巴を、許さねぇ? あぁ、許さないね。この俺が。美濃家当主の、この俺がっ。今、おまえを成敗してやる」
幸直は巴を、その場に押し倒した。両手に指を絡め、床に押しつけて縫い留める。
それでも。
怒っていても、腹の上に乗らず、体をまたいでいるところが、彼の優しさだ。
「紫輝も堺も青桐様も、巴が基成だと言わないと約束した。だが、俺が上に突き出してやるから。俺のものにならないというのなら、金蓮様に突き出してやるっ」
激昂する幸直を落ち着かせようと、巴は冷静な声を出す。
己はそんなに、幸直が心を痛めるほどの人物ではないよ? 絵を描くしか能のない、ハグレだ。
「幸直、僕は、本物の基成ではあるが。腐っているのだ。僕を金蓮様に突き出し、命を奪ったところで。手裏の痛手にはならない」
「おまえの価値は、俺が決める。俺が、手裏基成を、今、この手におさめているのだ。おまえの心も体も、俺のもの。昨夜、言っただろう? なにが起きようと、おまえを離さねぇって。たかが、これくらいのことで。おまえを手放すものかっ。ようやく手に入れた、おまえを…」
ようやく? それは、どういう意味だろう。
己はずっと、友として、幸直のそばにいたというのに。
己はずっと、十七のとき出会った日から、幸直のものだったというのに。
「俺のものになると言え、巴。俺に、絶対服従を誓うんだ。そうしたら、命を永らえさせてやる」
幸直の奴隷となれば、お咎めなしということか?
なにそれ。
なんの罰にもなっていないんだが。
だって、己は。幸直をそばで見られるだけで、幸せなのだから。
彼の笑顔のために、身を差し出すことなど。なんの苦もない。
「服従します、幸直さま」
奴隷らしく、へりくだってみたが。
幸直はお気に召さなかったらしい。きつく顎を掴まれた。
「幸直だ。今までどおり呼べよ。他の者にバレるだろうがっ」
「…わかった。今までどおりだな? 幸直」
怒りに満ちていた目の色が。情欲の色に変化する。
見下ろす、その目が。巴の顔や体を、視線で舐めていく。
昨夜見た、オスの顔つきだ。
「俺のそばから離れないと、誓え。俺が要求したら、身を捧げろ。俺だけを愛すると誓えっ」
「幸直のそばから離れないと、誓う。いつでも、要求に従う。幸直だけを、愛している」
復唱するように言うと。
幸直は…涙をこぼした。
なぜだ? ちゃんと誓ったのに。
★★★★★
服を脱いで、寝台に上がれと幸直に言われ。巴は軍服を脱いだ。
昨夜は、幸直に抱かれて、少ししか眠れなかったから、今日は全休で。仮眠をとっていたのだが。
昼間は、なにが起きるかわからないので。慣例通り、軍服着用で寝ていたのだ。
苦しいが。結局、突発的に、准将の前に出るようななにかは起きたわけだから。軍服着用は、正解だったのだろう。
今は、脱いでいるけれど。
朝食をとり、仮眠の前に湯に入ることができた。なので、昨日のぐちゃぐちゃのドロドロは洗い流して、身綺麗ではある。
でも、昨夜は初めての情交であったし。ちょっと体がつらいな、とは思うのだが。
この状況では、意見など聞いてもらえそうもない。
絶対服従の、奴隷だからな。
幸直は自分も軍服を脱ぐと、その美しい肉体を惜しげなくさらし、巴を組み敷く。
黒い翼を慌てて広げると、羽がひとつ抜け落ちた。
「黒々とした羽。言われてみれば、確かに手裏の羽だな。我が血脈が、何代にもわたって戦ってきた、手裏家の血族が。今、俺に組み敷かれている。生かすも殺すも、俺次第。これほど血がたぎることなどない」
あぁ、そうか。
己に流れるこの血こそが、幸直にとっての悪なのだ。
優しい幸直は、己を殺せないとは思うが。
憎々しいとは、思っているかも。
友達の関係は、やはり失ってしまった。
これからは、支配する者、隷属する者だ。
「怖いのか? あきらめているのか? これほどに貶められているというのに、巴は表情が変わらないな。いつも、ひょうひょうとして。風のように自由で。目を離したらいなくなりそう」
巴の顔の輪郭を、指でなぞり。幸直はくちづけた。
己を寝台にはりつけ、つなぎ止めるような、そんなキスだった。
「でも、もう俺のものだから。俺の前から消えるのは許さないよ」
「消えたりしない。幸直のそばにいる」
幸直は性急に求め、巴の体を貪る。
首筋や鎖骨に、念入りに舌を這わせ。御馳走を味わうかのように、乳首を口に含む。ちゅくちゅくと吸われたり、甘噛みされたりすれば。巴も、いやらしいあえぎが漏れてしまう。
昨夜だけで、乳首を執拗にいじられて、そこで快感を得られるようになってしまった。
「ん、あ…幸直…あん、あ」
「拒むのは、許さないぞ。ここだけでイけるように開発してやる。そうしたら。巴はもう、俺に抱かれるしかない。俺だけに感じる体にしてやるからっ」
大きな手のひらが、体のあちこちを撫でさする。己の中で、彼が触れていない場所は、もうない。
幸直の頭が、ゆっくりと下に降りていき、腹や脇腹や、腰まで、ついばむキスをする。
そして足を開かされて。屹立は素通りして、蕾に舌を這わせた。
「んぁ、幸直、そんなところ…」
一応、ご主人様が。後孔を舌でほぐして奉仕するようなこと、させられないと思ったのだ。
幸直の手をわずらわせず、自分でやりますけど、と。
でも、ギラリと睨まれてしまう。
「拒むのは許さないと言った」
拒んでいるのではないのだが。
巴は怒られてしまい。目を丸くした。そして、口をつぐむ。
幸直は、巴の足を押し上げて臀部を開くと。外気にさらされた蕾を舌でつついた。
堅い蕾の花びらを、一枚一枚、無理に開かせるように、巴の後孔をほぐしていく。
刺激に敏感な場所を、ヌメヌメした舌に広げられ、こすられて。巴は息を荒げる。
昨夜、そこに。幸直の剛直が挿入された。
何度も何度も、荒れ狂う熱で蕩かせられ。悦楽を教え込まれた。
幸直の舌先は、入り口だけを行き来するが。その場所に舌が突き入れられると、彼の剛直の存在感を思い出して。ジンと痺れる。
「ぁ、あ、あぁ…ふ、あ」
ぐちゅんぐちゅんと音をたてて、舌が粘膜をえぐる。
淫蕩な疼きが、そこ一点に集中し。巴は屹立の先から、先走りをほとばしらせた。ピュクと透明な蜜があふれ、腹を濡らす。
幸直は舌先を深く差し入れ、中でぐにぐにとうごめかせた。
「や、ぁ…幸直ぉ、んっ」
拒むな、と言われているから、駄目とか嫌とか、言えなくて。名前を呼ぶしかない。
すごく、はしたない嬌声ばかりが、口から漏れてしまう。
「ふ、気持ち良いか? エロいのはそそるから。気持ち良いとか、もっととか、イくは、ちゃんと報告してもらおうかな。イくと言う前に達したら、お仕置きだ」
急に伸び上がってきて、幸直は耳元で甘く囁く。耳たぶを噛んで、穴に舌を差し入れて。巴がゾクリと身をすくめたとき。
幸直が後ろに挿入してきた。
「あ…ん、は、ぁ、あ…っ」
剛直が、蕾を押し広げ、内壁をじっくりとこすり上げながら、奥まで来る。
昨夜の熱は、記憶に新しいから。あの官能を求めて、物欲しげに彼を締めつけてしまう。
だが、幸直は狭い筒を分け入り、奥まで挿入したあと、全く動かなかった。
巴の手を握り込み、寝台に押しつけ、上から巴の顔をのぞき込む。
べっこう飴のような、キラキラの瞳に、吸い込まれそう。
「あぁ、いいぜ。巴の中は、最高に気持ち良い。ずっとこのまま、俺を入れたままにしてやろうか?」
このまま、動かないのか?
このウズウズした感覚をそのままに。腰に渦巻く、もやもやが、身を焦がすのに?
もどかしくて、たまらないのに?
でも、荒っぽくされるのも、怖い。
「うご…いて?」
「巴は、俺に命令できないだろ? いけない子は、串刺しにしてやる」
幸直は巴の足首を持って、体をくの字に折りたたむと、上から剛直を捻じ込んだ。
昨晩以上に深く入れられ、巴は怖くなった。
幸直がどこまで、己の体を侵食するのか。
腰を揺らして、中をえぐられ。初めての体感に、さすがの巴も涙ぐむ。
「ご、ごめんなさい、幸直…言わない。も、言わないからぁ」
乱暴にされ、巴は謝るが。
それは逆に、幸直の加虐心を煽るかのようだった。
「絶頂のときに、殺してやろうか?」
喜々とした顔で聞かれ、巴は首を横に振る。
怖い。
そんなこと、幸直はしないと思っても。
手裏憎しの美濃の血が、本当に己を殺すかもしれない。
「くく、本気にしたか? 馬鹿だな、巴。そんな簡単に、解放してやるものか。巴は一生、俺のものだ」
見せつけるように、くるぶしをねっとりと舐めてから、幸直は足首から手を離す。
巴の頬を、幸直が両手で包み、顔を寄せる。
口を開けと、巴の顎を強く掴んで。
巴は、口を開け。幸直の舌を、口腔奥深くまで、迎え入れた。
舌と舌を絡め、上顎や歯列も舌で撫でる、熱烈なくちづけをしながら。幸直は激しく腰を入れてくる。
パンパンと肌と肌がぶつかる音をさせながら。巴を熱烈に刺し貫いた。
遠慮容赦のない幸直の動きに、巴は彼の首にしがみついて耐え…幸直の表情を見るどころではなく。
甘さと苦さが混ざり合う、長い時間。泣かされた。
★★★★★
激しい情交のあと、脱力して寝台に身を沈める巴の髪を、幸直が撫でる。
汗に濡れた髪は、気持ち悪くないだろうかと思うのだが。長く、指先でいじっている。
横向きになって、今は翼を畳んでいるが。乱暴に抱かれ、寝台に黒い羽がいくつか散ってしまった。
「なぁ、前に、俺の為に髪を伸ばせと言ったじゃないか? 巴は強くなったんだから。髪を伸ばしてくれるよな?」
巴の頬を優しく撫でながら、幸直が言った。
「あぁ、髪を伸ばすよ」
「巴の黒髪は、とても美しいんだから。伸ばしたら、すごく綺麗になるぞ?」
絵を描くとき、邪魔にならないかな?
でも長くしたら、髪を後ろで結べばいいか。なんて考えていたら。
沈黙を嫌がったようで、幸直がさらに続けた。
「俺の部屋に、いつもいて。身の回りのこと、巴が全部やってくれよ。着替えとか、髪を編むとか。風呂も一緒に入って、体を洗って」
「僕が、幸直の部屋に入り浸ったら、変に思われるんじゃないか?」
「夜は、帰っていることにすればいい。帰さねぇけど」
幸直は、巴を抱え込んで頬ずりする。
巴は首を傾げた。
どうした? そんなに甘えて。
そんなに奥さんを寝取られたことが、傷ついたのか?
本当は、奥さんを愛していた?
今まで己なんかに、それほど執着していなかったのに。
なにかを手にしていないと、不安なのかな?
「青桐邸に行っても、離さねぇから。二月の休暇は返上する。意味ねぇし」
瀬間もだが、幸直にとって休暇というのは。子孫を残すための期間だ。
ぶっちゃけて言うと、子作りに励む。
血脈を絶やさぬため、強い遺伝子を残すための、当主の義務である。
しかし、投げやりに、意味ねぇと言うのは。やはり、遺恨があるのだろう。
単純に、妊娠中の奥さんと、子作りする意味はないということかもしれないが。
家族がいるのだから、家に帰る意味がないというわけでもない。
しかし、父親に妻を寝取られたというのなら。そのような家に帰りたくないと思っても、仕方がないことのように思う。
なぜ、幸直を大事にしてくれないのか?
彼は非の打ちどころのない人間だ。今は怒りで、苦しんでいるのだろうが。いつだって笑顔で、ほがらかで。誰からも愛されるべき、人物なのに。
「そばにいる。ひとりにしない」
己など、そばにいても、害になるだけだろうが。
幸直が求めるのならば、そばにいるよ。そんな気持ちで告げた。
「あぁ…やっとわかってくれたか? 巴」
己を抱き締める幸直は。
どこか、溺れた者のような必死さを、その手の強さに感じた。
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