【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶

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番外 モブを見守る、アイリス・フローレンスの歓喜 ①

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     ◆モブを見守る、アイリス・フローレンスの歓喜

 わたしが五歳のとき。義理の姉に石をぶつけられて。わたしの中に前世の記憶がよみがえった。
 オタク、OL、アイキン、この世界にはない言葉が、脳内にあふれ返り。

 わたしは意識を失った。

 わたしに石をぶつけた義理の姉は、助けを呼ぶでもなく、その場から離れたようで。わたしは庭の隅で、およそ五分後に目を覚ましたのだった。

 わたし、アイリス・フローレンスは子爵令嬢。母は二年前に亡くなった。しかし父はすぐ後妻を迎える。意地悪な姉と、寡黙な弟付き。最悪である。

 だけど、前世の記憶がよみがえり。ここがアイキンの世界で、わたしはその主人公なのだと、すぐに気づいた。
 アイリスという名前、不遇の子爵令嬢、オレンジの髪、桃色の目。間違いないっしょ。

 アイキンの中では、わたしは主人公。
 物語をハッピーエンドにも、バッドエンドにも、導くことができる。
 アイキンの物語が動く、わたしが十六歳になるまで。生きていられたらの話だけど。

 主人公の人生が、こんなハードモードなんて、聞いてないんですけどぉ?

 アイキンの中のアイリスは、明るく、めげない、賢い、女の子。
 その性格が、この過酷な生活を生き抜くことでつちかわれたのだとしたら。これ、耐えなきゃならない?
 はぁ。面倒。

 前世のわたしは、ゴリゴリのオタクで腐女子。OLで稼いだ給料を、生活費以外はオタ活につぎ込んだ。
 特に薄い本が大好きです。
 神絵師の同人誌は、もれなく買い。エッチ系も大好き。コミックも小説もね。
 現在五歳のわたしが言うと、エグイけど。
 良いのよ。当時は成人していたんだから。欲望のおもむくままに、なんでも買うわ。

 それで、とにかくアイキンが大好きだったの。
 全キャラを攻略したし。隠れキャラも。レアキャラも。ほじくり返したわぁ。

 そんな中でも、アイキンを何十周もやったにもかかわらず、一回しかお目にかかれなかった、クロウフィーバールートが最高だったの。

 アイキンは、主人公のアイリスが攻略対象と恋をする、恋愛シミュレーションゲームなのだけど。
 スタッフや絵師が、少し腐っていたのね。そこはかとなく腐の匂いがしたのよ。
 実際にそういう匂いをほのめかしていたのよ。だから腐女子が群がって、邪推して、すぐに成敗されるクソゲーだったのに、流行ったわけ。

 だからカップリングがいっぱいで、薄い本もバンバン出たわ。
 騎士×騎士や。執事×王。料理人総攻めとか。

 だけど。一番みんなが萌えて、本の量が多かったのは。イアン×クロウだった。王×モブ。

 クロウは顔の出ないモブだった。でも、こんなに人気が出たのは、伝説のクロウフィーバーがあったから。
 クロウフィーバーのときだけ、アイリスは、王が立ち直っていく様子を陰から見守る立場になる。
 王を健気けなげに支えるのが、クロウの役目。

 そしてそのときだけ、クロウの顔が綺麗に描かれているのだ。

 今までモブで、顔のなかった、主人公の邪魔ばかりしていたウザいクロウの。さなぎが蝶にメタモルフォーゼしたかのような、美麗ビジュアルのスチルが出てきて。
 もう、わたしの心にズキューンよ! そりゃ、王様もメロメロになるっつーの。

 それを見たゲーマーが、薄い本を作り。
 ゲームを攻略できない者も、噂と想像で薄い本を作る。
 そしてわたしは、それを買うっ。そんな感じ。

 つまり、前世のわたしは、イアン×クロウ信者だったわけ。
 わたし、あの伝説で、幻のクロウフィーバーがもう一度見たくて。アイキン62回目の周回中だったのよ。
 たぶん、次は、クロウフィーバーだったのよ。絶対、そうだったのよ。

 でも、会社帰りに。流れ星に当たって死んじゃった。あぁ、無念だわぁ。

「一六〇万分の一の確率で流れ星に当たった、素敵な貴方へ。贈り物です。どのキャラクターを選びますか?」
 キャラクター? アイキンの中だったら、アイリスかしら?
 クロウになって、王と恋愛したいわけじゃない。
 わたしは、クロウとイアンが素敵な恋愛を繰り広げる場面を、見たいのよ。壁よ。本当は、彼らが愛し合っている尊い場面を凝視できる壁になりたいのよ。
 腐女子って、そういうものでしょ?

 まぁ、そんなこんなで、今はアイリス、五歳。転生ものもいっぱい読んだから、おかげでそんなにパニクらなかったわ。
 今の親が最悪だから、前の両親が恋しいけれど。
 泣きわめいて元に戻してと駄々をこねるほど子供ではない。それに死んでしまったものは仕方がないものね。

 たぶん、ゲームが開始する十六歳になる頃、わたしは行儀見習いという態で子爵家を追い出されるのだろうけど。
 前世では外に働きに出ていたわけだし、全然オッケー。
 後妻と義理の姉弟に、睨まれている家にいるよりは。早く外に出たいです。

 というわけで、姉の攻撃を回避しつつ、指折り数えて十六歳になるのを待った。姉に殺されないようにだけ、気を付けながら、ね?
 あぁ、ゲームがスタートしたら、どのルートにしようかしら? 無難に、イアンルートかなぁ? あぁ、でも。彼も捨てがたいわね。

 そして、待ちに待った、ゲーム開始のときが来た。

 少々、命の危機を感じるようになってきた、姉の攻撃から逃れ。今は王城へ向かう船の中。生存競争に勝ち抜いて、ルンルンである。
 だって、このあとは。たぶんどのルートでも、わたしは生きてハッピーエンドを迎えられるのだもの。

 アイキンの知識がなかったら、家族の冷たい視線を受け、シャレにならない虐待をされて、途中で心が折れていたかもしれない。
 父は、子供のことは出世の駒くらいにしか考えていなくて、全然頼りにならず。あまつさえ、高位貴族に高い値段で嫁がせよう、などと画策していた。
 だからわたし、物語の主人公張れるくらいの超絶美人だったけど、地味で陰気なブサイクを装ったの。
 暗めのファンデーション塗って。そばかすをアイブローで書いて。顔を半分覆うでっかい眼鏡をかけて。部屋の隅で本を読んでる、みたいな。
 アイキンの最初の方で、アイリスは三つ編みのメガネっ子だったから、それを派手に応用してみた。これも、前世の知識のなせる業よ。
 おかげで父の愚策は回避できたわ。

 いつか王城に行けるってわかっていたから、つらい幼少期を乗り越えられたのっ。
 本当に、ここがアイキンの世界で良かった。
 何回もやり込んだゲームだもの。この先も自信満々よ。

 行儀見習いという名の下働きに出されたけれど、なんでもやりますっ。
 子爵家に戻らないで済むのなら、一生、王城で働かせてください。という気分だった。
 そしてあわよくば、目当ての殿方とラブができれば、最高です。

 本土の港から孤島の港まで、およそ十五キロほどの距離があって。船に乗った直後は、お城が薄っすら見えるかなというくらい。
 その城のシルエットが、徐々にくっきりと見えてくると、テンションが上がってくる。
 ゲームの背景が、どれぐらい再現されているのかしら? 楽しみだわ。

 そうしてウキウキしていたら、なにか、声が聞こえた。
 この世界は機械が発達していないので、船は帆船だ。大きな柱が三本立ち、そこに張った帆に風を受けて進む。
 わたしは船の後方にいて、帆布はんぷの陰になって見えていなかったのだけど。

 まさか? まさか、まさか?

 船首にいる人物をみつけて、わたしは胸を高鳴らせた。文字通り、ドキィィッとね?
 こちらに背を向けているのは、アイキンの完全なる悪役、バミネ。
 通称、豚。まんまだけど。口悪すぎだけど。ま、心の中で思っているだけよ。
 今のわたしは淑女ですからね。豚のことはどうでもいいのよっ。

 で、バミネが話しかけている人物が、まさか、まさかの、クロウ様ではないの?

 邪魔なバミネがいなくなって、船首にたたずむクロウ様をじっくりみつめた。
 黒のコートというか、マントが、潮風に揺れて。まだお顔が見えないけれど。もう立ち姿がお美しい。
 細身で、凛としていて。艶やかな黒髪が。
 そして、襟の陰にいる猫に話しかけているところとか。

 尊い。クロウ様、素敵。

「…成敗されたくないだろ?」
 クロウ様が、アイキンでお馴染みの台詞を言っていたから、つい反応してしまった。
「成敗?」
 すると、わたしの声に、彼が振り向いた。

 長めの前髪が、潮風に揺れる、その情景がスローモーションのように、わたしの目には映った。
 輪郭に光が当たって、白いかんばせがまぶしいわ。
 切れ長の目は、どことなくアンニュイで。鼻と口は控えめな大きさ、それゆえに清楚で上品で気高い感じ。

 あぁ、その小さな口で、陛下にあれこれ出来るのですか? あっ、失礼。R18が脳裏をよぎってしまったわ。

 っていうか、ギャーッ、もう…好き。
 目の前に、まんま、クロウフィーバーのクロウがいるんですけどぉ?

「うわぁ、本物、激ヤバ」
 やだ。来るの? これ、フィーバー来るんじゃね?
 だったら、すかさずルート変更よ。イアンルートはなしよ。

「あ、突然声をかけてしまって、ごめんなさい。私、アイリス・フローレンスと申します」
 いきなり話しかけられ、びっくりしているみたいなクロウ様に、自己紹介した。
 わたしは知っているけど、クロウ様はわたしのことを知らないものね?
 そうしたら、彼、ほんのり笑ったの。

「初めまして、僕はクロウ・エイデン。どうぞよろしくお願いします」
 やだぁ、笑うと、背景に小さな小花がポツポツ飛び散る幻が見えるわぁ。
 ぽわぽわしてて、超絶可愛いんですけどぉ?
 ヤバヤバヤバ…。CGじゃないのよ。リアルなのよぉ。

「はあぁぁぁ、よろしくお願いします、クロウ様」
 つか、わたし、今、推しのクロウ様と話しているんですか?
 あぁ、無理無理。心臓が爆発しそう。

「あの、フローレンス嬢。僕は平民の仕立て屋です。どうかクロウとお呼びください」
 いえいえ、ただの仕立て屋ではない、気品がにじみ出ていますよ。
 それに、わたし。裏設定、知ってますからぁ?

「とんでもない。呼び捨てになんかできません。それに、クロウ様こそ、フローレンス嬢だなんて、硬い言い回しだわ? 私のことはアイリスと呼んでください」
 呼び捨て、無理無理。クロウ様はクロウ様だもの。
 それにしても、唇が桜色だし、黒い瞳がピカピカで…。
「あぁ、本当に、お可愛らしいわぁ…」

 また、心の声が漏れてしまった。
 でも、仕方がない。リアルクロウが、こんなに素敵だとは思わなかったもの。
 前の人生で一回しかお目にかかれなかった、クロウ様。没頭してチョッパヤでゲームをクリアしてしまって。
 でも、もっとじっくりクロウ様を拝んで、スクショも取りまくればよかったって。あとで後悔したのよねぇ?

 なのに、今、目の前で、動いて、しゃべっているのよ?
 あぁ、スマホ。スマホが欲しい。切実よ。

「猫のことですね? この子はチョンです。よろしければ、この子のこともよろしくお願いします」
 可愛いの言葉を、自分のこととは思わないのね? 謙虚だわぁ。性格まで、お可愛らしい。

 つか、その猫って。え? チョン様?
 それって、呪いにかかった不遇の公爵子息である、シオン様ではありませんか?
 呪いが解けると、セクシーワイルド。黒い子猫が、黒豹の擬人化? なんて言われてたやつぅ。
 アイキンの隠しキャラで、人気ナンバーワン。

 シオン×クロウの、禁断愛の薄い本もガン見したものよ。兄弟でのお戯れが高じて、ベッドの中でもお戯れを…ああぁぁ、またイケナイ妄想が脳裏をよぎってしまったわぁ。

 そのシオン様を、肩に乗っけているとか…グレイト! マーベラス!! 最高です、クロウ様。
「はい。よろしくお願いしますね、チョン様?」
 わたしは、心がぶるぶる震えて、動揺という言葉ではおさまらないくらい、アワアワしていたが。
 それを顔には出さずに、にっこりと、とびっきりの笑みを浮かべたのだった。

 いやぁ、マジで。近々心臓爆発するよ。
 まだ島についていないっていうのに、展開が濃すぎです。

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