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60 プリンパーティー(クロウside)
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◆プリンパーティー(クロウside)
前略、前世の姉であった、巴と静へ。
ぼくをさんざん、モブ顔だと、けなしてくれたけれど。そのモブ顔のおかげで、こってりに飽きた陛下が、あっさりモブのぼくを見初めてくださいました。
今ぼくは、陛下に肩を抱かれながら、ロマンティックに海を眺めています。うらやましいだろう?
九郎でBLはないわぁ、なんて言い腐ってらっしゃいましたが、ここは乙女ゲームの裏ルートなので、オッケーなのです。ふーんだっ。
どのロベルトか知らないが、あのロベルト様に似ていると言っていた、イアン様が相手だぞ?
ギャーギャーとヤバいテンション上げてた、イケボもそのままだぞ?
耳元で囁かれると、比喩でなく腰が抜けるぞ? 良いだろう、へっへ。
なんて、思っている場合ではありません。
陛下と寄り添って、海をみつめる、このシチュエーションが。もう、マジで恐れ多くて、キュン死寸前なんです。
一度は腹をくくった、ぼくですが。
恋を昨日、自覚したばかりで。初恋だ、キャーなんて。先ほどまで思っていた、ぼくなのです。
前世と合わせて四十年以上、こんな甘い雰囲気を一度も嗅いだことがなく。
ど、ど、動揺が激しくて。どこを見たらよいのやら。
目線が、波の動きに引き寄せられて、グルグル回って。地べたにいるのに、車酔いしそうです。
贅沢な悩みなのは、重々承知の上です。姉たちよ、すみません。
「クロウ、我は名ばかりの王だ。おまえが目を輝かせて語る、歴代の英雄王たちと比べたら、なにも成していない我は、さぞや見劣りするだろう。それでも、そばにいてくれるか?」
いつもキリリとして、厳しい眼差しをしている陛下が、どこか頼りなさそうにつぶやく。
そんな陛下に、ぼくは胸がギューンと引き絞られた。
なんで、そんなに弱気に? アイキンの俺様王様に戻ってくださいませっ。
「なにも成していないなどと、とんでもない。イアン様はたったおひとりで、バミネの脅威から国民を守っているではありませんか? この孤島で、陛下が人知れず戦っていることを、民が知ったら。必ず陛下を、尊崇の気持ちでみつめることでしょう。イアン様はすでに、大きなことを成し得ています。カザレニア国民のことを、第一に考えてくださる、立派な王様です」
そうだ、どの歴代の英雄王よりも、陛下は素晴らしいのだっ。
なにも、卑下するようなことはない。
「それに、僕は王様だから、イアン様をお慕いしているのではありません。僕も、僕の弟も、気遣ってくださるその優しさに、魅かれたのです」
「そうか。おまえに褒められると、くすぐったい気になる。嬉しい、のだろうな。おまえの言葉は心強く、励みになる。これからもどうか、そばで我を支えてくれ」
肩を抱く手で、陛下は、ぼくの二の腕を優しく撫でた。
陛下は体格が大きく、手も長いし、腕も太いし、なんだかすっぽりと陛下の腕に包まれてしまって。
それを意識すると。頭がのぼせそうになる。
でも、胸板が厚いから、寄っかかると、頼もしくて。
自分にないものに、憧れる性質ゆえに、カッコイイ、好きぃって。なりまする。
「海風で、体が冷えてしまうな。そろそろ城に戻ろう。温かい紅茶でも、飲みたい気分だ…ふたりで」
陛下は後半の方は囁くように言って、海を照らすの光が目に入ったのか、目をやんわり細める。
うーん、尾てい骨に響く美ボイスと、気高き微笑のビビビコンボで、気絶しそうです。
「冷えましたか? また、マントの中に入りますか?」
でも陛下に、寒い思いをさせられませんっ。
ぼくのマントの性能は、ご存知でしょう? とばかりに、前を開こうとしたら。
陛下は、眉を吊り上げて怒った。
「そうではない。ふたりで紅茶を飲もうと誘ったのだっ」
ひえぇ、甘々モードを読み切れず、申し訳ありませんでした。恋愛ビギナーなのでお許しを。
ペコペコと頭を下げながら、立ち上がって、通路に入ると。
陛下は秘密の扉をぴったりと閉じ。扉の下の方に差し込み口があるのだが、そこに扉止めを入れ込んだ。
どうやら、簡易のロックみたいだ。
「外側の扉に穴があって、そこを押すと、この枷が外れるのだ。海を渡る民が、万一にも閉め出されないように、配慮してある」
「昔の王様も、イアン様のように、民を大切にしていたのですね?」
その話を聞いて、ぼくは人知れず、忍者のカラクリ屋敷を思い出していた。
一子相伝の隠し通路や、海賊チックな鎖の手摺り、いろいろな仕掛けとか、似ている要素があるじゃん?
面白かったぁ。
扉が閉まると、海風もピタリと止まり。空気の流れも止まって。密封されたような、静かな空間になった。
ランプを持った陛下が、ぼくの、海風に乱れた髪を直してくれる…お優しい。
頭を撫でるように、そっと、そっと、指先で、髪の一本一本を直していくような、丁寧な仕草に。
背筋がソワソワッとした。
あの、美容院とかで、髪を触られると、ソワソワってする、気持ちのいいやつ。はわわぁっ…。
ぼくも、お返しに。陛下の髪を直しちゃったりして。
陛下の髪は、しっとりしてたっぷりした、重みのある髪だから、そうそう乱れないけど。
ふたりで身なりを整え合って、えへっと、笑い合う。ほのぼの。
通路は、ランプの灯りだけが頼りの、真っ暗な空間だから。陛下は、ぼくの手を引いてくれる。
大きくて、温かい手に包まれていると、すっごい安心感があって。
ぼくは陛下に、なにもかもを委ねても大丈夫だと思うのだった。
そして、秘密の通路を抜けて倉庫を出て。外でシヴァーディと合流した。
そこでぼくは、大事なことを聞きそびれていたなと思い、こっそり陛下にたずねてみる。
「婚礼衣装は、どうしたらよいでしょうか?」
結婚しないと、陛下が決めたのなら。ぼくが手掛ける婚礼衣装もお役御免となってしまうが。
でも別に、キャンセルでも構わない。
っていうか、陛下が誰とも結婚されないなら、ぼくは嬉しい。
お祝辞が駄目になって、喜んではいけないのかもしれないけれど。陛下が気乗りのしないものだったのだから、いいよね?
そう思っていたら。
陛下が『いずれクロウと結婚するから、そのときまで衣装は取っておこう』なんて、爆弾発言をかましてきたっ。
けっ、結婚っ!?
ここ四十年以上、恋人なんかいたこともなかったのに。
告白されて、一時間も経っていないのに。もう結婚話?
わぁっ、展開早くね? 怖い怖い。
いや、嫌じゃないんですけどぉ…。
でも、陛下は。男のぼくに告白する前に、ちゃんと先々のことまで考えて、行動してくれたのだろう。
戯れではないと言っていた、その言葉は本当なのだ。
紳士なのですね、さすがです。
この世界では、同性同士の結婚もアリ、らしい。
そこら辺は、あまり勉強していなかったが。戦争などもちらほらあり、戦災孤児を養子として積極的に引き受けることで、同性の夫婦を容認する。確か、そのような形だったような…。
「王族がした前例はないが、ま、なんとかなるだろう」
陛下は、簡単に言うけれど。
いやいや、なんとかなりませんよっ!
王族ですよ? 強力な火炎魔法が途絶えたらどうするんですかっ!?
絶対、みんなに反対されるに決まってる!!
でも、陛下は楽観的で、表情は穏やかだし。
そばにいるシヴァーディも嗜めたりしなかった。
注意しなくて、い、いいんですか?
そんなことを、あじゃこじゃ考えていたら、いつの間にか王城についていた。
陛下がゆっくり歩いてくれたから、全然つらくなかったよ。
くだりは楽ちんだけど、帰りは登山的なものを覚悟していたから、拍子抜けだ。
それで、それで。
王城に帰ったら、なんと、庭でプリンパーティーが開催されていた。
うわぁ? 芝生の上に、白いレースのテーブルクロスが敷かれた机。
その上に、グラスに乗ったプリンが、いっぱい並べられていて。壮観ですぅ。
茶器も、白い陶磁器のセットで、紅茶が映えます。
机の中央には、タワー状になった入れ物に、焼き菓子がふんだんに盛られていて。ホテルのケーキバイキングみたいっ。すっごーい。
いや、ホテルのケーキバイキング、行ったことないけど。でも、よくテレビでこういうの映されてたの、見たよ?
ぼくは、プリンのグラスを迷いなく手に取り、その黄色いプルプルを、スプーンで叩く。
そうしたら、ぶるるるぅん、ってなるよね?
つるつるつやつやなプリン。この世界では初めて見たかも。美味しそう。ふあぁぁ。
「イアン様、見てくださいっ、プルプルですよっ」
興奮して、陛下を振り返り。スプーンの背でプリンをぺんぺん叩く。
母上が知ったら、はしたないって怒られそうなので、内緒です。
そしたら、陛下は。ぼくのほっぺと同じだなんて、へんてこなことを言う。
「僕のほっぺは、プリンではありません」
食べても美味しくありませんよ、と。苦笑して思っていると。
いいや、これと同じだ、と言って。陛下がまたぼくのほっぺを引っ張った。
いひゃいいひゃい、なにするんれすかぁ?
仮にも、こ、こ、恋人に、この仕打ちはひどいですぅ。
「ずいぶんと、楽しそうですね?」
そこに、薄紫色のドレスをまとった、王妃様と。チョンを抱いたシャーロット様が現れた。
緑の芝生に春の日差し、そして王族の黄金色の髪の毛が、ベストマッチで、キラキラです。
「母上、クロウは、我の大事な人になったのです」
そうしたら、陛下が突然。王妃様にカミングアウトしちゃった。
ええぇぇっ、大丈夫なのですか?
なんか、王城のみんながいるような、こんな開けた場所で、重大発表しちゃって?
しかもお母様に、男と付き合っていますなんて、言っちゃって?
これは前世でも、かなりハードル高い事案だと思いますけどぉ?
それに、今、この場に居合わせているのは、陛下の恋路を邪魔する、悪役キャラトップスリーですぞ?
そのうちのひとりは、ぼくだけどねっ!
王妃様は、主人公の身分が低いことを理由に、陛下の恋路を邪魔する。
でもぼくは、平民かつ男である。
陛下がぼくと仲良しなのを公言したら、絶対に反対しますよね?
「あらあら、素敵ねぇ。わかっていますとも。陛下の笑顔を取り戻すなんて、とても素晴らしいことですもの?」
え? 好感触?
王妃様は絶対に、反対してくると思ったけれど。大丈夫ですか?
あぁ、それとも。ぼくと陛下がお付き合いとか、そういうことを考えもしていないのかもしれない。
だったら、息子に良い親友ができたわ、くらいに思っているのかも。
なるほど。だから、なんだか嬉しそうなのですね?
「それって、クロウ様をお嫁さんにするってこと?」
胸を撫でおろしていたら、殿下がぶっ込んできた。
ひえぇっ、これはもう誤魔化せません。
お兄様大好きっ子、超絶ブラコンのシャーロット様だよ?
修羅場確実ですっ。って、思っていたのだが…。
「やったわ、チョンちゃん。私たちもこれで家族よっ?」
え? 殿下も反対しないの?
そんなにチョンと家族になりたいの?
猫好きなのですね。
つか、お兄様より猫でいいのですか? 殿下。
チョンと家族になれるなら、男の嫁でも構わない勢いで、猫に夢中とか。大丈夫?
ええ? マジですか? アイキンでは、王妃様も殿下も、クロウと同じくらい、ウザい悪役キャラになっているはずなんだけど。
まぁ、攻略本をチラ見しただけで、読み込んでいないから、なんとも言えないけど。
そして、ぼくだが。
陛下の想いを拒絶したら、ぼく自身が陛下の恋路を邪魔する悪役キャラになってしまうな。
ぼくは、この世界でお邪魔ムシにだけはならないと、決めているんだ。
じゃ、陛下の想いを受け入れてもいいよね?
ぼくがこういうふうに思うように、王妃様も殿下も、陛下の邪魔をしない方向へ進んだのだろうな?
きっと、そういうことなんだ。
「兄上ッ、どういうことですかっ? 嫁ってなんですか? なんでこんな話になっているのですかっ!!」
あっ、うるさいのがいた。
ぼくの弟くんが、お邪魔キャラになりかけています。
「てか、クソ陛下ッ。なに、兄上は俺のもの、みたいなドヤ顔してんだ? あぁぁん? 何様だっ!」
だから、王様だよ、チョン。
ツッコめないんだから、そのボケはやめてくれよ。
「はいはい、わかった、わかった。ほら、チョン。プリンやるからな? 美味しいぞ?」
ぼくはプリンを指先ですくって、チョンの口に突っ込んだ。
強制的に、黙らせる兄指導。
だって、耳元でうるさいのだもの。陛下の悪口も言うし。
わかりはしないと思っていても、気が気じゃないんだよね?
見やると、陛下は机に集まり談笑する人たちの方を向いていた。良かった。
それでは、ぼくも失礼して。せっかくのプリンをいただこう。
プルプルをスプーンですくって、黄色い幸せを口に運ぶ。
うーん、この味、久しぶりぃ。
甘くてミルキーで、口の中でとろけるぅ。
もしかして、アイリスがアルフレドに、プリンレシピを伝授したのだろうか? アイリス、グッジョブっ!
「クロウ…」
そうしたら、プリンを堪能しているぼくの方へ、シヴァーディとセドリックが並んでやってきた。
「クロウ、ありがとう」
シヴァーディにお礼を言われたが。なんのことだかわからない。
一応、はぁと、返事はした。
そしてふたりは、陛下の元へ歩いていくが。
去り際、セドリックが親指を立てて、ニカッと笑った。
うーん、なんでしょう?
「ツンツンのシヴァたんがデレたぁ? すごいですわ、クロウ様。さすが、総愛されキャラ、ですわね?」
アイリスは、またもや一言、爆弾発言をかますと。
シャーロットに呼ばれて、ぼくの背後から去って行った。
つか、足音も立てずに、後ろに立たないでください。心臓が止まります。
いやいや、それより。総愛されって、なんですか?
なんでモブのぼくが、そのようなことに?
ぼくの知らないアイキンが、まさか、あるというのですか?
いい加減、詳しく教えてください、アイリスぅ…(泣)。
前略、前世の姉であった、巴と静へ。
ぼくをさんざん、モブ顔だと、けなしてくれたけれど。そのモブ顔のおかげで、こってりに飽きた陛下が、あっさりモブのぼくを見初めてくださいました。
今ぼくは、陛下に肩を抱かれながら、ロマンティックに海を眺めています。うらやましいだろう?
九郎でBLはないわぁ、なんて言い腐ってらっしゃいましたが、ここは乙女ゲームの裏ルートなので、オッケーなのです。ふーんだっ。
どのロベルトか知らないが、あのロベルト様に似ていると言っていた、イアン様が相手だぞ?
ギャーギャーとヤバいテンション上げてた、イケボもそのままだぞ?
耳元で囁かれると、比喩でなく腰が抜けるぞ? 良いだろう、へっへ。
なんて、思っている場合ではありません。
陛下と寄り添って、海をみつめる、このシチュエーションが。もう、マジで恐れ多くて、キュン死寸前なんです。
一度は腹をくくった、ぼくですが。
恋を昨日、自覚したばかりで。初恋だ、キャーなんて。先ほどまで思っていた、ぼくなのです。
前世と合わせて四十年以上、こんな甘い雰囲気を一度も嗅いだことがなく。
ど、ど、動揺が激しくて。どこを見たらよいのやら。
目線が、波の動きに引き寄せられて、グルグル回って。地べたにいるのに、車酔いしそうです。
贅沢な悩みなのは、重々承知の上です。姉たちよ、すみません。
「クロウ、我は名ばかりの王だ。おまえが目を輝かせて語る、歴代の英雄王たちと比べたら、なにも成していない我は、さぞや見劣りするだろう。それでも、そばにいてくれるか?」
いつもキリリとして、厳しい眼差しをしている陛下が、どこか頼りなさそうにつぶやく。
そんな陛下に、ぼくは胸がギューンと引き絞られた。
なんで、そんなに弱気に? アイキンの俺様王様に戻ってくださいませっ。
「なにも成していないなどと、とんでもない。イアン様はたったおひとりで、バミネの脅威から国民を守っているではありませんか? この孤島で、陛下が人知れず戦っていることを、民が知ったら。必ず陛下を、尊崇の気持ちでみつめることでしょう。イアン様はすでに、大きなことを成し得ています。カザレニア国民のことを、第一に考えてくださる、立派な王様です」
そうだ、どの歴代の英雄王よりも、陛下は素晴らしいのだっ。
なにも、卑下するようなことはない。
「それに、僕は王様だから、イアン様をお慕いしているのではありません。僕も、僕の弟も、気遣ってくださるその優しさに、魅かれたのです」
「そうか。おまえに褒められると、くすぐったい気になる。嬉しい、のだろうな。おまえの言葉は心強く、励みになる。これからもどうか、そばで我を支えてくれ」
肩を抱く手で、陛下は、ぼくの二の腕を優しく撫でた。
陛下は体格が大きく、手も長いし、腕も太いし、なんだかすっぽりと陛下の腕に包まれてしまって。
それを意識すると。頭がのぼせそうになる。
でも、胸板が厚いから、寄っかかると、頼もしくて。
自分にないものに、憧れる性質ゆえに、カッコイイ、好きぃって。なりまする。
「海風で、体が冷えてしまうな。そろそろ城に戻ろう。温かい紅茶でも、飲みたい気分だ…ふたりで」
陛下は後半の方は囁くように言って、海を照らすの光が目に入ったのか、目をやんわり細める。
うーん、尾てい骨に響く美ボイスと、気高き微笑のビビビコンボで、気絶しそうです。
「冷えましたか? また、マントの中に入りますか?」
でも陛下に、寒い思いをさせられませんっ。
ぼくのマントの性能は、ご存知でしょう? とばかりに、前を開こうとしたら。
陛下は、眉を吊り上げて怒った。
「そうではない。ふたりで紅茶を飲もうと誘ったのだっ」
ひえぇ、甘々モードを読み切れず、申し訳ありませんでした。恋愛ビギナーなのでお許しを。
ペコペコと頭を下げながら、立ち上がって、通路に入ると。
陛下は秘密の扉をぴったりと閉じ。扉の下の方に差し込み口があるのだが、そこに扉止めを入れ込んだ。
どうやら、簡易のロックみたいだ。
「外側の扉に穴があって、そこを押すと、この枷が外れるのだ。海を渡る民が、万一にも閉め出されないように、配慮してある」
「昔の王様も、イアン様のように、民を大切にしていたのですね?」
その話を聞いて、ぼくは人知れず、忍者のカラクリ屋敷を思い出していた。
一子相伝の隠し通路や、海賊チックな鎖の手摺り、いろいろな仕掛けとか、似ている要素があるじゃん?
面白かったぁ。
扉が閉まると、海風もピタリと止まり。空気の流れも止まって。密封されたような、静かな空間になった。
ランプを持った陛下が、ぼくの、海風に乱れた髪を直してくれる…お優しい。
頭を撫でるように、そっと、そっと、指先で、髪の一本一本を直していくような、丁寧な仕草に。
背筋がソワソワッとした。
あの、美容院とかで、髪を触られると、ソワソワってする、気持ちのいいやつ。はわわぁっ…。
ぼくも、お返しに。陛下の髪を直しちゃったりして。
陛下の髪は、しっとりしてたっぷりした、重みのある髪だから、そうそう乱れないけど。
ふたりで身なりを整え合って、えへっと、笑い合う。ほのぼの。
通路は、ランプの灯りだけが頼りの、真っ暗な空間だから。陛下は、ぼくの手を引いてくれる。
大きくて、温かい手に包まれていると、すっごい安心感があって。
ぼくは陛下に、なにもかもを委ねても大丈夫だと思うのだった。
そして、秘密の通路を抜けて倉庫を出て。外でシヴァーディと合流した。
そこでぼくは、大事なことを聞きそびれていたなと思い、こっそり陛下にたずねてみる。
「婚礼衣装は、どうしたらよいでしょうか?」
結婚しないと、陛下が決めたのなら。ぼくが手掛ける婚礼衣装もお役御免となってしまうが。
でも別に、キャンセルでも構わない。
っていうか、陛下が誰とも結婚されないなら、ぼくは嬉しい。
お祝辞が駄目になって、喜んではいけないのかもしれないけれど。陛下が気乗りのしないものだったのだから、いいよね?
そう思っていたら。
陛下が『いずれクロウと結婚するから、そのときまで衣装は取っておこう』なんて、爆弾発言をかましてきたっ。
けっ、結婚っ!?
ここ四十年以上、恋人なんかいたこともなかったのに。
告白されて、一時間も経っていないのに。もう結婚話?
わぁっ、展開早くね? 怖い怖い。
いや、嫌じゃないんですけどぉ…。
でも、陛下は。男のぼくに告白する前に、ちゃんと先々のことまで考えて、行動してくれたのだろう。
戯れではないと言っていた、その言葉は本当なのだ。
紳士なのですね、さすがです。
この世界では、同性同士の結婚もアリ、らしい。
そこら辺は、あまり勉強していなかったが。戦争などもちらほらあり、戦災孤児を養子として積極的に引き受けることで、同性の夫婦を容認する。確か、そのような形だったような…。
「王族がした前例はないが、ま、なんとかなるだろう」
陛下は、簡単に言うけれど。
いやいや、なんとかなりませんよっ!
王族ですよ? 強力な火炎魔法が途絶えたらどうするんですかっ!?
絶対、みんなに反対されるに決まってる!!
でも、陛下は楽観的で、表情は穏やかだし。
そばにいるシヴァーディも嗜めたりしなかった。
注意しなくて、い、いいんですか?
そんなことを、あじゃこじゃ考えていたら、いつの間にか王城についていた。
陛下がゆっくり歩いてくれたから、全然つらくなかったよ。
くだりは楽ちんだけど、帰りは登山的なものを覚悟していたから、拍子抜けだ。
それで、それで。
王城に帰ったら、なんと、庭でプリンパーティーが開催されていた。
うわぁ? 芝生の上に、白いレースのテーブルクロスが敷かれた机。
その上に、グラスに乗ったプリンが、いっぱい並べられていて。壮観ですぅ。
茶器も、白い陶磁器のセットで、紅茶が映えます。
机の中央には、タワー状になった入れ物に、焼き菓子がふんだんに盛られていて。ホテルのケーキバイキングみたいっ。すっごーい。
いや、ホテルのケーキバイキング、行ったことないけど。でも、よくテレビでこういうの映されてたの、見たよ?
ぼくは、プリンのグラスを迷いなく手に取り、その黄色いプルプルを、スプーンで叩く。
そうしたら、ぶるるるぅん、ってなるよね?
つるつるつやつやなプリン。この世界では初めて見たかも。美味しそう。ふあぁぁ。
「イアン様、見てくださいっ、プルプルですよっ」
興奮して、陛下を振り返り。スプーンの背でプリンをぺんぺん叩く。
母上が知ったら、はしたないって怒られそうなので、内緒です。
そしたら、陛下は。ぼくのほっぺと同じだなんて、へんてこなことを言う。
「僕のほっぺは、プリンではありません」
食べても美味しくありませんよ、と。苦笑して思っていると。
いいや、これと同じだ、と言って。陛下がまたぼくのほっぺを引っ張った。
いひゃいいひゃい、なにするんれすかぁ?
仮にも、こ、こ、恋人に、この仕打ちはひどいですぅ。
「ずいぶんと、楽しそうですね?」
そこに、薄紫色のドレスをまとった、王妃様と。チョンを抱いたシャーロット様が現れた。
緑の芝生に春の日差し、そして王族の黄金色の髪の毛が、ベストマッチで、キラキラです。
「母上、クロウは、我の大事な人になったのです」
そうしたら、陛下が突然。王妃様にカミングアウトしちゃった。
ええぇぇっ、大丈夫なのですか?
なんか、王城のみんながいるような、こんな開けた場所で、重大発表しちゃって?
しかもお母様に、男と付き合っていますなんて、言っちゃって?
これは前世でも、かなりハードル高い事案だと思いますけどぉ?
それに、今、この場に居合わせているのは、陛下の恋路を邪魔する、悪役キャラトップスリーですぞ?
そのうちのひとりは、ぼくだけどねっ!
王妃様は、主人公の身分が低いことを理由に、陛下の恋路を邪魔する。
でもぼくは、平民かつ男である。
陛下がぼくと仲良しなのを公言したら、絶対に反対しますよね?
「あらあら、素敵ねぇ。わかっていますとも。陛下の笑顔を取り戻すなんて、とても素晴らしいことですもの?」
え? 好感触?
王妃様は絶対に、反対してくると思ったけれど。大丈夫ですか?
あぁ、それとも。ぼくと陛下がお付き合いとか、そういうことを考えもしていないのかもしれない。
だったら、息子に良い親友ができたわ、くらいに思っているのかも。
なるほど。だから、なんだか嬉しそうなのですね?
「それって、クロウ様をお嫁さんにするってこと?」
胸を撫でおろしていたら、殿下がぶっ込んできた。
ひえぇっ、これはもう誤魔化せません。
お兄様大好きっ子、超絶ブラコンのシャーロット様だよ?
修羅場確実ですっ。って、思っていたのだが…。
「やったわ、チョンちゃん。私たちもこれで家族よっ?」
え? 殿下も反対しないの?
そんなにチョンと家族になりたいの?
猫好きなのですね。
つか、お兄様より猫でいいのですか? 殿下。
チョンと家族になれるなら、男の嫁でも構わない勢いで、猫に夢中とか。大丈夫?
ええ? マジですか? アイキンでは、王妃様も殿下も、クロウと同じくらい、ウザい悪役キャラになっているはずなんだけど。
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そして、ぼくだが。
陛下の想いを拒絶したら、ぼく自身が陛下の恋路を邪魔する悪役キャラになってしまうな。
ぼくは、この世界でお邪魔ムシにだけはならないと、決めているんだ。
じゃ、陛下の想いを受け入れてもいいよね?
ぼくがこういうふうに思うように、王妃様も殿下も、陛下の邪魔をしない方向へ進んだのだろうな?
きっと、そういうことなんだ。
「兄上ッ、どういうことですかっ? 嫁ってなんですか? なんでこんな話になっているのですかっ!!」
あっ、うるさいのがいた。
ぼくの弟くんが、お邪魔キャラになりかけています。
「てか、クソ陛下ッ。なに、兄上は俺のもの、みたいなドヤ顔してんだ? あぁぁん? 何様だっ!」
だから、王様だよ、チョン。
ツッコめないんだから、そのボケはやめてくれよ。
「はいはい、わかった、わかった。ほら、チョン。プリンやるからな? 美味しいぞ?」
ぼくはプリンを指先ですくって、チョンの口に突っ込んだ。
強制的に、黙らせる兄指導。
だって、耳元でうるさいのだもの。陛下の悪口も言うし。
わかりはしないと思っていても、気が気じゃないんだよね?
見やると、陛下は机に集まり談笑する人たちの方を向いていた。良かった。
それでは、ぼくも失礼して。せっかくのプリンをいただこう。
プルプルをスプーンですくって、黄色い幸せを口に運ぶ。
うーん、この味、久しぶりぃ。
甘くてミルキーで、口の中でとろけるぅ。
もしかして、アイリスがアルフレドに、プリンレシピを伝授したのだろうか? アイリス、グッジョブっ!
「クロウ…」
そうしたら、プリンを堪能しているぼくの方へ、シヴァーディとセドリックが並んでやってきた。
「クロウ、ありがとう」
シヴァーディにお礼を言われたが。なんのことだかわからない。
一応、はぁと、返事はした。
そしてふたりは、陛下の元へ歩いていくが。
去り際、セドリックが親指を立てて、ニカッと笑った。
うーん、なんでしょう?
「ツンツンのシヴァたんがデレたぁ? すごいですわ、クロウ様。さすが、総愛されキャラ、ですわね?」
アイリスは、またもや一言、爆弾発言をかますと。
シャーロットに呼ばれて、ぼくの背後から去って行った。
つか、足音も立てずに、後ろに立たないでください。心臓が止まります。
いやいや、それより。総愛されって、なんですか?
なんでモブのぼくが、そのようなことに?
ぼくの知らないアイキンが、まさか、あるというのですか?
いい加減、詳しく教えてください、アイリスぅ…(泣)。
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続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
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