【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶

文字の大きさ
167 / 176

2-31 魔女っ娘ハルルン

     ◆魔女っ娘ハルルン

 七月に入って、卒業の見込みが立ったぼくは。
 あとは、一学期の終わりに開かれる、学園の式典、ダンスパーティーを残すだけになった。

 いやぁ、卒業できそうで、良かったです。
 剣術の単位を落とすことになり、一時は、陛下とともに卒業できないかもしれない、と。
 結婚式までに、卒業できないか、と思って。落ち込んだけれど。
 魔法で、陛下をお守り出来ると証明できたことで、おまけで及第点をいただけました。ホッと、ひと安心。

 これからは、より一層、魔法に磨きをかけなければなりません。
 誰も、陛下に指一本触れさせませんよぉ?

 それで、式典のダンスパーティーは。
 本来は、一学期修了おめでとう、の打ち上げの意味合いが強いものだが。
 今回は、特別編入の、陛下とぼく。そして、いち早く教育課程を修了した、ベルナルドやカッツェ、その他数名の、卒業記念パーティーも兼ねている。
 これはイレギュラーなことで。今年の学園生は、優秀な生徒を多く輩出した、ということでもあるのだ。すごいですね。

 学校で学ぶことが、ひと段落ついたとはいえ。ぼくは、やることが満載です。
 今日は、その手始めですよ。

 放課後、ある教室のひとつを借りて。ぼくは。以前世話になっていた仕立て屋の女性店員を、数名お借りして。御令嬢方の着付けを手伝ってもらった。
 シャーロット殿下と、アイリスと、マリーのドレスを、作っちゃった。

 以前、学園に入る前に、暇だったとき。ちょっと、アイリスのドレスを作ったことがあったのだけど。
 それは、またの機会にして。
 せっかく、仲良し三人組になったのだから。ちょっと趣向を変えてみたくなったのだ。

 お針子さんが、廊下で待っていた男性陣に声をかけてくれたので。ぼくらは、教室に入った。
 そこには、きらびやかなドレスを着つけた、可愛らしいお三方がいます。

 シャーロットは、金の髪が映える、真っ赤なドレス。
 アイリスは、瞳の色に合わせたベビーピンクのドレス。
 マリーは、おとなしやかな印象の、青紫色のドレスだ。

 でも、仕掛けは、これだけじゃないのです。

「く、く、く、クロウ様っ。これは、魔女っ娘ハルルンのコスデザインじゃございませんの?」
 目をグルグルさせたマリーが、ぼくに聞いてきた。

 そう。前世で大人気だった、魔女っ娘ハルルンというアニメのコスプレなのです。
 ハルルンは、ミニスカートだけど。それを、ロングドレスに改良した感じです。

 魔女っ娘ハルルンは、主人公のハルナが、友達ふたりと力を合わせて悪を叩くという、勧善懲悪、魔女っ娘アニメだった。
 その、メインキャラの色合いが、赤、ピンク、青紫で。前面のツタ柄の刺繍と、お尻側にΩ型のボリューミーなフリルがついているのが、衣装の特徴です。
 Ωの部分は、メイン生地とシフォン生地を重ね合わせて、ブリブリでありながら重く見えないようにしてあります。

 これは、巴と静にも作ったことがあるので。楽勝なのです。

「あ、わかりますぅ? マリーもご存知でしたか?」
「ご存知もなにも、私のバイブルですもの。このお尻のヒラヒラが超可愛かったものね? いやぁぁ、この年で、ハルルンのコスプレとか、お恥ずかしいぃい。けど。今は十四歳だったわ。やだぁ、イけるじゃない? 私ぃ」
「はい。可愛らしくて、お似合いですよ? マリー」
 にっこりと笑って言うと。マリーは、はわわ。となった。

「私が監修した、アイキンの世界が、まんま見られるだけでも贅沢だと思っていたのに。そのキャラに、か、か、可愛らしいと言われる日が来るなんてっ。つか、2・5次元は、あまり得意じゃなかったけど。この世界のリアルは完成度が高くて、キエーーーッ、発狂しそうよっ」
「いや、発狂はおさえてくださいね、先生」
「つか、アイリスッ。シャーロット様が、ハルルンにそっくりよっ?」
「えぇ、お任せください」
 ぼくとマリーが話している間に、アイリスはなにやら、シャーロットの髪をポニーテールに結わえ。仁王立ちで腰に手を当て、顔だけ振り向くように、殿下に指示している。
 大きく開いた背中のラインを見せつけ、フリルを主張するように腰を突き出す、こ、このポーズはっ?

「君のために、悪を退治。魔女っ娘ハルルン、こーーーーりんっ」

「「「ひぇぇぇぇぇっ」」」
 シャーロットがハルルンの決め台詞を言って、ぼくとマリーとアイリスは、オタクの発作を発症した。

「生ハルルンよっ。いいわよ、いいわよ」
「スマホ、なんでスマホがないんだっ」
「心のシャッターを切るのよっ、クロウ様、マリーっ!!」

 その、転生オタク三人衆を見て。陛下もシオンもベルナルドもカッツェも、ドン引きだった。
 まぁ、仕方がないね。わかる人だけがわかるやつです。

「と、とりあえず。衣装は気に入ってもらえましたか?」
 気を取り直して、ぼくは、三人の御令嬢に聞いた。
 マリーはまだ、アワアワしているけど。アイリスが答えてくれた。
「気に入らないわけ、ありませんわ? クロウ様。それに、恐れながら、殿下とおそろいの衣装を着用できるなんて、光栄ですし。一生の思い出になりますわよ?」

「クロウ、このドレス、すっごく可愛いわ? それに、国一番のドレス職人、クロウ・エイデンのドレスは、それだけでもう、プレミアなのですもの。早く、みんなに見せびらかしたいわぁ」
「はしたないですわよ、殿下。もっとエレガントに、お見せして差し上げるのです。ね?」

 キャッキャしているシャーロットを、教育係的な感じで、アイリスがたしなめるが。
 ふたりとも、新着衣装に、心を踊らせているのはわかる。
 華やかな笑顔の御令嬢方を見れば、ぼくも嬉しくなりますよ。

 ちなみに、殿下のエスコートは、シオンが。
 アイリスは、アルフレドが。
 マリーは、ベルナルドが務めることになっており。
 カッツェは、陛下とぼくの護衛につくんだって。
 カッツェは卒業生でもあり、主役なのだから、パーティを楽しんでもいいと言ったのだけど。

「私は陛下とクロウ様の護衛を目指しているので。最後まで、その栄誉をお与えください」
 なんて、あっつい目を向けて、言うから。
 そうですかぁ? となったのです。
 まぁ、適度に楽しんでもいいよ?

「細かいサイズ直しなんかは、お針子さんに言って、直してもらってくださいね?」
 ぼくの言葉に、彼女たちは、はーいと返事をして。お店から派遣してもらったお針子さんたちと、楽しそうに話をしている。
 それで、パーティに向けて。卒業に向けて。準備を進めていた、そのとき。
 
 しばらくナリをひそめていた、主人公ちゃんⅡが。みんながいる教室に入ってきたのだった。

感想 10

あなたにおすすめの小説

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)