冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶

文字の大きさ
2 / 16
1巻

1-2

 しかしなんの因果か、今はそのゲームの世界の住人になってしまった。それが一番ミステリー。
 ところで私は、屋敷の隅っこで隠れるようにして生きているのだが、このまま蟄居ちっきょしていられるなら、ラスボス王子の従者にならずに済むのではないかと考えている。ネロディアス王子に会わなければ従者のなりようもなく、ゲームに巻きこまれることはないからな。
 それに、書庫で暮らすのは大歓迎だ。いや、ちゃんとノワールの子供部屋はあるし、三食出る良い暮らしだよ。むしろ三食昼寝付きで読書三昧ざんまいだ。つまり文句なしなので、ラスボスにみつからないよう、このまま屋敷の奥に隠れていたいということ。
 引きこもりと言うなかれ、私は両親の命令で奥にいるのだからね、たまたま利害が一致しているだけである。
 というわけで、死亡回避するべく、まずはできる限り屋敷の奥でひっそり暮らすことを目標にした。とても地味な作戦だが、みつからないことが肝要だ。
 篠として客観的に見たとき、この生活の中で子供のノワールに足りないものは、親の愛情くらいなものだ。今の両親は私をいないものとして扱い、養っているけど放置しているからな。
 しかし私には篠の記憶があり、前世では親に愛情をかけてもらった。私の両親は前世の両親だけでいい。
 まぁ、アラサーの篠には、三百年もの長きにわたって脈々と受け継いできた公爵家を途絶えさせられない、という公爵家の体面とやらが少しはわかるんだ。でもそれでネグレクトは駄目だし、全然擁護ようごはできない。
 だけどそういう大人の事情はさて置いて、折檻や飯抜きさえなければ、大人の記憶を持つ私は悠々自適気分で暮らしていけるということだ。
 ただ手も足もまだまだ小さく働くのは難しいので、もう少し育てていただければありがたいです。
 穏便に、ゲームが終了する十八歳まで屋敷の奥で生活させてもらえたら、とっとと町に降りてひとりで生活しますので、お構いなく。という心情であった。

「あ、ひとりで暮らすなら料理もできたほうがいいな」

 そう思い、私は読み終わった魔術書を棚に戻し、料理本を手に取るのだった。


      ★★★★★


 粉雪がパラパラと降りかかる寒い日。
 私は女装して馬車に乗りこみ、王宮へ向かっていた。
 外で雪が降りしきっていても、温かい部屋でぬくぬくと暮らしていた深窓のご令息だったというのに、いきなり外の冷気を浴びる事態になり、頬が引きつっている。

「どうしてこうなった?」

 ラスボス王子に会わないよう、屋敷の奥でひっそり暮らすことが私の目標であった。なのに、そんな私がなぜラスボス王子のテリトリーである王宮に向かっているのかというと……話は一時間前にさかのぼる。


 一時間前、私は子供部屋にて読書をしていた。暖炉に火があり、ぬくぬくである。
 そこに、久しぶりに父上が姿を現し、開口一番言ったのだ。

「ノワール、急いでこのドレスを着るのだっ」

 あまりにも脈絡がなく面食らったが、父上にはちゃんと理由があった。
 父上が言うには、今日は第二王子のご学友候補を選ぶためのお茶会が王宮で開かれていて、そこに王子と同い年のアベーチェが招かれたらしい。ネロディアス様はあまり体調がよろしくなかったようで、顔を青くしていた。そんな王子に、アベーチェが自慢げに言ったそうだ。

「ぼくが具合が悪いときは、兄上が治してくれるのです」

 父上はすぐにアベーチェの口を手でふさぎ、兄上のことを口にしてはいけないと注意した。しかし第二王子はしっかり聞いていて、目を光らせた。

「我も、その者にこの具合の悪さを治してもらいたい。公爵、頼む」

 第二王子のみならず陛下にもお願いされた父上は、私の出自を隠すのを条件にして依頼を引き受けた……ということらしい。

「王宮では誰の目があるかわからないから、念のため女装をしておくのだ。おまえは公爵家の遠縁の娘というていだ」

 公爵家に黒髪で魔力のない息子がいると知られてはならない。それで父上は私に紺色のドレスを持ってきたというわけ。
 口答えを許さない雰囲気に満ち満ちた父上の高圧的な態度が、私は苦手だ。なので、おとなしくドレスに袖を通したよ。しかし中身アラサーリーマンの篠はドン引きである。
 モーラが姿見を見せてくれたのだが、彼女が上手に着つけてくれたからか、鏡の中にはまぁまぁ可愛らしい少女がいた。
 普段の私は黒髪ロングで、なにやらホラーチックな日本人形の様相だ。横長の目つきに、生気のない黒い瞳。モブゆえか、小さな口に主張のない鼻で、自分の顔ながら、簡素で陰気で不気味だと思っていた。
 だがモーラのブラッシングにより、いつもより髪がつややかになって……まがまがしさが薄れた日本人形くらいにはなったかな。
 横髪は胸の前に垂らし、腰まで伸びていた後ろ髪はウエスト辺りで綺麗に切りそろえられた。耳の上辺りから頭頂部にかけて結わえて、髪飾りでとめている。前髪は目の上辺りで自然に横わけにしてある。前髪ぱっつんだと日本人形まっしぐらだから、それでいいです。
 慌てて調達したらしいドレスは、胸の前にフリルがあって、袖はふわりとしたフレアー型、濃紺の落ち着いた色合いだ。スカート丈は膝下十センチ、この国では雪が積もっている日のほうが多いので、女性は裾を引きずるようなスカートははかない。スカートの下にパニエというボリュームを出すものをつけると、腰回りが温かく、スカートもふわりと広がる。
 そして足には厚地のタイツをはいて、編み上げのロングブーツを着用するのが定番だ。
 ドレスの上には白い毛皮のケープを羽織り、前をリボンで留める。
 しかし六歳だから体が成長しきっていなくて、男の子なのに、ドレスを着ても違和感がないのが悲しい。自分の顔にあまり興味がなかったから、そのときはじめて自分の顔を鏡でじっくり見たが、造作がちょっと女子っぽいかな?
 目は吊り気味で細めだから愛くるしい系の女子ではないけど、白い肌にぽつりと浮かぶ右目の下の泣き黒子ぼくろが目を引く。あ、まつ毛も長いな。それで女子っぽく見えるのかもしれない。
 そんな経緯があって、私は女装をして、ラスボス王子のところへ向かっている最中なのだった。
 あぁ、できれば一生関わりたくなかったのに、まさかアベーチェが余計なことを言うとはね。しかし家長の命令は絶対。働ける年齢になるまでは養ってもらうため、ラスボス王子のもとに向かわなければならない。
 それにアベーチェを見ていると、魔力過多は相当気持ち悪そうだから、私を殺すだろうラスボス王子とはいえ放っておくのは可哀想だね。
 特に王子に遺恨があるわけではないのだ。あれはゲーム上の話で、現状私が王子になにかをされたわけではないから。しかし殺される未来は遠慮したいので、チュッと吸ってサッと帰ろうと思っている。
 馬車の車窓から通りがかりに見える一面真っ白な雪景色の美しさに目を奪われた。横に長くて大きい王宮の外観にも圧倒される。
 私がこの異世界に転生して、屋敷の奥から出るのははじめてのことだった。本から知識は得ていたが写真などはなく、ストラーレン王国の町や人々や王宮の様子などは想像の域を出ない。なので、目に映る風景はどれも新鮮だ。
 けれど、行く先は私を殺すラスボス王子のもとだから、心が浮き立つことはない。
 馬車が止まり、一足先に降りた私が降車する父上を待っていると、ドーンという大きな物音が鳴り、少し離れたところで火柱ひばしらが空に向かって上がった。

「お茶会が催されている場所の方角だ。アベーチェが従者とともにそこに残っているのだ。早く行くぞ」

 父上にうながされ、私はお茶会会場を目指す。しかし、父上は雪道を歩くことに慣れているのだろうが、外出を許されなかった私は雪に足を取られてしまう。石畳はある程度除雪されているのだが、ブーツが滑りそうで怖い。
 そうしてギクシャク歩いていると、半泣きのアベーチェが駆け寄ってきた。

「父上ぇ、大変です。お茶会が終わるところだったのにぃ、王子がどっかーーんしちゃったのぉ」

 そう父上に報告するアベーチェだったが、私をみつけて目が真ん丸になった。

「あ、あ……」

 兄上と言いたいのだろうが、それは内緒なので、口の前に人差し指を当てた。女装中に兄上呼びはご遠慮いただきたい。
 アベーチェは手で口をおさえる。可愛い仕草で、私は思わずほっこりした。
 とはいえ、緊急事態だ。私たちは急いで外から回り、お茶会会場のある部屋の庭へ向かった。
 庭の真ん中に火柱ひばしらが立っていて、その中心に人がいた。
 普通なら、人が火だるまになっているのかと慌てるのだろうが、私はこういう場面を何度もゲーム上で見ている。
 小さいけれど、間違いない。金の髪と白地の盛装が炎越しにオレンジ色に光っている。炎の起こす熱風に、豊かな髪が揺らめいていた。口をへの字に引き結び、子供でも威厳を保ち胸を張り、炎の中でするどい目つきをしている。
 炎の中に立っているのは、ラスボス王子こと、ストラーレン王国の第二王子ネロディアスだった。
 王宮の庭に火柱ひばしらが上がり、大人たちが右往左往する中、私は迷わず彼に近寄って行った。
 彼を取り巻く魔力は、湧出する噴水のように間断なく噴きあがっている。とてもではないが、小さな体では抱えきれない莫大な魔力量だと、ひと目でわかった。

「危ないからこっちへ来るな。怪我をするぞ」

 自分のほうこそつらく、どうにもならないのだろうに、王子は私の身を心配して声をかけてきた。ゲームでは冷酷無慈悲なラスボス王子だったのに、優しいじゃないか。
 とはいえ彼が来るなと手を振ると、手のひらに乗っていた炎が私を目がけて飛んでくる。そこは配慮してもらいたいところだ。令嬢(仮)の顔に傷がつくだろうが。
 でも私は魔法を相殺そうさいできるので、大丈夫。炎のかたまりは私の体に到達する前に、砂がこぼれるかのようにさらさらと崩れた。
 苦しいのか、王子が炎の中でうめき、頭を抱えてもがいている。目を見開いて、はぁはぁと苦しそうな息をつく。どうやら魔力暴走になりかけているようだ。
 アベーチェは、ちょっと体の外に魔力があふれるだけでも、頭痛がすると言って私のところへやってくる。魔力過多はそれほどつらいものらしい。
 アベーチェ以上に魔力があふれている今の状態でなにもしなければ、さぞかし苦しいことだろう。
 ゲームでは、ネロディアス王子は幼い頃に魔力暴走を起こし、数人死者を出した。それからは、ストラーレン王国一の魔力量の多さで本来なら敬われるべきところ、人殺しだと恐れられ忌避きひされてしまう。結果、自分をかえりみない者たちをすべて焼き払いたいと憎悪を燃やす、悪の王子になるのだ。逆ハーレムルートで、王子が聖女にそのようなことを語っていた。
 今目の前で起きているコレが、数人の死者を出すという魔力暴走事件かもしれない。
 だが私は、これを止められるぞ。
 苦しむ王子が雄叫びを上げると、火柱ひばしらが膨れ上がって大きくなった。彼がいる庭は熱風が吹き荒れ、私の長い黒髪やスカートを揺らす。庭には雪が積もっていたはずだが、とけてしまったのか白い景色はまったくなく茶色い地面がむき出しになっている。かろうじて常緑樹が庭の周りを緑でいろどっていた。ま、ブーツが滑らず、歩きやすいのは良いことだ。
 というか、お茶会は室内で行われていたはずだが、こうして王子がひとりで庭にいるということは、おそらく被害を出さないよう配慮して庭に逃れてきたのだろう。賢明な判断だな。
 だったら王子の気遣いを無にしないよう、この場をおさめないとね。無論、死者も出さない。

「来るなと、言っているのだっ」

 王子はそう言うけど、構わずに歩を進める。でも炎のかたまりが飛んでくるのは、大丈夫だとわかっていても怖いので、手で払いのけさせてもらう。
 私が手を振ると、魔法が弾かれるビィィィンという音が辺りに響いた。弾かれた彼の魔法は分解し、私の手の先で霧散する。
 分解した魔法の粉が私の周囲に渦巻く。王子の魔法の質が良いからか、それらは虹色の残滓ざんしとなって私の周りを輝かせた。
 自分のあずかり知らぬところではあるが、まぁ、綺麗は綺麗だ。
 王子のすぐそばにやってきた私は、ためらうことなく火柱ひばしらの中へ手を突っこんだ。魔法を無効化しているから熱くはない。そして王子の手を握ると、私は警戒されないよう、王子に微笑みながら言った。

「御機嫌よう、王子。御無礼いたします、ゆっくりお休みください」

 そう言っているうちから、王子の魔力を吸い上げた。
 魔法ではないので、私は普通にしていても魔力が周りにあれば吸ってしまう。意識して吸うというのは、ジュースをストローで飲むように、あえて吸引する感じだ。
 すると、ドゥゥゥゥルルンッ、というなにやら軽快な音が聞こえた……ような気がした。あれだよ、ゲームで武器を買うと、たまったお金が減っていく、あのときの効果音のやつ。もしかして、王子のマジックポイント消費音なのかな?
 火柱ひばしらは魔力を吸いこむごとに徐々に小さくなっていき、王子の魔力をある程度吸い取ったところで、私は王子の手を離す。でも王子は気を失って倒れそうになったので、私はぐったりした王子を慌てて抱きとめた。地面に倒れたら、白いお衣装が泥だらけになってしまう。
 王族のキラキラ衣装など、私は弁償できないからなっ。
 その頃には辺りはすっかり元の静寂が戻っていて、父上が駆け寄ってきた。

「どうなった? 王子は無事なのか?」

 気絶する王子を私から引き取って、父上は聞いてくる。王子の心配しかしないのが、父上という感じです。思わず、苦笑。というか、冷笑。
 そんな冷めた気持ちで、私は父上の腕の中にいる王子を見やる。
 彼は子供だけど、しっかりラスボス王子であった。
 あれだけの炎を体にまとわせても、怪我ひとつない。それは多大な魔法を行使しても、己になんのダメージも及ぼさないほどの魔力がある証だった。
 魔法を発動する者は、無意識に体を魔力でコーティングするらしい。だから、手の上に炎を出しても、氷の槍を素手で握っても、痛くもかゆくもないのだ。そう、魔法書に書いてあった。
 しかし制御不能の魔法は、別。己の身を焼くこともある。
 だけど王子は無傷で、うるわしのかんばせも健在だった。さすがだな。
 目を閉じていてもその目元は凛々りりしく、まつ毛は長い。スッと通った鼻筋、桜色の唇。ゲームで一番美貌の男、聖女を差し置いて美しい男なだけある。

「魔力を吸い取っただけです。膨大な魔力を短時間で吸引したので、体がついていけずに眠っているのでしょう。でも、魔力が回復すれば目を覚ましますよ。アベーチェもそうなので、大丈夫だと思います」
「そうなのか?」

 父上はアベーチェに尋ね、彼はうなずく。

「兄上に癒されると、気持ちが良くなってお昼寝します。目覚めはすっきりさっぱりです」

 ここら辺は誰にも聞かれないように、こっそり親子で話していた。

「それよりも兄上、とってもきれいでしたぁ、炎のオレンジが兄上の白いはだにはんしゃして、キラキラでぇ、兄上は目がギンッでぇ、黒い髪がバサバサァでぇ」

 アベーチェの言うキラキラは、あの虹色に光ったやつだと思う。

「そうだね、私が魔法を構築する回路に触れると砂粒以下の大きさに分解してしまうわけだが、そのときあんなに綺麗な反応が出るなんてね。私もはじめて見たよ」

 魔法というものは分子レベルの魔法陣のようなものが寄り集まってできるというイメージだ。その魔法陣のようなもののことを、本では回路と表している。
 私の魔法無効化は、その回路をバラバラにしてしまう感じ。
 前世的に言えば、遺伝子の塩基配列を壊す感じ。わかりにくいかな? まぁ、意識してやっているのではないので、憶測だけどね。
 すると、父上はまた驚愕した。

「なに? 魔法を相殺そうさいしたのははじめてだったのか? 王子が危ないではないか」

 ……父上は安定に、私を心配することはないのだった。いいです、いつものことなので。

「いえ、魔法の相殺そうさい自体は何度か経験があります。あんなふうに光ったのがはじめてだということで……母上の魔法の暴発で水をかぶりそうになったことがありますが、相殺そうさいしてもそのときはこんなふうにはならなかったのですよ」
「兄上、それは母上の嫌がらせでは……」

 ぼそりと言うアベーチェの口を手で塞ぐ父上だった。
 あ、やっぱりそうだった? 母上は滅多に奥には来ないが、姿を見せるときは私に嫌味を言ってくることが多い。あの母上の魔法の暴発が、わざとだとか嫌がらせだとかとは思わなかったけれど、なにかしら私に難癖なんくせをつけたかったのかもなぁとは思っていたよ。
 それよりも、とにもかくにも王子の魔力暴走はおさえたわけなので、早々に引き上げたかった。
『騒動をおさめた、あの謎の少女は誰だ?』と騒然とするお茶会会場で、気を失った王子を従者に預けた父上は、私とアベーチェをソソッと馬車に乗せ、王宮をあとにした。
 よっぽど黒髪の私が公爵家の者だと知られたくないのだね。
 まぁ、それはいい。王子が目覚める前に退却できれば、私はそれでいいのだ。


      ★★★★★


 思いがけず王宮へ行った日以降、私は、昼間は暖炉の前で縫物やパン作りをし、午後は本を読むという、いつもの日常を過ごしていた。
 縫物はモーラが貴族のたしなみだと言うから習ったが、それは令嬢限定なのではないかな?
 しかし私は成人したら屋敷を出る身。腕が良ければ仕立屋で仕事をもらえるかもしれないから、とりあえず身につけられるものはなんでもやってみるスタンスだ。
 そんな静謐せいひつで穏やかな時が流れ、王宮での出来事を夢のように感じはじめていた、ある日のこと……
 新しい青紫色のドレスを持った父上が、またまた子供部屋に現れた。このシチュエーションは二度目。こうして私の静謐せいひつは打ち破られたのである。

「ノワール、婚約が決まったぞ。このドレスを着て王宮へ行くのだ」

 開口一番そう言う父上をいぶかしんだことは許してほしい。さっぱり意味がわからなかったのだ。なぜなら私は、この屋敷から外へ出てはならない身なのだから。
 さらに、私の婚約が決まったとして、なぜ男の私がドレスを着る?
 黒髪を三角巾で覆い白いエプロンを身につけている私は、パン作りの最中だった。ひとまとまりになったパン生地を銀色のボウルにビッタンビッタンぶつけながら父上を見やる。
 私は奥からは出られないが、モーラが部屋に材料を持ってきてくれるからパン作りができる。生地を練って成形までしたら、モーラが厨房へ持っていき、焼いてもらうのだ。
 これも独り立ちに向けての準備のひとつだ。
 本を読んで独学でパン作りをマスターした私は、成人したらパン屋になりたいと本気で思いはじめている。前世の私は会社員だったが、将来なにになりたいかと子供のときに聞かれたら、パン屋さんと答えていた。前世では競争が激しくて、とても店を持つような甲斐性も腕もなかったが、この世界でなら小さなお店を持つことくらいできそうじゃないか? 甘いかな。
 あぁ、甘いといえば、ケーキ屋も捨てがたい。なにせ前世は色とりどりの美味しいケーキがあったからね。それを再現できたら売れると思うのだ。やっぱり甘いかな。
 だがパン屋は一旦置いておいて、私は大事なことを父上に尋ねずにはいられなかった。

「父上、私は公爵子息であることを隠して十八歳まで屋敷の奥深く、ひっそり暮らさなければならないはずなのですが。なにゆえ婚約なのですか?」
「……第二王子のネロディアス様が、おまえと婚約したいと言っているのだ。王家の命令には逆らえまい。それに王家との婚約は公爵家のためになる、とてもありがたい御申し出だ。断るなど、愚の骨頂っ」

 私の嫌味をさらりと流し、動じることもなく、父上はドレスをビラビラ振り回しながら言い切った。公爵家第一主義の父上は、そのような答えを出したようだ。
 私はパン生地の入ったボウルに濡れ布巾ふきんをかけ、暖炉のそばに置く。一次発酵である。そして三角巾とエプロンを外してモーラに渡し、父上に向き合った。
 ここは正念場だ。
 身に余る光栄である王族との婚約……だが、断る!
 冷静に心を落ち着かせながら、私は父上との舌戦に挑んだ。

「なぜネロディアス様が私などに?」
「先日の件で、おまえを見初みそめたそうだ」

 父上もドレスをモーラに渡し、私とともに食卓の椅子に腰かける。子供部屋に客人など来ないので、座って話ができるのは食事用のテーブルしかない。
 というか、やっぱりラスボス王子に目をつけられてしまったか。死亡ルートしか見えない。

「それは、私のことを女性だと勘違いしているのでは? あのとき私はドレスを着ていましたから、女の子だと思って婚約を申しこんだのではないでしょうか」
「それは確認してないが、陛下は公爵家の第一子が男性のノワールだと知っている。届け出に嘘はつけぬからな」
「陛下はご存じでも、ネロディアス様が私を女性と思いこんでいたらどうするのですか? それを黙って婚約を進めたら、王家を騙したことになりますよっ」

 ちょっと強めに言ってみた。なんとしても婚約話など断らなければならない。ラスボス王子に関わりたくなくて、こちらも必死である。
 背筋を伸ばすが、六歳児ゆえチョンと椅子に座る私に、大の大人である父上は説得モードで身を乗り出した。私がごねると思っていなかったようだな。

「ノワール、王家と婚約ということは公爵家にとって良い話なのだ。なんの取柄とりえもないおまえが公爵家に貢献できる最後の機会だぞ。喜んでお受けするべきことだ」

 なぜに、ほぼほぼ放置されている私が喜んで公爵家に貢献すると思うのだろうか。公爵家に生まれたら公爵家のために尽力するものだと、父上は普通に思っているようだ。
 ゲームのノワールだったら、不遇をいる公爵家に恥をかかそうとして、婚約話を盛大にぶっ壊すと思う。
 ……ふむ、それも一案だな。しかし私はそれほど好戦的ではないし、公爵家を敵に回したら読書三昧ざんまいの日々に終止符が打たれるかもしれない。それは私の思うところではないのだ。
 でも婚約はしたくない。ラスボス王子に近寄って、若死にしたくもない。

「第二王子はお世継ぎを望まれないのですか? あれほどの魔力量を誇る王子が子孫を残さないのは、国の損失になるのではありませんか?」

 畳みかけるように、父上に訴える。婚約したくないという感情論だったら、家長の一喝で本決まりさせられるが、正論を述べる六歳の私に父上もたじたじだ。
 そうだ。今、六歳の仮面をかぶることに意味はない。アラサー篠の処世術で、なんとしても、父上を丸めこまなければならないのだっ!

「そこは王家の問題でわかりかねるが……この国では同性婚が認められている。貴族が男性の側室を囲うことは珍しいことではない。それにお世継ぎは側室を迎えればよいのだ」

 確かにこの国では同性婚も一夫多妻多夫も認められている。収入に応じて妻子の人数に制限はあり、養えないのに妻や夫を増やしてはならない、というのはあるが。
 この国は雪に閉ざされ、外出もままならないことが多い。ゆえに、家の中での生活が重要視され、家族の人数が多いと幸せも多いと認識されている。
 この国の国史大系にはそのようなことが書かれてあった。
 ゲームの中に、逆ハーレムルートというものがある。逆ハーレム、いわゆる女性主人公が男性の攻略キャラ全員と仲良くなるものなのだけど、それは全員と結婚する展開なのだと思う。
 ゲームでは、その結末までは描かれていなかったけど、たぶんそう。
 そしてこの国ではそれが可能だ。エロっ。
 いや、エロゲーではなかったよ。妹がやっていた全年齢向けの乙女ゲームだから。
 なんて、いたいけな六歳男児の中で思うアラサーおっさんであった。痛いね。

「貴族の婚約というものは、家同士の契約だ。王子と婚約することで、おまえは王家と公爵家の橋渡し役の任を帯びるのだ。また、王子が国王となったあかつきには国母となり、公爵家を優遇する。そのように動け」

 つまり、黙って公爵家の役に立てということだな? 乱暴な話である。
 しかし父上のこの様子では、同性の婚約者はイヤ、は通じなさそうだ。

「私の立場はどうなるのですか? 王子の婚約者である黒髪の私が公爵子息だと、知られたくないのでしょう?」

 今度は私を衆目にさらしたくないだろう、という方向で攻めてみた。

「そこは悩ましいところだ。しかし公爵家を継ぐ男子だからダメなのだ。嫁ぐ身である女子としてなら、魔力が少なく髪色が少しばかり違っていても注視されないだろう」

 ジト目になるのが自分でわかった。まだ子供だからいいが、女装がいつまでも通用すると思わないでもらいたい。ガタイのいい男が女装していたら、それこそ公爵家の恥になりますよ。
 なんならゲームのスチルでは、ノワールはラスボス王子より背が高かった。ラスボス王子の後ろに、鼻と口しか描かれていない簡素な顔の、背の高いやつが常に控えていたぞ。顔の全容が描かれたのは、終盤のバトルシーンだけだったけどね。
 とはいえ説得は難航を極めている。婚約が決まったと言って部屋に入ってきたのだ。もう約定やくじょうを交わしちゃったのかもしれない。
 これは、王子のほうから手を引くように仕向けなければならないかな。
 父上は公爵家の益になることに貪欲だ。この家を自分の代で潰さないよう必死なのだ。

「婚約話を進めるのは、王子が私のことを女性だと勘違いしていないか、そこを確認してからにしてもらえませんか」

 少しでも先延ばししたい、あわよくば性別誤認で今回の話はなかったことに……という展開に持っていきたかった。
 とその時、部屋の扉がノックされ、執事が顔を出した。

「旦那様、ネロディアス殿下がお見えです。婚約者であるノワール様にお会いしたいと……」

 ラスボス王子、きたーーーーっ!?
 私はなるべく王子から離れたいのに、なんで王子から来ちゃうんだよぉ……
 あぁ、ゲームの強制力という名の大いなる気配をひしひしと感じる。死亡ルート確定案件だ。
 ライトノベルでよくそういう展開があった。
 いやいや、しかしゲームではラスボス王子の従者だった。婚約者ではない。まだワンチャン死亡回避の可能性はある。婚約者ならもしかしたら……いやいや、無理だな。だって冷酷無慈悲なラスボス王子なのだ、従者だろうが婚約者だろうが殺すときは殺すよ。
 やっぱりムリゲーだ。

「ちょうどいいから、おまえが王子の誤解を解け」

 私は父上に手を引っ張られ、部屋から連れ出されてしまった。おそらく応接室に向かっているのだろう。長い廊下を歩きながら、私は父上に「善処します」と答えた。
 今の私は力のない子供だ。扶養年齢のうちは父上という権力には逆らえない。雨風をしのげて、温かい食事を食べ、知識をたくわえられる環境を与えられている。この楽園は手放せないっ!
 しかし十八で死ぬのも嫌なので、そこからの脱出を図りつつ、現状維持を目指すのだ。
 そして私たちは、本棟の応接室の前に来た。
 執事が、おそらくモーラから手渡された黒のジャケットを私に着せ掛け、服装や髪型をサッと整えた。一国の王子に会うのだから、身だしなみは大切だ。
 そうしてから、執事は応接室の扉を開ける。まず目に入るのは、大きくてった装飾のなされた暖炉だ。室内の広い空間がしっかりと暖められている。
 王族を通すのだから、ここは屋敷の中で一番上等なサロンなのだろう。一枚絵のように庭の雪景色が望める大きなガラス窓がある。雪が多いストラーレン王国では珍しく、今日は晴れているので、明るい日差しが室内にしこんでいた。
 その窓から外を眺めている、小さな後ろ姿。
 鮮やかなゴールドの髪色を見て、ドキリと胸が高鳴る。恋などという甘いものではなく、刺された腹が渋るような、死に直結したドキリだ。
 王子は金糸で縁取ふちどりと刺繍ししゅうをした白地の膝丈ジャケットに、黒のロングブーツ姿。たっぷりした波打つ髪が肩を覆っている。
 後ろで手を組んで庭を見ていたが、私たちが入ってきたことに気づいて、こちらをゆっくり振り向いた。アベーチェと同じ年なので、五歳。ゆえに、頬にはまだ幼い丸みがある。しかしぱっちりした目元から厳しい視線が放たれて、口は引き結んでいる。
 五歳ながらも堂々としておごそかな、まごうことなきラスボス王子がそこにいた。

「セベスティエン公爵、とつぜんの来訪で申し訳ない。陛下から婚約の話がととのったと聞き、はやくあいさつしたくなったのだ」

 柔和にゅうわな微笑みをたたえた王子は、頭を下げる父上に挨拶をした。

「それはありがたい御言葉。ノワールも喜んでおります。公爵家はいつでも殿下を歓迎いたしますよ。さぁ、ソファのほうへどうぞ」

 王子は上座にあるひとり掛けの椅子に座る。横にある複数人かけられるソファに、父上、私の順で腰かけた。
 というわけで、婚約を回避するべく王子の説得、開始である。
 振る舞われた紅茶をひと口飲み、王子は私に告げた。

「ノワール、とつぜんの話で驚いたであろうが、こころよく受け入れてくれて嬉しかったぞ」

 いきなり名前を呼ばれ、私は息を呑んだ。
 夢の中では名前を呼ばれなかった。いや、私の名前など知らないような感じだった。従者の命など取るに足らないという様子で、息を吸うような手軽さで私を殺したではないか。
 とは思ったが、まだ五歳の王子には知る由もないことだな。
 しかしながら、婚約をこころよく受けた覚えはない。視線を下に落としたまま、私は口を開いた。

「恐れながら、殿下。先日は無礼にもお手に勝手に触れましたこと、お詫び申し上げます」

 婚約のことには触れず、まずは魔力暴走していた王子の手を握った件について謝罪した。緊急事態ではあったが、許可もなく王族の手に触れたのはいけないことなのだ。

感想 90

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。