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ひとりよがりなやきもち
しおりを挟むもっと、もっと欲しいだなんて。
今まで見ているだけで幸せだったくせにそんなのはワガママが過ぎる。
好きだよ衣玖ちゃん。今はまだ、それだけ。
「やっっっっちゃった‥‥」
「どうしたの甘風さん」
「いいいいや?なななななななんにも??」
「明らかに何かあるよね‥‥」
まだ舌に残る甘い感触。熱い、熱い体温と、とろけるような瞳。
思い出すだけでおかしくなりそう。
「言ってみてよ」
「イクチャンカワイイ」
「そんなカタコトいらないから!」
失礼な。これでも精一杯頑張って絞り出した言葉なんですよ。
ていうかなんで衣玖ちゃんはそんないつも通りなの。私、あんなことしちゃったのに。
「んん、見るだけでよかったのに」
「?」
見てるだけで、遠くから応援するだけでよかった。頑張り屋なその姿を、目で追いかけるだけで私の世界は輝いた。
「なのにこんな‥‥自分勝手な」
「なに、言ってってば」
「だから、」
あんなのただのやきもちで。
ただ、ちょっとウソを吐かれただけで。
ただ、ちょっと友達と話してただけなのに。
「贅沢な自分が嫌になる」
「ぜいたく?」
「衣玖ちゃんのこと、見てるだけでよかった。話したいとは思ったこともあったけど、衣玖ちゃんの目が私をに向く日なんて、想像もしてなかったんだよ」
そんな自分が、どうしてこんなワガママを言えるんだろう。
「今は衣玖ちゃんの目が他の誰かに向けられると、苦しくなるの。ただ、話してるだけでも寂しいなんて思っちゃう」
いつから。
いつからこんなワガママになっちゃったの。なんでそんなこと、思っちゃうんだろう。
「衣玖ちゃんが隣にいるだけで‥‥こんなに幸せなのに」
「‥‥」
「って、何言ってるんだろ。ごめんね、忘れてよ」
「‥‥忘れない」
「はい?」
静かに聞き返せば背中をパンっと叩かれた。
「忘れないよ、ばか」
「い、衣玖ちゃん?」
「別に、今日のはウソついた私が悪いし、甘風さんに内緒で相談したいことがあるからって不安にさせちゃったんだし別に嫌じゃなかったし」
「へ?嫌じゃなかったんだ‥‥よかった」
「そりゃちょっとは苦しかったけど、甘風さんだから許してあげる」
「はは、ありがとう‥‥て、相談って?」
「それは解決したからもういい」
「えぇ‥‥」
私にも相談してほしかった‥‥。
それ言っちゃったら、怒られちゃうかな。
「分かってよ。私は甘風さんが思ってる以上にあなたのことが好きなんだから」
「っ‥‥ほんと可愛い」
「からかってるの?!本気なのに!」
「私だって本気だってば」
「いーや、からかってる」
「もう、拗ねないでよ。どうしたら信じてくれる?」
可愛いなぁなんて思いながら、少しだけ膨れた頰をつついてみる。すると真っ赤な顔をして。
「今日のキス‥‥またしてくれたら、信じてあげる」
なんて言うからたまらない。
「い、いいの?」
「いいから言ってるの」
これ以上言わせないでなんて、握った手に力を込めるから、この子は私をときめかせる天才だ。
「好き‥‥」
「知ってる」
「衣玖ちゃんのお望みなら、もっとすごいのしてあげる」
「えっ」
あれよりもすごいの?なんて慌てだす衣玖ちゃんをぎゅっと抱きしめる。こんなに私をときめかせておいて、そんな反応は反則だろう。
「責任とってよ、衣玖ちゃん」
「あ‥‥う、」
ぷしゅーなんて煙がでそう。
私の恋人は世界一、可愛い。まちがいなく、ね。
「好き‥‥大好き、衣玖ちゃん」
パクパクさせる唇にキスを落として囁けば、固まっちゃうからまた可愛い。
どうやら私のやきもちは、ひとりよがりではないらしい。
聞き逃しそうなほど小さな声で「私も」と呟く衣玖ちゃんを見て、そんなことを思ったりした。
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