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山奈ちさとは食べ足りない
しおりを挟む感情は伝染するものである。喜んでいる人をみて幸せになれるのは良いことだ。私もその中の1人だったわけで。
しかし、今日はどうもいつもと違うようで。
「はぁ……」
これだ。
何かと言われたらみゆがため息をついている。机の周りに群がる人たちへ愛想笑いすら向けない。みんなみゆの元へ行ってはおずおずと戻ってくるのみ。一体なにがあったんだろう。
「やっぱり既成事実かなぁ‥‥」
やっぱりってなに。既成事実って意味わかってる?
すごく憂いた顔で可愛い女の子が“既成事実”ってもう犯罪の香りしかしないんですが。なに、篠山先輩と関係あるの?
それはそれで見たいけど友達が既成事実作るというのはほんと複雑な気持ちと言いますか。
「あ、ちさとちゃん」
「み、みゆ……一緒に卒業したいから犯罪だけはやめてね……?」
「犯罪?」
しないよーなんて笑われるけどだったらさっきの憂いた顔と言葉はなんだったんだ。その笑顔を信じていいのか。
「おねーちゃんがさ」
「え、聞いてもいいの?」
「だってちさとちゃんじゃないとこんな話できないし」
「ち、ちょっと待って。テラスいこう」
昼間からそんなディープな話教室でできないですし。
「んー、おっけ。準備するから待ってて」
やっぱりみゆは可愛い。会話のかわしかたも上手いから、たぶん嫌いな人は嫉妬を除けば学校だけでも片手で足りるほどにしかならないだろう。
好きな人に対してちょっと強引なのがたまに傷だけど。
「おねーちゃん、まだ私を好きだって言ってくれなくて」
「え‥‥拗ねてるの可愛い」
「ん?」
「あ、いやなんでもない」
危ない危ない。危うくちょっと溶けるところだった。
拗ねる理由が可愛いな。というか落ち込んでるのすごく可愛い。
まぁ好きだ好きだと言われてる相手に理想の人を紹介しようとしている篠山先輩はなかなかの鈍感具合じゃないと言いますか。
その距離は確実に縮まってきてるとは思うけどまだ足りないみたいだ。
「それで既成事実?」
「んんー、でもそんなことしたらおねーちゃんピュアだから倒れちゃうんじゃないかなって」
・・・なにをするおつもりで?
たんたんとすごいこと言うなー、私の友達は。
「もっとキス上手くならなきゃなー」
ほんとすごいこと言うな。
「まだ失神させたことないの」
だからなにをするおつもりで?!!
もう気になって今日は妄想が止まりませんよ!いい笑顔でいわないでほしい。
「‥‥そっか」
いろんな感情を飲み込みつつ、私は私の思う最善の返事を笑顔で返した。
「いただきます」
どうやらまだまだ、食べられるようだ。
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