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地獄、現世に見つけられる
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エネルギー問題に揺れる人類はある日一人の天才いや鬼才の科学者により唐突に解決された。本命とされた核融合ではなく、なんとその科学者はこう言った。
「灼熱地獄から熱を取り出せば永久機関の完成じゃね?」
もちろん誰もが相手をしなかった。地獄なんてあるわけ無いだろう。よしんばあったとしてどうやって地獄に到達するのかと。かの科学者はオカルティストとして、そしてあまりにも荒唐無稽ということでアカデミックから追放された。
しかし彼は諦めなかった。アカデミックから追放されたあとは故郷に戻り、実家の寺を継ぐことになった。彼の実家の寺はそこそこ広かったので彼はそこに「霊界エネルギー研究所」なるものを作り寺の仕事の傍ら、研究をおこなう。彼の実家は修験道にとっても重要な寺であったため多くの山伏たち、修行者たちが立ち寄りそして宿坊をともにする。
ある日一人の山伏が彼を訪ねてきた。
「あなたが地獄から熱を取り出せばエネルギー問題を解決できると提唱された方ですか?」
「いかにも。あなたは?」
「大した者ではありません。ただの霊子を研究している山伏です」
「霊子?」
初めて聞く霊子なる言葉に科学者は首をかしげる。
「ええ、聞いたことありませんか。魂の重さが21gだというのを」
確か20世紀の頭にどこかの医師が死ぬ前後で重さを計測して死ぬと約21g軽くなるという報告をしていたことを思い出す。しかしそれは嘘の報告、あるいは計測ミスなどでは無いかということでアカデミズムからは排斥された研究であることを思い出す。
「なにを仰るのです。先生の研究も十分アカデミズムの範疇から外れているでしょう」
山伏の指摘に科学者は思わず苦笑いする。
「ではその霊子があるものだと仮定しましょう。しかし次の問題はその霊子をどうやって追跡するのでしょう」
「先生、それはすでに解決しております」
科学者は思わず驚くが、構わず山伏は蜘蛛の糸が良いという。芥川龍之介かなと思ったがとりあえずやってみることにした。どの蜘蛛がいいのかはわからないが、仏陀がいた地域の蜘蛛がいいのではないかと推測をする。
仮説を立てたら実証する。それは科学者の本能のようなもの。思い立ったが吉日でまずインドの蜘蛛について調べ始め、どうやらアシダカグモがインド原産だということに調べ着いた。とりあえず身近な存在であるアシダカグモを捕まえてみたが、残念なことにアシダカグモは網を張らないタイプの蜘蛛だった。インドに行くまでの予算は無かったため諦めてジョロウグモを捕まえてきてその糸を使うことにした。
こうして大量の蜘蛛の糸を得たので次は霊子にくっつける研究を始めた。幸い寺であるため葬式などでいくらでも新鮮な霊が手に入ったので霊自体の数は問題なかった。そしてついに般若経を書いた蜘蛛の糸を死人のそばに置くとくっついてどこかに飛んでいく現象が観測できるようになった。しかし大半の霊は極楽に行くからか途中で蜘蛛の糸がほどけてしまった。
ある日、犬の供養をして欲しいという檀家が現れた。犬の霊子は観測されていなかったが一寸の虫にも五分の魂というので同じようにしたところ、今度は上手くいったようであった。そこで般若経を書いた蜘蛛の糸で被覆した細径のファイバースコープを用意し、死んだ動物の霊にくっつけて飛ばしてみた。
「お、おお!これが地獄!」
「先生!」
「山伏殿!ついにやったぞ!」
「しかしこれは畜生界のようですな」
「うむ、しかしこうして他の世界をこの目で見ることができる日が来ようとはな」
畜生界は動物的本能の赴くままに行動する世界。ここで記載してしまうとR-18あるいはR-18Gになってしまうのでお寺などで六道輪廻図を見ていただきたい。
こうして異世界にこの世の物質を送り込めるようになった。向こうからこちら側に出てくるモノがあるのでは無いかと思われたが、それは般若経の影響か畜生共は見えていないようだ。時折ぶつかるモノがあるものの特に気にすること無くどこかに消えていく。
とりあえず畜生道については修験者を対象に公開することにした。勿論他言無用としたが人の口に戸は立てられぬわけである日テレビが取材にきた。テレビで放映されると世の中で大きな反響が起きたが、アカデミズムは相変わらずよくできた映画かなんかだろうということで一笑に付す。
しかしこのおかげで懐が潤ったので研究資金に余裕が出てきた。そこで一人助手を雇うことになった。彼女は超科学雑誌の記者をしていたが、我々のことが世に明るみになってすぐに退職し、いの一番に飛んできた。少し変わった娘さんだったが優秀ではあった。
「先生!やりました!」
「どうした?」
ある日助手が満面の笑みで飛び込んでくる。一体何事かと思い聞いてみれば近々死刑執行される。その死刑囚がたまたま拙寺の門下だということで、死刑執行後の葬式をこちらであげて欲しいとの依頼だそうだ。
これは地獄界に到達するまたとないチャンスと考え急いで準備を行う。万全の準備を終え刑務所から死刑にされた者を迎え入れる。
「こやつが大量殺人の犯人か」
「まず間違いなく地獄行きでしょうな」
「ふふ、でも私たちも大概地獄行きですよね」
科学者は思わず笑みがこぼれる。それは助手の一言に反応したのかついに研究の成果が得られると思ったのか、今となってはわからない。
そしていつも通り葬式をあげると蜘蛛の糸がふよふよとどこかに飛んでいく。しばらくして糸が止まったのでファイバースコープを送り込むとそこに映っていたのは真っ赤に燃える板に串刺しにされている姿。
「こ、これは焦熱地獄か!」
「先生!一発目で当てるなんてめっちゃ運いいですね!」
「おお!これが地獄……」
まさに地獄絵図。というかそのものである。これは公開は後回しにした。というのも未だに畜生界の映像を見に来る者が後を絶たず、これに地獄界の映像が加われば研究が阻害されうると判断したからだ。
そしてその日から3人はさらに他の地獄を探すことと、地獄への熱交換器を送り込む方法について検討を開始した。
「灼熱地獄から熱を取り出せば永久機関の完成じゃね?」
もちろん誰もが相手をしなかった。地獄なんてあるわけ無いだろう。よしんばあったとしてどうやって地獄に到達するのかと。かの科学者はオカルティストとして、そしてあまりにも荒唐無稽ということでアカデミックから追放された。
しかし彼は諦めなかった。アカデミックから追放されたあとは故郷に戻り、実家の寺を継ぐことになった。彼の実家の寺はそこそこ広かったので彼はそこに「霊界エネルギー研究所」なるものを作り寺の仕事の傍ら、研究をおこなう。彼の実家は修験道にとっても重要な寺であったため多くの山伏たち、修行者たちが立ち寄りそして宿坊をともにする。
ある日一人の山伏が彼を訪ねてきた。
「あなたが地獄から熱を取り出せばエネルギー問題を解決できると提唱された方ですか?」
「いかにも。あなたは?」
「大した者ではありません。ただの霊子を研究している山伏です」
「霊子?」
初めて聞く霊子なる言葉に科学者は首をかしげる。
「ええ、聞いたことありませんか。魂の重さが21gだというのを」
確か20世紀の頭にどこかの医師が死ぬ前後で重さを計測して死ぬと約21g軽くなるという報告をしていたことを思い出す。しかしそれは嘘の報告、あるいは計測ミスなどでは無いかということでアカデミズムからは排斥された研究であることを思い出す。
「なにを仰るのです。先生の研究も十分アカデミズムの範疇から外れているでしょう」
山伏の指摘に科学者は思わず苦笑いする。
「ではその霊子があるものだと仮定しましょう。しかし次の問題はその霊子をどうやって追跡するのでしょう」
「先生、それはすでに解決しております」
科学者は思わず驚くが、構わず山伏は蜘蛛の糸が良いという。芥川龍之介かなと思ったがとりあえずやってみることにした。どの蜘蛛がいいのかはわからないが、仏陀がいた地域の蜘蛛がいいのではないかと推測をする。
仮説を立てたら実証する。それは科学者の本能のようなもの。思い立ったが吉日でまずインドの蜘蛛について調べ始め、どうやらアシダカグモがインド原産だということに調べ着いた。とりあえず身近な存在であるアシダカグモを捕まえてみたが、残念なことにアシダカグモは網を張らないタイプの蜘蛛だった。インドに行くまでの予算は無かったため諦めてジョロウグモを捕まえてきてその糸を使うことにした。
こうして大量の蜘蛛の糸を得たので次は霊子にくっつける研究を始めた。幸い寺であるため葬式などでいくらでも新鮮な霊が手に入ったので霊自体の数は問題なかった。そしてついに般若経を書いた蜘蛛の糸を死人のそばに置くとくっついてどこかに飛んでいく現象が観測できるようになった。しかし大半の霊は極楽に行くからか途中で蜘蛛の糸がほどけてしまった。
ある日、犬の供養をして欲しいという檀家が現れた。犬の霊子は観測されていなかったが一寸の虫にも五分の魂というので同じようにしたところ、今度は上手くいったようであった。そこで般若経を書いた蜘蛛の糸で被覆した細径のファイバースコープを用意し、死んだ動物の霊にくっつけて飛ばしてみた。
「お、おお!これが地獄!」
「先生!」
「山伏殿!ついにやったぞ!」
「しかしこれは畜生界のようですな」
「うむ、しかしこうして他の世界をこの目で見ることができる日が来ようとはな」
畜生界は動物的本能の赴くままに行動する世界。ここで記載してしまうとR-18あるいはR-18Gになってしまうのでお寺などで六道輪廻図を見ていただきたい。
こうして異世界にこの世の物質を送り込めるようになった。向こうからこちら側に出てくるモノがあるのでは無いかと思われたが、それは般若経の影響か畜生共は見えていないようだ。時折ぶつかるモノがあるものの特に気にすること無くどこかに消えていく。
とりあえず畜生道については修験者を対象に公開することにした。勿論他言無用としたが人の口に戸は立てられぬわけである日テレビが取材にきた。テレビで放映されると世の中で大きな反響が起きたが、アカデミズムは相変わらずよくできた映画かなんかだろうということで一笑に付す。
しかしこのおかげで懐が潤ったので研究資金に余裕が出てきた。そこで一人助手を雇うことになった。彼女は超科学雑誌の記者をしていたが、我々のことが世に明るみになってすぐに退職し、いの一番に飛んできた。少し変わった娘さんだったが優秀ではあった。
「先生!やりました!」
「どうした?」
ある日助手が満面の笑みで飛び込んでくる。一体何事かと思い聞いてみれば近々死刑執行される。その死刑囚がたまたま拙寺の門下だということで、死刑執行後の葬式をこちらであげて欲しいとの依頼だそうだ。
これは地獄界に到達するまたとないチャンスと考え急いで準備を行う。万全の準備を終え刑務所から死刑にされた者を迎え入れる。
「こやつが大量殺人の犯人か」
「まず間違いなく地獄行きでしょうな」
「ふふ、でも私たちも大概地獄行きですよね」
科学者は思わず笑みがこぼれる。それは助手の一言に反応したのかついに研究の成果が得られると思ったのか、今となってはわからない。
そしていつも通り葬式をあげると蜘蛛の糸がふよふよとどこかに飛んでいく。しばらくして糸が止まったのでファイバースコープを送り込むとそこに映っていたのは真っ赤に燃える板に串刺しにされている姿。
「こ、これは焦熱地獄か!」
「先生!一発目で当てるなんてめっちゃ運いいですね!」
「おお!これが地獄……」
まさに地獄絵図。というかそのものである。これは公開は後回しにした。というのも未だに畜生界の映像を見に来る者が後を絶たず、これに地獄界の映像が加われば研究が阻害されうると判断したからだ。
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