最弱伝説俺

京香

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第一章 俺、最弱なんです

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――ぜんっぜん、関係無くなかった!!!

 教師陣がぱらぱら体育館へ入ってきて入学式が始まる頃、葵は尋常ではない冷や汗と戦っていた。
 後ろの席に座ったはいいものの、何故だかそのあとやってきた新入生たちが皆やんちゃな生徒たちばかりだったからだ。 
あれか、ぎりぎりに座ったのがまずかったのか。というか、不良も入学式出るんだななどと現実逃避してみたが、現状が良くなるわけもなく。無事に何事も無く、絡まれることなく終わってくれと願うばかりだった。

「新入生代表、前へ」
「はい」

 在校生代表のあとに新入生代表の挨拶が始まったが、頭がパニック大洪水中なのでマイクから流れる声も名前も顔さえ一切入ってこない。まあ、代表になるくらいの優等生と友人になる確率はかなり低いのでそこは問題ではないだろう。
 それより何より、今は痛いくらいに視線を寄越してくる右隣の不良に困り果てていたりする。

――誰! 俺の友だちは誰もここに入学してないし、こんな気合いの入ってる人絶対知り合いじゃないし!

 先ほど不本意にも倒してしまった不良より上背は劣るものの、葵よりは若干背が高そうだ。明るい茶髪をつんつんに立てていて、明らかに一般生徒とは言い難い。もう少しおとなしい見た目にならないものだろうか。
 そして、校舎が綺麗だったのでてっきり不良はいないと錯覚していたが、全員が全員不良ではないだけで確実に何パーセントかはいることがはっきりした。

 元々偏差値も平均から気持ち下なので、不良がいてもおかしくはない。
 ここが名の知れた進学校ならば不良がいないという勘違いも仕方がなかったかもしれないが、そうでなければ葵の想像はただの願望でしかなかったわけだ。
 というより、無理やり入らされた葵は、ここがどれくらいのレベルでどのような勉強をし、校風はどうかなど一つも知らなかった。

――何でもいいけど、隣の不良さんこっち見んの止めてくんないかな。俺見たってつまんないだろ……。

 思い虚しく凝視され続けるだけの謎の罰ゲームは、入学式が終わるまで続いた。むしろ終わってからも続いた。




「新入生退場」

 何百もの生徒が一斉に立ち上がるのは圧巻だ。ただし、葵にそんなことを思う余裕は一ミリたりとも無い。

――うおおおお、まだ見てくうううぅう! つうか、付いてくる! この人怖い!

 退場しながら後ろからばしばしくる視線が痛くて、何か縋れるものはないかと保護者席を見る。すぐにガタイの良いスタッフ二名を発見したが、ビデオを回しながらこちらに手を振るだけで全然助けてくれる様子は無かった。じと目で抗議しながら小さく手を振り返して体育館を出る。

 はああ、ため息を吐くところへとんとんと肩を叩かれた。
 ついに接触してきたかと身構えて振り返る。そこには思っていた人物と違う、見たことのない生徒が立っていた。いつの間にか、ストーカー不良は消えていた。

「やあ、小日向君だよね」
「……はあ」
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