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3.魅了のせい?
しおりを挟むパンッパンッと水音に混じって肌を打つ音が森に響く。
途切れることのない強すぎる刺激と否応なしに出てしまうあえぎ声で意識が朦朧としてくる。
「はぁっ……出すぞっ、しっかり受け取るんだっ!」
「あ、あぅ……ぁっ──……」
最奥に放たれた焼けるような熱に体が満たされていく。
ビクンビクンと跳ねる体を背後から勇者が強く抱きしめて、その力強さにすがっていいような気がして、俺は意識を手放した。
※ ※ ※
目を覚ますと肌色だった。
そして体は温かいけれど妙にごつごつした物に包まれている。あまり寝心地が良くない。
何だこれ離れろ、と手で押して距離を取ろうとしたら、頭の上から低くて耳通りの良い声が聞こえた。
「起きたのか?」
「へ?」
顔を上げたら至近距離に精悍な顔立ちがあって、てか勇者と一緒にテントみたいな中に寝てて、何これ何で? と一瞬考えたが、直ぐに数分前なのか数時間前なのかの出来事を思い出した。
「~~~っ」
一気に顔に熱が集まって、恥ずかしくていたたまれなくて隠れるように顔を勇者の胸元に押し付けた。
だって顔見られるの恥ずかしいだろ。
「ぐっ……、だから、魅了を使うな……」
頭上から苦しそうな声が聞こえたが、俺はまた魅了を使ってしまったのだろうか。
気を付けないとと思うけど、どう気をつければ良いのか分からない。
俺を叱るように言った勇者だったが、俺の頭を撫でる手は優しくて、俺は魔族でこいつは勇者だと言うことを忘れてその心地よさに目を細めた。
しばらくそうしていたが、俺を撫でるのに満足したのか体を起こした勇者が俺の体を労るようにそっと背中に手を入れて起こしてくれた。
さすが勇者、魔族にも優しい。腰使いは優しく無かったけど。
「体は何とも無いか?」
「えっ、えっと……あれ?」
何とも無いかと気遣われた事に驚いたが、体はだるくも無いしあれだけ散々激しく突かれた肛門も痛みは無い。
ただお腹に違和感がある。少し苦しいと言うか、食べすぎた時のような苦しさ。
しかし勇者からもらった精気は一回だけのはず。それだけでこんなにも過食気味になるのだろうか。
首をかしげながらお腹を擦っていると、俺の言わんとする事が分かったらしい勇者が不自然に視線をそらした。
あれこれもしかして……
「……寝てる間もシた?」
「…………」
視線をそらしたまま沈黙するのが答えだろう。
勇者が睡眠姦とかしていいのか……。
「……腹が減ったら人間を襲うだろう? それを阻止する為に多めに精気を注いだだけだ……」
ジトっとした目で見てたら勇者が視線を彷徨わせながら言った。
なんとなく言い訳じみているけれど一応筋は通ってる。
しかし、その言い分からすると、
「……俺を、殺さないの?」
と言う事になる。
だってこれから生きていく上で人を襲わないように対処したって聞こえる。
俺の言葉を聞いて、勇者がやっと視線を俺に向けた。
「全ての魔物や魔族を倒している訳じゃ無い。お前が今後人を襲わないと約束するなら殺さない」
勇者の言葉に思わず目を輝かせた。
しかし、すぐ膨らんだ希望が萎んでしまう。
だって、そんな約束無理だ。
「俺、淫魔だから……人から精気を奪わないと生きていけないよ……」
やはり討伐対象にされるのだろうかとおどおどしてたらフッと笑われた。
こっちは命がけなのに笑うのは失礼だろ。
「お前は魔族のくせに人間より素直だな」
「んぐっ」
俺が不満げにクチを尖らせてたら顎を取られてキスされた。
もうお腹いっぱいだから止めて。
「……お前が空腹になる前に私が精気を与える」
「え……良いの?」
笑われた事とかキスされた事とかでちょっと怒ってたけど、勇者の言葉で一気に吹っ飛ぶ。
「……魔族が人を襲わなくするのも勇者としての役目だ。ただし他の人間から精気をもらうのは許さん!! これは絶対だ!」
「う、うん……分かったよ……」
「それとなるべく私のそばに居るように。お前の魅了は強すぎて危険だ」
「うん? 魅了使ってるつもり無いんだけどコントロール出来てないのかなぁ?」
「無意識に出ているのだろう。現に今こうしているだけでもお前を抱きたくてたまらないっ」
「ひえっ……!」
勇者の目が熱っぽくて冗談じゃないのだと分かり慌てて手近な布を体に巻きつけた。
そんな俺にクスリと笑って頭に軽く口付けられ、不覚にも頬を染めてしまう。
なんだこの彼女にするようなイケメン行動は。これも魅了によるものなんだろうか。
早いとこコントロール出来るようにしないと……
その思いは夜になっていっそう強くなった。
早いとこコントロールしないと食べすぎでお腹こわしそうだ。
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