キミとキスの練習がしたい 〜親友から迫られる俺の話〜

キトー

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親友がなんか言いだした

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「なあ瑠衣、キスの練習しねぇ?」

「は?」

 卓がなんか言い出した。
 俺、天里瑠衣あまさとるいは今、幼馴染で親友の卓こと、島川卓明しまがわたくみの私室で床に座り込み、ベッドに寄りかかって一緒にゲームをしていた。
 クッションなんて洒落た物は無いからちょっとお尻が痛い。
 中学最後の夏休み初日、卓の家で宿題を終わらせるべく共闘したが、早々に離脱しこうなった。

 そして先程の言葉だ。

「キスの練習って?」

 本当に意味が分からなかったから尋ねれば、隣に座っていた卓は、ゲームのコントローラーを置いて俺に向き合う。

「だからキスの練習、言った意味そのままだ」

「えっ……と、俺と卓がキスするってこと?」

「あくまで練習な!」

 いや練習でも何でもキスはキスでしょ。
 親友は突然どうしたんだ。

「なあ瑠衣、俺達来年からは高校生だろ? きっと恋人とかできると思うんだよ。そんときキスの一つもまともに出来なかったら恥かくだろ?」

「まぁ、うーん……」

「だから今のうちに練習しとこうぜ!」

 本気だ。この人本気の目をしてる。
 なんかやたらと距離が近い……のはいつもの事か。
 え、でもこれどうなんだ。
 卓の言ってる事は分かるけど、だからって友人同士で、しかも男同士でやるものなのかな。

「でも卓、俺がファーストキスの相手になっちゃうよ? それって嫌じゃない?」

「嫌じゃない! あ、いやそうじゃなくて……他のヤツならぜってー嫌だけど、瑠衣ならいっかなーって感じ?」

 いきなり叫ぶからちょっとびっくりした。
 なんか言い訳みたいな事も言ってるし。分からない、この男が本当に分からない。

「瑠衣は……俺じゃ嫌か?」

 うん嫌だ。
 て言ったら傷つけるよね。
 卓は未来の彼女の為に身を削る思いで俺に言ってきたのかもしれないし。
 卓にはいつも助けられてるから、たまには俺が胸を貸して……いや唇を貸してやるべきかな。
 そうだよ、俺だって男なんだから、親友の為にキスの一つや二つどうって事ないだろ。

「……じゃあ、してみる?」

「良いのか?!」

「あんまり良くはないけど、未来の恋人の為なんでしょ?」

「ああ! 未来のおれた……恋人の為にな!」

 なんか興奮して迫ってくる卓が少し怖くてのけぞってしまった。
 そんな俺の両肩をガシッと掴まれる。怖い。

「ちょっと、待って卓……お、落ち着こうか」

「目つぶってくれ」

「え! 今からするの?!」

「善は急げって言うだろ!」

 善か? これ本当に善なのか?
 覚えたことわざ使いたいだけか?
 そうこうしてる間に卓の顔が近づいてきた。
 あーもーここまできたら仕方ない。
 腹をくくれ、男だろ。

「んん……」

 ぎゅっと目をつぶればすぐに卓は唇を押し付けてきた。
 初めて感じた唇の感触は柔らかくて熱かった。
 卓の手が背中と後頭部に添えられて抱きしめられてるみたいで恥ずかしい。
 まぁいつも抱きついてくるけど。
 でも、それより……長くない?
 え、これ呼吸どうするの?
 キスってこんな苦しいものなの?
 てか長い! 長すぎだから!

 中断するようで申し訳なかったが、呼吸をする為に口を開く。

「っ?!」

 そしたらぬるりとした物が口中に入れられた。
 それが卓の舌だと気づく頃には俺の舌を舐められていた。
 驚いて急いで体を離そうとしたが、卓の腕に力が入り更に引き寄せられてしまう。

 卓は中学生にしては体が大きい。高校生と言われても違和感ないほどに。
 対して俺は平均より少し小さい。あくまで少し。これから伸びる。
 まぁそんな訳で、体格差のある二人では俺が敵う訳なくて、卓の腕に捕らえられたまま熱い舌が口腔内を好き勝手暴れてる。

「ふぁ……んん」

 何とか息をしようと口の隙間から必死で呼吸したら、一緒に変な声まで漏れちゃって恥ずかしい。
 さっきから舌同士を絡められたり口蓋を舐められたりする度、体が跳ねて変な気分になる。何これ怖い。
 たっぷりの時間をかけてキスを練習され、やっと離された。
 知らぬ間に流れていた唾液を舐めとられ、ついでに目元に溜まった涙も舐められた。泣きそうになってたのか俺。
 恥ずかしいから止めて欲しかったけど、体に力が入らなくてなすがままだった。

「瑠衣……どうだった?」

「はぇ……?」

 急にどうだったってきかれても、息が上がっちゃってまともに喋れない。
 てか卓も息遣い荒いじゃないか。やっぱり卓もきつかったんだな。無理しなくて良いのに。
 でもここは変な事言ったら傷つけるよね。
 自信をつけさせてあげなきゃだよね。

「えっと、初めてで良く分からなかったけど、上手いんじゃないかな?」

 うん、他とした事ないし比べる対象がないけど、なんかちょっと気持ちよかったしたぶん上手いんだろう。それ以上に苦しかったけどね。呼吸させろよ。

「じ、じゃあ! も一回」

「無理、ムリムリムリ」

 あんな恥ずかしい事アゲインなんて勘弁してよ。
 俺はカッコつけずに未来の彼女と共に成長していくと誓います。
 卓にはすっごいガッカリされたけど、きっと君なら未来の彼女を満足させてあげられるさ。もちょっと手加減した方が良いと思うけどね。

 その後は何事もなかったかのようにゲームを再開した。
 べったりくっついてくるのはお決まりだけど、夏は止めて欲しいです。



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