黄金の空

序章 はじまりの予知夢と思惑

双子の皇女1

　重い瞼をゆっくり開けると、目の前には自分と瓜二つな顔をした少女がいた。
　けれど、それはどこか以前と様子が違う。

　「目が覚めた？突然倒れたからびっくりして皆大騒ぎだったのよ」
　「…私、ここは何処？」

　眠っていたのだろうか？ふかふかの真白いベッドに横たわっていた自分に驚いて飛び起きた。
　きらきらした装飾品達と可愛らしい動物のぬいぐるみ。どれもいつもと変わらないのにやはり何かが違った。

　「…どうしたの？エヴァ。ここは私の部屋よ？…覚えてないの？」

　違う、そうじゃない。記憶ならきちんとある。ただそれが事実か曖昧なだけだ。
　目の前の少女…自分と双子であるアヴァは不思議そうな顔をして首を傾げた。

　「アヴァ。その…あれは夢だったの？イザミが目を覚まして…貴女の能力ちからが目覚めて…」

　恐る恐る聞くと、アヴァの顔が歪な笑みに変わる。やがてそうっと白い手を伸ばして、エヴァの頬を撫でた。

　「夢？エヴァったら可笑しな事を言うのね。今、貴女がこうして生きているのは…貴女の唯一手にしていた私と双子で皇女という地位のおかげよ。けれど貴女はこれからその地位故に…許されず憎まれる。私はこの国に光を与え…希望となる。これが夢だったら…悲しいでしょう？」
　「…アヴァ、一体何を言っているの…？」
　「可哀想なエヴァ…もう少し眠ると良いわ。夜が明ければ全てが分かるから…」
　「違う、アヴァ、私は…」

　話しかけながら段々と目の前で不気味に笑うアヴァの顔がボヤけてきた。

　(ああ…これはあの日の夢だ…)

　そう確信した瞬間に何かに引っ張られる様な感覚がエヴァを襲った。




　




　…—今思えば、あの日からゆっくりと歯車は狂い始めていたのだ。あの話に続きがある事など誰も知らなかったのだから…。