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序章 はじまりの予知夢と思惑
向かう先には3
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『チャド、同盟へ向かうエヴァの供人となり上手く補佐をしなさい。そして逐一私へ変化を報告すること。…分かっていると思うけど、もし万が一の時や私が命令したら直ぐに処分なさい』
監視をしながら一国の皇女の命を半分握る事となった赤毛の側近は、ある人物が来るのを待っていた。
『おい、ルカ。話がある』
『…悪いが今は小言を聞いている時間はないぞ、チャド』
七年前…仲が良かった双子が、あの日を境に扱いさえも変わってしまった事に若干の違和感を感じながらも、チャドは暫くの間はどちらに付くわけでもなく傍観していたのだ。
きっかけは、自分がどちらかと言うと好いていたのがアヴァだった事と、国を滅ぼすと言われた妹のエヴァに対して、周りから伝染するかの様に自分も嫌悪感を持ち始め、更にエヴァからも段々と人が離れていったからだ。
供人を断わらなかったのは、きっとアヴァから離れれば自分の立場が悪くなるだろうと分かっていたからである。
けれども、もしもの時はとアヴァと約束しても実際はそんな汚れ役はごめんだった。嫌悪の感情はあっても、アヴァと同じ顔をしたエヴァを殺めるのは避けたい。だからこうして、ルカに話したのだ。
エヴァを護ってやる代わりに、余計な事をしないように…殺さなくても済む様に最初から釘をさせと。
勿論、エヴァの事となるとルカは実に扱いやすい事をチャドは知っていた。
『…チャド、お前が命を賭けてエヴァ様をお護りするならば私からエヴァ様に同盟にのみ集中するように申し伝える』
『…命を賭けて?はっ…そんな簡単に死なねえよ。いざとなったらあいつ一人くらい抱えて翔んでやる』
『…その言葉忘れるなよ?』
ルカと話をつけると、チャドはそのまま空間を割く様に闇へと姿を消した…いや、その身を翔ばした。
チャドの使う能力は一瞬で場所を移動する事ができる瞬間移動である。
城内から城全体が見渡せる外へと翔び出ると、他の部屋と違ってやけに薄暗い部屋が目に付いた。
「……」
明かりの手入れさえもされない不憫な部屋に恐らくいるのはエヴァだと思いつつ、何もしてやる気は起きない。エヴァへの感情を嫌悪以外で表せと言うならば、きっと無なのであろうとチャドは思った。
薄暗い部屋への興味は直ぐに薄れ、背後から照らす月を振り返る。
三日月よりも少しふっくらした月は歪なくせに不思議な位、青白く煌々と輝いていた。
「…良い月だな」
遠く離れた月を見上げながら、夜明けがくるまでチャドはそこから離れなかった。
監視をしながら一国の皇女の命を半分握る事となった赤毛の側近は、ある人物が来るのを待っていた。
『おい、ルカ。話がある』
『…悪いが今は小言を聞いている時間はないぞ、チャド』
七年前…仲が良かった双子が、あの日を境に扱いさえも変わってしまった事に若干の違和感を感じながらも、チャドは暫くの間はどちらに付くわけでもなく傍観していたのだ。
きっかけは、自分がどちらかと言うと好いていたのがアヴァだった事と、国を滅ぼすと言われた妹のエヴァに対して、周りから伝染するかの様に自分も嫌悪感を持ち始め、更にエヴァからも段々と人が離れていったからだ。
供人を断わらなかったのは、きっとアヴァから離れれば自分の立場が悪くなるだろうと分かっていたからである。
けれども、もしもの時はとアヴァと約束しても実際はそんな汚れ役はごめんだった。嫌悪の感情はあっても、アヴァと同じ顔をしたエヴァを殺めるのは避けたい。だからこうして、ルカに話したのだ。
エヴァを護ってやる代わりに、余計な事をしないように…殺さなくても済む様に最初から釘をさせと。
勿論、エヴァの事となるとルカは実に扱いやすい事をチャドは知っていた。
『…チャド、お前が命を賭けてエヴァ様をお護りするならば私からエヴァ様に同盟にのみ集中するように申し伝える』
『…命を賭けて?はっ…そんな簡単に死なねえよ。いざとなったらあいつ一人くらい抱えて翔んでやる』
『…その言葉忘れるなよ?』
ルカと話をつけると、チャドはそのまま空間を割く様に闇へと姿を消した…いや、その身を翔ばした。
チャドの使う能力は一瞬で場所を移動する事ができる瞬間移動である。
城内から城全体が見渡せる外へと翔び出ると、他の部屋と違ってやけに薄暗い部屋が目に付いた。
「……」
明かりの手入れさえもされない不憫な部屋に恐らくいるのはエヴァだと思いつつ、何もしてやる気は起きない。エヴァへの感情を嫌悪以外で表せと言うならば、きっと無なのであろうとチャドは思った。
薄暗い部屋への興味は直ぐに薄れ、背後から照らす月を振り返る。
三日月よりも少しふっくらした月は歪なくせに不思議な位、青白く煌々と輝いていた。
「…良い月だな」
遠く離れた月を見上げながら、夜明けがくるまでチャドはそこから離れなかった。
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