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第一章 最初の国
獣道4
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光り出したペンダントに驚く間も無く、辺りの風景が水の中からよく見知った場所へと移り変わった。
首を圧迫していた手が離れ、その場に崩れ落ちるように蹲ると、エヴァは解放された自身の首元に手を当て咳き込んだ。
(…は……苦し…でも一体……何が起こったの…此処は…陽の…?)
肩で呼吸をしながらやっとの思いで半身を上げて確認できたのは、やはり陽の国の土地だった。それも、まだ予知夢の前…幼い頃によくアヴァと共に花摘みにきた場所だ。
『其方…何をした?』
真後ろから聞こえた先程の腕だけの人物の声にギクリとして勢いよく振り返った。
けれど、聞こえたのはその声だけでエヴァの首を締め付けていたあの腕は見えない。
「…し、知らないわ。貴方が何かしたんじゃないの?」
『シラを切るつもりか?其方の首から下げられているそれが青く光ったと同時にこうなったのだろう。私はあの場で其方を殺すつもりだった、こんな所に移動して何の意味がある?』
「…それは…」
恐らく、ルカが持たせてくれたペンダントに込められた幻影の能力だろう。だがこの人物にそれを知られる訳にはいかない。口籠るエヴァに対して男の声が続けた。
『…此処は其方の国か?我が国にこのような場所はない』
「さぁ…私も見た事ないわ」
『そうか………それならばこんな所はさっさと破壊してしまおう。燃やす事はできないが水の中にでも沈めてしまえば…』
「やめてっ!」
この風景が壊されようと現実的には全く問題ない事と知りながら咄嗟に出てしまった反抗に慌てて口を塞いだ。
『ではやはり其方の国か?」
「…知ってはいるけど私の国ではないわ」
「…そうか、では質問を変えよう…此処には僅かに我が国の境界の気が混じっている。これは……其方が作り出した其方の国の幻影か?』
「違っ…」
否定の言葉を出しかけたその時、地の奥底から不気味な音が響いてきた。
「な…何の音?」
『幻影ならば、幻影というその正体を知れば容易い事。此処はあの境界の中に作り出された世界であって事実ではない。だからこそ私の持つ能力は今こうして弱まってはいない。…だろう?』
「…っ…」
ゴゴゴ…と地鳴りと共にゆっくり足元が揺れ始めたかと思うと、水が一気に溢れあっという間にエヴァの腰あたりまで浸水し再び水の中へと引き込まれた。
首にまた手が絡みつく感触がして閉じていた目を開けると、同じ色をした目とぶつかった。
(…黄金色の…目…?)
今まで声や腕だけだったその人物が突然人の形となって現れたのだ。
僅かに数秒見合うと男は口を開き、またあの質問をした。
「………其方は誰だ?」
薄い白金の髪に、エヴァのような黄金色ではないが、金褐色の瞳が冷たく光っている。
食い入る様にその瞳を見つめると、彼の眉間に皺が寄り首を掴んでいる腕に力が込もった。
「…っ」
「その気味の悪い目で私を見るな」
発された言葉に耳を疑いながら口を必死に動かしたが、やはり声にはならない。
「黄金の髪に同じ黄金の目…あの女のようなやつが他に存在するとは…実に目障りだ」
「…っ…」
誰かと重ねているのだろうか。男の言葉を理解しようにも段々とその顔がボヤけて見え耳も遠くなり始めた。いよいよ頭の思考回路も停止しようと瞼が重くなってきた時だった。
やけに鮮明に聞き覚えのある声が響いたのだ。
『…エヴァ、ここにいるのか?』
(……チャ…ド)
いるはずのない声主の名を無意識で頭の中で呼ぶと、何かに思い切り引き上げられる感覚がした。
「…なっ…!」
揺らぐ意識の片隅で男の声を一瞬、聞いた気がした。
首を圧迫していた手が離れ、その場に崩れ落ちるように蹲ると、エヴァは解放された自身の首元に手を当て咳き込んだ。
(…は……苦し…でも一体……何が起こったの…此処は…陽の…?)
肩で呼吸をしながらやっとの思いで半身を上げて確認できたのは、やはり陽の国の土地だった。それも、まだ予知夢の前…幼い頃によくアヴァと共に花摘みにきた場所だ。
『其方…何をした?』
真後ろから聞こえた先程の腕だけの人物の声にギクリとして勢いよく振り返った。
けれど、聞こえたのはその声だけでエヴァの首を締め付けていたあの腕は見えない。
「…し、知らないわ。貴方が何かしたんじゃないの?」
『シラを切るつもりか?其方の首から下げられているそれが青く光ったと同時にこうなったのだろう。私はあの場で其方を殺すつもりだった、こんな所に移動して何の意味がある?』
「…それは…」
恐らく、ルカが持たせてくれたペンダントに込められた幻影の能力だろう。だがこの人物にそれを知られる訳にはいかない。口籠るエヴァに対して男の声が続けた。
『…此処は其方の国か?我が国にこのような場所はない』
「さぁ…私も見た事ないわ」
『そうか………それならばこんな所はさっさと破壊してしまおう。燃やす事はできないが水の中にでも沈めてしまえば…』
「やめてっ!」
この風景が壊されようと現実的には全く問題ない事と知りながら咄嗟に出てしまった反抗に慌てて口を塞いだ。
『ではやはり其方の国か?」
「…知ってはいるけど私の国ではないわ」
「…そうか、では質問を変えよう…此処には僅かに我が国の境界の気が混じっている。これは……其方が作り出した其方の国の幻影か?』
「違っ…」
否定の言葉を出しかけたその時、地の奥底から不気味な音が響いてきた。
「な…何の音?」
『幻影ならば、幻影というその正体を知れば容易い事。此処はあの境界の中に作り出された世界であって事実ではない。だからこそ私の持つ能力は今こうして弱まってはいない。…だろう?』
「…っ…」
ゴゴゴ…と地鳴りと共にゆっくり足元が揺れ始めたかと思うと、水が一気に溢れあっという間にエヴァの腰あたりまで浸水し再び水の中へと引き込まれた。
首にまた手が絡みつく感触がして閉じていた目を開けると、同じ色をした目とぶつかった。
(…黄金色の…目…?)
今まで声や腕だけだったその人物が突然人の形となって現れたのだ。
僅かに数秒見合うと男は口を開き、またあの質問をした。
「………其方は誰だ?」
薄い白金の髪に、エヴァのような黄金色ではないが、金褐色の瞳が冷たく光っている。
食い入る様にその瞳を見つめると、彼の眉間に皺が寄り首を掴んでいる腕に力が込もった。
「…っ」
「その気味の悪い目で私を見るな」
発された言葉に耳を疑いながら口を必死に動かしたが、やはり声にはならない。
「黄金の髪に同じ黄金の目…あの女のようなやつが他に存在するとは…実に目障りだ」
「…っ…」
誰かと重ねているのだろうか。男の言葉を理解しようにも段々とその顔がボヤけて見え耳も遠くなり始めた。いよいよ頭の思考回路も停止しようと瞼が重くなってきた時だった。
やけに鮮明に聞き覚えのある声が響いたのだ。
『…エヴァ、ここにいるのか?』
(……チャ…ド)
いるはずのない声主の名を無意識で頭の中で呼ぶと、何かに思い切り引き上げられる感覚がした。
「…なっ…!」
揺らぐ意識の片隅で男の声を一瞬、聞いた気がした。
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