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27話 奇跡が起きちゃったよ……。
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身近な五人がこんな短期間にラブレターをもらうなんてことは、偶然を通り越して奇跡だろ。
なんて思ってたわけだけど。
まさか本当に来るとは思わないだろ、普通。
寝不足だったのに眠気が一気にとんだぞ。
靴箱の中にある封筒から目が離せない。薄いピンク色の封筒だ。
辺りを見渡し、誰もこっちを見ていないことを確認して、封筒を素早く鞄に入れる。
そして、トイレへ行き個室に入る。きちんと鍵をかける。
さっきの封筒を鞄から取り出す。
手紙をくれた人には悪いが、学校で一人になれる空間なんてそうそうない。
いや、イタズラの線もまだ消えてないけど。そもそも、ラブレターって決まったわけじゃない。
封筒には『深海 凪人くんへ』だけ。差出人の名前は書いていない。
「………………」
手紙を読み終え、封筒を鞄へ戻し、教室へ向かう。
「ナギト、おはよー」
「おはよう」
「ナギト、顔赤いよ。大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ」
「そっか。それなら良いけど」
今日の授業の内容はほとんど頭に入っていなかったと思う。
俺の頭の中は今朝の手紙、いや、ラブレターのことでいっぱいだった。
あれは不幸の手紙でも、果たし状でもない。紛れもないラブレターだった。
「ねえ、ナギト。さっきから何を考えこんでるの? 部室行こうよ」
マヤの顔がいきなり目の前に現れる。
「うお。びっくりした」
「びっくりしたって何よ。さっきから話しかけてたのに全然聞いてなかったからでしょ」
「悪かった。行こうか」
「ただいまー」
「ただいま」
「マヤちゃん、ナギトくん、おかえり」
「マヤさん、ナギトさん、おかえりなさい」
「おかえり」
椅子に座り、鞄から小説を取り出す。
その時。
パサッ
薄いピンク色の封筒が床に落ちる。
しまった! 本のカバーに引っかかっていたのか!
すぐに鞄に戻そうとしたが、それはできなかった。
「何これ?」
マヤが拾い上げてしまったからだ。
「何って封筒だよ。親戚に手紙を出すんだ」
なんとか平静を装う。
「へー」
マヤがにやりと笑う。なんだ?
「ナギトって親戚に同姓同名の人がいるんだ。珍しいねー。ラブレターをもらうより珍しいんじゃない?」
そうだった。封筒には俺の名前が書かれているんだった……。
「なになに? ナギトくんにラブレター?」
「そう。さて、どんな内容かな?」
マヤが封筒を開けようとする。
「何してるんだ!」
急いでマヤから手紙を取り返す。
「何って中身を確認しようとしたのよ」
「そんなことしたら相手に失礼だろう!」
マヤってこんなにデリカシーのないやつだったか?
「それなら大丈夫。その手紙書いた人はこの部室にいるから」
「は?」
この部室にいるのって、だいじょう部の五人だけじゃないか。
「ドッキリよ。ドッキリ。ナギトがターゲットでそれ以外みーんなグルってこと」
アカリが解説してくれているが、頭がついていかない。
「お前たちがもらったラブレターは何だったんだ?」
「自作自演だよ。みんなで順番に書いたの。ナギトくん、騙してごめんね」
ようやく頭が追いついてきた。
「じゃあ、告白の後の話も嘘だったってことか?」
「うん。僕は別に怖い思いはしてないよ。心配かけてごめんね」
「リサが『どちらかといえば』男のほうが好きって話も嘘だったってことなんだな」
「さあ。どうでしょう」
「え?」
「リサ! 話をややこしくしないで! というわけで、ネタバラしも済んだし、手紙を読んでみよっか」
――――――――
深海凪人くんへ
君のことが好きだ。
私と付き合ってほしい。
このことは他人に知られたくないので、この手紙を送った。
返事は君の口から直接聞きたい。
私のわがままを許してほしい。
○月◇日の18:00 屋上で待っている
――――――――
「かっこいい文章だね。誰が書いたの?」
「知らないのか? 全員グルなんじゃないのか?」
「そうなんだけど、手紙の内容を知っているのは書いた本人だけ。私はヒカリちゃんに書いたし」
「ぼくはリサちゃんに。っていうか、なんでぼくは女の子としてラブレターを書かされたの? 相手がリサちゃんなら性別変えなくていいよね」
「そっちのほうがヒカリちゃんもからかえて面白いじゃん」
「ぼくもからかわれてた!」
ヒカリも半分こっち側だったか。
「私はマヤに書いたわね」
「ってことは……」
「はい。私がナギトさんとアカリさんに書きました。ちょうど今日ナギトさんの靴箱に入れるつもりだったんですよ」
「そうだったのか」
「ナギト、ごめんね。でもナギトが一日中そわそわしてたの面白かったよ」
「もう忘れてくれ」
「もしこれが本物だったらどうしてた? 『どう返事したらいい?』とか言ってた?」
「馬鹿にするな。返事くらい自分で考える」
「そうそう。これ、どうしましょう?」
そう言いながら、リサは鞄の中から封筒を取り出した。
「え? リサがなんで今それを持ってんの?」
「さっき言ったじゃないですか。『今日入れるつもりだった』って。まだ入れてないんだから、わたしの鞄にあるんですよ」
「いや、そうじゃなくて。なんでナギト宛てのラブレターが二通あるの?」
「あ」
「ほんとだ。なんで?」
「ナギトが持っているラブレターが本物だったってことでしょ」
アカリが何でもないように言う。
本物?
「「「「ええー!」」」」
「本物だったんですね。おめでとうございます」
「ナギトくん、よかったね」
「え? 誰から? ねえ、誰から?」
リサ、ヒカリ、マヤが口々に言う。
マヤは混乱しているようだ。差出人は書いてないっての。
俺は静かに口を開いた。
「どう返事したらいい……?」
なんて思ってたわけだけど。
まさか本当に来るとは思わないだろ、普通。
寝不足だったのに眠気が一気にとんだぞ。
靴箱の中にある封筒から目が離せない。薄いピンク色の封筒だ。
辺りを見渡し、誰もこっちを見ていないことを確認して、封筒を素早く鞄に入れる。
そして、トイレへ行き個室に入る。きちんと鍵をかける。
さっきの封筒を鞄から取り出す。
手紙をくれた人には悪いが、学校で一人になれる空間なんてそうそうない。
いや、イタズラの線もまだ消えてないけど。そもそも、ラブレターって決まったわけじゃない。
封筒には『深海 凪人くんへ』だけ。差出人の名前は書いていない。
「………………」
手紙を読み終え、封筒を鞄へ戻し、教室へ向かう。
「ナギト、おはよー」
「おはよう」
「ナギト、顔赤いよ。大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ」
「そっか。それなら良いけど」
今日の授業の内容はほとんど頭に入っていなかったと思う。
俺の頭の中は今朝の手紙、いや、ラブレターのことでいっぱいだった。
あれは不幸の手紙でも、果たし状でもない。紛れもないラブレターだった。
「ねえ、ナギト。さっきから何を考えこんでるの? 部室行こうよ」
マヤの顔がいきなり目の前に現れる。
「うお。びっくりした」
「びっくりしたって何よ。さっきから話しかけてたのに全然聞いてなかったからでしょ」
「悪かった。行こうか」
「ただいまー」
「ただいま」
「マヤちゃん、ナギトくん、おかえり」
「マヤさん、ナギトさん、おかえりなさい」
「おかえり」
椅子に座り、鞄から小説を取り出す。
その時。
パサッ
薄いピンク色の封筒が床に落ちる。
しまった! 本のカバーに引っかかっていたのか!
すぐに鞄に戻そうとしたが、それはできなかった。
「何これ?」
マヤが拾い上げてしまったからだ。
「何って封筒だよ。親戚に手紙を出すんだ」
なんとか平静を装う。
「へー」
マヤがにやりと笑う。なんだ?
「ナギトって親戚に同姓同名の人がいるんだ。珍しいねー。ラブレターをもらうより珍しいんじゃない?」
そうだった。封筒には俺の名前が書かれているんだった……。
「なになに? ナギトくんにラブレター?」
「そう。さて、どんな内容かな?」
マヤが封筒を開けようとする。
「何してるんだ!」
急いでマヤから手紙を取り返す。
「何って中身を確認しようとしたのよ」
「そんなことしたら相手に失礼だろう!」
マヤってこんなにデリカシーのないやつだったか?
「それなら大丈夫。その手紙書いた人はこの部室にいるから」
「は?」
この部室にいるのって、だいじょう部の五人だけじゃないか。
「ドッキリよ。ドッキリ。ナギトがターゲットでそれ以外みーんなグルってこと」
アカリが解説してくれているが、頭がついていかない。
「お前たちがもらったラブレターは何だったんだ?」
「自作自演だよ。みんなで順番に書いたの。ナギトくん、騙してごめんね」
ようやく頭が追いついてきた。
「じゃあ、告白の後の話も嘘だったってことか?」
「うん。僕は別に怖い思いはしてないよ。心配かけてごめんね」
「リサが『どちらかといえば』男のほうが好きって話も嘘だったってことなんだな」
「さあ。どうでしょう」
「え?」
「リサ! 話をややこしくしないで! というわけで、ネタバラしも済んだし、手紙を読んでみよっか」
――――――――
深海凪人くんへ
君のことが好きだ。
私と付き合ってほしい。
このことは他人に知られたくないので、この手紙を送った。
返事は君の口から直接聞きたい。
私のわがままを許してほしい。
○月◇日の18:00 屋上で待っている
――――――――
「かっこいい文章だね。誰が書いたの?」
「知らないのか? 全員グルなんじゃないのか?」
「そうなんだけど、手紙の内容を知っているのは書いた本人だけ。私はヒカリちゃんに書いたし」
「ぼくはリサちゃんに。っていうか、なんでぼくは女の子としてラブレターを書かされたの? 相手がリサちゃんなら性別変えなくていいよね」
「そっちのほうがヒカリちゃんもからかえて面白いじゃん」
「ぼくもからかわれてた!」
ヒカリも半分こっち側だったか。
「私はマヤに書いたわね」
「ってことは……」
「はい。私がナギトさんとアカリさんに書きました。ちょうど今日ナギトさんの靴箱に入れるつもりだったんですよ」
「そうだったのか」
「ナギト、ごめんね。でもナギトが一日中そわそわしてたの面白かったよ」
「もう忘れてくれ」
「もしこれが本物だったらどうしてた? 『どう返事したらいい?』とか言ってた?」
「馬鹿にするな。返事くらい自分で考える」
「そうそう。これ、どうしましょう?」
そう言いながら、リサは鞄の中から封筒を取り出した。
「え? リサがなんで今それを持ってんの?」
「さっき言ったじゃないですか。『今日入れるつもりだった』って。まだ入れてないんだから、わたしの鞄にあるんですよ」
「いや、そうじゃなくて。なんでナギト宛てのラブレターが二通あるの?」
「あ」
「ほんとだ。なんで?」
「ナギトが持っているラブレターが本物だったってことでしょ」
アカリが何でもないように言う。
本物?
「「「「ええー!」」」」
「本物だったんですね。おめでとうございます」
「ナギトくん、よかったね」
「え? 誰から? ねえ、誰から?」
リサ、ヒカリ、マヤが口々に言う。
マヤは混乱しているようだ。差出人は書いてないっての。
俺は静かに口を開いた。
「どう返事したらいい……?」
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