むすび。

桜空

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はじまり。

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チーンッ


トーストが焼けた音がリビングに響く。

僕は腰をかけたまま、キッチンにたつ母さんの背中をぼんやり眺めていた。

「バターでよかったよね」

母さんは忙しそうに冷蔵庫から牛乳とバターを取り出して言った。

「うん。」

「コップは自分で出してよ」

「はーい。」

僕はキッチンにある食器棚からグラスを取り出して、置いてある牛乳パックを手に持った。

手にひんやりと気持ちのいい感覚が伝わる。僕はこぼさないようにゆっくりとコップに牛乳を注いだ。

母からトーストがのった皿を開いた手で受け取り、僕はもといた椅子に腰を下ろした。

「学校はどう?  もう慣れた?  」

「1ヶ月もすれば慣れるって」

カリッと焼かれたトーストを両手で持って、ゆっくりと口に運ぶ。

一口食べると口の中にバターの香りがふわっと広がる。

「あっちの友達と離れ離れになっちゃったのは少し寂しいけど、今いる学校の友達も面白い子ばかりだよ」

チラッと母さんの方を見ると、にっこりと顔に笑みを浮かべて、僕が話しているのを静かに聞いていた。

僕はトーストをかじっては、牛乳を飲んで、かじっては飲んでを繰り返して朝食を食べ終えた。

歯を磨き、学ランに着替え、カバンを右肩にかけた。

「それじゃあ。いってきます」

「行ってらっしゃい」

閉まろうとする玄関の扉の隙間から響く母さんの声を背中で聞き、小走りで学校へ向かった。
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